或る小説家の物語   作:ナカイユウ

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※本編中に“SMS”という単語が登場しますが、ショートメッセージサービスとは一切関係ございませんのでご了承ください。


scene.11 鉢合わせ

 「・・・憬・・・」

 

 私は目の前に立つ憬に向けて手を伸ばそうとする。すると憬は私に何か言葉をかけると後ろの方を向いてそのまま歩き出す。

 

 「・・・待って・・・」

 

 憬の後を追おうとしても、身体が一歩も動かない。やがて目の前の視界が次第にぼやけ始めると、遥か彼方の方から規則的なリズムの機械音が聞こえてくる。

 

 「・・・行かないで・・・」

 

 やがてそのリズムは次第に速くなり、音も次第に大きくなっていく。

 

 

 

 午前6時。環は手探りで目覚ましのアラームを止めて、眠気眼の身体を無理やり起こした。

 

 

 

 「おはよー。なんか随分とうなされてたっぽいけど何の夢見てたの?」

 

 起床から15分。朝シャンを早々に済ませて洗面台で髪を乾かす環に、同居人で同じ事務所に所属する女優の牧静流(まきしずる)が話しかける。

 

 「ついこの間までよく一緒にいた友達の夢を見てた」

 「ふーん。友達の夢ね」

 「ていうか私うなされてたの?」

 「うん。何か『待って』とか『行かないで』とか寝言言ってた」

 「ホントに?・・・怖っ」

 

 どんな夢を見ていたか思い出そうとしても内容が出てこない。唯一記憶に残っているのは、目の前に憬が立っていたことぐらい。

 静流の言っていることを推測するにこれは悪夢だったのだろうか。いや、少なくともそんな感じじゃなかった気がする。

 

 「真面目な蓮のことだから緊張で眠れなかったらどうしようかなって思ってたけど、ぐっすり眠れたようでなによりだよ」

 「私って案外、こういう時に限ってぐっすり眠れるタイプなんだよね」

 「そっか。なら安心だね」

 

 すると牧は、乾かした髪を整える環に後ろからそっと抱きつく。

 

 「ちょっと何やってんの静流?」

 「パワーを分けてんの。蓮が無事に本番を乗り切れるように」

 

 そう。今日から私にとって一番の見せ場となる第8話の撮影が始まる。“麻友”を最後まで演じ切るために、やれることはやってきた。

 

 後はもう、本番で全部出し切るだけだ。

 

 「ありがとう。静流のおかげで最後まで乗り切れそうだよ」

 「何言ってんの?これは全部あなた1人の力だよ」

 

 肩に顔を乗せて抱きつく同い年の先輩女優に鏡越しで目線を合わせながら感謝を伝える環に、牧は微笑みながら言葉(アドバイス)を返した。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 「主人公の少年時代の役としてお前がスカウトされたぞ」

 

 終業式の2日後、憬は海堂から社長室に呼び出された。突如として決定した初の“大仕事”は、まさかの環が出演している月9ドラマだった。

 しかもそれは、このドラマで脚本兼演出を務める月島からの直接のオファーだった。

 

 「普通にあるんですか?こういうことって」

 「ある訳ねぇだろこんなもん」

 

 憬からの質問を、海堂はつっけんどんな口調で否定する。

 

 「直前になって仕事が入るならまだしも、ただでさえスケジュールとの戦いを強いられる連続ドラマの制作で、まだCM1本しか実績のないド新人に与えられるような仕事は、本来であればエキストラが関の山だろう」

 

 オファーが来たのは、主人公の少年時代の役。出番は1話限りで数分程度らしいが、主人公を演じているのはあの“早乙女雅臣”であり、演じるのはそんな主人公の核心に迫る過去の出来事。

 海堂は続けて事務連絡のようにスケジュールの詳細を伝える。

 

 「ちなみに第10話の顔合わせは明後日に“成城(せいじょう)メディアスタジオ”で行われる。ちなみに台本もそこで配られるらしい。もちろんこれは、お前がこのオファーを受けた場合の話だがな」

 「・・・はぁ」

 「そしてこのドラマの過去パートで、主人公の相手役となる昔の幼馴染を演じるのは牧静流(まきしずる)だ。夕野なら(ヤツ)が誰なのかは説明しなくとも分かるよな?」

 

 

 牧静流(まきしずる)。2歳で芸能界入りして以降、子役離れした演技力を武器に “天才子役”として一躍脚光を浴び、2年前には初主演の映画で日本アカデミー賞新人俳優賞を12歳の若さで受賞するという快挙を成し遂げた。

 今年の4月にも人気少女漫画が原作の連ドラで主演(ヒロイン)を務め、12月には初出演にして初主演の舞台も控えるなど“子役”から“女優”へと成長した彼女の勢いは留まることを知らない。

 

 

