彼女───更識 楯無さんが、僕の部屋を訪問してから早30分が経過した。
30分で何が出来たかと言われても、お互い軽く自己紹介を済ました程度だ。
僕から見た彼女の印象はさほど悪くはない。状況説明はきちんとされているし、身分も明かしている。──身分を偽っている可能性も無い、ということはないけど──ひとまずは信用していい人物だろう。
現在は、早速IS関連の知識を叩き込んで貰っているところだ。いやもう、本当に多い。僕自身勉強は決して得意ではないから、正直言ってなかなか辛い。けれど、命がかかっていると思えばどうということはない…と思いたい。
だが、僕自身努力が苦手なのもあり、なかなか覚えられていない。更識さんからコツや要点を押さえたノートを貸して貰ってなんとか自分でも纏めようとしているのだが、入ってこない。
仮に今から専門的な用語を事前知識ほぼゼロの状態から短期間で覚えろと言われて出来るかと言われたら、多くの人が無理だと答えるだろう。僕だってそうする。
幸い、更識さん曰く入学までは2週間ほどあるらしい。二週間でどれだけ叩き込めるか、それがポイントになるだろう──と、思っていたのだが。
「ある程度知識を蓄えれたら、ISに乗って貰ってデータ取り、行くわよ。せめて基礎動作だけでも覚えて貰わないと話にならないからね。」
と、言われてしまった。二週間丸ごと使いたかったのだが、そうも行かないようだ───
◆◆◆◆
「凄いわね、たった1日でここまで覚えられるなんて。」
僕が勉強を開始してから数時間が経過し、今日はもうお開き、と言うところで彼女は僕にそう言った。
「凡人にとっては、ですけどね。僕は天才じゃない。
…僕は、彼のようには成れないんですから。」
「ふーん…彼、って言うのは織斑くんのことかしら?」
何やら探られるような言い方だけれど、何か知りたいことでもあるのだろうか?と、思ったが、僕のところに来た以上彼のところにも行くのだろうから少しでも知りたい、と思うのは当然なのだろう。
「ええ、そうですね。僕にとって彼は紛れもない天才でしたから。」
「君は彼にとっても執着してるように見えるけれど…それはどうしてなのかしら?」
「親友を心配するのに何か問題でも?」
この人の言い回しはいちいちこちらを苛立たせてくる、とこの時間中に気づくことが出来た。信用に足る人物なのかそうでないのか、今一分かっていない。若干キレ気味に言ってしまったが、自分の中で少し仕方がないと割り切ってしまっている。
「そう…これは例えばの話だけど、君と彼のどちらかしか助からない、そんな状況になった時、君はどうするの?」
彼女はそう問い掛けてきた。
「それは…どうなんでしょうね?まあ、僕と彼、どっちに価値があるかって言われたら彼、なんでしょうけどね。」
僕自身、彼を助けるためにここまで来たと言っても良いだろう。僕はどうにか最悪の未来さえ回避できれば、それでいい。
そんなこんなしている間に片付けが終了した。この後、IS学園でも何とかなりそうな気が漠然としてくるが、油断は禁物だ。
部屋から出ていく更識さんに一言、お疲れ様でしたとだけ伝えてベッドに横たわる。
まだ、1日目。これだけ疲れてもまだ1日目なのだ。
「…辛いなぁ。」
ポツリ、と呟いた一言は、誰にも聞かれることはないだろう。
この先、もう聞いてほしくもない。
◆◆◆◆
「ふーん…
「彼自身の才能はゼロに等しいわね。何故IS適性があるのかが不思議なほどに。」
「何故か知らないけれど、彼は狂気的なまでに織斑に依存しすぎてるわ。あれはいつ壊れてもおかしくない。」
「やはり彼の過去の問題なのかしら?」
「分からないけれど、取り敢えず接触を続けるしかなさそうね。」
長文書けませんねぇ…