Unreally   作:羅糸

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演劇 シャルロット

 迎えた文化祭当日。

 つむぎは体育館でステージイベントをひなたと一緒に見ていた。

 目的はさやとことねたち軽音部の演奏とそまりのクラスの出し物だ。

 

 

『次は1年B組による演劇です』

 

 

「そまりちゃんのクラスだ。そまりちゃん主演って聞いたけど大丈夫かな?」

 

 

 アナウンスが流れつむぎが隣に座っていたひなたに向かって言う。

 つむぎは心配していた。

 そまりはあがり症なのだ。

 彼女が主演を務めると聞いてつむぎは大丈夫か不安であった。

 

 

「大丈夫っしょ。なんたってあたしが直に秘策を伝授したんだから」

 

 

 だがひなたは腕を組みながら言う。

 それを聞きつむぎは首を傾げる。

 二人はいつの間に仲が良かったのだろうか。

 

 

「やけに自信満々に言うねひなたちゃん。なにをしたの?」

 

「ししっそれは二人だけのひ・み・つ」

 

 

 ひなたはいたずらっぽく片目を閉じて言った。

 

 

 ◇

 

 

 舞台裏、そまりは緊張していた。

 心臓の鼓動がバクバク鳴っている。

 

 当然だ。

 演劇の主演を務めるのだ。

 普通の人でさえ緊張するであろう役をあがり症であるそまりがやらなくてはいけない。

 

 失敗したらどうしよう。

 台詞が言えなかったらどうしよう。

 そんな事で頭がいっぱいになる。

 

 そんな不安を押さえ込むためにそまりは手をぎゅっと握りしめて胸に当てた。

 

 そまりはひなたに言われたことを思い出す。

 

 

「いい? まず演技をするのに重要なのはそのキャラの心理、キャラの深堀りをすること。そのキャラならどう行動してどう演じるかを考える。演技に没入できればあがり症も気にならなくなるよ……実際つむぎとか冬のUフェスで歌うことと目的地につくことで精一杯で終わるまで気付かなかったし。そまりはさ……できると思う?」

 

 

 喫茶店で相談してもらったときひなたに言われた言葉。それは深くそまりの心のに残っている。

 そまりは答える。

 

 

「たぶん……で、できます……いえ、絶対やってみせます!」

 

 

 真剣な表情でそまりは言った。

 するとひなたは笑顔を見せる。

 

 

「なら気合いは良し! きっとどうにかなる!」

 

 

 それはそまりにとって背中を押してくれる言葉だった。

 

 

 

 

 

「すぅ……よし」

 

 

 ひなたとの会話を思い出すとそまりは緊張が自然とおさまっていた。

 今からそまりはそまりでありそまりじゃない。

 シャルロットという物語の主人公になるのだ。

 強い決意を胸にそまりは演劇がはじまるのを待った。

 

 

 ◇

 

 

 閉じていた緞帳が開く。

物語が始まる。

 そこにいたのはそまりだ。

 彼女はボロボロな衣装を着ていた。

 

 

『あるところにシャルロットという一人の少女がいました』

 

 

 一人の少女が語り部としてナレーションをする。

 その声はそまりの友達である雪ノ瀬せつだった。

 

 シャルロットというのがそまりの演じる主人公らしい。

 

 

『シャルロットは病気のおばあさんの面倒を見てる心優しい女の子です。シャルロットは絵本が大好きでした。』

 

 

 おばあさん役の少女の看病をしたり絵本を読むそまりが舞台上で演じられる。

 彼女は緊張している姿を一切見せていなかった。

 彼女には観客は目に見えてなくて演技に没頭しているように感じられた。

 

 

『絵本の世界のお姫様のように彼女は舞踏会に行きお姫様になりたいと強く願っていました。お城で行われる舞踏会はもうすぐです。しかし、少女には舞踏会へ行くためのドレスがありません』

 

 

 

「ごめんね。かわいいドレスを買ってあげられなくて」

 

「いいのおばあちゃん。ここからお城までは遠いからどっちにしろいけないもの」

 

 

 ベッドで横たわるおばあさんをみながらシャルロットは言う。

 

 

『シャルロットとおばあさんの住む場所は森に囲まれててお城は遠い場所にありました。シャルロットは夜、絵本を読みながらつぶやきます。』

 

 

「はぁわたしも絵本の国のお姫様のようになれればいいのに」

 

 

『現実には魔法使いなんて都合のいい存在はいません。シャルロットは憧れだけを抱き続けます』

 

 

 するとそれを窓の奥でみていたものがいた。

 

 

『それを森の動物たちは見ていました。

 森の動物たちはシャルロットと仲良しでたちが怪我をしたらシャルロットがいつも手当てしてくれます。そこで動物たちは団結します』 

 

 

「シャルロットのためにドレスを作ろう!」

 

 