 「もちろん知ってます。小4の時に観た学園ドラマで始めて牧静流を初めて知ってからは、牧静流の出演しているドラマは何度も観てました」

 

 4年ほど前、入江(いりえ)ミチル主演の小学校を舞台にした連ドラを偶々観ていたことが、牧を知ったきっかけだった。

 まだ10歳でありながら完全に“子役”ならではの“愛らしさ”が抜けた芝居で、いじめのリーダー格という役を見事なまでに演じ切る彼女の怪演に、鳥肌が立つほどの強烈な恐怖と衝撃を受けた。

 

 「しかも(アイツ)は夕野と同じくまだ14だ。お前はともかく、牧もこれから女優として更に化け続けるだろう」

 

 誕生日の関係で学年こそ牧の方が一つ上だが、俺と彼女は同い年だ。テレビで観ていた時から彼女の演技力の凄さは知っていたが、いざ同業者の身になると実に恐ろしく思えてくる。

 

 「なんか・・・一筋縄では行かないみたいですね」

 「流石のお前もこれを聞いたらビビるか」

 

 少なくとも“星アリサ以来の天才”とまで評されている彼女の演技力が、今いる若手トップ女優の中でも頭一つ抜きん出ていることは確かだ。

 

 「どうする夕野?今ならまだ断ることは出来るぞ。初っ端からこんなリスクをわざわざ背負う必要はない。養成プログラムを一通り受けた今のお前なら、先に繋がる仕事はこれ以外にもまだ幾らでも転がっているだろうからな」

 

 そんな役者の相手役をド新人にやらせることは演出にとっても、演者にとってもあまりにハイリスクな博打である。

 

 「・・・やります。折角の“チャンス”だから」

 「・・・本当に良いんだな?もう一度言うがこれは本来あり得ない話だ。恐らく現場の連中は全員お前のことを疑ってかかって来ることだろう。最悪、今回の仕事で“泣く”ことになる可能性だって十分にある」

 

 それでも転がり込んできたチャンスを引き受けるのは当然のことだ。この世界を這い上がるにはまずは片っ端からチャンスにしがみついていくこと。

 

 「それでもお前は“役者”になるという覚悟はあるか?」

 

 海堂は語気を強めて憬に対して執拗にどれほどの決意を持っているのかを確かめる。しかし憬は、

 

 「・・・“役者”になる覚悟は、もう出来てます」

 

 と真っ直ぐに海堂の目を見て堂々とした口調で返事を返した。

 

 「・・・そうか」

 

 すると海堂は憬の目線を吟味するようにゆっくりと立ち上がる。

 

 「お前はいよいよ“弱肉強食”の世界に足を踏み入れた。極端な話だが、役者の世界は喰うか喰われるかが全てだ。芝居のやり方なんて誰一人として教えてはくれない。最後に頼れるのは自分自身だけだ」

 

 静かな口調で語りかける海堂を、憬は真剣な眼差しで見つめる。

 

 「とにかく先ずは“相手”の芝居を“盗め”。そして“武器”にしろ」

 

 この世界は礼儀作法や発声、演技における基礎的な部分は学べられるだろうが、自分自身が1人の役者として成長するための方法は教えてくれず、正解と言えるやり方もない。

 現場に出てしまえば、最終的に頼れるのは自分だけ。どうしても周りにそびえ立つ高すぎる壁にぶち当たり、己の無力さを知ることもあるだろう。

 そこで自分には何が足りないのかを見つめ直し、やがて人は努力を通じて芝居の“盗み方”を知る。その積み重ねが、どこにでもいる1人の“人間”をたった1人の役者にする。

 

 “役者の技術(テクニック)は、役者から盗め”

 

 

 

 「夕野、ついでに言っておく」

 「何ですか?」

 「・・・“怪我”にはくれぐれも気を付けろ。芸能界ってのは掠り傷1つで何億もの金が飛ぶことだってあるとこの間も教えたはずだ。まさかもう忘れたか?」

 

 ハーフパンツから覗く傷跡を見て、海堂は語気を強めて“尋問”する。

 

 「すいませんでした。これからは本気(マジ)で気を付けます」

 

 ただでさえ強面なグラサン男のかける圧に、俺は頭を下げるしかなかった。

 そんな憬に海堂は、ほんの少しだけ表情を緩めて“忠告”する。

 

 「お前はもう事務所(ウチ)の“俳優”だ。これからは自分の行動に責任を持て」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 月曜ドラマ『HOME -ボクラのいえ-』。

 

 とある理由で中学時代に暴力事件を起こして補導され、それをきっかけにその後は非行の限りを尽くし少年院にも入所していた過去を持つ主人公・東間直樹(とうまなおき)は、都内の町工場で働いて何とか生計を立てる日々を送っていた。  

