たとえ、この命に代えても   作:刹那木ヤクモ

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お待たせしました。


初陣

朝、起きる。

 

最近は意識がハッキリしていることが何となく多い気がするな、とか考えながら、寮に置いてある服に着替える…が、サイズが合っていない。そもそも、僕の身長があまり無いのも原因と言えるのだが、まさか服が無いほどとは思っていなかった。

実際、クラスに1人僕より小さい友人が居たのだが、急な転校でどこかへ行ってしまった。結構成長してきていると思ってはいるのだが未だに変声期は来ずその体はまだまだチビッ子。160センチ程度しかないのである。

ひとまずダボダボではあるが貸し出されてある服を着て寮から出る。朝食を買って貰えているそうなので、ホールに取りに行くのだ。

ホールに着くと、更識さんが待っていた。もう少し近づいてから声をかけよう、と思い数歩進む。だがこちらが声をかけるより先に彼女が僕に気付き、手を振った。少し急いだ方が良いのかな?と思い小走りになりながら更識さんの座る座席の横に座らせて貰う。

 

「おはよー、よく寝れた?」

 

「不思議なほど。僕、枕が違うと寝れないタチなんですけどね。」

 

そんな会話をしながら、テーブルに置いてあったカレーパンに目が行く。更識さんは既に食べ始めているようなので、僕も急いで朝食に入る。某大手コンビニで買ったのであろう三本線の入った包装の端を破り、パクリと食べる。食レポなんて出来もしないが、政府の皆様御用達の高級ホテルの味よりも、遥かに安心する味だと、そう感じた。

 

「ごめんなさいね、好みを聞けてなくて。カレーパンで良かったかしら?」

 

「ええ、大丈夫です。ありがとうございます。」

 

今日の予定は、朝食後30分程度の休みを取ってISの訓練を取り敢えず午前中ずっと行うらしい。

まあ、素人の僕はただただ試行回数を重ねなければ出来るものも出来ないのでそれくらいはするだろうと思っていたので何ら問題はない。

──問題はない。そうだ。僕は、やるべきことをやるだけだ──

 

◆◆◆◆

 

「着替えられたかしら?入っていいー?」

 

「大丈夫です。時間かかっちゃって済みません。」

 

僕は更識さんの指示でISスーツなるものを着用した。ISスーツとはIS展開時に体に着ている特殊なフィットスーツのこと。スーツなしでもISを動かすこと自体はできるけれど、反応速度が鈍ってしまう。ハイスピードな戦闘についていけなくなってしまうのだ。まあ、亀田さん曰くISのパーソナライズを行うことで、IS展開時にスーツも同時に展開されるようになるらしい。ただし、ISスーツを含むダイレクトなフォームチェンジはエネルギーを消耗するため、緊急時以外は普通にISスーツを着てISを展開するのがベターなのだとも言っていた。

 

ISスーツの仕組みとしては、肌表面の微弱な電位差を検知することによって操縦者の動きをダイレクトに各部位へと伝達、ISはそこで必要な動きを行う、という仕組みらしい。

 

ISは百人百通りの仕様へと変化するもので、早いうちから自分のスタイルを確立することが多い。そのため、専用機持ちである代表候補などは基本個人個人で自分にあったものにして、スーツでもスタイルを崩さないようにするのが基本らしい。

因みに僕のはイングリッド社製ストレートアームモデルの男性用特注品とかいうやつ。親友も同型を使うことになるらしい。

 

「OKね。ならササッと移動しちゃいましょ。」

 

◆◆◆◆

 

更識さんに案内され、アリーナと呼ばれる練習施設にやってきた。周囲が何だかバリアに囲まれていて、恐らく競技でもここを使うのであろう。

 

「今回は君のISは事前にそこに展開済みで置いてあるけど、本来は待機形態から展開して貰うことになるから、そこは覚えておいてね。」

 

そう言われた後、中央に──昨日見た時と少し形は変わっているが──黒鎧が鎮座していた。

中に足を突っ込みたい、が──全身装甲(フルスキン)と呼ばれる機体性質上、どうやって乗り込めば良いのかが全く分からない。

ひとまず、触れてみるとその瞬間──システム起動。その音声が流れ五感が拡張されるとでも言うのか、そのような感覚に襲われる。違和感しかないが慣れるしかないのだろう。

 

「更識さん、これでOKですかね?あれ、そもそも聞こえてますかねこれ」

 

『なんか当初の予定とは違うやり方だったけど、展開できたのね。そしたらメインウィンドウを開いて、オープンチャネルをオンにして。こっちとの会話が出来るようになるわ。』

 

