クリスside
「遅いな……」
「そうだね……」
今日は待ちに待った夏祭りだ。
べ、別にアタシは興味ないけど、あのバカがどうしてもって言うから仕方なく来てやったって訳だ……。
まあ、ほんの少しだけアタシも楽しみではあったけどな……。おかげで昨日は全く寝れなかったが……。
それなのにあいつらときたら……もう集合時間を過ぎてるのに来る気配が全然ない。
なんだ? 集合場所間違えてるのか?
すでにドラえもんが来てる以上それはないと思いたいけど……。
そんなことを考えているとバカと未来がこちらに向かって走ってくるのが見えてきた。
あいつらやっと来たのか……。
「お待たせクリスちゃん」
「遅えんだよ。何してたんだ?」
「響ったらご飯を買い食いしちゃって……それで遅れちゃったんだ」
「これから祭りなのになんで買い食いしてんだよ!?」
「いや~、欲望にはどうにも抗えず……」
「本当にあきれた……」
全くこいつは本当にバカだな……。普通祭りの前に買い食いはしないだろ……。
どうせ屋台で好きなだけ食べるんだしよ……。
「それにしても美味しそうな屋台がたくさんだね! 何から食べようかな~」
こいつ本当に飯のことしか考えてねえ……。
まあ人様の見舞いの品を食べるようなやつだしある意味当然か……。
とりあえず腹減ったし私もなにか食べるかな……。
ん?
「あれ? あれってドラミちゃん?」
人混みのなか私達は見覚えのあるロボットを見つけた。
それはドラえもんの妹のドラミ……。どうやら誰かと待ち合わせをしているみたい……。
っ……!?
「あ、遅いじゃないのキッド」
「いや~、ワルイワルイ。タイムパトロールの仕事が思ったより長引いて……」
そこに現れたのはドラえもんズ一の射撃の専門家にしてタイムパトロールでもあるネコ型ロボット「ドラ・ザ・キッド」だった。
「あれ? キッドにドラミじゃないか。どうしてこの時代に?」
「あらお兄ちゃん。久しぶり」
「ようドラえもん。実は今日この時代で祭りをやるって話を聞いてな。それで二人で見て回るかって話になったんだ」
な、なるほど……。そ、そういえばこの二人恋人同士なんだったか。
ロボット同士の色恋沙汰なんてこの時代じゃ考えられないけど、未来じゃあたりまえなんだな……。
「ま、お前らも祭りを楽しんでこいよ」
「お、おう……」
「じゃあね」
そういうや否やドラ・ザ・キッドはドラミと一緒に屋台の人混みに消えてしまった。
「……じゃあ、私たちも行こうか」
「うん。あ~何から食べようかな……。もう待ちきれないよ~」
少し気にはなるがバカが我慢の限界になったらしく、私たちを急かし始めた。なので私たちもまた祭りを楽しむことにした。
「見ろ! アタシ様のわたあめを!!」
「わぁ~。でっかい」
「いいなぁ……」
「あ、くじ引きやってる」
「や、屋台限定特製どら焼きだって……!?」
楽しい。アタシは素直にそう思った。
正直未だにアタシなんかがこんなに楽しい思いをしていいのかと思ってしまう時がある。
散々犯してきた罪そっちのけでこんなことしていいのかと……。
「あ、クリスちゃん! 射的があるよ」
「面白そう、やってみようよ」
でも、こいつらの笑顔を見るとそんな憂鬱な気分も少しだけ薄れちまう。
アタシのやったことの罪の意識これから先も消えはしない。
けど、今こいつらと一緒にいるときぐらいは楽しんでもいいよな?
「うう、全然取れない……」
「大丈夫? 響ちゃん」
「バーン!」
バカに進められた射的、まあ楽勝だな。
私はあっという間に3つもの景品を撃ち抜いた。
「おお、さすがクリスちゃん」
「百発百中……すごい」
「一発で……クリスすごい」
「へへん。どんなもんだ!」
こいつらに褒められ少し有頂天に鼻を伸ばす。
すると、後ろの射的からなにやら聞き覚えのある声が。
「ドカーン!」
見るとドラ・ザ・キッドがアタシと同じく射的で景品を打ち落としているのが見て取れた。
その数は4つ、私よりも一つ多い。
どうやら一発で二つの景品をとったようだ。
「さすがキッドね。すごいわ」
「これくらいどうってことねえよ」
そう言って奴は視線をアタシに向けてきた。
その目はまるで挑発してるかのようにも感じられる。
「クリス……?」
「負けるかあ!」
私はお金を払ってもう一度射的に挑戦する。
私は弾丸の跳ね返りを利用してたちまち六つの景品を獲得した。
「す、すごい……」
「ふん、それくらい!」
するとドラ・ザ・キッドは景品の倒れる角度を利用して10個もの景品を三発で打ち抜きやがった。
くっ、負けてたまるか。
「ちょっせぇ!」
「ドカン!」
アタシたちは景品を打ちまくる。
銃の腕に関しちゃ、アタシだって譲れないものがある。
絶対コイツにだけは負けてたまるかよ!
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ドラミside
まったくキッドったら、今日は折角のデートなのに何やってるのよ……。
「あらら、二人ともヒートアップしちゃって……」
「あわわ、どうしよう」
「ふん、しばらくやらせとけば?」
楽しみにしてたのに、これじゃあ台無しじゃないの。
「でも、二人とも楽しそう」
未来ちゃんの言葉に私は今一度キッドのことを見る。
確かにすっごく生き生きしている。
私とのデートの時も楽しそうだったけど、ああして競い合っている姿も本当に楽しそうだ。
「少し焼けちゃうな……」
「ん? なんかいった?」
「別に……」
しばらくするとキッドとクリスちゃんは私たちの元に戻ってきた。
「すまんすまん。ついヒートアップしちまって……」
ほんとよ、まったく仕方ないんだから。
「じゃあ、あの屋台のメロンパン私たちみんなに買ってくれたら許してあげる」
「え? 本当、ありがとうキッドさん、ドラミちゃん」
「えっ、ああ……」
「何? 嫌なの?」
「い、いや、そういうわけじゃあ……わかったよ」
ちらっと財布を見るともうあとわずかしか残ってない。
どうやら射的にほとんど費やしたようだ。ほんとバカなんだから。
でも、たまにはこういう痛い目見せるのもいいでしょう。
そう考えながら私はみんなでメロンパンを食べたのだった。