三人称side
『ファイナルコース、地球に向けての軌道ハイウェイ、ですが、現在、ベンガル選手のウイニングラン状態だ。』
「お兄ちゃん…。」
心配そうに兄の無事を祈るドラミ。
彼女だけではない。観客席に座る装者たちやドラ・ザ・キッドにパワえもんといった面々も心配そうに画面を見ている。
それもそのはず、何しろドラえもんや響たちはつい先ほどの第5ステージにて消息を絶ってしまったのだ。
彼らがそう簡単にやられるはずがないと信じているとはいえ、心配になるのも無理はないことだろう。
そのころベンガルはというと…
「カレン、これで僕の優勝は決まったも同然だ。ついに僕たちは結婚できるんだ。」
『おお、ベンガル…。』
ベンガルは恋人であるカレンと通信を行っていた。
彼らは結婚を前提に付き合っていた恋人同士だが、今回のカーレースの責任者であるカレンの父に反対され続けていたのだ。
そこで、優勝の権利を使用し、結婚を認めさせようという腹だったのである。
「さあカレン、画面越しのキスを…。」
彼らはもはや勝利を確信していた。
自分たちの恋路を阻むものなど存在しないと…。
しかし、そんな余裕にかまけた二人に予想だにもしない出来事が起きたのだ。
『おお、きたきたきた‼』
「「は?」」
二人が慌てて画面を見るとそこに映っていたのは土埃に包まれながらもすさまじい勢いでコースを走るアヒルの映像。
『まさかまさかのアヒル号だあああ‼』
**********
響side
「よし!追いついた!」
「馬鹿な!?」
私とドラえもんの二人はものすごい勢いでペダルをこぎ続け、ついに前方にいたベンガルさんに追いついたのだ。
キャロルちゃんが私の足を直してくれたおかげだ。
ありがとうキャロルちゃん。
これで私はまだ戦える。
「や、やあ君たち、あそこから脱出するなんてすごいね。」
すると突然ベンガルさんは人のよさそうな笑顔で私たちに話しかけてきた。
「お兄さんと取引しよう、後で好きなものなんでも挙げるからお兄さんに勝たせてくれないかな?」
「お断りします!」
「あっかんべー!」
そんな取引飲めるわけがない。デポンさんを陥れようとして、弓美ちゃんや切歌ちゃんの信頼を踏み握ったこの人を、許すわけにはも、ましてや勝たせるわけにもいかない。
それがベンガルさんの気に障ったようだ。
額に青筋を立ててかなり怒っている。
「こ…の…、庶民のお子様風情が‼」
「えっ…てうわああああああ!?」
するとベンガルさんは私たちに向かって車を激突させる。あまりの速さにアヒル号はスピンして後ろにまで吹き飛ばされてしまう。
何のこれしき…、と思ったらベンガルさんは何やら画面に向かって叫んでいる。
あれはいったい…。
「パージだ!!!」
すると次の瞬間、私たちのは知っていた地球の軌道上に浮かぶホースのような道がバラバラに崩れ落ちる。
道が崩れればそこにあるのは当然宇宙空間、私たちはなすすべもなく宇宙に放り出されてしまう。
「「うわあああああああああ!」」
くっ、まずい。
宇宙空間じゃあ身動きが、というか普通此処までする?
さっき弓美ちゃんたちに貸してもらったテキオー灯を浴びていなかったらそれだけで死んじゃうよ。
「あ、ドラえもん!」
まずい、さっきの激突でシートベルトがちぎれってしまったらしく、ドラえもんがアヒル号の車体から落ちそうになる。
慌ててドラえもんの手をつかむと、ドラえもんの青い頭と青い地球が重なった。
「地球だ。青くて、丸くて、ドラえもんみたい。」
帰ってきたんだ。ここまでくれば、ゴールまであと少し。
ならばあきらめてなるものか。
ドラえもんが笑顔でアヒル号に乗り込み、私に告げる。
「行こう、響ちゃん。」
「うん!」
でもそのためにはコースに戻らないと、この無重力下でコースに戻るにはどうすれば…。
すると突然私たちのアヒル号に通信が入ってきた。
『無事かおめえら。』
「ゴンスケさん!」
通信を入れてきたのは私たちにこのアヒル号を託してくれたゴンスケさんだった。
そうか、ショートしちゃった通信機能がさっきの激突のショックで復活したのかも…。
『おめえら、必殺ろくろ首を使うだよ!』
さっきの首が伸びる機能…、そうか!
アレを使えば元の道に戻れる!
私たちはアヒル号のろくろ首機能を使ってコースへと舞い戻った。びよーんと伸びるアヒル号の首がコースの端を咥え、元に戻る反動を利用して元の道に戻ったのだ。
『アヒル号、地球へ帰還しまーす!』
「「うおおおおおおおお!!」」
全速前進!最短で最速でまっすぐに一直線に!
