焼かれた腕を押さえながら走る。
かすかに聞こえる銃撃音とハイパーセンサーに映る4機ものISは、どこかで戦闘していることを示していた。
正直、VTによる負荷で身体も、機体も使い物にならない。高速戦闘には着いていけなさそうだ。
アリーナ前まで走ると、焼き焦げた痕、無惨にも割られたバリアなどと、散々な有り様だった。
そしてアリーナでは、僕が接敵した物とは違うIS3機と、日本製第二世代IS、打鉄を纏った織斑先生が交戦していた。
立ち回りを見ても、剣筋を見ても明らかに織斑先生の方が有利なのだが──というかIS3機相手になんで優位に立ってんだこの化物──何故ここまで長引いているのだろうか。それと、一夏や更識さん達はどう動いているのだろうか?
等と考えて、気付く。先ほどまではハイパーセンサーに写ってなかったが、新たに3機のISが写っていることを確認する。恐らく一夏と更識さんだろうか。
襲撃者はISを5機も駆り出した、つまり大規模団体としか考えられない。テロ組織なのか、女尊男卑団体なのか。又は別のなにかなのか。
「黒鎧、行くよ。」
考えても仕方がないと、ISを展開する。
スラスターを吹かせながらコンテンダーをドロウし、先ずは一発 。僕が相対したやつと同程度の装甲なのか検証がてら撃ち込んだが、結果は奴よりは柔らかい。しかし、コンテンダーは致命打にはなり得ないことも分かった。少なくとも並みのISならシールドエネルギーの殆どを持ってく規格外なんだが。
「伊崎!?」
「遅れました。加勢します。」
コンテンダーをリロードしながら《処刑》を上空に展開。落とす。
敵機から飛んでくるのは例のレーザー。咄嗟に部分的にVTシステムを起動。ユニットの一部を《霧纏の淑女》に変更し、ナノマシンを用いた水のヴェールでレーザーを減衰させる。
「──伊崎、それは──」
「分かってます。後で、ちゃんと処罰して貰いますよ。」
「…そうか。」
僕がVTを使っていることなんて織斑先生なら絶対に分かる。けれど、そうしないと僕が死ぬことも分かっている。
「武器、大丈夫ですか?それで決め手が無いように見えましたが。」
「ほう、良い目をしている。私がもっと巧ければ押しきれたのだろうがな。貸して貰えるならば、一番良いものを頼もうか。」
「ええ、僕のものではない上槍ですが。」
織斑先生に蒼流旋を預け、僕もラスティー・ネイルを展開。コイツであれば中距離からのパリィがしやすい。コンテンダーで貫けるのだから蒼流旋もダメージを負わせられる筈──むしろ僕のその他の手札が弱すぎる、装甲自体に
後は最強こと織斑先生に暴れて貰えば良い。僕の仕事は後方支援だ。
「ふっ!」
織斑先生が連続瞬時加速で距離を詰め、先ずは一撃。敵機が堅すぎるため然程威力はないように見えるが、恐らくあれをもろに食らえば僕のISの半分が消し飛ぶレベルだと思う。そしてそれを躊躇なく叩き込むあの人も大概ヤバい。
ナノマシンを散布しつつラスティー・ネイルで織斑先生に向かう攻撃を粗方弾く。申し訳ないがこちらに来られると僕が死ぬので織斑先生だけを狙っていてほしい。本当に。
「すまない伊崎!1機逃した!」
が、こちらに来る。一人で3機捌き続けるのは如何に最強と言えど厳しかったようだ。あれおかしいな僕専用機であの人量産機なのになんで僕の方が負担少ないんだ?
と、現実から目を背けるのもここまでにし、右手にコンテンダーをドロウ。瞬時加速ですれ違いながら叩き込む。直後にあらかじめ散布しておいたナノマシンで《熱き情熱》を起動。どれだけダメージを与えたかは解らないが、一度離脱。織斑先生の方に迫るビットをラスティー・ネイルで叩き落とす。
コンテンダーを格納し大剣を展開。地面に突き刺し盾のように扱いつつ、パンツァーファウストと呼ばれるものと似たハンドミサイルを展開。一応射撃武装を搭載しておこうと言うことで持っておいたものだ。
ビットはラスティー・ネイルで粗方粉砕した。全機に標準搭載されているとなかなか厳しかったかもしれないが、そんな事はなくて安心した。
「伊崎。」
「ええ、決めましょう。」
瞬時加速でお互いに駆け出す。ハンドミサイルを直撃させ、ラスティー・ネイルにナノマシンを収束。硬直したところへ剣を突き立てる。
「《ミストルティンの槍》。」
槍ではなく剣と言う点はご愛嬌と言ったところ。突き立てた剣からナノマシンが流れ込み、爆発。先ずは一機、致命打だろうからすぐさま織斑先生の方へ──
「遅かったな伊崎。」
いや、貴女が早すぎるんですよ。と言う言葉を飲み込み、振り返る。
直後、
「伊崎、翔べ!」
ほぼ脊髄反射で、瞬時加速を起動。上へ、割れたアリーナのバリアに向けて翔ぶ。
下から爆風に煽られバランスを崩す。
──自爆!?
PICで姿勢を整えようとするものの、機体がエラーを吐きそのまま落下する。
斜面を少し転がり、止まる。良く見ればシールドエネルギーが3%を切っている。織斑先生の警告がなければどうなっていたやら。
立ち上がり、ハイパーセンサーを確認。映る機影が一機のみ──織斑先生だけになっていたことを見て、取り敢えずは安全かとISの展開を解除。自分の身体をもう一度見る。哀しきかな、ズタボロである。
腕は焼かれ、今気付いたが腹もやられている。焼かれたとすればビットの直撃を食らい絶対防御が発動したときだが、アドレナリン等で気付いていなかったのだろうか。
──死ぬ、かも──
それを自覚した瞬間、僕は意識を手放した。