魔法科高校の劣等生~改   作:P-A

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第2話 理由

──達也達が真由美と会っていた同時刻、七草家主催の会場にて──

 

「先生、わざわざ来て頂き、ありがとうございます」

 

「構わんよ。君と会うのも久しいからね」

 

七草家現当主、七草弘一は九島烈と談話室にいた。

 

「それにしても先生が隠居なさると聞いた時は正直驚きましたよ」

 

「まぁ暫くは傍観者でいようかと思ってね。少しの間だけ……だがね」

 

 九校戦でのパラサイドールの件で事実上、九島烈は軍との関係のみ、自ら手を引いたのだった。

 

「それを聞いて安心しましたよ。先生にはまだご健全でいただかないと困りますので」

 

 敬意を払いつつ、笑みを浮かべる弘一に九島も不敵な笑みで返した。

 

「ふふ、君も相変わらずのようだ。これなら七草も安泰かの。そういえば……君の娘の婚約者はもう決めたのかね?」

 

「いえ、それはまだです。今のところ十文字家の克人君が最有力ですが、五輪家の洋史君は誠に残念でした……まさか新ソビエト連邦があれ程とは……」

 

 大亜連合に講和条約締結を促すため、戦略級魔法師である姉の澪と共に洋史は海軍に同行していたのだが──4日前、新ソビエト連邦の戦略級魔法師の参戦により海軍はほぼ全滅──澪はなんとか帰国したが重傷な上、洋史は現在行方不明となっているとの知らせを弘一は受けていたのだ。

 

「だからわたしは前から魔法師の在り方に異を唱えてたのだよ……軍も身に染みただろうがな。まぁ他にもいい逸材はおるがの」

 

「……他にですか?」

 

 九島の発言の意図が解らず弘一は首を傾げた。

 

「あぁ、面白い男だぞ。まぁただの老いぼれの意見だがね。確か名前は──司波達也と言ってたの」

 

 その名に弘一は驚愕した。去年の横浜の一件を聞いて以来、司波達也に興味を抱いていたが、九島烈からもその名が出るとは思わなかったからだ。

 

「……名前なら知っていますよ。先生がそう仰るのであれば是非一度会ってみたいものですね」

 

「失礼致します。弘一様、宜しいでしょうか?」

 

 部下である名倉が部屋に入ると九島に一礼し、弘一の耳元で囁いた──瞬間、弘一は不敵な笑みを浮かべる。

 

「先生、今話していた司波達也くんが今日ここに来るそうですよ」

 

「ほぅ、それは楽しみだね」

 

 

 

 

「──と言うわけなんだ幹比古」

 

「はぁ……なるほどね」

 

 真由美の迎えに来ていたリムジンで達也達は一度旅館に戻り、体調が回復した幹比古と美月も連れ、会場へ向かう最中、事の経緯を説明した。

 

「先程、名倉さんに電話してお父様に伝えておくよう言っておいたからこれで完璧ね」

 

 嬉しそうに微笑む真由美を他所に『何が完璧なのか……』と一同は思い、苦笑するしかなかった。

 

「あの先輩……このような格好で宜しいのでしょうか?」

 

 深雪は自分の服装を見て少し恥ずかしそうに縮こまった。花柄のワンピースに素足はヒールのサンダルというシンプルなものだったからだ。

 無論、達也達も私服な上このようなことになるとは思わず、スーツやドレスは持ち合わせていなかった。

 

「ふふ、大丈夫よ。タキシードやドレスはちゃんと用意させてあるから安心して」

 

 そうこうしている内に会場に着くと京都では考えられない西洋風の豪邸が目に入った。

 

「京都のイメージぶち壊しだな……てかまるで城だわな」

 

「ホントよね……」

 

 レオとエリカの一言に達也も同感だったが、真由美の手前、敢えて口にはしなかったが。

 

 真由美に案内され、用意されていた大量のドレスに女性陣はどれにするか迷っている一方、達也は無難に黒のタキシードに着替え、廊下で皆を待っていると着替え終わった深雪が隣の部屋から出てきた。

 

「お兄様……どうでしょうか?」

 

 深雪は水色のドレスの裾を靡かせ、達也に感想を求めてきた。

 

「あぁ、とても綺麗だし、よく似合っているよ。目が離せなくなりそうだ」

 

「お兄様っ!そんなに……深雪に見とれてしまうだなんて♪」

 

 頬を紅く染め恥じらう妹の姿に達也は思わず笑みを溢した。毎度の過剰反応も慣れれば可愛いものだと思えてしまう。

 

 すると向かい側の部屋から真由美が出てきた。

 

「あら、2人とも早いわね。とても似合っているわよ」

 

 華やか白のドレスに装飾品もかなり高価なものを身に付けていた。

 

「先輩もとてもお綺麗ですよ……それより少しお話したいのですが宜しいですか?」

 

「ありがと達也くん!あっならこの部屋にどうぞ」

 

 自分がいた部屋に達也と深雪を招き入れた。ソファーに腰を下ろすと、達也は真剣な表情で真由美をじっと見つめた。真由美も達也が言わんとしていることが大体想像がついていた為苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

「まず、俺達をここに連れてきた本当の理由を教えていただきたいのですが」

 

「……相変わらず達也くんは鋭いわね」

 

 数秒、考え込み、真由美は話を続ける。

 

「あなた達を連れてきたのには2つ理由があるのだけどね。1つは4日前の軍の件は達也君も知っているわよね?」

 

「はい、大亜連合との講和条約の際、新ソビエト連邦が参戦したのはニュースで知りました。大亜連合がソビエトに支援を求めたとの見方があるようですが」

 

