たとえ、この命に代えても   作:刹那木ヤクモ

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偽りの正義の成れの果て

プログラムの再起動、完了。

 

エラーコード267、対応完了。

 

エラーコード269、対応完了。

 

バックアップデータの読み込み、完了。

 

思考制限プログラムに『織斑一夏の護衛への疑問』を追加、更新を完了。

 

コアネットワークからの遮断を確認。

 

疑似人格を解凍します──

 

◆◆◆◆

 

目が覚める。

 

どれくらい寝ていたのかいまいち分からないが、一先ずロザリオの存在を確認し、起き上がる。何故か頭が痛いが、放っておく。

シャワーを浴び、歯を磨く──そんな当たり前の動作を済ませ、上からの連絡を待つ。

 

昨日は二人。今日は何人殺すのだろうか。まあいい、僕は彼を守れればそれで良い。何故なんて理由はいらない。そうしたいからそうするのだ。

 

──ダメだな、いまいち思考が纏まらない。自分が何を言いたいのか分からない。

 

一先ず備え付けの冷蔵庫の中を確認。適当な食材を用いて朝食を済ませるとしよう──

 

◆◆◆◆

 

「オーダーの遂行、完了した。」

 

『お疲れさま、輸送車を手配してるから帰ってきなさい。』

 

今日は5人だった。少しずつ慣れてきたため、手間取ることはなかった。僕的には刀を振り回すのが殺りやすいが、狙撃にこだわる必要はあるのだろうか。少なくとも狙撃では一撃で沈められる確率が余り高くないから慣れ親しんだ弓でも使いたいものである。上に打診したら貰えないだろうか、アーチェリーのような半機械化したものであれば射程も伸びるだろうし悪くはないと思うのだが。壁を貫けないのが難点だが、それ以外はハイスペックで纏まったものだと思う。弓は良いぞ。

 

「よお、大分良い面になったじゃねぇか。その刀はなんだ?ああ、お前さんは日本から来たんだったな。サムライの真似事か?大分ユニークなもんだ。」

 

運転手がそう交えている間にも、車は裏路地を進む。

慣れたくはなかった。けれど、慣れてしまったものは仕方がない。今後、IS無しでの身体捌きも鍛えたいものである。ワイヤーアクションとでも言うのだろうか?格好良いし、生身での機動力を確保するためにも習得しておきたい。

IS用の小振りの刀を今は振るっているが、仕込み刀の方が取り回しやすいのだろうか、であればそちらも用意しておきたい。

後は生身でコンテンダーの反動に耐えれるようになっておかねば。そうしておけば、対IS戦闘で、生身でもワンチャンを作ることが出来る。

──ああ全く、こんな考えをするときばかり頭が良く回る。

 

◆◆◆◆

 

訓練施設を借り、ワイヤーアクションを交えた立体機動の可能性を探る。我流で、粗末なものだが、6時間も続ければなんとなくの型が出来る程度にはなった。対IS戦闘を想定すると、明らかに機動力が足りないが、まあ付け焼き刃程度にはなるだろう。こちらがISを展開できれば話が早いのだが、身バレは避けたいという理由もあり、なかなか出来ないのである。いっそのこと女装でもしてやろうか?

 

「精が出るな、調子はどうだ?」

 

ふと、訓練施設の出入り口から、声が聞こえる。

 

「ええ、まあそれなりに。何の用ですか?オータム。」

 

オレンジ色の髪をした女性──僕を亡国に拉致った実行犯であるオータムが、僕を見ていた。

 

「いいや特に──という訳でもないな。昨日から晴れてお前さんもエージェント、ってわけだ。コスチュームの1つでも用意してやった方がお前の気分も上がるか?と思ってな。何かリクエストはねぇか、と聞きに来たわけだ。」

 

なるほど、コスチュームねぇ…。正直、テンションが上がらないと言えば嘘になる──人殺しの分際でそう言うことを望むのはお門違いというものなのかもしれないが。

 

「そうですね…。性別が判別できないような、そんな物が良いですかね。」

 

「なんだ?女装癖でもあんのか?」

 

「まさか、ISを展開しても男性操縦者だと露呈しないものであれば、最悪の場合でも僕だと特定されることはないでしょう?」

 

「へぇ、なかなか面白いことを考える。良いぜ、相応のやつを用意しよう。幸い、お前の顔も中性的だしな。」

 

褒められてるのか貶されてるのかイマイチ分からないことを言われたが、オータムは去っていった──今のうちに、弓とか仕込み刀とかの相談をしておけば良かった、と少し後悔したがまあ良いだろう。どうせ1日2日でポンと出てくるとは思えない、ならば多少遅くなっても問題ないだろう。どうせ慣らす時間も必要だ。

 

未だ時間は午前2時、眠くないと言えば嘘になるが、少し寝ていない方がむしろ楽だ。もう少し立体機動の練習でもしようと、目線を戻した──

 

◆◆◆◆

 

目が覚める。

 

いつの間に寝ていたのだろうか。最近やけに日の流れが速く感じる。

 

一先ずロザリオの存在を確認し、起き上がる。何故か頭が痛いが、放っておく。

シャワーを浴び、歯を磨く──そんな当たり前の動作を済ませ、上からの連絡を待つ。

 

少し慣れてきたとは言え、まだまだ甘いところがある。今日はきちんと最後まで気を抜かず、目撃者を全員殺害せねば。

 

◆◆◆◆

まさかISと接敵するとは思っていなかった。幸い、僕のISは全身装甲な上、遮蔽裏で展開したので身バレをすることはなさそうだ。その上、幸いなことに有利に戦いを進められている。

