たとえ、この命に代えても   作:刹那木ヤクモ

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intro,とある研究者の独白

とある女の話をしよう。

夢物語と嘲笑されながらも、己の欲望のためだけに突き進んだ愚者の話だ。

私から見て奴は──そうだな、狂人になったつもりの臆病者だった。どれほどイカれた、今までの私たちの研究を真っ向から握りつぶすような"あれ"を作り上げたとしても、それを認められなければ、誉められなければやっていけない、幼稚が過ぎる人間性だと言えよう。

ああ、しかし奴は天才だった。一人であの忌々しい機構を作り上げたのもそうだが、それに我々の力を投資させるカリスマ性も天才のそれだろう。主にマッドの方だが。

まあ、それに協力してしまっている以上私も同類なのだろうがな。

 

そんな精神の奴が社会でやっていけると思うか?間違いなく否だ。現に奴は──いや、語るべきではないか。

とにかく、奴のプロデュースした発表方法とやら──俗に言う、白騎士事件で大問題を起こし、その末に厄介なプログラムを起動させ、この世界に置ける絶対の権力を手に入れてしまったのだ。

篠ノ之束。あの外道を私は許さない。

先ずは奴の権威を失わせるため、ISの制御を奪おうとした。案の定、失敗に終わってしまったが。女性にしか使えない、という致命的な欠陥すらなんとかできないのは己の無力を呪ったがね。

 

その後はいくつかの仮説を立証するために様々な実験を行った。手始めに女性、というのはどこまでが分類されるのだろうかという検証を行った。女性ホルモン──エストロン、エストラジオール、エストリオールに反応するように設定しているのか、外見のみを参照しているのか。性別を変更する手術を受けたものには反応するのか。またはこの世界に登録されている戸籍から判断しているのか。そして、これが一番の疑問。ISにISは反応するのか。

 

検証の結果は、ほぼ分からないに尽きた。奴が一体どのようなメカニズムでIS適正を下しているのか、全く分からなかった。エストロゲンの何れにも反応はなく、中性的な男性、男性的な女性、女性的な男性のサンプルに対しては女性のみに反応。性転換手術を受けたサンプルに関しては、男性、女性どちらも反応せず。

また、戸籍のない男女の孤児のサンプルに対しても女性のみに反応した。しかし、最も重要なISによるISの起動実験は成功した。

 

痺れを切らした私は奴を殺害するために動き出した。奴の遺物にクラッキングを仕掛け、コントロールを奪ったところまではよかった。宇宙空間で行動する際の随伴機として作成された円卓の名を冠する最強の戦力を手中に収めた上で、奴を叩き潰してしまおうと思った──のだが、見逃していた、コントロールを奪え切れていなかった随伴機の一機に後ろからズドンだ。やれ、理不尽だな──こう言うことを因果応報とでも表せば良いのだろう。全く、嫌な例だ。

 

と、私は死んだ。しかし、奴も甘くなったものだ。私が何も対策していない、そんなわけがないだろう。

 

私の遺体を無人のISによって回収させ、ISコアと同化させることにより再生を行った。結果、こうして私は生きている。

血も流れている。食事を取ることも出来る。傷の治りが異様に早いのは誤算だったが、恩恵としてありがたく受け取っておくとしよう。

 

シールドエネルギーが枯渇すれば私は再び命を失うことになるが、既に私の意識はISコアのネットワークに移してある。篠ノ之のワンアクションで死ぬが、それを行えば全ISの機能を永久停止させることが私には可能だ。奴の随伴機の11番機──モルドレッドの権限を一部拝借、コアの意識諸とも私が上塗りし、機体は掌握している。私の動きを随伴機のうちで最も早く察知したのは褒め称えるが、詰めが甘かった。無人機で囲んで質量で枷とし、私が直接コアにアクセスして無力化すれば終わりだ。

史実でもアーサー王を討ったのだ。別に役柄的には何ら問題はないだろう。

 

私はその後、奴を仕留めるための手筈を整えた。私の遺体のコアにモルドレッドのコア人格をインストール。勿論、主要なデータは封印した上でだ。肉体を三十路過ぎたものから13歳程度まで改変。ISの機能か何か知らないが、肉体的な成長は望めないが、どうせ駒だ。どうとでもなるだろう。必要に応じて肉体の更新をしていけば良いのだ。

そして奴の計画に置ける英雄、私の失敗作である織斑一夏に対して接触を図らせた。

その後はトラブルを起こしまくってくれたが、それくらいで良いだろう。

奴の思い描いた盤面をひっくり返し続けるだけで今は十分なのだ。

 

来るべき時に、私も行動を開始しよう。今は待つ。私ではない私がチャンスを作るのを待つだけ。七番機、トリスタンからの干渉もあったが私のアクセスを察知したのか、引き下がった。

 

準備のために、仮初めの肉体を構成する。質量を持った幻影のようなものだが、十分だ。

 

「待っていろ、篠ノ之束。貴様を抹消するのはこの私、伊崎鎮だ。」

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