Unreally   作:羅糸

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つむぎ、チート能力得る

 草原の風が心地よく身体に当たる。

 

 目的地の街に向けてつむぎたちは歩き出していた。

 

 するとガサゴソと草むらから物音がする。

 何かが飛び出してきた。

 

 

「あれは……!? スライム!」

 

 

 それは青くて丸いかたまりの、柔らかそうなスライムだった。

 RPGでお決まりのモンスターだ。

 

 ぷよんぷよんと体を揺らしながらピギィと鳴き、スライムはつむぎたちの正面にくる。

 

 

「かわいい~」

 

 つむぎは向かってきたスライムを人差し指でつつく。

 

 ぷるんとスライムの体が振動する。

 見た目通り柔らかい性質だった。

 スライムは怖がりながらもこちらを見つめていた。

 

 

「こんなにかわいいなんて倒せないよー。ね、咲夜ちゃ──」

 

 

 バン! バン!

 

 つむぎが咲夜の方を向いたとき咲夜は銃弾を撃っていた。近くにいたスライム二体に。

 銃弾をくらったスライムは目を×にして消滅した。

 

 

「ピギィ!!」

 

 

 つむぎの手にいたスライムは恐れおののき、つむぎの手を離れ逃げていく。

 

 

「なにしてるの咲夜ちゃん!?」

 

「なにって敵だから倒したんだよ?」

 

「かわいそうだよ!?」

 

「いや……でも倒さないとレベル上がらないし」

 

「そりゃそうだけど……」

 

 

 するとつむぎのステータスに変化があった。

 レベル2になっていた。自分では倒してないが、咲夜と一緒にいたからだろうか。

 ちょっと複雑な気分だ。

 

 

 

「悪いモンスターばかりとは限らないでしょ? ちゃんと悪いモンスターか判断して倒そう」

 

「まぁつむぎが言うならそうするよ」

 

 

 咲夜は納得してくれる。

 この世界のモンスターだってこの世界で生きているんだ。だったらちゃんと命を大切にしたい。

 

 

 しばらく歩いているとまたモンスターが現れた。こん棒らしき武器を持った怖い顔のモンスターだ。

 

 おそらくゴブリンだ。

 

 

「ゴブゴブッ」

 

 

 ゴブリンはつむぎに向かって襲いかかってくる。

 

 つむぎはとっさにマジカルステッキを相手に向けた。

 脳内に一つの言葉が現れる。それをつむぎは唱えた。

 

 

「メラメラファイアー!」

 

 

 杖から魔法が放たれる。

 言葉を唱えることで魔法が使えるみたいだ。

 

 

「ゴブー!」

 

 

 ゴブリンの顔面が燃える。火傷を追いひどく怒っている。あばれてこん棒をあちらこちらに振り回してくる。

 

 

「メ、メラメラファイアー! メラメラファイアー!」

 

 

 そんなゴブリンにつむぎは容赦なく魔法を唱えた。

 炎の連撃がゴブリンを襲う。

 

 

「ゴブゴブゥ!」

 

 

 ゴブリンは炎に焼かれ消滅していった。

 

 

「躊躇なくぶっぱなしたね」

 

「だって襲いかかってきたし、可愛くないんだもん!」

 

「かわいくなければ倒していいんだ……」

 

 

 そんなこんなでつむぎたちは道中襲いかかってくるモンスターを倒していく。

 スライムはかわいそうなので倒さないという約束をして。その代わり多くのゴブリンが犠牲になっていった。

 

 

 

 

「やっとついた!」

 

 

 30分が経ち、ついに老人が行ってた王都グランゼシアについた。

 

 街は外壁に囲まれており、門番の兵士に入国許可をもらってから王都へと入っていく。

 入国するとき兵士は礼をして歓迎してくれた。

 

 

 街は中世で洋風な建物が建っている。

 木造から石材を使ったようなもの、レンガで建ててあるものさまざまな種類の建築物がある。

 

 奥には大きな城が見えた。

 

 外では食べ物を売るNPCらしき街の住人がいる。新鮮な果物や野菜。出来立ての串焼きなどそのすべてがリアルのようだ。

 

 

「ほんとに、異世界に転移してきたみたいだね!」

 

「そうだね」

 

 

 隣にいた咲夜が相槌をくれる。

 

 

「いろいろ見て回りたいけどお金はー……」

 

 

 つむぎはメニュー画面を見る。

 

 レベル7

 職業:魔法使い

 所持金:1200G

 

 と表示されていた。

 

 

「1200Gあんまり買い物はできないかなぁ……これからの冒険のためになに買えばいいかな咲夜ちゃん?」

 

「うーん……とりあえず防御面が不安だから防具屋にいくのがいいと思うよ」

 

「わかった! じゃあ防具屋だね!」

 

 

 防具屋に行くことを決め二人は歩みだす。

 防具屋は意外と早く見つけることができた。

 看板に盾のマークがついており、わかりやすかった。

 

 

「いらっしゃいませー」

 

 

 眼鏡をかけた女性の店員があいさつをしてきた。

 

 

「あのっすいません、魔法使いが装備するのにおすすめの防具ってありませんか? できれば1000G以内で!」

 

「予算1000Gで魔法使い用の防具ですね。それならこちらへ」

 

 

 店員は一つの防具の方へ案内する。

 それは黒いローブだった。

 

 

