たとえ、この命に代えても   作:刹那木ヤクモ

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圧倒的不定期更新で申し訳ない──が今の私にはこれで精一杯ですユルシテ


試される未熟な経験

一人、モノレールに揺られる。

 

今日、IS学園に入学するための試験を受けに行くためだ。

 

IS適正があることが判明してから黒くてゴツい車→研究所→ホテル→倉持技研と、ほとんど外に出ていないせいで、窓から見える景色にも新鮮味を感じてしまう。

 

僕は為すべき事の為にここに居るのだと自らに言い聞かせ、少し浮かれていた気分を半ば強引に沈ませる。

 

首に掛けられたロザリオが、モノレールの窓から差し込む光を反射した。

 

◆◆◆◆

 

モノレールから降り少し歩くと、IS操縦者育成特殊国立高等学校──通称、IS学園と呼ばれる施設が見える。

 

2週間ちょっと前まではこんなでっかい学園に来るなんて思いもしていなかったなぁと、下らないことを考えていると、学園の正面玄関口から教師と思われる女性が1人、僕の方に歩いてきた。

 

「更識さんから事情は聞いていますよ。私は山田真耶。この度IS学園一年一組の副担任になりました。早速で申し訳ないんですけど、アリーナに来てもらえますか?」

 

女性──山田さん、山田先生と言った方が良いのだろうか?そう名乗った人に連れられ、アリーナへと移動する。

 

更識さんから聞いたと言っていたがどんな関わりがあるのだろうか、そう言えば彼女はIS学園の生徒会長と言うことを忘れていた──等と考えながら暫く歩く。

 

山田先生と少し世間話でも出来れば良かったのだが、生憎そこまでの能力が有れば中学時代あれほど孤立しなくて済んだと言うものだ。

少し経つと、倉持技研のものと似通ったアリーナが見えてくる。

 

「えと、試験、ですかね?」

 

「はい、これから実技試験を行います。ISスーツは持ってきていますよね?」

 

「ええ、後僕のISもきちんと」

 

更識さんに言われてISスーツを私服の下に着ている──よく水泳の日にやるあれだ──ので、私服さえ脱げればいつでもできる。

 

「本当に専用機持ってるんですね。なんだか少し羨ましいです。」

 

苦笑しながら先生はそう言う。

僕自身あまりこれが特別なものだという実感が持てていないので、どうリアクションしていいのかはわからない。だが、先生という、ISパイロットとしてのプロであろう人物に羨ましいと言われるとなんだか少しコイツの希少さが分かった気がした。

 

「あ、少し話が逸れましたね。ええと、試験はアリーナで実践形式でのものとなります。試験官は私が務めさせていただきますね。」

 

おっとりした印象の先生だが、先生である以上かなりの実力はあるだろう。

全力で行こうとも、僕は特になにも出来ないだろう。事実、一度手を抜いていない状態(手の内を隠している可能性もあるが)の更識さんと戦ったが、それはそれは大惨事だった。

──勝てるとは思わない。だけどそれは、全力を出さない理由にはならない──

ああ、やってやろうとも。

 

◆◆◆◆

 

『試合開始5秒前』

敵機はフランスのデュノア社製第2世代機、ラファール・リヴァイブの改造機と思われる機体。

 

『4』

呼吸はリズム。目を瞑り、巡る血液を感じとる。手は握れる。頭も回る。目を開ければ、視界はより鮮明に。

 

『3』

全身装甲という機体の特性上、僕がどんなカオをしているかは敵機は知りやしない。僕が今恐怖に震えていることも知りやしないのだ。

 

『2』

スローモーションのように感じられるこの時間を限りなく有効に使え。お前は、それができる筈だ。

 

『1』

ブースターのチャージを行う。展開済みの大剣をもう一度両手で握る。駆け引きはあちらが上、実力も同様。ならば、残されたのは奥の手(ワイルドカード)──ならば勝負は短時間で、だ──

 

『試合開始』

電子音声の合図で、僕は瞬時加速(イグニッションブースト)と呼ばれる手段を用いて突貫する。ISに取り付けられている後部スラスターからエネルギーを放出、放出したエネルギーを再びスラスター内部に取り込み、圧縮して放出するというテクニックだ。

