Unreally   作:羅糸

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モノクローム

 それからUフェスが開催されるまでつむぎは咲夜の指導の元歌の練習をはじめた。

 咲夜は優しく的確にアドバイスをしてくれて尚且つどう楽しく見せるかを重視して教えてくれた。

 

 上手く歌うのは難しいけれど教えてもらっているのは楽しくてこの歌をみんなに見せるのが楽しみだ。

 

 

 そうした日々が数週間続きUフェスが開催される。

 

 日数は夏と同じ三日間、最後の三日目がライブだ。

 

 つむぎたちは最初の二日間は前回と同じように二人で見て回った。エレオノーラが出店した出店ではクレープを売っていた。

 しきやひそかもそれぞれ前回とはまた違う新しい物を出しており楽しそうにしていた。

 

 

 

「いよいよ明日はUフェス三日目……よーし今日は早めに寝るぞー」

 

 

 Uフェス二日目の夜。つむぎは早めにUnreallyをログアウトし歌の練習をしたりしていた。

 歌詞の暗記もメロディーもバッチリ仕上がっている。このままやればきっと上手くいくだろう。

 

 明日がとても楽しみだ。つむぎはそう思いながら就寝についた。

 

 

 

 

「ふわぁ~よく寝たぁ」

 

 

 次の朝、つむぎはとてもぐっすりと眠ることができた。最近はUnreallyで夜更かしすることが多いため早めに寝たのはいつぶりだろうか。

 おかげかだいぶ長く眠れた気がする。

 

 さて、Uフェスに行く前に朝御飯をリアルで食べよう。そう思いつむぎはまずスマホを手にとった。

 

 

「ふぇっ……!?」

 

 

 つむぎは見たとき思わず変な声を出してしまった。

 

 今の時刻は午前9時40分。Uフェスの開催は午前9時からなのでもう開始していた。

 

 

「は、早くUフェスに行かないと!」

 

 

 朝御飯を食べている場合ではない。

 幸いにもつむぎたちの出番は午前10時の予定とされていた。まだ行けばどうにか出番には間に合う。

 

 つむぎは急いでUnreallyのヘッドセットを被り起動させた。

 

 

 ◇

 

 

 家の前にリスポーンするつむぎ。

 つむぎはすぐさまメニューを開きつむぎたちの参加する会場にワープゲートを接続しようとする。

 

 だが……

 

 

『ただいまアクセス集中で混雑のため使えません』

 

 

「そんな!?」

 

 

 つむぎは唖然とする。

 ワープゲートは人数が多い場所では設置する場所がなくなり使えなくなることがある。

 Uフェスのような人が大勢いる場所に途中から行こうとするのは無謀な話だった。

 

 

 諦めるしかないか……そう思ったとき

 

 

「つむぎ、こんなところでどうした……のだ。今日はフェスじゃなかったのか……」

 

 

 声を掛けてきた人物がいた。

 天使の輪に悪魔の角、ドラゴンの尻尾がついた少女ミーシェルだ。

 

 

「ミーちゃん!? ど、どうしようミーちゃんんん」

 

「ミッ!? な、なんなのだいきなり!?」

 

 

 泣きつくようにミーシェルに近寄るつむぎ。

 

 つむぎはミーシェルに事情を話した。

 

 

「ふむ、やっぱりこうなったのだな」

 

「やっぱりってなに!?」

 

 

 分かってたかのようなそぶりで腕を組み言うミーシェル。

 するとミーシェルはつむぎを指差した。

 

 

「貴様は昔から気分よくるんるん気分になるとドジを抜かす…のだ。思った通り……なのだ」

 

 

 さすがにあっちの世界では長年幼馴染みをやっているだけのことはある。だいたい目覚ましをかけていればこんなことにはならなかっただろう。

 

 しかし楽しみでそんなこと考えてなかったつむぎはそのまま寝てしまった。

 その気の緩みと日頃の疲れにより今日は長時間寝てしまい寝過ごしたのだ。

 