「魔女のローブです。防御力だけではなく魔力も上がるすぐれものですよ。試着してみますか?」

 

「はい!」

 

 つむぎは試着してみることにする。

 ローブに触る。するとその瞬間ふわっと体が浮く。

 

 見てみると一瞬でつむぎは魔女のローブを着ていた。

 

 

「わぁ……」

 

 

 つむぎはカメラで確認しながら衣装を見る。

 それは魔女らしく着ているだけで魔法使いと分かりやすかった。

 

 ステータスを確認する。

 

 防御力+15

 魔力 +5

 

 

「うん装備としてもいい感じ! これください!」

 

「ありがとうございます。850Gです」

 

 

 その会話でメニューの所持金が1200Gから350Gにへと減っていた。

 

 会話で購入が確定するらしい。いちいち現金を出す手間が省けて良かった。

 

 

「咲夜ちゃんはなにか買う? Unreallyにいるときの姿だと防御力ほとんど0だよね?」

 

 つむぎは咲夜に問う。

 ステータス画面をみて気づいたが、Unreallyにいるときのいつもの服装は防御力が0だった。

 

 だが咲夜は首を横に振る。

 

 

「私は重ね着してるからこれでもちゃんと防御力はあるんだ」

 

「重ね着?」

 

「こっちのゲームは見た目と防具の性能を分けることも可能なんだよ。ちょっとお金は掛かるけど、おしゃれがしたい人は強い防具に見た目重視の重ね着をしている人が多いね」

 

「へぇ」

 

 

 そういえばスマホのMMORPGで見た目装備ガチャみたいなのがあった。たぶんそういうのと同じ仕組みなのだろう。

 

 

「なんか他にもないかなぁ」

 

 

 つむぎは店のなかを見渡す。

 

 

「あれはっ!?」

 

 

 一際神々しく光る盾があった。

 真ん中に青い宝石が埋め込まれ、天使の翼が模様として描かれている盾だ。

 

 

「お客様お目が高いですね! これはラファエルの盾! 今日入荷したばかりの当店で一番の目玉商品です」

 

 

 店員は目を輝かせて言う。

 

 

「あのー……これってお値段は……?」

 

「こちら50000Gでございます!」

 

「ご、50000!?」

 

 

 その値段につむぎは頭がくらっとした。

 とてもじゃないが買うのは不可能だ。

 

 

「いいなー、欲しいなぁ……そうだ!」

 

 

 つむぎはなにかをひらめきマテリアライズペンと紙を取り出す。そして、ラファエルの盾を見ながら絵を描き始めた。

 

 数分後。

 

 

「できた! ラファエルの盾! 見た目だけでもこの盾を今日は使おう!」

 

 

 完成したイラストはラファエルの盾だった。

 それはラファエルの盾そっくりにオブジェクトとして現れる。

 

 

「お、お客様!?」

 

「つ、つむぎそれアイテムの詳細みて……」

 

「へっ……?」

 

 

 驚く二人。店員はいきなりのことにびっくりしたのだろう。

 だが咲夜は別の方向で焦っているように見えた。

 

 

 つむぎはきょとんとしながら手にしたラファエルの盾を見てみる。

 

 アイテム名:ラファエルの盾

 防御力:255

 スキル:属性ダメージ軽減

 

 それは紛れもないラファエルの盾そのものだった。

 

 つむぎはそっくりそのまま描いたためアイテムとして複製に成功したのだ!

 

 

「お、お客様それはい──」

 

「し、失礼しましたぁぁぁぁぁぁ」

 

 つむぎは複製したラファエルの盾を持ったまま咲夜と一緒に店から逃げるように出ていった。

 

 

「はぁはぁ……」

 

 

 息を上げ走り疲れるつむぎ。同じく咲夜。

 

 二人は防具屋から離れるのにそれなりの距離を走った。

 

 

「さ、さ、咲夜ちゃんど、どうしよう! 装備持ち逃げしちゃったよぉ~」

 

「お、落ち着いてつむぎ……」

 

 

 つむぎは涙目になりながら言った。それを静めようとする咲夜。

 

 

「それはつむぎの能力だから別に違反じゃないよ。どうせ明日には消えてるだろうし。まぁ店員の前でいきなり召喚させるのはいらいろまずかったけど……でも、そうだな……」

 

 

 すると咲夜はなにかを考え込む。

 

 

「高いアイテムを描きまくって複製して、それを売れば儲かるんじゃ「それは流石にやっちゃだめだよ咲夜ちゃん!!」

 

 

 恐ろしい事を考えていた咲夜だった。

 もちろんやろうと思えばできないことはないだろう。だがバレたら危ないし人としてやってはいけない領域に入ってる気がした。

 

 チートがあり、なんでもありとはいえそれをやるのは気が引けた。

 

 

「まぁそれは駄目だよね。でもつむぎの能力についてちゃんと解ったからいいんじゃないかな」

 

「そ、そうだね」

 

 

 つむぎは頷く。

 

 マテリアライズペンの能力。

 既にあるものならその通りに描けば同じアイテムができる。

 

 それはアンリミテッドファンタジアに来る前から同じではあったが、ゲームでこれが使えると装備の複製ができてかなり強力だということが分かった。

 

 

「使いどころを考えてちゃんと使おう!」

 

 

 つむぎはこのゲームを楽しむための意気込みを叫んだ。

 

 

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