《ヘロヘロがログアウトしました》
手を振りながら消えていく古き漆黒の粘体のプレイヤー、ギルド…アインズ・ウール・ゴウンのメンバーの一人ヘロヘロを見送り溜息を吐くギルドマスターである、モモンガは次第に怒りが込み上げて来た。
「ふざけるな!」
そう怒鳴り振り上げた腕を円卓のテーブルに勢いよく振り下ろす…瞬間
「随分と憤ってるじゃないか我が同胞よ」
背後から馴染み深いノイズ掛かった声を掛けられモモンガは勢い良く振り返る、爬虫類の鱗の様な装飾が施された鎧を身に纏い槍を携えた高身長の人物が壁によしかかり立っていた、彼の横には付き添う様に似た鎧を着て大型の銃を持つ兵士が待機していた。
彼の名はレギオン、レアな種族『ナイアーラトテップ』とユグドラシル後期に出たコラボイベントで追加された種族の一つ『大逆者』を主軸にしているプレイヤーで、潜入や破壊工作、奇襲そして前線での味方支援を得意とし数々のギルドに多大なる被害を出してきて『最悪の潜伏者』『もっとも邪悪な肉塊』と呼ばれ数多のプレイヤーに親の仇の様に嫌われている。
「レギオンさん⁉︎何時から其処に…と言うかその武器防具はレギオンさんの」
「勿論全部聞いていたし私のガチ装備は宝物殿から持って来たさ、憤る理由も分かる……だがこの暗黒の世界では大事な事を手放さなければいけない事もある……だからこそモモンガさんに任せっぱなしにしてすまなかった」
「いっいえ!謝らないで下さい!皆さんだって仕事がありますし仕方ないですよ!だからそんな謝らないで下さい…!」
モモンガは鎧を着たレギオンに対しそう言い何とか納得させる、この過酷な世界では仕事を失えばそれ即ち死を意味している、だからこそ次々とこのMMORPGユグドラシルを引退したギルドメンバー達の事を一定の理解は示していた。
とは言え、サービス終了まで残りわずかな時にログアウトしたヘロヘロなどのメンバー以外に会えたのは素直に嬉しかった。
「レギオンさんもし最後までいるなら玉座の間で迎えませんか?」
「我が同胞の頼みだ快く受けよう、それとアインズ・ウール・ゴウンの最後だからな、どうせなら同胞もギルド長らしくすると良い」
「そうですね最後くらいはカッコつけちゃいますか」
そう言い壁に掛けられていたギルド武器『スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』を手に持つ。
「それじゃレギオンさんいきましょうか」
二人は他愛もない会話をしながら歩いていれば、6人の外見がそれぞれ異なる美女と壮年な老執事が頭を下げ待機していた。
「確か戦闘メイドのプレアデスとセバス・チャンでしたよね?」
「あぁ、しかし役目を果たせず仕舞いになるとはな」
「それなら最後の仕事をさせましょう…『付き従え』」
暫くし二人とNPCの前に玉座の間の扉が現れる、煌びやかな装飾が施された扉がギィィと重々しい音を立ててゆっくりと開いていく。
「「おぉ…」」
二人はその余りにも美しく素晴らしい光景につい感動と共に言葉が漏れた。
何度も目にしている光景だがそれでも、かけがえの無い仲間達と共に作り上げた作品を見れば感動するのも仕方ない事である。
最奥には一人のNPCが立っていた、タブラ・スマラグディナが作り上げたサキュバス、アルベトだ。
「我が同胞よアルベトの設定欄を開いてくれないか」
「…?レギオンさんってタブラさんとは同じ設定厨同士で良く見せて貰ってた筈なんじゃ」
「まぁな…盟友の設定は素晴らしくそして奥深い!どの設定も私を興奮させ魅力させる!だが!だがなのだ!同胞よそんな盟友が丹精込め創り上げたNPCの一人に設定を知らない者がいるのだ!」
「…見ますかアルベトの設定?」
「滅茶苦茶見たいです」
モモンガの問いにRPを忘れノータイムで答えるレギオンに苦笑しながら、アルベトの設定欄を開く、其処には文字の洪水とでも言うべき夥しい程の長文が乱立していた。
「長…」
「ほう流石我が盟友素晴らしい作り込みだ、最後にこんな素晴らしい物を見れるとは」
唖然とするモモンガとは対照的にほぅと嬉しそうに文章に目を通していく、暫くして読んでいけば最後に『因みにビッチである』と言う爆弾じみた文章が目に飛び込んだ。
「くく……ギャップ萌えとは言えコレは…くくく……良い趣味じゃ無いか盟友よ」
「とはいえ守護者統括がこう…」
「確かに風紀が乱れると言う物だな、ギルド長権限で編集しても問題ないだろう」
「ですね…少しは胸は痛みますけど」
そう言いモモンガは問題の一行を消すが此処で多少の悪戯心が芽生え新たに『モモンガとレギオンを愛している』と付け加えた。
「くく…可愛いらしい事を」
「う…からかわないで下さいよ、それよりもう時間が無いんで早く玉座に行きましょう!」
時間を見れば強制ログアウトまで残りわずかだった、二人は急いで玉座まで行きモモンガは玉座に座り、レギオンは床に槍を突き立てモモンガの横に腕を組みながら立った。
魔王に使える騎士とも言える構図であり最後としては中々悪くないとモモンガ又はレギオンは思った。
「それではまたいつか」
「…えぇ!またいつか」
12:01
「あれ?」