「皆…集まってくれて感謝する」
玉座の間に凛とした声が響くその声とモモンガの姿に忠誠深い彼等守護者の動きが止まった、守護者の脳内に聖女の二文字が浮かぶ。
憂鬱そうに玉座に座る彼女を面白そうに揶揄う人物が一人、モモンガが聖女とすれば彼女はモモンガ程の煌びやかさはないがそれでも匹敵する程の美女である。
「んふ…それじゃあ早速だけどデミウルゴスが今後の方針を伝えてくれるよ…それじゃあ宜しく」
「畏まりました、それでは皆様…まずこれよりナザリック地下大墳墓は『過去に繁栄していた国』という事になります」
デミウルゴスの言葉に守護者達はざわつく、なぜこのナザリックを国に…それよりも繁栄していた…その言葉にコキュートスは怒気を纏った声を発する。
「デミウルゴス…ナゼハンエイシタナドトイウノダ、ソノコトバハフケイデハナイカ?」
コキュートスの言葉にデミウルゴス以外の守護者がその言葉に賛同する、その反応にデミウルゴスは小さく笑う。
「これはアインズ様とナイアー様のお考えなのだよ」
「ナニ!?ドウイウコダデミウルゴス!」
「いいかね?まず国を名乗るのならこのナザリック以外にも領地が必要でしょう、だからこそ繁栄したかつての国家と言うアンダーカバーが必要なのさ」
「なるほどそう言う事ね」
「……どういう事でありんす?」
その言葉にアルベドはなるほどと合点がいき頷く、それとは逆に他の守護者は未だ分からずシャルティアは首を傾げる。
「過去に繁栄した国であれば、他に国に対して領土の主張が出来るでしょう、まぁ…転移してきたばかりのナザリックの主張を他の国は歴史的根拠がないっと言われるだろうが…まぁそれこそ人間達の技術では調べる事が不可能などと言えばいいでしょう」
シャルティアの質問に答えその言葉に感嘆の声をあげ納得しモモンガとナイアーの言葉に尊敬の眼差しを向ける守護者達、その視線にモモンガは居心地悪そうにする。
「……それでアインズ様は何故そのような素晴らしいお姿になったのでありんす?勿論いつものお姿も素晴らしいですがそのお姿も全然ありでありんす!」
シャルティアそしてアルベドの欲望まみれの視線にモモンガは小さい悲鳴をあげる、死の支配者の姿ならドン引きしていただけだろう、男の人間の姿なら若干体を逸らしただけで済んだだろう、だが全く逆の性別になり精神安定もない状態で守護者の剥き出しの欲望の視線と圧を受けたのだ無理もない…自然とモモンガはナイアーの服をギュッと掴む。
その反応にナイアーは意外そうな表情を見せた後、溜息を吐きアルベドとシャルティアを見る。
ただそれだけの行為で空気が一瞬で凍り重苦しい重圧そして抗い難い恐怖が守護者達に襲う。
ナイアーの種族…ナイアーのみが取得している種族ナイアルラトホテップはワールドエネミーの一種であり、ユグドラシル時代にアインズ・ウール・ゴウン時代に討伐した際にランダムでこの種族に転生するイベントが発生し、豪運のやまいこな等をすり抜けたまたまナイアーが当選し強制的にこの種族に転生した。
そしてこの種族にとって、四十の分身体や三段階変身はこの種族にとってのおまけのような物で、全ての完全耐性を無効化にし恐怖・混乱・発狂に対しては二倍の効果を得る…というパッシングスキルがある、そして恐怖効果を付与しその他の能力を持つシモベを無数に召喚する能力を持つ。
そしてナイアーの二人のメイド、ベアとダイアーの二人は彼女の能力を十二分に発揮する為に生まれたのだ。
ナイアーは守護者に対してスキル『外なる神の揺らぎ』を発動した、これは前方に出すオーラ系のスキルで効果は単純に恐怖効果を対象に与えるだけなのだが、先程の完全耐性無効化かつ恐怖を二倍にするスキルのせいで守護者は身動き一つ取れなかった。