通常のブーストより格段に早い反面、方向転換が不可能というデメリットもあるが、僕にとって、意識を僕にさえ向けれれば十分だった。

 

敵機は少しも驚くことなく、左手の武装をショットガンからパイルバンカーと思われるものにチェンジ──瞬時加速の後隙を刈る算段なのだろう──此方にアサルトライフルを放ちながら接近する。確かに通常の機体であれば刈れただろう。

 

即座に収納状態だったサブアームをアクティブにし、左右ともに装備させてあるショットガンをカウンター気味に放つ。

アサルトライフルは大剣を盾にしてなるべく防ぐものの、ガードが甘かったか、それとも狙いがよかったのかダメージがある。一度後方にブースト、距離をとる。

 

──あっぶねぇぇぇぇぇ!

どう見ても一撃必殺のパイルバンカーをギリギリだが避ける。伏せておきたかった手札の一つを切らされたが、やむを得ない。即死同等のダメージを食らうよりはいい筈だ。

 

「先程のはいい判断でした──」

距離を取った状態の敵機が何か言っている。相手の挙動をよく見る。僕はプロではないが、少なくとも前触れはわかる筈──

 

《警告、頭部破損》

刹那、衝撃が2度迸る。機体のバイザーが破損。目に写る情報に一瞬ノイズが迸る。

──マズイッ!

復旧したと思った直後、眼前には敵機の姿、そして左手に構えられたパイルバンカーが写る。

 

「ッ!」

 

「ですが、油断しすぎです。」

腹部に衝撃。パイルバンカーが打ち込まれる。衝撃で吹き飛ばされた挙げ句PICが一度停止し、地面を転がる。

 

ハイパーセンサーで敵機を補足し向き直る。右手に握られていたのはリボルバーと呼ばれる形状の拳銃。

──クイックドロウ

早撃ちとも呼称される西武劇などでよく見る技術。それが脳裏をよぎる。

 

おそらくだが、両手の武装を瞬時に切り替え早撃ちしたのであろう。高速で武器を切り替える技術である高速切替(ラピッドスイッチ)。拡張領域を用いて、通常1~2秒かかる量子構成をほとんど一瞬で、それも照準を合わせるのと同時に行うという技を用いて僕を撃ったのであろう。

──いや、バケモノかよ!

自身の全ての動きに対して最適解を出されている感覚だ。いや、感覚でなく実際そうなのだろう。

 

──なら、知らない筈の手札を切ればいい──

 

左右のサブアームに大盾。展開済みの大剣を収納しマシンガンを両手に構える。後部スラスターに同等の手順を踏みながら瞬時加速する──!

 

「それはダメですよ!」

 

ああ、無策の突貫だと思われるだろう。

即座にサブアームの大盾を前方に展開、マシンガンも同様に投擲する。

 

そして()()()()()()()()()()()()()()を二本、マシンガンに向けて投げる。弾倉に直撃したナイフにより、マシンガンが爆発──即席のフラッシュグレネードになる。

 

僕の機体は全身装甲。多少のダメージなら装甲が防いでくれる筈。爆発したマシンガンに向けて突っ込む。大盾によって少しは爆発を軽減し、突貫。ハイパーセンサーを見ると、敵機もバックブーストで距離を取っていたが、問題はない。爆煙を抜ける直前、右手に武装を展開し、敵機の()()に投擲する。

 

両手の武装をバズーカにチェンジし、伏せていた手札でもある肩のミサイルポッドもアクティブ。

──ここで仕留める──

全武装のトリガーを引く。爆風に少しでも引っ掛かればいい、そう思いとにかく引き金を引く。

 

「甘いです!」

 

が、バズーカもミサイルもほとんどが敵機のアサルトライフルによって落とされる。僕も弾切れになったバズーカとミサイルポッドを格納。サブアームの武装を変えた瞬間蜂の巣になる気がするのでサブアームはこのまま、両手にアサルトライフルを展開する。

 

撃ち合いが再び始まろうとした直後、敵機を()()から何かが強襲した。

 

