「シズ、周囲に何かあったか?」
「いえ周囲には敵対的な生物等脅威になる物はないです…」
「やはりか…いたとしても無害な小動物か」
周囲の探索が一通り終え、シズの元に帰りがてらユグドラシル時代と同じ様に動けるのか試しに何匹かの兎などを神器級の槍『ペールスピア』で仕留めたいたのだ、その亡骸はレギオン自らが調理…とは名ばかりの焼いただけの粗雑をセバスや兵団員に振る舞った…調理の際にセバスから悲鳴にも似た声で止められたが兵団員の説得で何とか納得した。
「はい……」
返事をしたシズの視線はガンナーの性か自然と腰に下げているプラズマピストルに向けられていた。
「これが気になるか?」
「はい……レギオン様と貴方様に付き従う『
その言葉にヘルメットの中で苦笑した、ボルトウェポンを筆頭にした銃火器はほぼ
恐らく其れ等の所為でこの様な勘違いをしているのだろう。
「要求ステータスが高すぎる所為で大体のプレ…無象なる者達には装備出来なかっただけだ、私や大逆兵団専用などではない…気になるならグレードは落ているがコレをやろう」
プレイヤーと言いそうになり咄嗟に言い換え、気になるならとアイテムボックスにある物を渡そうと考えるが…果たしてこの未知の世界でも取り出せれるのだろうか考えながら、虚空に手を伸ばす… ズッとまるで手が湖面に沈むように空間の中に入りその中で腕を横にスライドさせる。
まるでドアを開ける様な仕草をすれば、窓の様な物が開き其処には無数の銃火器や剣などが並んでいた。
その中を次々とスクロールし、渡す予定の伝説級のプラズマピストルを取り出しシズに差し出す。
「そんな…!私の様な者には余りにも勿体無い物…!頂けません…!」
「そうか…今後の働きに期待しての物だったがそれでも貰ってくれないのか」
「…ッ‼︎申し訳ありません!自害を…」
「自害等下らない事はやめろ…我等
失望されたのかと思ったシズは咄嗟に魔導銃を首に当て自害をしようとするのをすんでの所で止め、説得し漸く受け取ってくれてレギオンは内心苦笑しながら溜息を吐く、まさかプレゼント一つでこうなるとは予想していなかった。
『レギオンさん聞こえてます?』
脳内に直接声が響く、モモンガが『伝言』を使ったのだろう。
『勿論聞こえてますよ?どうしました?』
『さっきセバスにも伝言で話したんですけど、20分後に各階層の守護者が円形闘技場に来るのでその前に来て欲しくて…それより夜空が見えるって本当ですか⁉︎』
『分かりました、えぇそれはもう綺麗な夜空ですよ』
『いいなぁ!後で一緒に行きましょう!』
『良いですねぇ、此方は周辺調べ終えたんで今から戻りますね』
そう言うと伝言が切れる、それから兵団員とシズに戻る様に伝え兵団員には後から要塞院に向かう旨を伝え、この場にはレギオンとセバスの二人しか居なくなった。
「このまま戻っても良いが…少しばかり面白くするか」
そう呟けばレギオンの身体が変化していき身長が役2m程の体格が一瞬で白衣を着た小柄な人狼の少女になっていた。
「これは……」
「んふふ、驚いたセバス?これが私の種族『ナイアーラトテップ』のスキル、『数多なる化身』だよ」
レギオンの代わり様に目を見開き驚愕するセバスを当の本人はケラケラと笑っていた、数多なる化身と言う常時発動型のスキルは10人の全く別のキャラクターを作成出来き、一瞬でそのキャラクターに変化出来ると言うユグドラシル内でもトップクラスに壊れているスキルである。
とは言え作成したキャラクターは一からレベル上げをしなければいけず、獲得経験値も普通よりも低く特殊なクラス… ワールドチャンピオンやワールド・ディザスター等は習得出来ない、ナイアーラトテップは悪魔の様に三段階まで変身が出来、その最終形態時には変化完了まで一分程掛かり尚且つ移動が極端に遅い等制約はあるが其れを補って余る程にこの種族は強力なのだ。
先程迄のレギオンの姿も化身の一つである。
「それじゃセバス行こうか」
「……失礼ながらレギオン様、貴女様にはリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンをお持ちの筈では?」
セバスは不思議そうに薬指に装着している、至高の四十一人しか持つ事が出来ない指輪を見る。
「ん…あぁ、でもただ転移するだけじゃ面白くないだろ?」
「畏まりました…」
「んふふ…私は中々小さくて歩くのが大変なんだ、出来ればそうだねお姫様抱っこでもしてくれないかね」
「……畏まりました」
断れば恐らくゴネ、約束の時間迄に間に合わなくなるだろう…それはレギオンにとっても非常に不味いと考えたセバスはそのまま丁寧に抱き上げお姫様抱っこをし、細心の注意を払いかつ僅かな揺れすらも許さぬ様に上半身を一切動かさずに目的の円形闘技場まで疾走した。
「お待たせして申し訳ありませんモモンガ様」
「やぁやぁモモンガ君に守護者の皆んな」
既に他の守護者が集まる中、セバスにお姫様抱っこをされたままのレギオンはヒラヒラと手を振りながら現れた。
「え」
「くふー⁉︎」
「「わっわー⁉︎」」
「ありんす⁉︎」
モモンガはその登場に顎を外しながら光り、アルベトはレギオンの薬指に付けている指輪に驚きそのまま後ろにいるシャルティアとアウラ、マーレに倒れ掛かり、3人は必死に何とか押し戻そうとしている。
「遅くなってすまないね…随分と面白い事になってるじゃないか」
「……友よ悪戯も程々にして欲しいものだな」
光終えたモモンガは頭を抱えながら言った。