たとえ、この命に代えても   作:刹那木ヤクモ

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一刀にて証を示す

走る。また、市街地を疾走する。

休みという話は何処へ行ったのか、また殺せとの指示だ。顔さえ見られなければまあ何とかなるだろうという上からの命令により、ヘルメットをトレースしている。

今日の対象は座標のみを特定できているらしく、顔が分からない。が、かなり手強いらしい。何でも、単騎でISとやりあえるだとか。化け物ではなかろうか?知る限りでは千冬さんがそれに該当するのだが。

 

──とは言うけど、キミも大概だからな

 

ああ、そうだな。

 

──まったく、こっちも大変なんだから無理はしないで欲しいな。キミのスペアなんて、それこそ大規模な殺戮でもしないとつくれないんだからね?

 

それもそうか。けれど、それが彼にとってよい方向に傾くのなら、それで良い。そうだろう?

 

──そうだね。そこだけはボク達の共通認識だ。

 

目標まではこの曲がり角を曲がれば直ぐだ。早期決着。それ以外にあり得ないと、生身ではあるがギリ扱える範囲までどうにか慣らしたコンテンダーを万が一外した場合も考え左手にトレース。利き腕で放って負担が掛かると刀を振るのにも一苦労する、それは非常に不味い。命中精度は誤差の程度しか変わらないので左手でも問題はないだろう。飛び出し、頭部に照準を合わせ引き金を引く──ものの、一刀の下に切り捨てられる。

 

「──なるほど、誰かは知らないが嵌められたと言うわけか。」

 

そう言い、振り返ったその顔は、僕が世話になった人物。虚空から取り出した、来ているスーツに似合わぬ一振りの機械的な刀を左右に血を払うかのように振り、此方へ向ける。

 

「さあ、名乗るまでも無いだろうが礼儀としてな。

──河上 桜華、参る。」

 

僕をIS学園に入学するよう勧めたあの人物。河上さんがそこに立っていた。

 

◆◆◆◆

 

道路の真ん中で火花が散る。僕の長剣と川上さんの刀、それらが打ち合う。何合打ち合っただろうか。千冬さんの技術をトレースし、その上で極限まで相手の動きを学習しても追い付けない。それどころか、急加速しながら放たれる剣戟に僕の腕も、剣も保たない。

 

彼が避難命令でも出したのだろうか、周りに人の姿は確認できない。だとすれば不味い。増援が──特にISが来れば僕も展開せざるを得ない。

 

FNーP90をトレースし全弾をフルオートで放つが、何事もないかのように捌かれる。泥を地を這うように展開し、機動力を奪ったとしても一歩も動かず捌かれる。どんなチートだよ畜生。

 

──落ち着け、相手は人間だ。武装も確認できる範囲では刀一本。質量をぶつければ良いんじゃないかな?

 

そう言うことであればなんとかなりそうである。頭上に泥を放ち、適当な形に固定。落下させる。

 

「──随分と舐められたものだ。」

 

耳障りな金属音がなり、ハイパーセンサーを用いてギリギリ捉えられるレベルの居合いが放たれ泥へ還る。

 

──弾丸か何かを動力源としているようだ。迂闊に近づけば死ぬよ。

 

ああそうかい、とんでもないな。ならば弾幕を張ればどうだ?

 

背後にマシンガンを搭載した無数のドローンをトレースし、僕の前には大型自律砲台をざっと30台ほど作成。追加で突撃銃を持たせたアンドロイドも出現させる。制御はシステムに任せ、僕もロケットランチャーをトレースし、諸とも吹き飛ばせるような用意をする。

 

──唐突に制御をこっちにぶん投げるな!ただでさえお前の制御にリソースを割いてるんだよこっちは!

 

そいつは失礼した。けれども、これで隙はつくれるだろう?

 

──ああクソ、やればいいんだろやれば!

 

システムからの了承も得たところで、一斉に兵器が起動する。

四方八方から銃弾が放たれ、あまりの音量に耳を塞ぎたくなるが、聴覚機能を一時的に低下させ、ロケットランチャーの狙いをつけいつでも放てるよう構えておく。

 

「なかなか凄まじい真似をする。1人に対してこれまでしなくては勝てない者だとは思っても居なかった。」

 

──声は出すなよ

 

分かっている。声で特定なんて御免だ。

 

弾丸が飛び交い、数発は命中したようだが致命傷には成り得ず、銃弾は落とされ続けている。ロケットランチャーを放っても剣先で軌道を逸らされ後ろへ流される。

その上、パターンを見切ったのか切り捨て続けながらドローンを破壊し出した。理不尽なまでに強い。僕では、僕だけでは到底たどり着けない境地。けれども僕には、手数がある。

 

システム、近接型を追加しておく。打ち合いに行けばなんとか止められるだろう。

 

──はいはい。まったく人使いが荒いなぁ。

 

新たに剣を握ったアンドロイドを生成、囲んで殴ればなんとか──

 

「温い。」

 

一閃、僕の目にはそう見えた。それだけで生成した兵器の8割が切断されている。間合いがイカれている。あそこまで長ければ僕が安全圏と認識していた場所も決して安全ではない。

 

──76%が戦闘続行不可、残りは中破。無傷なのは飛行型の一部だけだ。

 

 

システムからの連絡で、実感した。対象は、イカれている。ISを使っても五分どころか、そのまま圧倒される可能性まで見えてくるほど。思考しろ。どうにかこの状況を打開するには──

 

「考え事とは、悠長なものだ。」

 

突如、目の前に迫る影。それが相手であることは言うまでもない。

 

絶対防御、頼む。

 

──やれやれ、ボクが味方していることに感謝して欲しいね。けど良いのかい?ISを所有していることが露呈するけど。

 

ここで息の根を止めれば問題はない。

 

──そうかい。

 

刀が僕の首の数センチほど前に来た瞬間、絶対防御が起動し半透明のバリアが張られる。ロケットランチャーを投げ捨て、振り上げた右手にトレースするのは斧。ここで反撃して終わりだ。刀がバリアに触れるその瞬間、僕の勝利は確定する。

 

「──?」

 

唐突に、空が見える。それに少し遅れて来るような、壮絶な痛み。

 

「さらばだ。名も知らぬ者よ。」

 

ああ、ようやく理解した。

 

 

首を切られたのか、僕は。

 

 

それを自覚した瞬間、僕の視界は闇に包まれた──。

 

 

◆◆◆◆

 

──バカだなぁ、全く。そんなやり方で勝てるわけがないじゃないか。

 

首と胴が泣き別れ、血に濡れた死体が転がる路地で、誰かが死体を嘲笑する。

 

──何が一夏を守る、だ。己の身を守れないやつがいったい誰を守れるって?

 

()()、は死体の頭を掴み、自らへと近づける。

 

──キミはそんなに愚かだったか。主が想定していたよりも遥かに早くくたばったね。元々人としての命を失っていた死体人形のキミに、想定を越える意思の力なんてものはないとボクは思ってたけどね。主はキミに何を期待していたんだか。

 

そう言って、それ──死体の胴体は、首の断面と握っていた頭を繋ぎ合わせた。

 

──君の役目はもうおしまい。全く、本当に使えないなぁ。キミは。主の想定だとキミは単独で亡国を殲滅するくらいはできる筈なんだけどね。

 

血に濡れた服を脱ぎ捨て、高校の制服へと着替えたそれは、存在を消すように透明になっていく。

 

──お疲れさま、伊崎鎮。安心してくれ、キミの意識は有効活用するからさ。まあ、それがキミにとっての幸福かどうかは知らないけどね。

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