僕のヒーローアカデミア【HERO’s NOVA】 作:瑠璃。
ヒーローはカッコイイ。だが自分がヒーローになる姿は想像できなかった。
銘苅 要、志望校はあの雄英高校。国立、それもヒーロー科となればたった
四十しかない席をその十倍はいても可笑しくない状態で争う。
彼女は両親の反対を押し切って入学を目指す。両親も彼女の個性にヒーローとしての
未来を見出せていなかった。
「要」
彼女を呼んだのはその高校に推薦入学する双子だった。紅白の髪。名字を聞けば、
顔を見れ大抵誰の子どもか分かる。
「燈夜君、雪兎君」
轟 燈夜、轟 雪兎。二人の未来は決まっているようなものだ。周りは皆、彼らを
ヒーローの卵だと囃し立てる。そう、彼の両親は雄英高校を卒業したヒーローだ。
二人も同じ道を歩もうとしている。彼らなら簡単に乗り越えるかもしれない。
輝かしい個性を持っているのだから。
「約束だ。一緒に同じ高校に行こうぜ」
燈夜の名前には深い意味がある。なんでも父親の兄で、双子たちにとっては
伯父となる人の名前を少し弄ったもの。それは兎も角、双子は性格が少し異なる。
誰にでも馴れ馴れしく付き合っていく能動的な兄の燈夜と受動的な弟の雪兎。
燈夜は要の肩に腕を回した。
「興味があるなら、一回挑戦してみようや。俺たちは推薦入学を目指すから
同じ試験は受けられねえけど」
受けるだけ、受けてみるか…。
高校の偏差値を超えるだけの成績は持っている。早速、彼女は雄英高校の
入試に向けて準備を開始した。誰もが入りたいと願う雄英高校ヒーロー科。
多くのプロヒーローたちがこの学校を卒業しているのだ。ヒーロー科のある学校は
他にもあるのだが。
気付けば入試当日。入試には実技試験がある。ヒーロー科ならば当然だ。
そこでは個性を使っての試験。敵として人では無くロボットが受験者たちの前に
立ちはだかる。それを倒す。ただそれ以外に得点を稼ぐ方法がある。ヒーローたる
者、力だけでなく気遣いも出来るべし。受験者側には提示されないレスキュー
ポイントがある。
そして学校側。受験者の履歴書に目を通し、他と思想が異なる受験者を発見した。
「へぇ、他とは違う考えの持ち主だな」
雄英高校教師、その中でも最年少のプロヒーロー。名前を菖蒲 大哉、
個性:衝撃波。能動的なヒーローでは無く、受動的なヒーロー像を持つ学生に
興味を抱いた。試験が始まり、モニターにそれぞれ受験者たちの様子が
映し出される。
「あら、この子たちは…」
他の受験者と違って数人で固まる受験者がいる。うち一名は大哉の目に留まった
生徒、銘苅 要。
試験会場内、一度彼女たちは身を潜めて作戦を立てるつもりらしい。要の手を握り
ブンブンと振る桃色髪の少女、恋塚
偶然にも馬が合って行動を共にしている初対面の相手。他にももう一人。
名前を
三人で固まっている受験者たちをモニター越しに多くの教師が観察している。
それぞれ出身中学も経歴も異なる中、彼女たちは互いに協力しようと考えている。
これもまた評価に値する。
「三人の中で指揮を執っているのは銘苅 要だな。何か動きがあるみたいだ」
物陰に身を潜めていた三人。要は協力してポイントを稼ぐ計画を提示した。
「節夜ちゃん、地面を腐敗できそう?正確には発酵かもしれないけど…」
「時間が掛かっちゃうけど…」
「大丈夫、場所は限定するから。充香ちゃんには幻を作って欲しい」
「良いよ、任せて!あ、でもでもロボットに通用するかどうかは分からないわ!」
「大丈夫。私も不安だし。何も単体で敵を倒すことだけがヒーローに求められる事
じゃないし」
三人は遠くで猛威を振るっているロボたちを見据える。
物陰から出たのは要。彼女がロボを誘い込む役割を担っている。体から鎖を放出
出来る個性。ただ個性についてまだまだ謎が多い。
鎖を使い、建物の間を縫うように動き、ロボの前に姿を見せた。
「さぁ、こっちへ来なさい!」
それぞれの個性は決して華やかで、それでいて攻撃力が高いわけでは無いが
個性は使いようで強さが変わる。評価すべきは初対面でありながら正確に他者の
個性を理解し、そして協力できる臨機応変な対応。
「出来たぁ!」
節夜が要に叫ぶ。その泥沼は充香の個性によって巧妙に隠されている。要は位置を
完全に把握している。気付けば教師陣は釘付けになっていた。ロボの攻撃を躱し、
一人が体を張って相手を誘導。彼女の進んだルートを改めて確認すると目的地まで
遠回りしていたらしく、恐らく泥沼作成の時間を稼いでいたのだろう。
目的の泥沼に到達した要は華麗に着地。敵を追いかけるロボの攻撃から全員で
鎖を利用して避ける。ロボは幻で隠された泥沼に気付かず、半身が地面に埋まって
いく。徐々に全身が埋まる。その姿をバックに三人は試験中でありながらも一つの
試練を突破したかのような雰囲気に包まれていた。同じような方法で救助等も
行い続け、試験は終了。
校門前。
「一緒に通えると良いね」
「そうよね。私たち、意外と息が合ってた」
三人はそれぞれ家路につく。彼女たちが一番注目を浴びており、既に入学が
確定していることはまだ分かっていない。だがすぐに分かる。
家に帰った要はあっという間に眠りに就いた。
「頑張ったんだね、要」
彼女がヒーローになれるかどうか分からないが、彼女は入試を受けた。受かれば
全力で応援するつもりだ。結果が出る当日。緊張しているが、比較的彼女は普段通り
振る舞っていた。