Unreally   作:羅糸

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新学期 キラキラした出会いが待ってるかも!

 スマホから目覚ましのアラームが鳴る。

 聞くと元気になれるようなキラキラした曲だ。

 

 その音楽と共に一人の少女がベッドから目を覚まし起き上がる。

 あくびをし、目を擦りながらスマホを取りアラームを止める。

 

 スマホを一通り確認した後、少女は立ち上がり

学校へ行く仕度をする。

 

 仕度が完了し、玄関でいってきまーすと言って家を出た。

 

 外へ出た彼女は起きたときとは違い、赤みがかった黒くて長い髪を二つにまとめおさげにしていた。

 あほ毛と少し横にハネたくせ毛が特徴的だ。

 

 彼女は口元を少し緩め、これからのことを考えながら、学校へと歩いていた。

 

 今は4月。

 彼女、双葉(ふたば)つむぎは高校二年生だ。

 クラス替えがあったり心機一転するのにぴったりな時期である。

 

 スマホで確認したあることがより彼女をわくわくしていた。

 

 

「うわっ!」

 

 

 その時だった。

 なにもないところでつむぎはつまずき体勢を崩す。

 このままでは地面へ倒れる

 と思いきや左肩を誰かに捕まれ、転ぶことなく体勢を元に戻した。 

 

 

「おっとっと、もー危ないなぁつむぎは」

 

「えへへ、ありがとうひなたちゃん」

 

 

 振り向くと、つむぎにとっては見馴れた少女

 雨宮(あまみや)ひなたが

 オレンジ色の髪をなびかせていた。

 

「なに考えてたのかは知らないけどしっかりしてよねぇ。つむぎは小さい頃からなんか機嫌がいいと危なっかしいんだから」

 

「わたし機嫌いいかな?」

 

「るんるん気分でスキップしてたよ」

 

「えっ、ほんとっ!?」

 

「あぁ、やっぱ無意識なのねぇ…」

 

 

 幼馴染みであるひなたはいつものことかのように呆れた雰囲気で話す。

 

 確かに気分がいいとまわりが見えなくてドジを踏む事はよくあるつむぎのくせだった。 

 

 あはは、とつむぎは苦笑いをし二人で並んで歩き話を変える。

 

「今日から二年生だね。今年は一緒のクラスだといいね」

「そうだねぇ。去年は別々だったもんね」

 

 そうである。

 小さい頃から中学生までは同じクラスだった。

 高校一年生になってはじめてバラバラのクラスになったのだ。

 

 するとにやりとひなたは笑いつむぎを見つめる。

 

 

「ししっ、クラスが別と知ったあの時のつむぎの顔、忘れてないよー」

 

「だ、大丈夫だよ!一年のときはことねちゃんとも友達になれたし、今度もひなたちゃんと別々でも平気だよ!」

 

 

 ウインクをし、いたずらっぽく言ったひなたに対して、つむぎは少し恥ずかしながら言う。

 

 

「そんな寂しいこと言うなよー。二年のクラスは三年になっても一緒だからこれで最後のクラス替えなんだよ?」

 

「そっか……最後のクラス替えか」

 

 

 ふと思い出したかのように言う。

 

 

 つむぎたちの通う高校姫乃女学園は二年生のときのクラスが三年生になっても引き継がれる。

 クラス替えをしないのは受験に影響を及ぼさないためだとか聞いたことはあるがよくは知らない。

 

 

「みんな一緒だといいね」

 

 

 ちょっぴり不安を感じながらつむぎは呟いた。

 

 

  ◇

 

 

「みんな一緒でよかったー」

 

 

 学校につきクラスを確認し席についたつむぎは、安堵とにっこりとした笑顔を見せる。

 

 つむぎの机を囲むように左にひなた、右に緑髪の少女が立っている。

 

 

「ことも二人と一緒で嬉しいよ」

 

「ことねちゃんもまたよろしくね!」

 

 

 緑髪の少女、保栖(ほずみ)ことねは微笑みながら言った。

 ことねはつむぎのもう一人の友達だ。

 

 引っ込み思案なつむぎにとって、この二人が同じクラスなのはとても心強い。

 

「そういえばつむ、髪飾りいつものとちがうね」

 

 ふと、ことねが気付いたかのように言う。

 

 そうである。

 つむぎはいつもピンクの髪止めとリボンをしていた。

 しかし今日は違う。

 

「えへへ、それはねこころちゃんが言ってたからなんだ」

 

 そう言ってつむぎはスマホを手にとる。

 そしてDreamtubeと書かれたアプリを開き一つの動画を見せる。

 

 開いた動画には黒髪をベースとしたハーフツインに、所々いろんな色をしたメッシュがつけられた女の子が表示される。

 

 その姿は非現実的でアニメのキャラのみたいに思えた。

 

「あなたの心は何色? 

