Unreally   作:羅糸

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今この瞬間を

 つむぎたちは喫茶雪月花へと足を運んだ。

 内装はハロウィン仕様でカボチャの飾りなどで飾り付けられていた。客もそれなりに来ており店員もいる。

 

 店員はUnreallyのユーザーでなくNPCだ。

 店を持つと自分が働いてないときもレジやメニュー運びなど代わりにしてくれるNPCを雇う事ができるのだ。

 

 つむぎ達は四人用の席に座った。

 

 

「トリックオアトリート。まずはいたずらかおかしか選ぶでありんすよ」

 

 

 エレオノーラは微笑みお盆を持ちながら注文を取る。

 

 

「まぁお菓子をお願いするわ」

 

「わたしもっ」

 

 

 つむぎとねねこはお菓子を注文する。

 

 

「いたずらってなに?」

 

「はいはいウチいたずらやるー」

 

 

 咲夜はいたずらとはいったいなんのことなのか疑問に思い、しきはそんなこと関係なく問答無用でいたずらを注文した。

 

 

「いたずらでありんすね。ではしきどの、わたくしの帯をおもいっきり引っ張るでありんす。そしてよいではないかというでありんすよ」

 

「うん? ……あぁなるほど!」

 

 

 しきはなにかを思い浮かべ理解した。

 

 それからしきはエレオノーラの着物の帯を持ち、思いっきり引っ張る。

 

 

「よいではないか! よいではないか!」

 

「あ~れ~おやめくださいお客様~」

 

 

 帯を引っ張られたエレオノーラはコマのように回転していく。しきは楽しそうに引っ張っていく。

 

 この光景は時代劇でよくある悪代官がやっている行為だった。

 

 いたずらとはお客がエレオノーラに対していたずらすることだったらしい。

 

 

「こういう風に無限に帯回しをできるのがいたずらのサービスでありんすよ。咲夜どのもいかかでありんすか?」

 

「いや普通にお菓子で……」

 

 

 実際にどんなものか見た咲夜は呆れた顔で即答した。

 エレオノーラは残念でありんすねといい残し、キッチンの方へと注文品を作りに向かう。

 

 

 ◇

 

 

「ハロウィン限定デザート特別セットでありんす」

 

 

 テーブルに運ばれてきた注文品をつむぎは見た。

 

 ジャクオランタンの顔をしたプリンに、白いオバケのカップケーキ、カボチャの顔をした和菓子などさまざまなスイーツのセットが出された。

 

 

「カボチャモチーフのやつが多いんだね!」

 

「まぁハロウィンといえばカボチャでありんすからね。実際にプリンなどは材料にカボチャを使ってるでありんすよ」

 

 

 エレオノーラはつむぎへ笑顔で応える。

 

 つむぎは試しにカボチャのプリンを食べてみることに。スプーンで一口分すくい口に運ぶ。

 

 

「濃厚! カボチャらしい甘さが出ててそれでいて滑らかで美味しいよ! ハロウィン限定なのが勿体ないくらい!」

 

「ふふっ、よろこんでくれたみたいで大変ありがたいでありんすよ」

 

 

 エレオノーラはつむぎの感想を聞いて嬉しそうだった。

 

 咲夜も美味しそうにオバケのカップケーキを食べている。

 

 

「はいブランちゃんあーん」

 

「にゃーん」

 

 

 ねねこはいつの間にか猫にブランと言う名前をつけておりカボチャのプリンをブランに食べさせていた。とても微笑ましそうだ。

 

 

「消えるのに名前付けたら後々辛くなるんじゃ……」

 

「そういうこと言わないでよ! 今を楽しませて!」

 

 

 不器用な咲夜はねねこの気持ちを理解しておらず現実的な話をする。ねねこは涙目だった。

 

 この猫はこの日のために作られたおばけで22時を過ぎたら消滅する。

 設定があるとするならば霊のいる世界に帰るのだろう。

 

 そんな事を話したりしながらつむぎたちは限定スイーツを食べることにした。

 

 

 

 

 

「食った食った。じゃーウチは一人でおばけ退治して来ようかな」

 

 