 

「会場からここまでワープゲートなしじゃ普通もう間に合わんだろう」

 

「そんな……せっかく咲夜ちゃんと歌うはずだったのに……咲夜ちゃんに一人で歌ってもらうように電話しなきゃ……」

 

 

 もう自分はライブには参加できない。だがせめて咲夜にだけは歌ってほしいとつむぎは咲夜に電話しようと──

 

 

「まだ諦めるな! ……のだ!」

 

 

 ミーシェルが叫んだ。

 

 

「で、でも……」

 

 

 諦めるなと言われてもどうすればいいのか。

 するとミーシェルが言う。

 

 

「まだ手段はある、ミーが本気をだせば会場などすぐなのだ……」

 

 

 ミーシェルの足元には紫に光る魔方陣が現れた。

 

 

「天魔竜族の本来の姿とくと見よ!」

 

 

 ミーシェルの体は次第に変化していく皮膚は黒くなり、鋭い爪が現れ、体は何倍にも大きくそしてその姿は竜の形にへと変化していった。

 

 

「ド、ドラゴン!?」

 

「これがミーの本来の姿だ、いつも人間の姿になって封印している。この姿で貴様を連れて行く」

 

「すごーいでっかーい! かっこいい!」

 

 

 つむぎはまじまじとそのかっこよく綺麗な竜の姿に惚れ惚れしていた。

 

 

「はよ背中に乗れい! 時間がないのだろう!」

 

「あっ! そうだった!」

 

 

 つむぎは言われた通り背中によじ登り乗った。

 

 

「いくぞ! 天魔竜族の力見せてやるのだ!」

 

 

 ◇

 

 

「あ、ありがとうございました!」

 

「はい、ということで水無月ねねこちゃんでしたばい」

 

「さて、次の人は……」

 

 

 今回屋外で行われてるアンリアルライブフェスの会場ではさきほどまでねねこのライブが披露されていた。

 ねねこは大人数観客の前で歌うことを考えると始まるまでテンパっていたがいざ自分の出番になるとUドリーマーとしての実力か、緊張せず全力で歌うことができた。

 

 

「ねねこおつかれ」

 

「ふぅ…ありがと。つむぎちゃんはまだ来てないの?」

 

 

 舞台裏で出番の近かった咲夜がねねこにお疲れを言った。

 

 

「うん音沙汰なし」

 

「まったくなにやってるのよ! あの子の性格上ほっぽかすとは思えないんだけど……」

 

 

 咲夜はUフェスが開始されても来ていないつむぎに心配しこっちの方でUINEでチャットや通話を試みたが反応がなかった。

 なにがあったのか心配になる。

 

 

「きっと来る……私は信じてる」

 

 

 咲夜は願いそう言う。だがもう時間が少ない。

 次の演者の後が咲夜たちだ。

 

 

「はいでは次の人は麗白つむぎちゃんと小太刀咲夜ちゃんです」

 

 

 そしてとうとう司会のシマリのアナウンスで咲夜は舞台に上がることになってしまった。

 

 一人でやるしかないか……。だがステージに上がろうとしたとき周りから大きな反応が上がった。

 

 

「な、なんやとあれ、ど、ドラゴン!?」

 

 

 シマリが叫んでいた。

 咲夜もステージに上がりみてみる。

 

 なんとそこには大きな黒い竜がこちらに飛んできていた。

 

 そしてその背中には見覚えのある姿が見える。

 

 

「つむぎ!?」

 

 

 思わず叫ぶ咲夜。ドラゴンよりもつむぎがそこにいることが驚きだった。

 竜はステージに近づくと翼を階段のようにしつむぎを下ろす。 

 下ろした後ドラゴンはどこかへと旅立ってしまった。

 

 

「咲夜ちゃんごめん遅れちゃって!」

 

「うん……いや……それ以上に突っ込みたいことは山ほどあるけど……」

 

 

 咲夜は困惑していた。

 

 

