Unreally   作:羅糸

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自信をもって歌うということ

「うーんどうしよ……」

 

 

 つむぎは咲夜の家を後にして街中を一人歩いていた。

 ずっとつむぎは考えている。咲夜とUフェスで一緒に歌を歌うかどうかを。

 

 つむぎは決して歌いたくないわけじゃない。むしろ咲夜と作ったあの曲を一緒に歌うことができればきっと楽しいだろうと思う。

 

 

 しかしつむぎは自分の歌に自信がなかった。

 咲夜はプロの歌手と比較しても劣らない歌唱力を持っている。対して自分は対して上手くもなく咲夜とは比べ物にならない。

 

 歌詞は一月以上考えた末、自分なりにいいのが出来たと思う。咲夜もそれを気に入ってくれてるし。

 

 しかし下手な自分の歌で曲をだめにならないかそればかりを気にしていた。

 

 

 せめてもう少し歌うことに自信を持てれば……

 

 

「なにか悩み事かな?」

 

 

 誰かが声をかけてきた。その少女は黒髪に様々な色のメッシュがついたハーフツインの少女。

 

 

「こころちゃん!?」

 

 

 つむぎはいきなり現れたトップアンリアルドリーマー七色こころに驚いた。

 

 

「あなたの心は……今は灰色……どうかしたのつむぎちゃん?」

 

 

 髪の毛のメッシュを全部グレーに変化させたこころは心配そうにつむぎの顔を見てきた。

 

 

「実はね……」

 

 

 つむぎは思わずこころに先程あった経緯を話す。こころは悩み事があったらそれを一緒に悩み解決してくれる。

 

 そういう対応を一人一人にすることができる。たった唯一のAIアンリアルドリーマー。その彼女になら事情を打ち明けていいと思った。

 

 

「なるほど……つまりつむぎちゃんは歌に自信が持てるようになりたいんだね!」

 

「うん……」

 

「じゃあ自信をつけるために一緒にカラオケに行こー!」

 

「えぇ!?」

 

 

 こころは元気に言う。つむぎはこころに手を掴まれ、こころの思うがままにその場から移動した。

 

 

 ◇

 

 

 カラオケにつき一つのルームに入ったつむぎとこころ。

 

 つむぎは大人しく椅子に座りカラオケルームに入る前に持ってきたメロンソーダを飲むことに。

 どうしてこうなったのだろう。

 そう思いながらつむぎはちょびちょびストローでメロンソーダを飲んでいた。

 

 こころはというとタッチパネルとマイクを持ち目をきらきらさせていた。

 

 

「それじゃあ歌おうつむぎちゃん!」

 

 

 元気にサイリウムメッシュを輝かせて言うこころ。

 

 

「上手く歌えるかわからないよ……」

 

 

 つむぎは弱々しく自信がない声で言う。

 

 

「大丈夫、わたしも一緒に歌うから!」

 

「こころちゃんも一緒に……」

 

 

 笑顔で言うこころ。

 つまりこころとデュエットができると言うことだ。

 

 ずっと応援してきたUドリーマーと一緒に歌うことができるなど考えてみれば本来ならばありえないことだ。この状況貴重すぎる経験だった。

 

 

 つむぎは意を決してマイクを手に取る。

 

 

「じゃあ好きな曲どんどん歌っていこー。まずなにが歌いたい?」

 

「それじゃキララマジカルの一番最初のOP曲で……」

 

 

 そこからは時間が溶けるかのようにあっというまだった。好きな曲を二人で歌う。

 

 最初は大人しく緊張していたつむぎだが歌うにつれてこの状況が楽しくなっていき緊張もほぐれスムーズに歌うことができるようになっていた。

 

 その時間はおよそ二時間以上続いた。

 

 

「どうつむぎちゃん楽しい?」

 

「うん、一緒に歌えてすごい楽しいよ!」

 

 

 つむぎはその頃にはいつもの元気を取り戻していた。

 

 

「そういえばなんでわたしたち一緒にカラオケに……あっ!? こころちゃんわたしの歌上手くなってる!?」

 

 

 つむぎはここに来た当初の目的を思い出した。

 カラオケで歌を上手くなり自信をつける。そのためにつむぎはここまで来たのだった。

 

 こころと歌えていると言う状況でつむぎはそれをずっと忘れていた。

 

 

「うーん数値的にみれば……」

 

「うんうんどうなの!?」

 

 

 つむぎはこころの答えに期待する。AIであるこころならきっと分析してどういったところを直せばよくなるか教えてくれるはずだ。

 

 

「わかんない!」

 

「えぇ!?」

 

 しかし期待とは裏腹の答えが出てきた。

 なんでも可能としてしまうこころにわからないという言葉が出るとは思ってもよらなかったのだ。

 

 だがこころはそれから語り始める。

 

 

「わたしはAI、数値的に分析したり歌唱力を上げるための効率を言うことは簡単だよ。でもそれだけが……すべてじゃないよ」

 

「じゃあ上手くなるって約束は……」

 

「わたしは自信をつけさせるしかいってないよ。つむぎちゃん歌ってて楽しかったって言ったよね? 咲夜ちゃんもねそれを共有したいんだと思うよ」

 

 

 こころは真剣な表情で言う。しかしそれは優しく人間のような温かみを感じた。

 

 

「わたしにできるかな……?」

 

 

 つむぎは不安だった。歌うのは楽しい。だが果たして大舞台に自信を持って歌うことはほんとうにできるだろうか?

 

 

「それはやってみないとわからない……けれどつむぎちゃんは一人じゃないから、支えてくれる人がいるから……勇気を持っていいんだよ」

 

「勇気……」

 

 

 つむぎは自分を支えてくれる人たちを思い浮かべる。ファンのみんな、リアルでのことねやひなた、Unreallyでの友達であるUドリーマーたち。

 そしてさやであり咲夜。

 

 

 彼女たちのことを考え胸がギュっと熱くなる。

 そしてつむぎは決意した。

 

 

「こころちゃん! わたし咲夜ちゃんのところへ行ってくる!」

 

 

 つむぎはそう言ってカラオケルームを出ていった。

 

 

「うん……行ってらっしゃい!」

 

 

 こころは笑顔でつむぎを送り出した。

 

 

 ◇

 

 もう空は紫色をした夜となっている時間。

 カラオケで長い間過ごしていたという事実を実感する。

 

 ワープゲートで自分の家に移動してきたつむぎはすぐさま隣の咲夜の家のチャイムをならす。

 

 ガチャりとドアが開き咲夜が顔を出す。

 

 

「つむぎどうしたの?」

 

「咲夜ちゃん! わたし咲夜ちゃんと歌いたい!一緒に歌ってみたい! 咲夜ちゃんが作曲してわたしが作詞した二人の曲を! そしてみんなに広めるんだわたしたち二人で作り上げた世界を! その舞台にはフェスが一番だよねやっぱり……」

 

 

 最後にえへへ、と笑うつむぎ。

 まだつむぎは自分の歌唱力に自信はない、でも二人で作ったこの曲を多くの人に知ってほしい。

 その強い意志だけは強くあった。

 

 そしてこの曲は二人で作り上げたから二人で歌いたい。その気持ちは本物だ。

 

 つむぎのその真剣な目付きをみて咲夜は驚いていた。しかしそれは次第に微笑みにへと変わる。

 

 

「……そうだね。それじゃあ練習しようか……つむぎ!」

 

 

 こうして二人はUフェスで二人で曲を歌うこととなり特訓がはじまった。

 

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