Unreally   作:羅糸

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あがり症なツンテレ姫

 そして迎えた土曜日の昼。

 

 つむぎとさやは姫乃駅でねねこを待っていた。

 私服を身に纏い二人はスマホを見る。

 時刻は12時を回ろうとしていた。

 

 お昼に待ち合わせと言ったが詳しい時間の指定はない。とりあえず待ってれば来るだろう。

 

 

「でもわたし、ねねこちゃんがどんな見た目してるかわからないけど大丈夫かな?」

 

「私もそれは知らない。けど私の容姿はあっちは知ってるからあっちから話しかけてくれば大丈夫だと思う」

 

 

 それもそうだった。ねねこがさやのリアルを知っているのは姫乃女学園の生徒で容姿が小さく水色の髪と瞳であるということ。

 それだけといえばそれだけだが、さやの容姿を判別するには十分であった。

 

 

「あ、あのっ……」

 

 

 数分後一人の女の子が小さな声で話しかけてきた。

 

 つむぎたちは少女の方を見る。

 年はつむぎたちと同じかそれより下くらいの少女。

 

 少女はたどたどしく、もじもじしながら言った。

 

 

「さっ、咲夜ちゃん……で、ですよねっ? あのっあたしそのっ」

 

 

 少女はさやの方を見ていた。黒髪の銀色の瞳をした少女は目線を合わせず顔を真っ赤にして

 

 

「あ、Unreallyでね、ねねこをやっているものですううぅ」

 

「大丈夫!?」

 

 

 つむぎは叫ぶ。ねねこと名乗った少女は頭をくらくらさせ膝をつき倒れそうになっていた。

 

 

 ◇

 

 

 ねねこを落ち着かせるのとまだお昼を済ませてないことを思いだしつむぎたちは喫茶店に入ることにした。

 

 ねねこは顔を赤くしたまま喫茶店に入るまで喋らず歩くのもままらなかった。

 

 ねねこと対面になるようにつむぎたちは座る。

 

 メニューを注文してから話をすることにした。

 

 

「あ、あの、ねねこです。こっちの姿では夕凪そまりって言います……」

 

 

 ねねこはそまりという本来のこちらでの名前を言った。彼女はさきほどよりも会話が成立しておりだいぶ落ち着いたようだ。

 

 しかし……

 

 

「どうして顔を下げたままなの?」

 

 

 つむぎは尋ねる。そまりはずっと顔を下に向けたままであった。

 

 

「だっ、だって顔を上げると話すのが難しいですぅ。あたしあがり症で……」

 

「Unreallyでは普通に出来てたよね?」

 

 

 あがり症ならばアンリアルドリーマーとして活動することはできないはずだ。

 

 

「そ、それはUnreallyではあがり症を直すためにはじめたので……別の姿になったことで自分自身が変われる気がして。結果あがり症はあっちでは抑えられるようになったんですけど……素直になれない性格になっちゃって」

 

「そういうことだったんだ……」

 

 

 Unreallyでなりたい自分に生まれ変わることができる。その結果そまりはねねことして新しい自分になれたのかもしれない。

 

 しかしあがり症であることが後を引いて今のねねこの性格が出来上がった。ということなのだろうか。

 

 

「そ、その……ごめんなさい!」

 

 

 そまりは立ち上がってさやに言う。

 するとそまりの顔から涙らしきものがぽつりと落ちてきた。

 

 

「脅すようなこと言ってしまって……本当はこんなつもりじゃなかったんです。本当は咲夜ちゃんにお願い事があってちょうどその時に来年受験する姫女の文化祭でのライブを見て……それでなんて言えばいいか分からなくなって……素直になれないあたしが悪いんです」

 

 

 恐る恐る顔をこちらへ向けるそまり。

 やはり彼女は泣いていて目から涙が溢れていた。やはりこの子はねねこだ。

 

 優しい想いが伝わってくる。

 

 

「いい……悪気がないのはわかったから。私のこっちでの名前はさや……そまり、よろしく……」

 

 

 さやは特に怒ってもなんとも思っておらず、表情はいつも通りだった。

 

 

「本当にごめんなさい……と、ところでそちらの方は?」

 

 

 そまりは席に座るとつむぎの方を目線を合わせずに見た。

 

 

「こっちはつむぎ……」

 

「麗白つむぎ、こっちだと双葉つむぎだよ。よろしくねそまりちゃん」

 

「えぇぇつむぎちゃん!? ふ、二人はリアルで知り合いだったんですか!?」

 

 

 つむぎが自己紹介をすると驚くように叫ぶそまり。

 

 

「咲夜ちゃんがさやちゃんだと知ったのはかなりあとだよ。さやちゃんは隣の席でUnreallyで仲良くなってからリアルのことを知ってこっちでも仲良くなったんだぁ」

 

 

 つむぎはこれまでのさやとの経緯を簡単に説明する。

 

 

「そんな……さくつむ、この場合つむさや? がそんな生い立ちで成り立っていたなんて……なにこれエモォい……」

 

 

 そまりはぶつぶつと聞こえない声でなにかを言っていた。

 

 

「それで私に頼みたいことってなに?」

 

 

 さやが本題を聞く。今回の目的、ねねこ、つまりそまりのお願い事を聞くことだ。

 ねねこは顔を下に向け話しやすい形で会話を始めた。

 

 

「実はあたしのオリジナルソングの作曲をしてほしいんです。日頃応援してくれるファンの子達に向けての曲をライブ配信したくて……。なので咲夜ちゃん……いえ、さや先輩の作る素敵な曲を是非あたしに作ってほしいんです」

 

 

 下をむけて話してた彼女だが、最後は顔をあげて話し出した。

 

 

「もちろんお金は払います。そこまで対した額は出せませんけど……」

 

 

 そまりの表情は本気だった。

 そこまでファンに対する気持ちがあったのだろう。ねねこはファン想いのとてもいい子だ。

 

 するとさやは首を振る。

 

 

「お金はいいよ……そもそも言うことを聞くって名目だし。ちゃんと作曲する。その代わり、後輩になるならUINEの連絡先交換しよう……条件はそれだけ」

 

「そ、それだけでいいんですか!?」

 

 

 そまりは条件の不等さに驚く。ほとんどさやの方へはメリットはない。作曲するのも簡単ではないはずだ。

 

 

「作曲をするにも作詞はそまりがやった方がいいから……Unreallyで素直になれなくてもこっちで字面ならなんとかなるでしょ?」

 

「は、はい。それならなんとか……」

 

 

 そうしてさやたちはスマホを取りだしUINEの連絡先を交換することに。

 

 

「あ、あのつむぎ先輩もよかったら……いいですか?」

 

「うん、いいよ!」

 

 

 つむぎは優しく微笑んでスマホを取りだしそまりと連絡先を交換する。

 

 

「はぅ~推しの連絡先交換ゲットできるなんて幸せ……」

 

 

 そまりは顔を剃らし小声でなにかを言った。

 

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