これは恐らく相性の問題だろう。相手の戦術としては高速切替(ラピッドスイッチ)と呼ばれる技術を用いて最適解を出し続けていくようなものなのだろうが、僕もそう言う機体なのだ。1手に対して有効札の有効札を打ち、その有効札をさらに…というのはなかなか新しい体験ではあったがその程度だ。

相手と僕では手札の質が違う。量産品に過ぎない相手の手札と、VTで全ての武装を専用機のワンオフ武装に変えられる僕の手札。どちらが上かは明らかだろう。

 

相手の機体はラファールの改修機だろうか?恐らく専用機だろう。なるべく息の根を止めておきたいところではあるが、先に目標をサクッと殺るだけ殺って単独で帰ったオータムが居ないので余り無理は出来ない。

 

「『ミストルティンの槍』」

 

VTでトレースした蒼流旋で、ミストルティンを放つ。敵機へのダメージを考えると、これで決めきれるかと思ったが、シールドで減衰させられる。貫通こそしたものの、致命とはいかない。

 

「くっ…けれど、まだ!」

 

敵機の左手にショットガンが展開されるが、コンテンダーをドロウ、左手ごと撃ち抜く。さて、打開札は粗方切らせたと思うがどうだろうか?

 

「手強いね…けど、僕の勝ちだ。」

 

「そうね──待たせたわね。」

 

──増援か

 

不味い、非常に不味い。流石に2対1をこなせる程僕の技量は高くない。織斑千冬の動きをトレースすれば或いは、と言う程度だ。撤退許可をさっさと出していただきたい。

 

ビル内の人間の殆どを虐殺することになるとは思ってもいなかった──僕が実際手に掛けたのは半数にも満たないが──ので、割と疲労が尋常ではないのだ。──まあ何と言うのだろうか、割と躊躇がなくなってきたなと自分でも思う。

 

『スコール、聞こえてますか。』

 

『ええ、なにかしら?』

 

ダメ元だったが繋がった。さっさと撤退させて欲しいものだがどうだろうか?

 

『現在、IS2機と交戦中。割と余裕がないのでさっさと撤退したいんですがね。目標はオータムが仕留めてますが。』

 

通信先で少し悩むような素振りを見せたスコールだが、数秒の後に

 

『流石に今貴方を失う訳にはいかないわ。いいわよ、どうにかして撒いて頂戴。』

 

またどうにかする必要があるようだ。一先ず手持ちのコンテンダーで手負いのラファールを狙う。一発放ち、直後に瞬時加速、空いている右手に《処刑》を展開。本来の用途のように、上から首筋に向けて叩き落とす。

 

「させないわ、正面から戦うのは私の役目だもの。」

 

まさしく横槍を入れられ、仕留めることは叶わなかったが、その代わりに槍を折ることには成功した。振り下ろした剣の勢いのまま、右手を中心として円の軌道を描きながら敵機の後方へと抜ける。

 

あらかじめ散布しておいたナノマシンを用いて『熱き情熱』を起動。手負いのラファールにはかなりのダメージが入る筈だ。仕留めるなら、今しかない。

 

《処刑》から形状を変更、《長剣》へと戻し両手に展開、個別瞬時加速で距離を詰め右手を突き出す。

 

「やらせるものか…ッ!」

 

折れた槍ではなくナイフで長剣を防がれる。やはり、かなり技量の高いパイロットである。

 

左手の長剣を振り上げ、ナイフを弾き、右足で手負いを蹴り飛ばす。ISの展開がまだされているということは、まだSEが残っているのだろう。一応警戒はしつつ、一先ずは目先の相手に集中する。

 

左手の長剣をコンテンダーに切り替えると同時に右手の剣をリリース、斧を展開。脇腹へ振るものの、折れた槍の柄で防がれる。思ったよりも強度があるようだ。直後、リリースしてその場で静止させていた長剣を右足で蹴り飛ばす。完璧な不意打ちだったと自負しているのだが、左手を盾にして防がれる。

──焦れったいな。

両手の武装を格納し槍斧──ハルバードを展開、VTで投射した機構を起動しながら瞬時加速で距離を詰める。

 

「消し飛べ、『零落白夜』。」

 

「──ッ!?」

 

VTの応用で武器に零落白夜を付与し、ナイフごと切り落とす。致命の一撃を加えた後、

左手に槍を展開し、投擲。

当たりはしないか、けれども時間は十分に稼いだ。オータムに渡されていたスモークを展開。そのままビルの窓を突き破り飛び降りる。

 

都市上空を一瞬飛行した後に空中再びスモークを放出、展開を解除し自由落下する。PICを用いて空中で勢いをある程度殺し、仕込んでいたワイヤーで着地する。そのまま疾走、万が一見られていないかと確認したが、ハイパーセンサーでは確認できなかった。

 

逆に、奴らが追ってくれば僕が居ることがすぐにバレる。申し訳程度にステルス機能をオンにし、なるべく人通りの多い方へ走る。あらかじめ地図を頭の中に入れておいて良かった。

 

しばらく走り、なんとか大都市へと到着する。──ああクソ、結構しんどいな。

一先ずドライバーと合流し、乗り込む。

 

「派手にやったな新入りよぉ!面白いなお前!」

 

褒められてるのか分からないが、一先ずは非常に疲れた。寝なければやっていけない。

瞼を閉じる。何故か、何者かの背中が見えた気がした。

──スリープモードへ移行します。





──とある組織のデータベースより抜粋

伊崎 鎮

単独殺害数 73
使用IS 不明機
備考
世界に2人しか居ない男性操縦者の1人。
我々から見ても明らかな異常者として認識できる。
利用価値は余り無いが、いざというときの生け贄としては最高の価値を誇ると言っても良いだろう。
VTシステムに対して高い適正を見せる。しかし、ISの詳細確認は未だ出来ていない。
厳重に注意し、時を見計らって始末する。
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