たとえ、この命に代えても   作:刹那木ヤクモ

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UA一万、有難うございます
今後の更新頻度は受験のこともあり著しく落ちると思いますがご了承ください


投影、始動

セシリア・オルコットとの戦闘を終え、機体の微調整も終えた僕は、親友との模擬戦直前という時間に控え室から出ていた。トイレ休憩をしようとしていた筈なのだが、いつの間にか脱走していた。逃亡、と言った方が正しいだろうか。背後に迫る僕と同じ()()()()()I()S()を未展開の黒鎧のハイパーセンサーで捉えつつ、IS展開のタイミングを伺う。僕の技術ではIS展開の際は足が止まるので、展開直後を狙撃されて終わりだ。

しかし、更識さんや織斑先生などの加勢が来ないのは何故だろうか。こちらが何度も通信を入れているのに繋がらないということは、高度な通信妨害やそれを上回るトラブルか、またはその両方か。

敵機の指先から放たれたレーザーを拡張領域から取り出した剣を盾にするが、剣はレーザーを防ぎきれず貫かれ右腕を掠める。掠めただけでも皮膚が焼け爛れ悲鳴が漏れそうになるが、幸い高熱で焼かれたお陰で血を失って死ぬことはなさそうだ。右腕が持っていかれなかっただけ良いだろう。

 

痛みを堪えながら剣を敵機の頭上、そしてそこから予想される回避ルート上に展開。時間稼ぎ程度になれば良いと思いつつ落下させる。それと同時にISを展開。右腕で降り注ぐ剣を受けている敵機に、拳で追加の剣を射出する。が、装甲で全て受けられている。

 

即座に接近、二刀で切り付けるものの、効果は見えない。

 

バックステップし、大剣を展開。伏せ札には対応していないが少なくともダメージは負わせられる筈──と、振りかぶった直後、指先のレーザーソードにより半ばから切断される。

 

リリースし、槍を展開。間合い管理をしてレーザーソードの範囲外から攻撃を仕掛ける。繰り出してくる腕を弾きつつ、頭部に向けて刺突を繰り出すが、カキン、という情けない音を立てるだけで傷一つつかない。

 

相手の拡張領域に伏せられているものも解らず、相手の武装で判明しているのもレーザーのみ。

──軽い剣では伏せを暴けない、か──

では、こちらも相応の剣で応戦しよう。

 

「《処刑(エクスキューショナー)》ッ!」

 

剣が泥のように溶け、全ての剣だったものが別の形に変化する。変化先はエクスキューショナーズソード。

本来、戦闘用の剣ではないエクスキューショナーズソードだが、刺突が出来ないというデメリットを除けば、中世ヨーロッパで最も素早く処刑が出来た剣だ。それ相応の重さはある。本来の使い方がこうでなくても、僕の持っているデータの中で最も重い剣がこれだったので仕方がないと割り切ろう。

 

射出済みの剣が《処刑》に変化したものを拡張領域に回収しつつ、手元に《処刑》を一振り展開する。これのデメリットとして、通常の《長剣(ロングソード)》より大きく、重いため本数が減るというものがある。しかし、重くて射出出来ないため上空から剣を落とす時以外は使用しないが弊害はあまりない。

 

右手は痛みであまり大きく動かしたくないため、なにも考えずに振ることは出来ない。ならば、瞬時加速から上段からの振り下ろし。これが今出せる最大火力。コンテンダーというカードを切ることも出来るが、右手は負傷済みで反動に耐えられない可能性もある。左手は未だ通常での命中率が中距離では良くない。近距離でクイックドロウするよりは《処刑》の方がその後の読み合いもしやすいだろう。

だが、問題は相手の『待ち』がないこと。右手を負傷させたからと言って攻めすぎではないだろうか。読み合いが出来ないというよりは…()()()()()()()()()()()()、のか──?