「ブーメランッ!?」

 

そう、ブーメランだ。倉持驚異のメカニズムによってハイパーセンサーに補足されにくいブーメラン──一応、透明化などしているわけではなく目視はできる──が、敵機のバランスを少し崩す。

 

──今しか──

 

瞬時加速を起動。全力で距離を詰める。ここまで来たら装甲は不要、追加装甲、サブアーム諸々をパージし、さらに加速する。

 

「ですが、この距離なら!」

 

敵機が再びパイルバンカーを展開。僕も左手にブレードを展開する。

 

迫るパイルバンカーをブレードでパリィする。パリィ直後に逆に刈られる可能性を加味して突貫。腰からワイルドカードを抜く。

 

それは最強のハンドガン。

銃弾は拳銃弾から小口径のライフル弾まで対応可能。

そのため拳銃でライフル並の攻撃が可能という反則技が実現できる。

14インチ銃身のアジャスタブルリアサイト仕様の30-06スプリングフィールド弾仕様──なんで覚えてるんだ全く──

 

「…コンテンダー」

 

「ッ!」

 

ほぼゼロ距離まで距離を詰めた僕から放たれたワイルドカード、コンテンダー。敵機のシールドエネルギーの4割程を削れる最強の失敗作。──なんでも親友の機体の機構を一部組み込んだとか──

そして左手のブレードを敵機に向けて投擲、腰からナイフを抜きそれも投擲そしてコンテンダーのリロードを行う。

 

この間合いだと間違いなくパイルバンカーを食らうだろう。

だが、僕はパイルバンカーが炸裂するより早くコンテンダーを放てる。

左手にマシンガンを展開。圧をかけつつバックブーストする敵機を追う。

──後、一発で──

勝てる、そんな思いが生まれたが

 

直後、敵機が急制動。アリーナの端で前面にドーム状の大型シールドを展開し、籠城するような雰囲気を見せる。だが、守るだけのものでは無かったようで、その間から出てきたのはスナイパーライフル。

 

タン、と、よくFPSで聴くような銃声が響き右腕の装甲を破壊する。まだISとしての機能は残っているが、無理はできない

──コンテンダーの反動に耐えられるか──?

正直、コンテンダー抜きで勝てるとは思っていないし、僕とコイツが得意なのは初見殺し、一度見られた手札は通じない。特に、敵機ほどの実力があれば。

──不味いな、勝負を急ぎすぎた。装甲をパージするのは失策だったか──

だが、もう僕に残ったのはコンテンダー。そして投擲武器と少しの射撃武装。だがもうほとんどの射撃武装は短射程のものしか残っていない。

 

サブマシンガンで一応撃ち返すが、シールドに阻まれて通っていない。背面からなら、と思いブーメランを投擲するも完全に目視されているのであっさり迎撃される。

シールドエネルギーも心許ない。策はあるが、ここからは本当に博打だ。

 

スモークグレネードを投擲し、瞬時加速。コンテンダーを構える。ハイパーセンサーによって補足はされスナイパーライフルも飛んでくるが、この際被弾は許容する。

 

そして、シールド対して接射を行う──hvap弾、通称()()()()()に使用弾を変更したコンテンダーによって。

一発、シールドに穴を開ける。そして左手に()()()のコンテンダーを構え、開けた穴に銃身を突っ込みシールド越しに放つ。

敵機の唯一の失点は、アリーナ端に陣取った事だろう。このコンテンダーは、避けられた筈のコンテンダーだ。

 

──これで、終わりだ──

 

『ラファール・リヴァイブ・カスタムのシールドエネルギー全損を確認 試合終了』

 

試合時間は10分42秒。

コンテンダーを二発も放った上、ライフルなどでダメージが蓄積していた右腕は完全に破壊されている。

左手は本来コンテンダーを放てるようにしてもらってないので勿論負荷が尋常ではないほどかかっている。少し動かすだけでも軋むほどだ。

その他にも破損は目立ち、シールドエネルギーも一割を切っている。

──本当に、なんとかもぎ取った勝利だった──




オリ主君が段々変態になっていきそうで怖いなぁ…


まぁいっか!
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