「リュウさんっ ハヤトさーーん!!!」
騒がしい教室に飛び込んでくるのは嬉々とした声。
何気に早弁してる涼介と、涼介の髪で遊んでるダイキ、構ってちゃんのブルー、
机に伏せて寝ようと試みてるが寝れないハヤト、ハヤトの寝れない原因であるリュウ。
その集団の中に、最近転校してきたばかりのリアが加わった。
「5月の9日ですよっ、みなさんっ!今日がなんの日か覚えてますかっ!?」
「じゃあー…恒例の、誕生日?」
「…でもオレの誕生日7月だし」
「あれじゃん、ダイキの誕生日」
「…ちがう」
「え、んじゃ、リアの誕生日?」
「……アイスの日だろ」
ぼそっと言ったハヤトの一言に、全員の視線が振られる。
「あたりですっハヤトさん!ぱちぱちぱちー!」←拍手。
ノるのはリュウとブルーだけ。
正直興味の無い他3人は、はあー…っと重苦しい溜息。
「え、なに、どしたの?お疲れ気味?だいじょぶ?」
「この間リュウのこと庇ってから今度はアイスで何やらかすんだよってことだ…」
そう。リュウを庇うために、スネィクとやらをとっつかまえて、
気絶したままのそいつを引き摺って教師の前に突き出して、起き上がるまで3時間ほどその場で待たされて、
その上ほんとの事を吐かす為に2時間ほど頑張って…。
で、やっとリュウの疑いが晴れたわけだ。
そんな大変な思いをしてやっとこリュウひとりを救えたわけだ。
ブルーやダイキ、涼介やハヤトにとって仲間を救えたからいいのだが、リアがいると断然面倒な事になる。
…ってわけで、アイスの日なんてやる前から疲れているのだ。
「つかさ、この学校になんか行事ってあったっけ?」
「え?…あんだろ、文化祭とか体育祭とか…」
「俺参加してねぇよ?」
「…そこからかよ。。」
呆れるハヤトとド阿呆なその他。
そんでもってそれに真面目に反応しちゃうリア。
「えっ…な、ないんですか、年中行事…!なかったら私どうすればいいのか…っ」
「はー?…無くったっていいだろ、べつに。かわりゃしねェよ」
「そんなことありません!」
意気込んで言ったリアの言葉は、ずいぶん大声になって。
教室内の人々が振り返った。
が、それに気づかず、リアは続ける。
「学校生活の、一番の思い出って、みんなと過ごした日々だと思うんです。その中で一番大きなのが、修学旅行や、文化祭や体育祭だと思います。
その中で文化祭も体育祭も消えちゃったら、すごく、………さびしいですよ」
目を伏せ、眉をハの字にさせるリアがほんとにさびしそうで。
まるで、今まで一度も、友達と過ごしたことがないみたいな言い方で。
これまでずっと友達に囲まれていつも笑っていたリュウたちは、申し訳なくて、
リュウはリアの頭に手を置くとゆっくり撫でた。
「…ごめ。悪かったよ。…今年はさ、文化祭も体育祭も、(あったら)全員で参加しようぜ!!!」
うぉぉおおぉぉおぉぉ、と熱気の篭った返事に、リュウは満足した。
「…で?」
「はいっ」
「なんでアイスの日にこんな大騒ぎしてンだよ」
ちょっとだけヤな予感がしつつも、ハヤトはリアに問うて、
アイスを食べましょう、なんていう普通の発想に呆れていた。