指示通りにメインウィンドウよ、開け!と念じて視界内にウィンドウを展開──試行錯誤の後なんとか出来た。そこから視線でカーソル移動をし、実行。

 

『OK、繋がったわ。じゃあ早速やってみましょうか。まずは──』

 

◆◆◆◆

 

システムがマニュアルではなくオートマチックになっていることを確認し、スラスターのスイッチを入れる動作をイメージ──いや、無理だ。怖い。

このまま噴射したら風圧に耐えきれず吹き飛んでしまうのではないか。もしくは動作バグで爆発四散するのではないか。技術者の皆様にとてつもなく失礼だと思うし、理屈は知っていて起こり得ないとは理解している。だが、怖いのだ。

 

一度深呼吸。目を瞑り、自らを落ち着かせもう一度イメージ。

背中側から音が聞こえると同時に一歩、また一歩と踏み出す。次第にペースを早め、少し助走をつけてから、跳ぶ。

そこからスイッチを入れるイメージ。一瞬目を瞑ってしまうが、すぐに持ち直す。

 

『おめでとー!ようやく浮けたわね。ここまで来たら後は簡単よ。PICの説明は覚えてる?あれで高度は維持できるから、このまま前後左右に少し動いてみましょうか。』

 

そう、訓練開始から30分後──漸く、飛ぶことを覚えました。成長速度が遅すぎるのか果たしてそうでもないのか、更識さんの言い回しだと遅いっぽいのでこの後はペースを上げていきたいところ。

 

ひとまず、前へ移動する──ゲームのLスティックを前に倒すようなイメージでひとまずやってみる。

なんと、成功した。意外と単純なイメージの方が良いのだろうか、なんてことを考えつつそのまま色んな方向にスティックを倒すイメージ。イメージで動かすというのは難しいようで、そうでもなかったりするようだ。

 

『こなれて来たのかしら、良い感じよ!次はスラスターを吹かしてブーストしてみましょ。』

 

「了解です。」

 

今までのスティックのイメージにプラスで飛ぶときに使用したスイッチを入れるイメージ──イメージイメージ言い過ぎてゲシュタルト崩壊が起きそうだ──をする。背中方面にエネルギーが集まり、数秒たった後放出。

 

「ッ!」

 

景色が一瞬で流れることにゾクッとしたが、今のブーストで慣性含め20メートルほど移動したようだ。

一度落ち着くために深呼吸。次はバックブースト。引き撃ちに使うあれだ。アーマード・◯アのような機動は出来ないと思うが、覚えておいて損はないと思う。

 

『あら、余裕かしら?このまま動作演習を一通り終えたら次のステップに行こうかと思ってるから、頑張りましょ!』

 

◆◆◆◆

 

「あー、終わったぁ…。」

 

あの後、基本動作を覚えた後、この機体の特殊ギミックなど色々のテストを行った。因みにここまで3時間ほど。

 

『お疲れ様。と、言いたいところだけど、時間もないことだし実戦、行ってみる?』

 

実戦はひっじょぉぉぉぉぉに疲れたので遠慮しておきたいところだが、一度やっておいた方が良いのだろう。いや、やろう。チュートリアルの動作確認を終えたところなので、まだまだ不安は残るがそこは何とかなるだろう。

 

「なら、お願いします…と言いたいところなんですが、誰とやるんですか?」

 

『あら?ここに一人国家代表が居るわよ?』

 

「…はい?」

 

『だーかーら、私と()るってことよ♪』

 

なんか字が違うやつだった気がする。まぁそれはどうでもいい。いきなり国家代表は荷が重い。だが、やってやろう。今の僕なら、少しは食らいつけるかもしれない。

──ああ、やってやる。君でもそうするだろう?──

 

◆◆◆◆

 

『あー、届いてるかい?スタンバイの時だけだが、は私が少し指示を出させて貰うよ。』

 

と、オープンチャネルではなく個人間秘匿回線(プライベートチャネル)から亀田さんの声がする。

 

『気持ちの準備は万端かい?』

 

「はい、いつでも行けますよ。」

 

『彼女も奥の手は封印するって言ってたし、大丈夫さ。そこまで気負うことはない。』

 

「すみません、ありがとうございます。」

 

黒鎧、スタンバイ。カタパルトに足を乗せ、イメージを固める。──よし、やれる。

 

『オーケー、じゃあ行こうか。タイミングは任せるよ。』

 

「ッ…。黒鎧、出ます!」

 

カタパルトが動く音。それと同時に視界が一瞬で流れる。

 

「さあ、手加減は最低限で行かせて貰うわよ。」

 

「マジですか…。ええ、ならこっちだってやってやりますよ。」

 

