たとえ、この命に代えても   作:刹那木ヤクモ

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テストも控えておりますが私は元気です


愚者の凱旋

飛ぶ。

 

謎のISによる襲撃から早30分が経ったが、嫌な予感はまだしている。なんとなく察することが出来てしまうとでも言うのか、彼の元へ今すぐ駆けつけねばと、僕の中のナニカが叫び続ける──そう言えば、システムはどうなったのだろうか。まあいい、デリートされたか、寝てるのか。

 

『通達 目標地点までは、障害がなければおよそ18分ほどで到着します』

 

サポートAIの報告を受け、焦燥を抑えながら再び操縦桿を握りしめた──

 

 

◆◆◆◆

 

 

「鈴!」

 

「くっ…!わかってるっての!」

 

黒いISと、紫のIS。何故か乱入してきた機体が闘争を始め、余波に巻き込まれたり、黒いISは此方を直接攻撃してこようとしている。黒いISは見たことがある。俺たちを襲撃してきた、あの二週間前に出会った個体で違いないだろう。しかし、No.9と印されていたあの紫のISは分からない。俺たちと同じように有人機ではあるのだろう。黒い無人機よりも小さいが、スペックは高いように見える。事実、無人機を常に圧倒している。

何故、こうなったのだろうか。

あいつと出会って、もう一度気合いを入れて。クラス代表戦を通して俺の幼馴染みと和解しようとして。お互いの感情をぶつけ合って、ようやく理解できたと思えばこの様だ。いったいどうなっているのやら。

状況は未だ飲み込めていないが、少なくとも不味いに違いない。経験則から来る直感に近いものだが、太刀打ちは出来ないだろう。あいつの戦い方を真似て小型の銃器等を拡張領域に入れ、戦術の幅を広げてはいるが、デカブツに対応しきれるほど俺は手数は多くない。

黒いISはアリーナのバリアを容易に消し飛ばす高出力のレーザーを、紫のISはそれすら防ぐ強力な盾で身を守りながら、白い太刀で反撃の機会をを持っている。あいつのコンテンダーでも無理そうだ。

 

『織斑、鳳、私が出る。合わせられるか?』

 

千冬姉から通信が入る。頼られたことが少し嬉しかったが、そんなことを言っていられる場合ではない。千冬姉でさえ協力を求めるような相手に対して、俺一人で何とかするとは口が裂けても言えない。それは、千冬姉への冒涜にも近いだろうから。

 

『鳳は衝撃砲で私と織斑の援護を、織斑はワンオフで決めろ。私の打鉄ではスペックが足りん。』

 

「わかってます、千冬さん。一夏も行けるでしょ?」

 

「ああ、いいぜ。」

 

千冬姉がカタパルトから出てくる。一瞬、黒いISの意識が此方に向いたように思える。

それを待っていたかのように紫のISの太刀が煌めく。あれは──

 

『零落…白夜。』

 

一閃。黒いISの右腕が落ちる。ボイスチェンジャーでも付けているのだろう機械音声から放たれたその単語は、間違いなく俺の単一能力と同じものだった。

何故奴が使えるのか、そんな事に思考を回している暇はないだろう。戦況は刻一刻と変わりつつある。

 

「此方を狙ってきてないのであれば話が通じるかもしれない。奴が無人機を仕留め終えた後に私が接近する。」

 

「話が通じなかった場合はどうするんですか?あいつ、侵入者ですよ。」

 

「その場合は私が切り捨てるさ。出来なくとも、拘束している間に一夏が斬れ。いいな?」

 

「わかった、任せてくれ。」

 

そういっている間にも、光を放つ太刀で切り刻まれる無人機。そして、仕上げるように剣を掲げ──

 

直後、紫のISに殺到するミサイルとレーザー。紫のISは咄嗟に盾で防ごうとするものの、少なくない数が直撃する。

ハイパーセンサーで高速で接近する機体を捉えた、かと思えばもうそれは目の前に存在し、不明機に向かって突撃した。

 

「一夏から、離れろ…ッ!」

 

「…鎮?」

 

居る筈のない人物の声。俺の知らないIS。聞きたいことはいくらでもあるが、状況がそれを許さない。

ラムアタックを強行した後に変形するIS。あいつの黒鎧に良く似ているが、背中から生えているかのような翼と尾、腕に増設されている大型の爪。そして、前見たより縦長くなった頭部バイザーの内側に見えた複眼。それはまるで、龍のようだった。

 