文化祭と体育祭はあんなに熱が入ったのに。
まるでアイスで冷ますみたいじゃないか。と。
「放課後までに考えとけよ、おもしれーの。」
「じゃねェと参加しねェかんな!」
「でも、アイスでイベントって、正直無理があるよね」
ぼそっと言った涼介のその一言で、
リアは軽く自信を失くした。
「オレは…いいけど。べつに。アイス食べるだけでも」
「アイス…すきですか?」
こく、っと頷くダイキを見て勇気付けられつつも、
激しく感情の揺れ動くやつだなとかハヤトはリアを見て思って。
その後、授業になってない授業中、リアは必死こいてやることを模索していた。
ううう…なんて唸るほどには、がんばって考えていたようだったが。
―――で、放課後。
結局一日かけてもいい案なんて浮かばず、
リアはそのまま、みんなと帰るハメに。
まあ気にすんなよ、って言ってくれるが、アイスの日は七夕やクリスマスと同じで一年に一度きり。
逃すのは本当に勿体無い…。
と、いった雰囲気でずどーんってしつつ、皆は帰路についていた。
この帰り道には、たこ焼きやクレープやアイスや焼きそばなど、
夏祭り並に屋台が立ち並んでいる。
なにかやろう、ってことでアイス屋の前まで来たはいいのだが、
結局やることがないまま、そこで立ち尽くした。
「…で どすんの」
「どするって…ブル、お前、アイス買えよ」
「え?オレびんぼーだよ。涼介買えば」
「いやべつに…わざわざ230円も出して買いたくないって。お前、買えばいいじゃん」
「…いらない。ハヤトは」
「涼介と同文だな。」
「じゃあ…あれじゃね?ここは言いだしっぺのリアで…」
「え、えぇ!」
いきなり話をふられてきょとりとするリア。
じゃあ…買ってきます、なんていって、ひとりアイス屋台に向かって、
戻ってきたときにはイチゴクリームソフトアイスを片手に。
「……きゃっ」
アイス屋台のそばでたむろしていたリュウたちの方へ勢いよくコケて、
アイスは見事にハヤトにぶっかかった―――。
「――― っっ てめえ!!なにしやがんだッッ」
見事に右半分の顔と、右肩にアイスがべちょーとひっついた。
ひいいい、と恐れるリュウたちと、え、みたいな顔のリア。
ハヤトは頬のアイスの塊を乱暴にぬぐうと(まだ溶けてないからあんましぬぐえない)、
アイス屋のアイスをまだ買ってもいないのに鷲掴みにして、
あろうことかリアに投げつけた!
物凄い顔をするアイス屋。
倒れ込むリア。
ちょっとだけ満足げなハヤト。
リアにあたんなかった分の流れ弾が当たった涼介。
「…!!」←怒
涼介から瞬時に黒いオーラが発せられると、やはり勝手にアイス屋台からアイスを取っては、
高速でハヤトに投げつけた。
流れ弾はリュウ、ブルー、ダイキと、
見事に全員を巻き込んで…
「てめー涼介このやろ、なにしゃーがんぶふぉへ!?」
「わ、わ、わ、 …えいっ!」
投球!
「ぶっ!?」
命中!
「はっはー、ざまァ見ろ!」
「お・ま・え・も・ね」
投球!
命中!
「んぐぉぇ!?」
「おいリュウ」
「へい?」
投球!!
「どぶぇっ!!」
顔面命中!