 

最適解を出されるのが早すぎる。初見ではないと言うのか?いや、それはあり得ない。僕の戦い方はアリーナが初お披露目だから見ている筈がない。コイツがIS学園関係者であれば話は別だが、ならば今狙う必要はない。

 

思考しながらの戦闘は致命傷を負いやすい。一度眼前の敵機に集中する。

 

──さて、仕掛け時と見たが如何に──

 

瞬時加速で距離を詰め肘に搭載されたスラスターでも瞬時加速。零距離で渾身の一撃を放──

 

「…ッ!」

 

ダメだ、避けれない。そうだ、伏せ札を警戒しておかなければ──

 

閃光。敵機の展開したビット兵器に四方八方から貫かれる。装甲及びシールドエネルギーという概念をぶち壊すかのように、簡単に絶対防御が発動する。

 

剣をリリース、瞬時加速した勢いのままに敵機の後方に回りを右手にコンテンダーを展開し反撃を試みる──ものの、レーザーに無慈悲にも貫かれる。

 

剣を落としても敵機に当たるどころかビット兵器を打ち落とすことも出来ない。遮蔽にしようにもレーザーの前には無力。

 

装甲には穴が空き、エネルギーも僅か。伏せ札も粗方切った。対して敵機はほぼ無傷。伏せ札もビットしか割れていない。

 

ここから導かれる結論は──《詰み》だ。

 

申し訳ないが初見殺しが通用しないのであれば勝ちの目はない。

──本当か?

ここから勝てるビジョンが浮かばない。

──本当か?

ここは逃げれないとは思うがせめて学園側に逃げて増援を求めるべきだろう。

──本当か?

 

ああ、本当さ。けれど、それでも僕は──

 

「戦うさ。お前程度越えれなくちゃ、僕はこの先なにも出来ない。」

 

深く息を吸い込み、『覚悟』を決める。

 

これを使えば少なくない代償があるだろう。肉体的にも、精神的にも、社会的にも。けれど、どうしようもないのであれば切るしかない。

 

「──ヴァルキリートレースシステム、スタンバイ。」

 

剣だけでなく機体すら泥へ変える。己に投影するのは僕にとっての"最強"。一度だけ見た彼女の全力。

 

少しの間、お借りします──

 

「トレース──霧纏の淑女(ミステリアス・レイディ)

 

僕の拙い技術を彼女のものまで無理矢理昇華させる。技法も、戦術も、なにもかも。

 

《アクアクリスタル》を全力稼働させることにより展開されたナノマシンでレーザーの威力を減衰させる。無効化とまでは行かないが、かなり抑えられている。これさえあればビットを気にせず接近することも可能だろう。

 

《蒼流旋》を展開し、瞬時加速。敵機を切り付ける──が、当然のように無傷。一度距離を取り、ビットから飛んでくるレーザーをナノマシンで防御。蒼流旋に内蔵された4基のガトリングで牽制射撃。

蒼流旋を格納、腕を展開した《ラスティー・ネイル》で弾きつつ、ナノマシンを散布し続けるためにラスティー・ネイルで距離を取りながら腕を弾き続ける。私の狙っている手は本来密室──アリーナなどで使用することを前提としているが、屋外でも出来ないことはない。

 

「《熱き情熱(クリア・パッション)》」

 

敵機の回りにも展開されていたナノマシンを熱に変え、爆発させる。極力周辺被害を抑えられるようにしたが、爆発である以上若干の被害は避けられない。と言うか、この爆発で誰か気付いて増援に来てくれないだろうか。

 

初めて敵機に損害を確認。ナノマシンであれば通用するようだ。そうと決まれば作戦変更。ナノマシンを用いて早期決着を図る。

 

ナノマシンを再度散布しつつ、《個別連続瞬時加速(リボルバーイグニッション)》と呼ばれる技術で瞬時加速で敵機の眼前に迫り、直後にもう一度真横に瞬時加速。一度横一文字に凪払い、再度瞬時加速し裏へ回り蒼流旋で刺突。そのままもう一度瞬時加速し押し込む。少し突き刺さった程度だが、何ら問題はない。

 

「《ミストルティンの槍》」

 

通常時は、防御用に装甲表面を覆っているナノマシンを一点に集中させ、超振動破砕によって敵装甲を破壊し、ナノマシンを内部に侵入させエネルギーを転換して一斉に大爆発を起こす。要は、敵機の内部で《熱き情熱(クリア・パッション)》を発動するというだけのこと。

 

爆発、絶対防御が発動し対象のエネルギーを大きく削る。戦闘続行不可と判断したのか、撤退する。正直追って元凶を叩きたいところだが、私ももう限界だ。

 

ヴァルキリートレースシステムを停止、機体を元の状態に戻す。学園側で何があったのかは解らないが、恐らくあちらもアクシデントがあったのだろう。

 

僕が行っても足手まといになるだけだろうが、一先ず合流しようと、学園に向かって走り出した。

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