私たちは力の限りペダルをこぎ、ついにベンガルさんの車へと並んだ。
『二台並びました。ついにラストラン!!』
ベンガルさんも負けるものかと何やらジェット機みたいな噴射で引きはがそうとするけど、こっちだって負けな…ってうわあ!?
『こ、これはどうしたことだ?花火がアヒル号のみをめがけて落っこちてくる!?』
司会さんの言うとおり、突如として花火が私たちめがけて振ってきたのだ。
なにこれ…。
私たちは花火をよけながらペダルをこぎ続ける。
すると花火がやむと同時にベンガルさんの表情が変わる。
「カレン──────────‼‼」
か、かれん!?それってあの時私たちを招待した?
そう思うもつかの間、ベンガルさんは先ほどの錬金術を使う四匹の虫たちを出してきた。
ベンガルさん本人も私たちに錬金術の攻撃を仕掛けてくる。
『べ、ベンガル選手ご乱心!?失格になりますよ!?』
「知ったことかああ!!優勝者はいない!!全員失格だああああ!!」
その形相からは何処か悲壮感が漂っている。
…もしかしたら、ベンガルさんにも何かかなえたい願いがあったのかもしれない。だからこんな凶行に。
……だとしても、私はあなたに勝って見せる!私たちを信じてくれた皆のためにも。
「行くよドラえもん。」
「うん。デポンのためにも。」
「みんなのためにも!」
「「絶対に勝あつ!!!」」
そして歌う。胸の歌を。
今の私の、皆の思いの、全身全霊を込めて…。
「
瞬間、ガングニールの光が
私のギアはいつものギアとはまるで違う、何処かレーサーを思わせる装飾を持ち、顔にはバイザーのついた“レーサー型ギア”に、そのエネルギーは私だけでなくドラえもんにも、そしてアヒル号にも影響を及ぼした。
ドラえもんはレーサーのような服装となり、アヒル号は私が設計したものと似た車へと変形した。
違うのは色が白基調であり、ところどころに青とオレンジの装飾が施されている点である。
その両翼に備わったジェットのような機構からは美しい青とオレンジのエネルギーが噴射されている。
「なあ!?」
『なんとお!?アヒル号が美しい白鳥…いや、不死鳥へと進化したあああああ!!』
「こけおどしだああ!!」
驚愕の表情から動揺を隠す様にベンガルさんの攻撃はさらに激しいものとなる。
でも、進化したアヒル号にそんなもの効くはずがない。
アヒル号の翼は回転し、そのジェット噴射機構からなるエネルギーの放出でベンガルさんと虫たちの錬金術を打ち消した。
「馬鹿な!?」
「これはみんなの思いが紡いだギア、紡いだ車。こんなものじゃやられはしない!!」
「ふざけるなあ!貴様らの思いなぞ、この私が踏みつぶしてくれるわ!!」
そういうとベンガルさんはUターンし、虫たちを車と合体させ、逆走…。
このまま突っ込むつもりだ。
虫たちのエネルギーとベンガルさんの錬金術のエネルギーが混ざり合い、途方もない勢いとなっている。
でも負けない。
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」
ドンと大きな音とともに、二台の車がぶつかったことによる衝撃が鳴り響いた。
そのぶつかり合いはベンガルさんに分があるらしく、徐々に押され始めている。
「フハハハハハ!いくら外見を取り繕ったところで所詮は自転車、馬力が違うんだよ!!」
くっ、まずい、押される。
このままじゃあ…。
そんな考えが頭によぎった矢先、私たちの耳に聞き覚えのある声が聞こえた。
これは…。
「お兄ちゃん、響さん!」
「ここが正念場だ!ぶっこめ!」
「そのまま突っ切るのよ!」
「がんばってください。響さん。ドラえもんさん。」
「二人とも、頑張ってください!」
「ドラえもんズの意地と…!」
「ネコ型の意地を見せてやれ!」
「響──!!ドラえもん──!!」
ドラミちゃん、クリスちゃん、マリアさん、セレナちゃん、エルフナインちゃん、キッドさん、パワえもんさん、未来…。
そうだ、レーサーだけじゃない、こんなにもたくさんの思いが私たちを支えてくれているんだ。
「フハハハハハ!ぶっ壊れちまえ!」
させない。この人の思い通りには…。
「「負けるものかあああ!!」」
私とドラえもんはペダルをこぐ力をさらに加速する。
すると、両翼のジェット噴射もそれの呼応し、より強くなっていった。
「ば、馬鹿な、自転車が車に勝るハズなど、ありえるはずがないんだ!!」
「「だとしてもおおおおおお!!」」
たとえ自転車だろうと車だろうと、皆の思いのこもったアヒル号、負けてしまう道理はない!
