『私はその矛盾を良しとする』
──────────────────────
謎の声、喧しいアラーム、それらに顔を顰めながらグラハムエーカーは目を覚ましたが、目の前の光景に驚きを隠せなかった
そこは形容するならば「天井の低い劇場」のような場所だった
黄色を主としたシンプルなデザインで、心が高揚するような見事な装飾だ
(なんと、死後の世界というのは意外にも絢爛豪華なのだな)
などとにべもなく考えつつ辺りを見回そうとした時、自分の体の違和感に気付いた
人の手にしてはやけに角ばった、光沢のある黒い手と青い腕、左腕についたバインダー、全体的にシャープな青いフォルム
「なっ!?」
驚くのも無理は無い。何故なら彼の体は
「何故私はブレイブになっているのだ……」
彼が死ぬ直前まで乗っていた、ブレイブ指揮官用試験機だった。
何故私はブレイブに? 何故私はここにいる? 私は死んだのではないか? だとしたらここは何処だ?
頭の中を多くの疑問が飛び交う
(一度状況を整理するとしよう。
あの時、私は確かに少年の道を切り開くために超大型ELSに特攻を仕掛けたハズだ。あの爆発で死なないほど私は気持ち悪くない)
多くの推測が頭の中をよぎる
だが何よりも謎なのは自分が死んだことを加味しても余りにも非現実的すぎる己の身体。人間がMSになるなど聞いたこともない。イノベイターであり、魂を肉体から解放したあの少年の仲間なら出来そうだが
そして考えに考え抜いた結果
(私の愛が肉体を超越したか……)
やっぱりグラハムはグラハムだった
その日の会社は混乱の渦にあった。
安全チームでの「何も無い」と情報チームでの「規制済み」の同時脱走。
対応できる職員は全員鎮圧へ向かい、中央チームに残されたのは新人、もしくは半人前の職員ばかりだった。そこまでなら良い。まだ対応できる範囲だった
だが突然警報が鳴り響いた
『アブノーマリティーが脱走しました。施設内の職員は鎮圧体制に移行してください』
「中央チームには自ら脱走するようなアブノーマリティーっていたか?」
「聞いてる限りだと居ないはずだが……」
「上層でなんかあったんだろ」
そう話していた中央チームだったが、いきなりフロアの中央の空間が歪み、そこに
『脱走したアブノーマリティーを確認しました。脱走したアブノーマリティーは「絶望の騎士」です。職員はアブノーマリティーの鎮圧作業に移ってください」
絶望が訪れた
(む、なにやら向こう側が騒がしいな……)
グラハムが今の状況について思案していると、自動ドアの奥の方から声のようなものが聞こえてきた。
(まずは情報収集といくか。もし人がいたら何か聞けるかもしれん)
そう考えつつ、自動ドアをくぐったその時、グラハムに衝撃が走った
「ッッッッ!?」
そこには騎士のような格好の女性がいた。だが騎士というにはあまりにも禍々しい見た目に加え、人間というには大きすぎる身長。体の周りには剣が浮いており、眼窩は抜け落ちている。人の意思のような物は感じられず、まるで抜け殻のようだった。
騎士の周りには個性的な服と武器を持った複数の人間がおり、全員が恐怖の顔で身構えていた。
目の前の非現実的に光景に驚きながらも、囲まれている騎士を見る。
(何だ、この胸の高鳴りは……まるでガンダムにあった時のような)
あの騎士から目が離せない。釘付けにされる。胸が熱くなる。
(まさかあれは……)
次の瞬間、騎士が体の周りに浮かせていた剣を前方に構え、射出した。
「ッ! マズい避けろ!」
囲んでいる中の誰かが叫び、狙われた人間は一斉に避け誰も被弾しなかった。
だが流れた剣がこちらに向かってくる。
グラハムは咄嗟に出したビームサーベルで剣を弾くと、頭の中の疑問は確信へと変わった。
「失礼!」
「えっ誰!?」
「失礼と言った!」
囲んでいる人間に一言入れながら、急速変形で一気に騎士に近寄りビームサーベルを振るう。
すると騎士は周りに浮かせていた剣を取り、凶刃を防いだ。
「やるな! それでこそ私が(今勝手に)認めたガンダムだ!」
鍔迫り合いになりながら勘違いしたグラハムが叫ぶ。
騎士は驚いたように声を紡ぐ
「あな‥た‥は‥」
「私の名前か? 名乗る理由が無いな!」
戦っている最中にわざわざ名乗る意味など無い
「だがあえて言わせてもらおう、グラハム・エーカーであると!」
だがあえて名乗り出たグラハムに騎士は驚いた。お互いに剣を離して距離を取る。
「今君を見て私の魂に衝撃が走った。この気持ち……まさしく愛だ!!」
「何故そこで愛!?」
周りの避難した者たちが叫ぶ。戦闘中にいきなり愛を叫ぶ変人に対しては至極真っ当な反応である。
「一つ聞かせてもらおう」
騎士は反応を窺うかのように佇む
「君は……騎士か?」
騎士は何も答えない。
だが周りに浮かせていた剣の一本を構えて応えた
「そうか……ならば君のその騎士道、私の武士道を以って応えよう!」
不意打ちをしておいて武士道もクソも無いがアイサツ前のアンブッシュは一度だけ認められている。古事記にも書かれている。
「行くぞ、スタンドマニューバ!」
変形したブレイブが高速で接近していく。騎士は剣を次々に射出して飛んでくる敵を撃ち落とさんとする。
その全てを掻い潜りビームサーベルを袈裟斬りに叩きつけるが、容易く剣で防がれる。
「身持ちが硬いな、ガンダム!」
お互いに何合か斬り合い、また鍔迫り合いに持ち込む。その時グラハムに悪寒が走り咄嗟に横に飛び退くと、背後からいくつもの剣が飛んで来た。
横に避けたグラハムを追うように剣が曲がり追撃してくる。
「剣をまるでファングのように扱うとは……流石私が(勝手に)認めた騎士だ。だがこの程度では私は倒せんよ!」
変形して逃げていたグラハムだが変形を急速解除し後方に向けて腕の砲塔を向ける。粒子が銃口に収縮し、黄色い光を溜める。
「ドレイクハウリング!」
そして収縮されたエネルギーはまるで竜の息吹の如く発射され、今にも襲い掛からんとした剣を一つ残らず滅した。
光の奔流はその勢いのまま騎士を呑み込み、騎士は体勢を崩す。
それを見逃さずグラハムは騎士に急速接近し、ビームサーベルを振るう。騎士は手に持っていた剣でなんとか迎撃しようとするが、ビームサーベルによって剣を弾き飛ばされ、首元に剣を突きつけられた。
「私の勝ちだ。この私とここまで渡り合えるとは、中々に強かったぞ」
ビームサーベルを仕舞いながら相手を労わるグラハム。
「ここで首を落としても良いのだが、君とは是非騎士道と武士道を以って話し合いたい。名前を聞かせてくれるか?」
そう言いながらグラハムは手を差し伸ばす。
その手を絶望の騎士はしっかりと握りしめた。
こうして絶望の騎士とのラブロマンスと、ロボトミーコーポレーションでのはちゃめちゃが……
始まらなァい!
It is KUYOU of blackhistory!
因みに作者が一番好きなMSはクロスボーンガンダムX3です。
もし「全員」の選択肢が無かったら、ライバルは
-
カレンチャン
-
キングヘイロー
-
タイキシャトル
-
ハッピーミーク
-
スペシャルウィーク