言い様のない余りにも不気味なオーラに冷や汗を流し身体を震わせる中、いきなり空気が軽くなる、体感時間およそ数百年…実際は数秒の恐ろしい体験の後、冷たい口調でナイアーが口を開いた。
「デミウルゴス、僕はモモンガ君を部屋に戻すから皆んなに続き宜しくね」
その言葉を最後に二人は転移して玉座の間から消えていった。
「全く!貴女方はなにをしているのですか!?」
その瞬間デミウルゴスの怒声がアルベドとシャルティアに突き刺さる、この激怒に他の守護者は仲裁しない…この二人がこの様な事をするのは日常茶飯事ではあるが、今回はその範疇を超えていた…かの至高の存在であるモモンガを怯えさせ、常に守護者やシモベにも優しい存在であるナイアーを怒られたのだ。
「守護者として嘆かわしい!!特にアルベド!貴女は守護者総括なのですよ!!そんな貴女が!!全く…本来なら自害が妥当ですが、かの御方方はその様な事を望んでいないのは明白……」
「デミウルゴスノイウトウリダ」
「全く…シャルティアは兎も角……アルベド!アンタはもっと自重しなさいよね!」
「えっと……取り敢えず自害がダメなら恐怖公行きじゃ駄目かな?」
デミウルゴスの叱咤を皮切りに他の守護者達が二人を責めるがマーレの言葉にまた場が固まる…そして女性三人が声にならない悲鳴をあげ、流石のデミウルゴスとコキュートスも慌てる。
「マーレ…流石にもうちょっと手心を与えるべきだと思うよ」
「アァ…アノオフタリハジヒブカイ、シカトハンセイスレバ、オユルシ二ナルハズダ……」
「あぅ……それにしてもナイアー様こっ怖かったね」
マーレのその言葉に守護者全員が頷く
「えぇ!そうよ!あれこそナイアー様の力の一端…アインズ様の様に恐怖に耐性がある我等にすら効くあの恐ろしいオーラー…アレが我等が使えるべきお方の一人…!そしてアインズ様を未だに昔のお名前でお呼びできもっともアインズ様の為に行動するお優しいお方…」
「アレホドノキョウフハ、ブジンタケミカヅチサマニソウゾウサレテカラ、ハジメテノケイケンダッタ…」
「えぇ、ナイアー様は私を食事に呼ばれた際も気を遣ってくれ然も労いの為頭を撫でようとしてくれた慈悲深いお方です」
アルベドがウットリとしながらナイアーを讃え、デミウルゴスも続くが…彼の言葉に守護者全員が固まる。
「どういう事デミウルゴス!?なっなななナイアー様と!?わっ私はお二人とそんな事すらした事ないのに!」
「ナイアー様とお食事に頭なでなで未遂!?」
「ナントイウコトダ…」
「いいなぁ……」
「うっ羨ましい…」
羨望の眼差しを受け誇らしげにし眼鏡のズレを治しながら皆の方を向き直る。
「さて…それではナイアー様の言う通り続きを話しましょう」
「ナイアーさん…ごめんなさい」
「んふ…大丈夫だよ……私こそ守護者の皆んなに怒っちゃった…ごめんね」
ナイアーの部屋でモモンガはナイアーに膝枕をされながら頭を撫でられていた、ポツリと呟くモモンガの言葉にナイアーは優しい口調で答える。
多数の分身体を持つナイアーは今のモモンガの状態をよく理解していた、性転換の際に慣れていない場合…精神が身体に引っ張られる。
迂闊だった、もうちょっと慣れてから守護者達に合わせれば良かった…それに自分があんなに怒るなんて思いもしなかったし皆んなに申し訳なかった。
「私の為に怒ってくれたんですよね?大丈夫です…みんなも分かってくれます」
その言葉にニコリと笑みを浮かべながら、暫くの間モモンガの頭を撫で続けた。