Unreally   作:羅糸

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仁瀬のあ

 夕方の駅前。そこはつむぎと咲夜にとって大事な場所。

 

 いつものように咲夜はギターを演奏しつむぎはそれを聞きながら衣装のデザインをしていた。

 

 咲夜の演奏を聞きながらデザインをするのは作業が捗った。この時間は彼女の演奏を歌を独占できる特別な時間だ。

 

 加えてさきほどのシマリの応援の言葉がつむぎの頬を緩ませる。

 

 そんなことを考えていると一曲演奏しきった咲夜がギターをしまい、つむぎの方へと向かってきた。

 

 

「随分嬉しそうな顔してるねつむぎ。なにかあった?」

 

「えへへっ実はシマリちゃんから次のUフェスの応援のメッセージもらったんだ。コンテストもあるし頑張ろーって思ってね!」

 

「そっか、それは良かったね」

 

 

 つむぎは嬉しくて咲夜に先程あったことを言う。

 

 プロのデザイナーとして活躍してるシマリから直接応援メッセージをもらえるなんて夢にも思ってなかった。

 前に運よくコラボする機会があったとはいえまさかまたシマリと会話できると誰が思うだろうか?

 

 今回のコンテストは入選すれば夢に一歩近づける。言わば力試しだ。

 だからこそ素敵な衣装を作らなくてはいけない。つむぎは精一杯、自分の全力を出すことにした。

 

 

「あの、Uドリーマーの小太刀咲夜さんですよね?」

 

 

 すると咲夜を呼ぶ一人の少女の声が聞こえた。

 そこにいたのは茶髪のボブに青い帽子を被り黒い眼鏡をかけた少女だった。

 

 

「そうだけど、なにか用?」

 

「良かったらぁ! わたっち仁瀬のあって言います! いつも応援してるずら!」

 

 

 少し独特な訛り方で喋る少女のあは胸を撫で下ろし嬉しそうに言った。

 彼女はどうやら咲夜のファンらしい。

 咲夜のファンの女の子が咲夜を応援しにここに来るようなことは時々あった。

 

 

「わたっちもUTAOを使って音楽作ったりしてて咲夜さんの曲はたいへん勉強になるべ。あの、よかったら咲夜さんの曲作りについてとかいろいろと詳しゅう聞かせてくれんませんか?」

 

 

 だが彼女は普段見るそのファンの子達とはちょっと違った雰囲気を醸し出していた。

 

 

 ◇

 

 

 つむぎたちはそれから近場のレストランにへと入った。

 座って会話をしようと提案したらのあがここへ誘ってきた。どうやらおすすめの場所らしい。

 

 

「すみませんモヤシパスタ、もやし多めでおねがいします」

 

 

 席に座りメニューを注文しようとした時のあがちょっと疑問に思うような事を言った。

 それからすぐに店員がドーンと、もやしがたくさん乗ったパスタを差し出した。

 

 

「もやし……好きなの?」

 

 

 咲夜が少し引くかのような表情で言う。

 このもやしの量といいメニューといい謎だった。

 

 

「はい。好きってかわたっちが子供の頃から貧乏なせいでよく食べてて大好物なんです。Unreallyの機械も福引きで当てちょるね」

 

「へぇ……そうなんだ」

 

 

 つむぎはその過去を聞くと少しだけ納得がいった。のあは美味しそうにもやしのパスタを食べている。

 

 もやしが好物だと言い張るくらい貧乏だと言うことは結構ハードな人生を送ってきたのかもしれない。そう思うとのあにはUnreallyだけでも好きなだけ食べたいものを食べてほしいと思った。

 

 

「じゃあ曲のことについていろいろ聞かせてもらいますね。まず作曲はどういう行程で作っていますら?」

 

 

 数口パスタを食べたあとのあは口を拭いてメモ帳を手にした。

 その目付きは真剣なものだった。

 だからか咲夜も真面目な表情になり口を開く。

 

 

「私は自分が伝えたいことを考えながら想いをぶつけるように演奏をしてそれをベースに作曲、編曲しているよ。そこから自分の考えを深掘りしていって伝えたい歌詞をメロディーに合わせて書いてる」

 

「なるほど……」

 

 

 咲夜の言うことに対しのあは重要な箇所をメモするようにメモ帳に書いていった。

 

 のあの質問はおよそ20分近くにも及んだ。

 

 

「ありがとうございました。とても参考になります!」

 

 一通り質問が終わり満足したのか、のあはモヤシパスタを食べきり言った。

 

 

「そういえばのあちゃんUTAOで作曲してるんだよね。のあちゃんはどんな曲作ってるの? 動画とか投稿してない?」

 

 

 つむぎは気になったことを聞いた。

 ここまで熱心に聞いているのだ。

 つむぎも少しのあの曲を聞いてみたいと思っていた。

 

 

「それはっ! 趣味でやってるだけなので他の人には見せる予定はないちょる……です」

 

「そっか。のあちゃんの作った曲聞いてみたかったかも」

 

 

 手を大袈裟に振り無理無理と言うポーズをして拒否するのあ。

 少し残念だが本人が否定するなら強制するわけにはいけない。

 

 

「まぁ曲はすべて誰かのために聞かせるものとは限らないから」

 

 

 咲夜がのあのフォローをするように言いコーヒーを飲みきる。

 

 

「はい、今日は本当にありがとうございました。咲夜さんを大舞台で間近で見れるのを楽しみにしています!」

 

 

 最後にのあが帽子をとってお辞儀をし、立ち去って行った。

 

 

「のあちゃんちょっと不思議な子だったね。方言っぽい独特な訛りとか」

 

「うん、あんな子が私のファンにいたんだって思ったよ」

 

 

 咲夜とつむぎはのあが立ち去ったあとそのままレストランで会話を続けていた。

 

 

「咲夜ちゃんはフェスに出す新曲の方は順調?」

 

 

 つむぎはフェスの話題を出した。

 咲夜が次のフェスで新曲を披露することをつむぎは知っていた。

 肝心の曲はまだ内緒と一切聴かせてもらってないが。

 

 

「まぁぼちぼちかな。伝えたいことを私は伝える。それだけだよ」

 

 

 咲夜はつむぎの目を見て言った。

 緑色の瞳がただ純粋に語りかける。

 

 

「そっかぁ。よーし、じゃあわたしもがんばるぞー!」

 

 

 つむぎは咲夜の熱意に負けないようにシマリやファンのみんなの期待に応えるためにこれから本格的に頑張ることを決意した。

 

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