 無論、達也は軍の上司である風間からその日、連絡を受けて知ったのだが、敢えて真由美にはその事を告げなかった。

 

「そう、おかげで講和条約も破談したみたいね。そこにわたしの婚約者候補の方もいてね……たぶんもう……」

 

 うっすらと涙を浮かべ、真由美は言葉に詰まってしまった。深雪もそれを理解し、言葉を失う。達也は真由美の気持ちを察し、それ以上言わせない為に自ら口を開いた。

 

「先輩のお気持ち、お察しします」

 

「ごめんなさい……大丈夫よ。それに婚約の話は断るつもりでいたの。元々親が勝手に決めたことでわたし達はそのつもりじゃなかったしね。ただ……そのやっぱり少し寂しくて……そしたら達也くんと深雪さんを見つけてつい……」

 

 達也と深雪は真由美の淋しげな表情を初めて見た気がした。普段は明るい笑顔を絶やさないイメージがあった為、どこか儚く思えた。

 

 それを見た深雪も、ふと自分の心の中で考えてしまう。

 

『もしお兄様がいなくなったら……わたしは……』

 

 そう思うと胸が張り裂けそうになった。それだけ自分は兄を『兄妹として』好きでいるのだと思う一方、そこには兄妹故に越えられない壁があるのだと感じた。

 

「深雪!」

 

 瞬間、ふと我に返ると、その兄が自分の肩を掴んでいた。無意識の事象干渉により椅子やテーブルに霜が貼り付いていることに気付く。

 

「申し訳ございません……」

 

「大丈夫よ、深雪さん……それでもう1つの理由なんだけど、あなた達にも関係があるの。実は、わたしの父が深雪さんと達也君に興味を持ってるのよね……特に達也くんに」

 

「俺に……ですか?」

 

 達也が疑問を問い掛けると真由美は先程の淋しげな表情から一転、申し訳なさそうに手を合わせていた。

 

「実は……名倉さんが横浜での件を父に話してしまったみたいで……2人を家にお招きするようと何度も言われてるのよ。このままほっておくとあの人何をするか解らないからこの機会に、と思ってね」

 

 達也は真由美の父が前々から少し過激な行動をとっているのを自分も一度体験していた為、事前に教えてくれたことに感謝しつつ、自分の父をあの人と言うくらい真由美が弘一を嫌っているのかと思ったが……,人のことを言える立場でもないので敢えてそこには触れなかった。

 

「なるほど。先輩の考えは解りました。俺としても深雪に危害が及ぶ可能性はなるべく排除しておきたいので、一度お会いしておいた方が良さそうですね」

 

「そう言ってくれると助かるわ。 深雪さんもごめんなさいね」

 

「いえ、先輩が悪いわけではありませんし、お兄様がそう仰るのであればわたしも同じ気持ちです」

 

 そう言いながら達也の腕にしがみつく深雪を見て真由美はクスッと笑ってしまった。

 

「ふふ、相変わらずの兄妹ね……っと、そろそろ時間だし行きましょうか」

 

 3人が部屋を出ると着替え終えたエリカ達が廊下に立っていた。

 

「あっいた!達也くんと深雪いないから心配しちゃったわよ」

 

「すまない、それじゃ行こうか」

 

 移動中、達也は後方から異様な視線を感じ、振り向くと、雫が自分を睨むような目付きで見つめていた。

 

「どうした?」

 

「はぁ、達也さん……何か言わなきゃいけないことがあると思わない?」

 

「あぁ、その和服、とても似合ってるよ」

 

 雫の格好は九校戦での和服姿そのものであった為、達也は褒めるべきだと勘違いしてしまったのだ。

 

「えっ……あっありがと……」

 

 雫はまさか達也が自分にその言葉が言ってくるとは思っていなかったので、急に恥ずかしさが込み上げてきてしまった。次第に顔が熱くなっているのを感じ、慌てて両手で頬を被った。

 『達也さん……反則だよ……』と心の中で訴えたが、ふと1つの問題に気付いた。──もし深雪に今の自分を見られたら誤解されかねないのでは!と思い、恐る恐る前方にいる深雪に目を向けると……とてもにこやかな笑みでこちらを見つめていた。

 

(っ!どう説明しよう……)

 

 一呼吸し、心を落ち着かせてから雫は後方で俯いて歩くほのかを指差した。そこでようやく達也も自分の言わんとしていることを理解したのかその人物へと歩み寄って行った。

 

 

 

 

「ほのか、そのドレスすごく似合ってるよ」

 

「えっ……あ……たちゃやさん!」

 

 ほのはは下を向いて歩いていた為、達也が近寄っているのに気付かず、慌てたのか、もろに噛んでしまった。ほのかの顔がみるみる真っ赤になっていくのが達也にも解った。

 

『たちゃやさんだって!ねーねー、これから達也くんのことそう呼ばない?』

 

 エリカが必死に笑いを堪えながら美月にヒソヒソと提案しているのが達也にも聞こえたが、目の前にいるほのかをほっておくわけにはいかないので後回しにすることにした。

 

「ほら、ほのか」

 

 そう言い、達也はほのかに手を差し出した。

 

「あっはい、達也さん!」

 

 ほのかも達也の手をとり、満面の笑みを浮かべ、会場へと向かった。 

 

 深雪はそんな2人を見て「今回は仕方ないですね」と言いたげに苦笑していた。




次回はいよいよ七草家当主と司波達也の対面です。ご意見やご感想よろしくお願い致します(・ω・)ノ
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