 動物たちは小さな人形でできていた。

 それを裏方の子達が操って声を出しているようだ。

 

 

『動物たちはドレス作りを始めます。

まず羊の毛を刈りドレスの生地を作っていきます。そしてぶどうを使い生地に色をつけていきました』

 

 

「ガラスの靴はつくれないけど木の靴ならボクたちが作るよ!」

 

 

『リスたちが木をかじり木の靴を作っていきました。みんながシャルロットのために一生懸命でした』

 

 

『そして舞踏会当日』

 

 

「シャルロット目を覚まして! 今日は舞踏会だよ」

 

 

 動物たちがベッドで眠っているシャルロットを起こした。

 

 

「え?動物さんたち? 私は舞踏会には行けないよ」

 

「これを見て!」

 

「これは!?」

 

 

『シャルロットは動物たちが作ったドレスを見て驚きます』

 

 

 それは羊の毛でできた青いドレスに木で出来た青い靴だった。

 それを手に取るとシャルロットは一度舞台裏に隠れる。 

 そしてまた姿を現した時にはその衣装を着ていた。

 

 

『シャルロットは早速ドレスに着替えました。最後に花の冠を被ります』

 

 

「これが私……!? ありがとう……でもみんな……舞踏会は今からじゃ間に合わないよ」

 

 

『舞踏会のあるお城は遠い場所にあります。歩いていっては間に合いません』

 

 

「それなら僕の背中に乗って! 馬車はないけど馬にだって負けないやい!」

 

 

『そこに現れたのは以前怪我をしていたところを助けたロバでした』

 

 

「シャルロット行ってきなさい」

 

 

 寝たきりのおばあさんが言う。

 

 

「おばあちゃん……」

 

 

 シャルロットは不安そうな表情だ。おばあさんを置いてきていいのか。

 

 

「大丈夫おばあさんはボクたちが面倒を見るから!」

 

 

 しかしその不安を打ち消すかのように動物たちが言った。

 

 

「ありがとうみんな!」

 

 

『シャルロットはロバの背中に乗りお城へと向かいました』

 

 

 そして緞帳は一度幕を閉じる。

 ステージの取り替えを行っているようだ。

 開くとそこはシャルロットの家から舞踏会の会場にへと変わっていた。

 

 

『お城に無事ついたシャルロットはお城の中へ入ります』

 

 

「うう……私ここにいて大丈夫かな……」

 

 

『まわりの女の子たちはみんなかわいくて立派なドレスを着ています。シャルロットは自分がここにいても大丈夫か不安になりました。

 

 そこに一人の王子さまのような男の子が現れます』

 

 

 その男の子役はボーイッシュなそまりの友達火乃まいかだった。

 その男装した彼女の姿は似合っており、みとれそうになるほど綺麗で格好いい。

 

 

「そこの君名前は?」

 

「えっ、そ、そのシャルロットって言います」

 

「シャルロット……いい名前だ。その服もとても似合ってる」

 

「これ……森の動物さんたちが作ってくれたんです。私が舞踏会に着るドレスがないからって」

 

 

 シャルロットはドレスをヒラヒラと揺らせながら嬉しそうに言った。

 

 

「素敵な話だね。良かったら僕と一緒に踊ってくれないかい?」

 

 

『男の子は手を差し伸べます』

 

 

「はい、喜んで」

 

 

『二人はダンスをしました。その後、その男の子は本当に国の王子であることがわかりました』

 

 

「シャルロットよかったらこれからも一緒にいてくれないかい?」

 

「私なんかで……いいの?」

 

「君ほど美しくて心優しい人を僕は見たことがない。君がいいんだ」

 

「私でよければお願いします王子さま//」

 

 

『そうして二人は結婚することになりました。おばあさんの病気もお城のお医者さんにより治り健康な体になりました。結婚式は森で行われて森の動物たちも祝福しみんな幸せに暮らしました。めでたしめでたし』

 

 

 そうして緞帳は閉められ物語は幕を閉じた。

 

 

 

 

 一斉に拍手が巻き起こる。

 物語はとても優しさに溢れた物語だった。

 つむぎもその優しさに包まれ心が暖かくなる。

 なによりそまりがあそこまで緊張せず演技を出来ていたことに関心をしていた。

 

 

「凄いよかったねひなたちゃん!」

 

「うん……さすがあたしの弟子!」

 

 

 ひなたの声は震えていた。

 

 

「ひなたちゃん泣いてる?」

 

 

 つむぎはひなたの顔を見ようと近づく。

 すると視界が真っ暗になる。

 

 

「泣いてないっての! というかそまりにミーシェルの正体バラしたなこのこの~」

 

「えっ!? ちょっ!? なんで今っ!?」

 

 

 ひなたはつむぎの髪をぐしゃぐしゃにするように両手で撫で回した。

 つむぎはあわてふためく。しかしそれはひなたの照れ隠しだったのかもしれない。

 

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