…枕投げならぬアイス投げが勃発したのだった。
――結局は、
みんなが満足するまでアイス投げは止まらなくて、
通行人の邪魔になり、
アイス屋台のご迷惑になり、
どんどんなくなっていくアイスの最後を投げたのはリアで。
疲れきったようにその場にへたりこむリュウとブルー。
取っ組みあった形のままのダイキと涼介。
ハヤトの上にのしかかるような体制のリア。反射的に(さりげなく)リアの腰に手を当てているハヤト。
みんながみんな人から見下ろされるような形で、
ついでにいえばリュウからすればハヤトは滅茶苦茶うらやましいわけで。
「っだー!ハヤトてめうらやまし…じゃねえその手ェどけやがれってんだ!一人だけはずりィぞ!」
「はっ!?」
そう言うハヤトも腰に当てていた手には気づいていなかったご様子。
慌てて手を退けると、リアへさっさとどけの合図。
リアもリアで大慌てでハヤトからどいてとなりへ正座。
「…えへへ」
「えへへ、じゃねェよ…」
「ちぇー、いーなーハヤトだけ、女の子とー」
ぶーぶーと文句言うリュウとブルーを尻目に、
ハヤトは少しだけ頬を朱に染めていた。
はァ~~~っっ と盛大な溜息をついて、
ハヤトはリアの隣で頬で溶け始めているアイスを投げ捨てた。
全く、無駄なやつだ、この女は。
前回無駄に時間を浪費したかと思えば、今回は何の意味もないアイス投げ。
…それを、ちょびっと、楽しかったとか思っている自分は情けない。とハヤトは顔を顰めた。
「どしよっかあ、このアイス。食わなダメ?」
と確認を求める先にアイス屋を見たリュウだが、
次の瞬間震え上がる事になった。
「ちょっと…貴方達…………」
怒りマークが十数個付きそうな勢いで赤毛の女子高生は言った。
背後に邪気が漂ってる。
…これは…まずい。
「わたしの…アイス…ぜんぶ無駄にしたわね…?覚悟はいいかしら…?」
くすくすくす。
「∑∑∑うああああサーセン!!まじサーセン!!!」
「あ…ミドリ」
「へ?」
ぼそっとハヤトの言った言葉に、リアは振り返り、
ハヤトの視線の先を見た。
「ん?…ああ、ハヤトじゃないか。…あれ、みんなも。どしたい、んな場所で」
赤毛の少女の背後から出てきた、同じく緑髪の女子高生は、
よーっす、なんて気軽に手を翳して挨拶をした。
「…ミドリ姉さん。なんで?」
「そりゃ、帰り道だからじゃない?」
「へっ…えっ!?お姉さん!?」
「…双子」
小さく呟かれたダイキの声を聞き取ったリアは、えっえっなんて、似てない二人を見比べた。
髪の色も違うし、目の色も違う。顔つきも全然似てはいない。
…何故?
不思議そうな顔をするリアに、ミドリと涼介が説明をしてくれた。
ふたりとも、養子として義理の親に引き取られたんだそうだ。
丁度誕生日も年齢も一緒。ということで、双子。…らしい。
へらと笑って言うミドリに、ダイキの言葉が理解できて、ああ、と頷いて笑った。
そして未だ恐怖に恐れ慄くリュウとブルーの方へミドリが視線向けた。
「ミク、そのへんにしといてやんな。こいつらあたしの知り合い」
「…でも、あいす」
「べつの場所行きゃいいだろー?そんな、ここにしか売ってないアイスなんざ無いよ。…てゆーか」
ちらり。
今更気にするように、ミドリは皆を見回した。
ようやく赤毛の少女…ミクと言うらしいが、その少女が怒りを納めてくれたところで、
リュウが事の説明をした。
途中で爆笑しそうに顔を歪めていたミドリだったが、
話が終わると遠慮も無しに笑いだした。
ミクは、貴方が全ての根源ね、とリアの方へ怒りの篭った視線を向けていた。
「…っくっく… じゃ、あれか?あんたらはアイスの日ってだけでこんなセクシーショットしてるわけか?」
「せくっ…ええっ!? …で、でも、せっかくのアイスの日なんですから…!」
「…でもま、あれだよな。意外と楽しかったし、オールオッケー?」
「だな。ダイキなんてアイスの総攻撃受けてたし!」
「………」
ダイキ は かおについたアイスを 投げた!
ブルーにそのアイスは命中し、ブルーはまんまと倒れ込む。
「あっ…はははっ…!」
釣られたか、結局はミクも笑い出して。
皆笑い出したところで、ハヤトの呆れたような諦めたような呟きが耳に入った。
「アイス代…どうするつもりだよ」
…………あ゛。
と全員の口から漏れ、ギギィ――~…と音のしそうな動きでアイス屋台へ視線を向けた。
怒りマーク数十個を頭に付けて腕を組み皆を見下ろしている。
…まずい。この状況は。
―――この後、ミクやミドリも巻き添えを食って、皆で決死のバイトに挑んだのでした。
.....白の大鴉 -- White Raven 〝第二章 [5月9日 アイスの日!]了