Unreally   作:羅糸

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足りないもの

 放課後の学校で一つの教室から演奏が聞こえる。

 

 そこは授業で使われない空き教室。他の使われてる教室とは離れてて大きな音を出していても起こられない場所。

 

 今は軽音部がそこを練習場所としてつかっていた。

 

 

 しばらくして演奏が終わる。ギターボーカルを担当していた保栖ことねは一息つくと周りを見た。

 

 近くにはベース担当とドラム担当二人の少女がいる。

 

 

「ふーだいぶしあがって来たんじゃない? これなら文化祭もいけそうね」

 

 

 ドラム担当の紫髪の少女ひびきが言った。

 

 

「だねぇ、でもひびっちのドラムちょっと先走りすぎだよー。もうちょっとマイペースにいこうよー」

 

 

 ベース担当の黄髪の眼鏡をかけた少女、かなでがイチゴのスティック菓子を食べながらひびきに言う。

 

 

「あんたはのんびりしすぎよ! ねぇことねはどう思う?」

 

「ことも二人とおおむね同意かな。でも……」

 

 

 今の演奏に不満はない。自分達の演奏はこの二年間でずいぶん成長した。最高の仕上がりだと思う。

 それでもことねの目指す最高の演奏にはまだなにかが足りなかった。

 

 

 ◇

 

 

「では文化祭の出し物は喫茶店にします」

 

 

 クラスの学級委員が言う。

 10月。文化祭の時期が近づいてきた。

 文化祭の出し物を決めることとなり投票の結果つむぎたちのクラスは喫茶店をやることになった。

 

 それから休み時間となりつむぎはひなたとことねと共に話をしていた。

 

 

「喫茶店かぁ。ちゃんと接客できるかなぁ」

 

「そうだねぇ。つまずいてお皿割ったりしそうだもんねつむぎ」

 

「わたしはそんなにドジじゃないよひなたちゃん!」

 

 

 接客できるか不安なつむぎとは裏腹につむぎをいじるひなた。少しおっちょこちょいなところはあるがさすがにそこまで酷くはない。

 

 

「そういえばことねちゃんは今年も軽音部でライブあるんだよね?」

 

「うーん……」

 

「どったのなんか悩んでる顔して」

 

 

 ことねはなにかを考えているようで聞こえていなさそうだった。

 

 

「あぁごめん、ちょっと軽音部のことで考え事していたんだ。去年は経験もなかったからコピーバンドで文化祭のライブをやったけど今年はオリジナル曲でライブをしたいんだ。最高の演奏で。でもそのオリジナル曲には今の演奏だと何かが足りない気がして……」

 

「なにか?」

 

「こと的にはあとギターとボーカルが出来る人がいれば音に厚みができてちょうどいい感じになると思うんだけど三人だからパートを変える訳にもいかないし、ボーカルは二人とも無理って言うし……誰かギターができてある程度歌が歌える人がいたらいいんだけどな」

 

 

 ことねが悩んでいたのは軽音部のことらしい。

 ことねは軽音部の部長で去年部を立ち上げた。

 加入したメンバーは未経験者ばかりだったので最初はなかなか上手くいかなかったようだがそれでも去年の文化祭では盛り上がってた記憶がある。

 

 

「さすがにそんな人材見つかんないでしょ~。運動部の助っ人ならできるけど音楽はあたし無理だし」

 

「そだね。去年この学校でバンド知識のある人探してもいなかったから。でもちょっと悔しいな……」

 

 

 ことねは少し残念そうな表情で言う。ことねにとってバンドは学校生活において欠かせない存在なのだろう。

 

 それに文化祭は高校生の内三回のみ。だからこそ集大成で全力で最高の演奏を届けたい。そういった姿勢を感じる。

 

 

「ギターとボーカルが出来る人かぁ」

 

 

 つむぎは思う。さすがに急にそんな人材を見つけることは無理だろう。

 去年ことねの部員募集につむぎは付き合ったが経験者はいなかったのだ。

 

 ギターとボーカルができる人間なんてそうそう───

 

 

「あ!? あぁ!」

 

「どうしたのつむ!?」

 

「いるよ! 一人だけギターボーカルができる子がこの学校に!」

 

 

 つむぎはひらめいたかのように叫ぶ。

 受けて貰えるかはわからない、けれど一人だけつむぎはその項目をクリアできる人物を知っていた。

 

 

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