つむぎはその日からUフェスに出す衣装を考えていった。もしこの衣装が現実で再現され製作されたらどうなるんだろう。
肌触りなどの質感はもっと細かく繊細になっているのだろうか。
自分の衣装がもっといろんな人に知れ渡って欲しい。ああなったらいいな、こうなったらいいなと妄想する。
そんなこんなでつむぎは渾身の衣装が完成させ8月の中旬、Uフェス当日を迎えた。
一日目は展示、販売メインである。
つむぎはその日一人自分の出展販売スペースで待機して一般入場がされるのを待っていた。
咲夜は三日目に向けて練習がしたいらしく一緒にはいない。後で出展スペースの写真を送ることは約束していた。
ドン! と大きな音がなる。
パステルピンクの空に花火が上がっていた。
それは午前9時、一般入場が開始される合図で一般参加者がたくさん展示スペースに押し寄せて行く。
「はじまったかぁ……どれくらいお客さん来るかな?」
つむぎは少し不安に思いながらもお客が来ることを待っていた。
事前に参加の告知動画は出していた。
作った衣装の一部も実際に着て見せて、これを購入したい人は是非Uフェスへきてねと言った内容のものだ。
果たして今回はどうなるやら……
「つむぎちゃんこんにちは!」
すると思ったよりすぐにつむぎのところにお客がやってきた。
「あかねちゃん! 久しぶりだね!」
それは初期の頃からつむぎと咲夜のファンとして応援してくれる子の一人紅あかねだった。
「真っ先に来ちゃいました! これが今回の衣装ですね」
あかねは展示されている衣装たちを回るように見ていった。
「どれもかわいいです! 特にこの衣装が自分は好きです!」
「ほんとっ!? それ一番の自信作なんだ!」
あかねが一番気に入ってくれた衣装はつむぎが今回一番力を出してデザインした衣装だった。
それはクリーム色をベースに青色が少し模様ととして入ってあるカーディガンに水色と黒のボーダーのシャツ。紺色のミニスカートと言う組み合わせのものだ。
特にカーディガンはつむぎの普段着ている服の色をイメージしてリメイクしたものだ。
「全部一着ずつ買います!」
「ありがとう! いつも買ってくれてほんと嬉しいよ!」
あかねに感謝をするつむぎ。
つむぎは他にも衣装を時々作っては販売していたことがあるが毎回購入者履歴にあかねの文字が表示されていた。
Unitterではその衣装を着て写真を上げていてくれたりほんとに熱心なファンであった。
「そういえばデザインコンテストにこの衣装も出すんですよね? きっとつむぎちゃんなら入選できます! 自分信じてます!」
「えへへ、そうかな? わたしも最優秀賞に選ばれてデザイナーへの一歩に近づけたらいいなって思ってるよ」
「きっとその夢叶いますよ! 自分は応援してますんで頑張ってくださいね!」
予想以上に誉められて照れるつむぎ。
それからしばらくしてあかねはその場から去っていった。その後すぐまたお客がやって来て接客をしながらファンとも交流をし衣装を販売していく。
ブースにはどしどしと人が押し寄せてくる。
盛り上がりは去年以上だ。
それはひとえにつむぎのファンが増え知名度も上がったと言うことが理由付けられるだろう。
衣装の評判も上々でこれはコンテストでもいい評価をもらえるに違いないとつむぎはどこかで確信を持っていた。
◇
そして迎えたUフェス二日目の夕方。
あるステージにこころとシマリが立っていた。
つむぎもそのステージを緊張しながら見ている。
「さて! いよいよ迎えました。今回のUフェスの一大企画の一つ、衣装デザインコンテスト結果発表!」
「応募いっぱい来て審査するのが大変だったって関係者の人が言ってたとよー。うちも見たけどみんないい衣装ばっかで選ぶとしたら迷うけんね」
こころの後にシマリが言う。
今がデザインコンテストの審査結果が発表される時。
シマリは司会としているのは彼女がデザイナーであるが故だろう。だが今回審査は彼女はしてないらしい。
もっと上の衣装を製作してくれるコラボ会社のベテランデザイナーたちが審査してふさわしいものを選んでるらしかった。
「では長話も無駄なのですぐに結果発表にいきましょう! まず入選作品から!」
こころが言い入選作品が表示されていく。
緊張の時間だった。
これで自分の実力が分かる。
つむぎは唾をのみこみ手を握りしめながらステージのスクリーンを見た。
「それでは最後に最優秀賞……見事一番に輝いたのはこちらばい!」
「……ッ!?」
つむぎはそれを見ると目を見開いた。
◇
Uフェスの二日目が終わった後咲夜はつむぎを探していた。
連絡しても一切つむぎは電話にでない。だがUnreallyにログインはしている状態だ。場所はフレンド欄からある程度確認することができる。
そのつむぎがいると思わしき場から一番近くにあるワープポイントに転移し、くまなく探していく。
するとつむぎは案外早く見つかった。
その場所は一度だけ来たことのある場所だ。
ひそかたちにそそのかされてつむぎが告白ドッキリをしかけてきた公園だ。
その公園のブランコでただ一人ポツリとつむぎは地面から足を浮かせて下を見たまま暗い顔をしていた。
咲夜の足音が聞こえたのかつむぎはこちらに顔を向ける。
「えへへ……コンテスト、最優秀賞どころか入選すらしなかったよ。きっと入選できるって自信があったのに……これが現実なんだね」
「つむぎ……」
つむぎは笑っていた。しかしそれは心の底からの笑いではない。
彼女の笑みはひきつっていた。無理をした笑顔だ。
そして彼女の瞳からは次第に涙がポツリと落ちていく。
一粒また一粒と涙の量は増えていく。
「なんでかな……なんで涙が出るのかな。ただのわたしの力不足なのに」
彼女は泣いていてもまだ頬を無理矢理ひきつって笑っている。右手はぎゅっと力強く握られていた。
「…………」
咲夜はつむぎの瞳から出る涙を右手の人差し指で拭く。
そして優しい微笑みを見せて咲夜は言った。
「無理しないで……泣きたいなら泣いていいんだよ」
「咲夜ちゃん……」
その言葉はつむぎを吹っ切れさせたかのように一つのスイッチを押されたかのように涙の量が増えていった。
「うっ……うわあぁぁぁぁん!」
つむぎは立ち上がりそして咲夜に抱きついた。
「せっかくシマリちゃんが応援してくれてみんなが応援してくれてっ! なのに入選すらできなかった! みんなにちやほやされて勝手に浮かれて入選できると思っちゃって結果はこれ! ……馬鹿みたい」
つむぎは思いのままずっと込み上げていた感情を咲夜にぶつける。
咲夜はつむぎを優しく抱き締め頭を撫でた。
「私は不器用だから今のつむぎをどう励ませばいいかよくわからない。こうやって側にいてあげることしかできない」
すると咲夜はつむぎを抱き締めるのをやめ距離を取る。そして真剣な目付きで言う。
「だから、明日私の歌を聞いて……私の伝えたい想いをぶつけた歌を」
それが咲夜のできる咲夜なりの励ましかただ。