エネルギーが最高潮にまで高まり、ついに不死鳥となったアヒル号はベンガルさんの車を吹き飛ばした。
「や、やめろおおおおお!?」
「「「「「「「「「「いっけええええええええええええええ!!!!!!」」」」」」」」」」
皆の叫びと私たちの叫びがシンクロする。
そしてついに私たちはゴールテープを突っ切った。
『ゴ──────────────────ル!!!優勝は立花響&ドラえもんのコンビだああああ!!』
ギアを解除すると同時にアヒル号とドラえもんも元の姿へと戻っていく。
そして私たちに対し、紙吹雪とともに花火が舞い上がる。勝ったんだ、私。
私は思わずドラえもんと顔を見合わせる。ドラえもんもまた感動で目に涙を握間せている。
「「やったあああ!!」」
これでドラえもんに耳をプレゼントできる。
**********
「やったべ~、優勝したのは、ゴンスケ自転車店の車だべ!」
『いや~素晴らし走りでした。さすがは世界を救った装者たちですね。』
「ありがとうございます。」
レースで優勝した私たちは表彰台の上でそれぞれ記念のトロフィーを手渡された。
下にはレースに参加したみんなが拍手で私たちを出迎えている。
あれからベンガルさんとカレンさんは逮捕され、警察に連れていかれた。
実はあの宇宙ステーションでの爆発やさっきの落っこちてきた花火なんかはカレンさんの仕業だったみたい。
でも、それがばれてお父さんからすごく怒られたみたいだ。
その理由が結婚のためだとは思わなかったけど…。まあ、連行される時二人とも幸せそうだったし、あれはあれでよかったのかな?
『では、チャンピオンに伺いましょう。お望みのものは?』
「え、え~と…。」
ドラえもんの耳。
そう一言いえばいいはずなんだけど、会場中の皆が注目しているから緊張してのどから言葉が上手く出ない。
翼さんたちはよくこんな視線を受けて歌えるなと思わず尊敬の念を強めてしまう。
ふとドラえもんを見ると、視線が合った。そして満面の笑みを浮かべる。
すると、ドラえもんが笑顔で私と司会さんの間に割り込んできた。
『この会場の人たちみんなに、どら焼きたくさん食べ放題です。』
「ど、ドラえもん?」
ドラえもんの言葉に会場中が静寂に包まれる。
するとデポンさんがクックッと笑い出し、大きな拍手でドラえもんの言葉を迎え入れた。
「アッハッハ、いいぞネコ型!」
それを皮切りに周りからも大きな拍手と歓声が降り注ぐ。
それと同時に一人では食べきれないほどのどら焼きも…。
『さあ、レッツどら焼きパーティーだ。』
「何考えてるだおめえ…。」
ゴンスケさんがあきれたようにドラえもんを見る。
でも、彼もなんやかんやで振ってきたどら焼きを食べているようだ。
「よかったの?ドラえもん?」
「うん。僕はこの優勝で満足さ。」
そうウインクしながら答え、彼もどら焼きを食べに表彰台を降りる。
回りを見渡してみるとどら焼きにケチャップとマスタードをかけるキッドさんとそれを見てあきれるドラミちゃん。
文句をいいながらも一緒にどら焼きを食べるキャロルちゃんとエルフナインちゃん。
何やら話し合いをしてるパワえもんさんとシロえもんさん。
会場にいるみんなが幸せそうだ。
「響ー!」
「何してんだ?一緒に食べるぞ!」
皆の呼ぶ声が聞こえる。
まあ、ほかならぬドラえもんが決めたことだ。私が何か言うのも違うか。
「よーし、私も食べるぞー。いただきまーす。」
そう言って私もまたどら焼きにがっつく。
こうしてこの
お誕生日おめでとう。ドラえもん。
後日、ドラえもんのもとにはとあるレーサーから謝罪の手紙と誕生日プレゼントの猫耳をもらったとさ…。
遂に完結しました。
本当に長かった。
これをもって銀河グランプリ編は完結とさせていただきます。
なお、これから短編とともに、二つの長編の案を考えているのですが、一つは
響の恐竜
これは響がシンフォギア装者になる前の物語なので出てくるのは未来と三人娘のみになります。
もう一つが響とひみつ道具博物館
こちらは装者たちも一部錬金術師たちも活躍する章となります。
まだどちらも少しも描きあがっていないので、どっちにしろ、投稿はおそらく数か月後、早くても1~2か月はかかると思いますが皆さんはどちらがいいですか?