 私は虹色! アンリアルドリーマーの七色(なないろ)こころです!」

 

 元気な声でつむぎが言った名前と同じこころという少女が喋り出す。

 

「今日の色占いのコーナー! 今日は新学期の人も多いから新学期の運勢が上がる占いをするよ!」

 

 そう言って彼女はテレビ番組の朝の占いみたいに、占い結果を表示していき説明していく。

 

「やぎ座の人は今日運命を変えるきっかけが起きる日かもっ。ラッキーカラーは白黒!白と黒のものを身に付けると運勢が上がるかも!」

 

 こころはにっこり笑いながら全部のメッシュを白と黒に変化させ光らせる。

 やぎ座はつむぎの生まれた星座だ。

 

 

「なるほど、だからイメチェンして朝からうきうきなのねぇ」

 

 

 ひなたは腰に手を当て、ふーんといった感じに言う。

 

 朝からわくわくしていたのは、二年生になるからだけでない。

 この動画を見て、胸に期待を抱かせていたからだ。占いに影響されて、髪飾りも白と黒のものに統一している。

 

 

「つむはほんとにアンリアルドリーマーの動画が好きだね」

 

「うん、アンリアルドリーマーはみんなすごくて、輝いてて大好きなんだ! とくにこころちゃんはわたしの憧れだもん」

 

 

 つむぎはとても目を輝かせて言う。高校生になりスマホを持ち、つむぎが興味を持ったのがDreamtube(ドリームチューブ) という動画配信サイトで動画や生配信をしているアンリアルドリーマーだった。

 

 アンリアルドリーマーは仮想世界で活動してる

 動画配信者、ドリーマーのことだ。

 略してUドリーマーと呼ばれることもある。

 

 その世界で活動しているアンリアルドリーマーは非現実的な容姿、性格をしている。

 

 動画内容も多彩。

 やってみた動画や音楽、

 料理動画、旅行風景

 バラエティ番組風だったりそのさまざまなことが普通の生身のドリーマーでは出来ないことでさえ、個人で簡単にできるのが、アンリアルドリーマーの特徴だ。

 

 そして七色こころはそのアンリアルドリーマーの元祖。

 チャンネル登録者は活動4年にして、5000万人を越える。

 

 AIが組み込まれたアンリアルドリーマーで、さまざまなジャンルの動画を毎日たくさん上げている。

 

 色占いもその一つでラッキーカラーを身に付けるといいことが起きる確率が多く信じている人も多い。

 

 そのファンであるつむぎは運命を変える何かが起きるのを期待していて、キラキラしたなにかを期待していた。

 

 

「とにかくねっ、こころちゃんはすごいんだー」

 

「そこ、どいて…」

 

 

 つむぎがうきうきしながら、こころに対する情熱を語っていると、後ろから冷たい声が聞こえてくる。

 

 それはことねでもひなたでもない別の誰か。

 振り向くとそこには水色の髪の小さい少女がするどい目付きで睨んでいた。

 

 

「ああ、ごめんね。黒葛さん」

 

 

 どうやらつむぎの左隣の席の子のようでひなたが邪魔だったらしい。

 ひなたは素直に移動しつむぎの正面に来る。

 

 それを確認した水色の髪の少女は席につきヘッドホンで曲を聞き始める。

 横顔を見ようとしたが右目は髪で隠れていて見えない。

 

 

「あれ誰?」

 

「あの子は黒葛(つづら)さやさん。一年のときあたしと同じクラスだったけど、人と関わるのが好きじゃないみたい」

 

 

 へぇ、とつむぎは呟く。

 隣の席だから仲良くできたらしたいが、引っ込み思案なつむぎにはハードルが高い相手だと思った。

 

「それはそれとしさ…」

 

 雰囲気を変えるためにひなたが話しはじめる。

 

「そんなにUドリーマーが好きなら、つむぎはUnreally(アンリアリィ)やったりしないの?」

 

「Unreallyについてはよくわからないよ。ときどき聞くけどそれってなんなの?」

 

 

 アンリアルドリーマーの動画の中でUnreallyという言葉を何度か聞くことがある。

 しかしつむぎはそれについてよく知らなかった。

 

 

「そっかじゃあ説明したげる。

 UnreallyっていうのはフルダイブVRSNS。

 仮想世界っていった方が通じるかな?

 まぁ簡単な話、Uドリーマーたちがいる世界と同じ場所だよ。それがあるからアンリアルドリーマーは存在できて、動画を配信できるんだ」

 

「へぇ、詳しいんだねぇひなたちゃん」

 

「まぁやってるし……って、と、時々ねっ!」

 

 なぜかしまった! 

 といった表情で言うひなた。

 それに不思議を抱くつむぎだがそれよりも疑問に思うことがあった。

 

「でもそういうのってパソコンだったりいろいろ必要なんじゃないの?」

 

「ううん、大丈夫。ヘッドセットさえ買えば……まあそのヘッドセットがそこそこするんだけど」

 

「どれくらい?」

 

「それは……ごにょごにょ」

 

 

 厳しい顔をしたひなたが耳元で値段を囁いてくる。

 その金額を聞いたときつむぎの時間は、一瞬停止したように見えた。

 

「そ、そんなお金ないよ……お小遣い何ヵ月分だろう…」

 

 ひなたのいった金額は、最新ゲーム機が買えるくらいの値段だった。

 多少貯金はあるがそれでも足りない。     Unreallyの話を聞いたときには、胸踊る世界にときめいたが現実は遠いように感じた。

 

「ちょっといいかなつむ?」

 

 涙目になってたつむぎの肩を話しに入ってこれてなかったことねが手を置く。

 

 

「Unreallyやアンリアルドリーマーはことよくわからないけど、バイトなら紹介できるよ。やってみる?」

 

「ほんとに!? うん、やる。わたしやってみる!」

 

 

 ことねの提案につむぎは乗る。

 その未来に期待を乗せて。

 その未来が輝かしい未来なのを願って。

 

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