ドラえもんside
「フンフンフ~ン♪」
「楽しそうだね、ドラえもん」
もうすぐ奏さんの誕生日。というわけで今日はプレゼントを買いに響ちゃんとショッピングモールに来ていた。誕生日プレゼントも買ったし、パーティーの準備もできている。奏さん喜んでくれるといいな……。
……おや? あそこにいるのは……?
「翼さーん。何してるんですか?」
「立花、それにドラえもんも……」
やっぱり翼さんだ。帽子を被って多少は変装してるつもりだろうけどバレバレである。
なにやらベンチで本とにらめっこしている。
何々? 「友達への誕生日プレゼント」だって?
「ああ、実は恥ずかしい話まだ奏になにを送るのか決まっていないんだ」
「ええ!? そうなんですか?」
これは少し意外だな……。てっきりもう決めてるのかと思ってたけど……。
「……でも、奏さんは翼ちゃんが渡すものならなんでも喜ぶと思うよ」
「ああ、実際奏は何を渡しても喜んでくれる。だからこそ、何を渡せばいいのか逆にわからなくなってしまってな……」
ああ、なるほど。奏さんは自分の片翼とも言うべき翼ちゃんのことを本当に大事に思っている。そんな奏さんにとっては翼ちゃんからのプレゼントは皆等しく価値のあるものに違いない。
でも、何を渡しても喜んでくれるということは、逆に何を渡しちゃダメなのかもわからないということだ。
それで翼ちゃんは悩んでいるのか……。
「候補とかはあるんですか?」
「ああ、最近大人気だという菓子なんかはどうだろうと思っている。だが、他にも服だったり本だったり色々あって正直決めあぐねているんだ」
ふむ……。でも、そんなに難しく考える必要はないと思うな。
「こういうのは気持ちが大切だと思うよ」
「気持ち?」
「僕が今まで貰ったプレゼントで一番嬉しかったのはこの時代に来てから初めての誕生日パーティーで響ちゃんがどら焼きをわざわざ手作りで作ってくれたとき。
慣れない料理で傷だらけになりながらも作ってくれたどら焼きが僕の人生で一番美味しいどら焼きだったんだ」
「い、いやぁ~。お恥ずかしい」
響ちゃんは恥ずかしいのか少し照れてるけどこれは事実だ。
あの時食べたどら焼きの味は今でも鮮明に思い出せる。
それはきっと響ちゃんの気持ちがたっぷりたこもったどら焼きだったからなんだ。
「だから、翼ちゃんもそんな難しく考えずに気持ちのこもったプレゼントを渡せばいいと思うよ」
「大事なのは気持ち……か。ありがとう。感謝するぞドラえもん」
どうやら吹っ切れたのか、翼ちゃんは立ち上がって何処かへ行ってしまった。
一体翼ちゃんはどんなプレゼントを渡すのか少し気になるな……。
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「「「「奏さん。お誕生日おめでとう!!!」」」」
「ああ。ありがとな皆」
パーティー当日、僕たちはたくさんの料理とともに奏さんの誕生日を祝った。
途中響ちゃんが切り分けた奏さんの誕生日ケーキを何故か二つ食べるというハプニングがあったものの、皆楽しみながらパーティーを行った。
「ふうー、食べた食べた。皆に祝って貰うとやっぱり嬉しいな……」
ビンゴゲーム等の余興を楽しみながらそう言う奏さん。
喜んで貰えたようで何よりだ。
「あ、あの。奏、いい?」
「ん? どうした? 翼?」
するとなんだか翼ちゃんが恥ずかしそうにしながら奏さんに話しかける。その手にはなんだか可愛らしい柄の小さな袋が握ってあった。
「お、緒川さんに教えてもらって……。少し不格好になったけど……」
翼ちゃんはそう言いながら袋を奏さんに渡す。奏さんが袋を開けてみると、そこには可愛らしいクッキーがあった。しかも、その形は……。
「ひょっとして……、これ私か?」
「う、うん。上手くできなかったんだけど、それでも!
気持ちを込めて作ったよ!! だ、だから……、その……」
たまに翼ちゃんは奏さんと話す際、少し喋り方が乙女みたいになるときがある。
一期でもそうだった気がするし(あまり覚えてないけど……)奏さんの前だと素が出せるのかもしれないな……。
そんなことを思いながら僕は二人を見つめる。
少し、間が空いたが奏さんは躊躇なくクッキーを頬張る。
「ど、どう?」
バリバリゴクン
「めっちゃクチャ旨いよ。多分今まで食ったクッキーの中で一番」
「本当!?」
奏さんのその言葉に嬉しそうに微笑む翼ちゃん。
それを見ながら奏さんは残りのクッキーも全部平らげた。
「あー、美味しかった。ありがとな翼。また作ってくれてもいいんだぜ」
「うん。また、作るよ」
「ハハ、ありがとな翼」
こうして二人が仲良くする光景を見るとあの時、響ちゃんを助けに行ったこと、奏さんの絶唱前に間に合ったことは間違いじゃなかったんだと肯定された気になる。
本来奏さんが生き残ることは原作ブレイクにもなるということ。
助けたあとになって本当にこれでよかったのかと悩んだこともあったっけ……。
でも……。
あの時、助けることができなかったらこうして誕生日を祝うこともなかった。奏さんと何度も助け合い、友情を育むこともなかった。
ifの話をしても仕方ない。
今、僕たちがいるこの世界こそが、僕にとっての現実なんだから。
だから今はただ祝おう。この人が生まれてきた日をむかえることができたことを……。
「ハッピーバースデー奏さん」
僕は二人を見ながらもう一度そう呟いた。