弾き飛ばされた不明機は盾を構えた──かと思えば、盾の一部がスライドし、レーザーが照射される。素人目から見ても分かるレベルでヤバいと感じられるものだ。セシリアに訓練を付けてもらっている俺は、多少レーザー兵器には慣れている。しかし、セシリアのレーザーよりも威力が高いと、そこから放たれる熱で感じた。

 

一方鎮は、左腕の爪のような大型増加装甲から、棒状の何かを右腕で掴んで引き抜いた──かと思えば、赤い光子の刀身が形成される。ビームサーベルとでも言うのだろうか。背部の翼のようなものから発される、赤い粒子を用いて馬鹿みたいな推力でバレルロールを行い接近し、太刀と切り結ぶ。

 

接近さえして、盾を自由に動かせなくすれば鎮が有利な筈だが、不明機の技量も相当で、大盾を軽々と振り回しながらいなし続ける。切り結んだは良いが攻めきれてない様子の鎮は、盾を蹴り離脱しつつ外装を再び変形。高度を稼ぎミサイルを掃射。掃射した直後に人形へ戻し、ビームサーベルを再び抜刀し急降下する。

対して不明機は盾でミサイルを防ぎつつ、バックステップ。太刀でビームサーベルを弾き飛ばそうとする──が、直前に静止していた鎮は長槍に高速切替を行い、逆に太刀をパリィする。

 

生まれた一瞬の隙に懐に潜り込む鎮。粒子を纏った爪を一撃、腹に撃ち込んだ。不明機はよろめくものの、太刀を格納し小型のダガーで鎮を遠ざけ、再び太刀へ戻す。

 

「こいつも、赤い奴と同系列?なら──」

 

『──アルビオンだと?亡国風情が、厄介な真似を!』

 

鎮の声と、合成音声が響く。不明機の大盾からレーザーが照射されるが、負けじと鎮も縦に長い、紫色のバイザーからレーザーを放ち相殺する。

 

視界が潰れている中、紫のISが鎮に突撃するが、戦闘機状態へ変形、急上昇した後に人形へ戻り、換装済みのマシンガン──そして、ブルーティアーズで集中砲火を加える。

 

『分が悪いな。しかし、目的は達成させて貰う!』

 

反転、鎮に背を向けブースト。目標は、無人機。零落白夜を起動している太刀でISコアのあるであろう場所を思いっきり貫く。そして、血振りをするように太刀を振った。

 

「…まだ、やるかい?」

 

『アルビオン相手は些かキツいのでね。ガウェインも苦戦とはいかないが、それなりに遅延させられているようだ。流石亡国、と言ったところかね。』

 

「ああ、そうかい。なら引け。今なら追わない。」

 

そう言い、ビームサーベルを格納し、静止する。と、ここで傍観を決めていた千冬姉が歩く。

 

「待て、何故IS学園に介入した?」

 

『知れたこと。我々は歪みを断ち切るのみ。今は未だこの組織に手を下す予定はないが、そこのISの成れ果てには退場して貰わなければ。それは歪みに他ならないからだ。』

 

「歪みとはなんだ?そもそも貴様は何だ。どこに所属している。そして、亡国だと?亡国と伊崎に何の関係がある。」

 

『貴様らが否定したものだ。分かるか?まあいい。私は──そう、先導者だ。この世界を正しく導くための存在だ。亡国についてはアルビオンに聞くと良い。ではな。』

 

そう言い残し、無惨に割れたアリーナのバリアから飛び立つ不明機。

 

「…鎮、なのか?」

 

俺は、鎮に向かって歩く。口ではそう言うが、俺の中では確信している。こいつは、鎮だと。

 

「…済まない。一夏。僕はもう、君に会う資格はない。」

 

突き放すかのような一言。翼を広げ、鎮も飛び立とうとする。

 

「待ってくれ、鎮!言いたいことも、聞きたいこともまだある!」

 

「ごめん。僕は──「背中ががら空きだ。」あいたッ!」

 

千冬姉が俺の手元から零落白夜を起動した雪片を取って飛翔し、飛び立ち始めていた鎮を無理矢理叩き落とす。…暴力的すぎではないだろうか。

 

「きちんと説明しろ、このバカは。」

 

「…はぁ。分かりましたよ。」

 

そう言い、ISを解除する鎮。その体には無数に傷があることが、所々裂けている服から察せられた。

 

「…まあ、何というか。ただいま?」

 

首をかしげ、苦笑いしながらながら、親友はそう言った。

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