「なんかすごいことになってますね! これもまぁアンリアルなのでありです! それじゃあ気を取り直して麗白つむぎちゃんに小太刀咲夜ちゃんです!」

 

 

 もう一人の司会こころが面白そうに言って紹介した。

 

 

 それからつむぎと咲夜は目を合わせた。

 

 行こう

 これから

 わたしたちのライブを 

 

 そう心の中で二人は呟く。

 

 

 二人はステージの真ん中に立ち背中を合わせそして言った。

 

 

『それでは聞いてください、モノクローム』

 

 

 二人が作った曲が始まる。

 ピアノをメインとしたその曲はとても美しく綺麗だ。歌詞は正反対の二人が互いが互いの光となり影となる、そして出会ったことを運命だと思うそう言ったまるでつむぎと咲夜二人の関係性を描いた歌詞にへとなっていた。

 

 咲夜の圧倒的な歌唱力、つむぎの頑張って練習して成長した歌声。そのすべてに観客は魅了されていた。

 

 

『ありがとうございました!』

 

 

 そして二人は歌いきった。

 たくさんの拍手が沸き上がる。

 

 

「すごかったけんねー、では感想をどうぞ」

 

 

 シマリが司会を進行する。

 

 

「えーっと今日はほんとうにたくさんの人にこの歌を届けられてっ……届けられて……?」

 

 

 嬉しそうに言うつむぎ。しかし途中で言葉がつまる。

 会場を見渡すつむぎ。会場には大勢の観客がいる。つむぎは震え唾を飲み込む。

 

 

「えっと……今何人の人に見られてるの?」

 

「うーん会場には3万人、Dreamtubeはわたしのチャンネルで200万人が視聴してるよ!」

 

「ふぇ!???」

 

 

 つむぎはこころが発したその想像を絶する数に唖然とした。

 

 今まで気づいてなかった。今つむぎのことを数百万人みているのだ。しかも生で。

 そう思うとつむぎは意識がもうろうとなり頭が真っ白になった。

 

 

 

 ◇

 

 

「むにゃ……あれ、ここは?」

 

 

 いつの間にかつむぎはベッドにいた。

 知らない場所だ。

 

 

「ここはUフェスの救護室だよ。つむぎあの後気絶してここに運ばれたんだ」

 

「そうなんだ」

 

 

 つむぎは隣に座ってた咲夜を見た。咲夜は心配そうにつむぎを見て、元気なのをわかると優しく微笑みかける。

 

 

「まったくミーもハラハラしたのだ」

 

「ミーちゃん!」

 

 

 もう一人、救護室にいたミーシェルは腕を組目を閉じながら言った。

 

 

「ミーシェルから事情は聞いたよ。まさかあれがミーちゃんだとはね」

 

 

 咲夜はミーシェルから事情はおおよそ聞いていたようだ。

 

 

「うん。今日はほんとうにありがとうねミーちゃん」

 

「ふん、今日は友の晴れ舞台だからな……。ライブの歌……よかったぞ」

 

 

 少しだけ素直じゃないミーシェル。でも思いやりがあるひなたらしい一面があった。

 

 

「ありがと……ミーちゃんもいっそのことUドリーマーになったらもっと楽しいのになぁ」

 

「ミーがなったら貴様の登録者数をすぐに追い抜いてしまうぞ……なんてな……」

 

 

 ミーシェルは冗談混じりに言う。だがつむぎは本気だった。

 

 

「いいよそれでも。だってミーちゃんとアンリアルドリーマーとして過ごせればそれだけで嬉しいもん……」

 

「貴様は……そういうところだぞ!」

 

 

 ミーシェルはつむぎの頭を思いきり撫で回した。

 

 

「ちょっ! やめてってひなたちゃん!」

 

「ミーはミーシェルなのだ! 間違えるでない!」

 

 

 二人はリアルでのいつものようなやりとりをする。

 

 

「……くすっ」

 

 

 咲夜はそれを見て楽しそうに微笑んだ。

 

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