 しばらくして一足先にスイーツを食べ終えたしきは席を立ち上がり言った。

 

 

「わたしたちももう少ししたら行こうか」

 

 

 つむぎたちはまだ食べかけのスイーツが残っている。それらを食べ終えたらいく予定だ。

 

 

「わたくしは店があるので残るでありんす。みなさんは是非イベントを楽しんでいくでありんすよ」

 

 

 エレオノーラはしきの食べた皿をお盆に乗せて片付け始める。

 

 ふとつむぎは思う。

 

 

「そういえばひそかちゃんは今どうしてるんだろ?」

 

「あいつ今ちょっとUnitterで話題になってるよ。カボチャのおばけがお菓子を横取りしたりいたずらしてくるってユニートがたくさんあるから」

 

「あはは、ひそかちゃんらしいね」

 

 

 つむぎの疑問にしきが答えた。

 案の定ひそかはUnreally内を暴れ回っているようだ。 

 

 

 ◇

 

 

 それからエレオノーラとしきと別れたつむぎたち三人と一匹はUnreally内のおばけ退治に専念する。

 

 おばけはいろんな種類のものがいた。

 がいこつのおばけや目玉のおばけなどいろんな種類のおばけがあたりをさまよっていた。

 

 おばけを見つけるのは半分鬼ごっこやかくれんぼのようで楽しくイベントとしてとても面白い。

 

 そしてあっという間に21時をすぎ、もう少しでイベントが終わろうとしていた。

 

 

「もうすぐ終わりかぁ……なんかあっという間だったなぁ」

 

「イベントはいつもより楽しい時間が多いから体感があっという間なのは仕方ないよ」

 

 

 河川敷で空を見上げるつむぎ。月が上っている。それはいつもの月とは違ってカボチャの形をしていた。

 

 

「ブランちゃんあなたのことは忘れないからね……」

 

「にゃーん…」

 

 

 ねねこはブランの頭を撫でながら言う。

 ブランもねねこの寂しそうな顔を理解したのか甘えるように鳴きねねこの指を舐める。

 

 

 そして時間は22時になり時計の鐘が鳴る音が響いた。

 

 すると近くにいたおばけたちは空へと上がり旅たっていく。こちらの世界へとお別れするのだろう。

 

 次第におばけたちは消えていく。

 

 ブランが消えるのは時間の問題だろう。

 そう思ったが。

 

 

「にゃーん」

 

 

 ブランは消えるどころかねねこに甘え肩によじ登りもたれ掛かっていた。

 

 

「ブランちゃん!? あなた消えないの!?」

 

「どうやら未練ができちゃったみたいだね」

 

「こころちゃん!?」

 

 

 するといきなりこころが現れてきた。

 

 

「ねねこちゃんのブランちゃんを大切にする思いと愛情が伝わって、ブランちゃんもねねこちゃんのことが大好きになっちゃってこっちの世界に残りたいって意思ができちゃったみたい。だから消えることはないよ」

 

 

 こころが説明する。

 それはこの世界を支配するこころが介入したのかそういうプログラムがされているのかはわからない。しかしブランは今、イベントのための猫のおばけから一匹のUnreallyに暮らす猫として認められたのだ。

 

 ねねこはそう聞かされ瞳には涙が出ていた。

 

「……ブランちゃん! あなたはこれからはあたしの大切なペット! いいえ、チャンネルのマスコットよ! あたしとこれから一緒にチャンネルを盛り上げるわよ!」

 

 

 ブランを抱き上げるねねこは嬉しそうに言う。つむぎはそれを見て微笑ましそうに見ていた。

 

 

「ふふ、これからもっとねねこちゃんのチャンネルは楽しくなりそうだね。それじゃあ今回の配信はこれまで。長い時間付き合ってくれたみんなありがとね。ご視聴ありがとうございました!」

 

 

 ハロウィンイベントが終わったつむぎは配信しているのを忘れずに画面の向こうの視聴者に言い配信を終了させた。

 

 実験的に普段は動画として撮影している内容を今日は配信という形でお送りした。10月31日のハロウィンという時間は今日限りだ。

 その日の出来事を生でお送りするのは今しかできない。そう思った。

 

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