背中に付けられたサブアームを左右共にアクティブにする。今はシールドを装備した防御用アームだが、ライフル、ブレードなどIS用武装は全て装備可能らしい。

 

それと同時に拡張領域──簡単に説明すればゲームによくあるストレージだったりポーチみたいなもの──から刀身の赤いロマンに溢れているロングソードを右手に展開。

更識さんも白っぽい槍、FG◯のガ◯スが持ってそうなやつを展開した。

 

「「ッ!」」

 

試合開始のブザーが鳴った。

 

僕は先ほど習得したてのブーストで距離を詰める。速度はそこまで出せないとは言え、流石に何らかのアクションはとるだろう。

敵機はバックブーストを選択。

距離をとられたので、肩部ミサイルを一斉掃射。一発一発の弾速はそこまでだが、威力は馬鹿にならないらしい。

 

このままガン攻めのスタイルを崩さないよう、サブアームの装備をシールドから、アサルトライフルに変更。ミサイルをパージした後、左手にショットガンを展開。アサルトライフルでの射撃を続けつつ、少し距離を詰めてきたらショットガンで応戦できるような戦い方に変更。

 

誘われている──?漠然とした不安感に襲われた刹那、

 

「はい、終わり。」

 

閃光、そう表現するのが正しいだろう。光を放ちながら急加速した敵機が槍を突き刺そうと目の前に迫る。

 

アサルトライフルに武装を変更しているのでサブアームでの防御は不可能。ショットガンでもダメージこそ与えられても止められない。なら、一か八か──

 

「ッ!良いセンスしてるわね!」

 

右手のロングソードでのパリィが成功する。これがソードブレイカーなどと呼ばれる形状のものだったら武器破壊が出来たかもしれないが、たらればは今は必要ない。

 

パリィした直後にショットガンを至近距離で放つ。少なくないダメージを与えたので、一度離脱。

左手の武装も近接武器にしておけばコンボみたいな感じでもっとダメージを与えれたかもしれないのだが、欲張ればさっきのように特大リターンを取られる可能性がある。ス◯ブラで培った駆け引きがこんなところで生かされるとは思いもしなかった。

 

一度お互いに静止。と、言っても相手は急接近の手段があって、此方にはない。ただでさえ実力が無いのだからこれ以上後手に回るのだけは勘弁した──

 

「さっきのを忘れたのかしら?」

 

再び急接近。落ち着いてもう一度パリィ──は、流石にリスクが大きすぎるのでここは──

 

「流石にそれは…予想外、だわ。」

 

敢えて、モロに食らう。そのまま槍を装甲の上で滑らせ、接近。ロングソードを突き刺す。此方のシールドエネルギーも削られるが、リターン無しよりかは良いだろう。

 

直後、スラスターを吹かし更にロングソードを押し込むと同時にサブアームのアサルトライフルを乱射。

 

「やられっぱなしには行かないのよ!」

 

直後、敵機の槍からガトリングが放たれる──そんなギミックがあったことにも驚くが、シールドエネルギーの削れ具合が尋常ではない。──だが、ここで仕掛けなければ勝てない。左手の武装をショットガンからシールドに変更し、ガトリングの弾を出来る限り防ぎながら此方は最大火力を持って削りきる。

 

「ただ──チェックメイト、って奴ね。」

 

直後、閃光が二度迸り真横に移動される。

 

「──ッ!」

 

ロングソードでパリィする、が、ダメだ。

敵機の槍が僕を横一文字に凪払った────

 

◆◆◆◆

 

「…負けた、な。」

 

当然だとは思っていたが、やはり悔しいものはある。しかも、

 

「…怖かったなぁ。」

 

実際に武器を見ると、それが自分のものであれ更識さんのものであれ、怖かった。

 

「…ああ、もう。」

 

やり場のないこのストレスを、言葉に込めて出してみる。

 

 

まだ、僕の中でのやるせなさは消えない。




補☆足

オリ主くんの機体詳細

名称 黒鎧 《コクガイ》

メインカラー 黒

武装(使用済み)
ラージシールド
ロングソード
ショットガン
アサルトライフル

肩部ミサイル

サブアーム

となっております。


《投稿主からのご報告》

えー、投稿主のとらんざむせっちゃんです。
最近は色々なイベント事だったり、次回の行事の実行委員になることが知らぬ間確定していたりテストだったりで忙しく、執筆時間が取れていないところにこの話のデータがポンしてキレそうになったりして投稿が遅れてしまいました。

次回はもうちょっと早めに投稿できるよう努力します。
すいませんでした。

後一つ報告はFGOのガチャに完全勝利したことです対戦ありがとうございました。
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