 しかしその町工場で上司とトラブルを起こしてクビになり、寮も追い出された直樹は路頭に迷う日々を強いられてしまうが、ひょんなことから少年院で世話になった“恩師”とばったり再会し、彼の伝手で阿佐ヶ谷にある邸宅を改装した児童養護施設『ピュア』で働くことになる。

 そこで暮らす様々な事情で家族と離れ離れになった少年少女たちとのふれあいを通じて“本当の家族”、そして“本当の仲間”とは何なのかを身寄りを失った少年少女(子供たち)と共に探し求めていくヒューマンドラマ。

 

 これまで恋愛モノを中心に取り扱ってきた月9としては異例のジャンルであり、放送開始時は“主演俳優”のネームバリューをもってしても見込んでいた程の視聴率を取れていなかったが、初回以降からはじわじわと右肩上がりに視聴率が上がり続け、第4話でついに20%超えを達成している。

 

 

 

 「適当な時間になったら寝なよ」

 「おう」

 

 憬は家に帰るや否や、毎週録画してVHSに録り止めていたこのドラマを改めて見直していた。明後日までに少しでも作品のことを理解するために。

 

 “卑屈でぶっきらぼうだけど本当は正義感の塊で誰よりも優しい心の持ち主”

 

 これが俺の感じた東間直樹のイメージ。ドラマ内では過去の出来事への罪悪感やトラウマから卑屈で周囲とも壁を作る面が目立っているが、『ピュア』に入所する子供達との触れ合いや、『ピュア』で働く職員で直樹と同じく誰にも言えない過去を抱える西野美優紀(にしのみゆき)の存在を通じて、次第にぶっきらぼうながらも周囲へ分け隔てなく接するようになっていく。

 現時点で4話までしか放送されていないため完璧とは言えないが、そんな直樹のキャラクター像を掴むには十分な話数だった。

 

 そして劇中で施設の所長から『君は威圧感を与えかねない』という理由で主人公が着させられている“独特すぎるTシャツ”ですら、主演の早乙女雅臣にかかればいい感じで様になっている。

 

 もちろんそんな主演の早乙女の演技は言うまでもなく、二面性かつ影のある主人公をいつもの器用さで見事に演じ切っている。

 憑依型のような爆発力はないが、ありとあらゆる役柄を華麗に演じ分ける早乙女の芝居には上手い下手では言い表せない説得力(何か)があり、どんな役でも安定して演じられるという技術(テクニック)は彼を唯一無二の“主演俳優(スター)”へと押し上げた。

 

 牧とはまた違った意味で、これから戦わなければいけない高すぎる壁。はっきり言って、こんな強者たちと同じドラマにこれから出るという実感はまだ湧いてこない。

 

 次に注目したのは牧が演じる回想シーンで登場する美沙子(みさこ)という中学時代までいた幼馴染。かつて直樹に幼馴染がいたということは1話から明かされていたが、回想として本人が登場するのは4話からである。

 元々は幼馴染としてとても仲が良かったが、中2の夏に起きた“ある事件”がきっかけで日常は一変してしまう。

 

 現時点では美沙子との過去は詳しくは明かされていないが、恐らく直樹のモノローグを観る限り悲劇的な結末を迎えたことだろう。

 憶測でしか美沙子の感情が現時点では読めないというのがもどかしいが、これに関しては致し方ない。10話の台本を読んだ上で改めて掘り下げるだけだ。

 

 だがこうやってドラマを見直すことによってある意味それ以上のことに気付かされた。

 

 “すげぇな・・・蓮”

 

 リアルタイムで観ていた時から芝居が上手くなったと思っていたが、こうして環が出ているということを意識せずに観てみると、よりそれが顕著に感じる。

 『1999』の時はなんとか周りについていけているぐらいだったのが、今ではこうして周りのキャストとも遜色なく渡り合えている。

 

 「・・・このドラマに相当かけているんだろうな。蓮は」

 

 ドラマの撮影が始まって以降、環とは今日までロクな会話が出来ていないままだ。そう思うと明後日が一気に気まずくなっていく。

 会ったら先ずは何を話そう。久しぶりとかありきたりな感じで行くか?ていうかそもそも話す暇なんてあるのか?

 そもそも役者を名乗れるような実績も経験もないこんな俺に、この役が果たして務まるのだろうか?

 

 考えれば考えるほど、理由のない不安が広がり始める。

 

 それでも引き受けた以上、俺は役者としてあの“場所”に立たなければならない。そうしなければ共演する牧や演出の月島、そして仕事を託してくれた海堂に対して失礼だ。

 

 これが今の俺に課せられた、責任。

 

“余計なことは考えるな。俺はもう役者だ”

 

 俺は自分に向けて鼓舞すると、再びブラウン管の方に意識を向けた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 都心から少し離れた住宅街の一角に鎮座するテレビスタジオ・成城(せいじょう)メディアスタジオ。通称、“SMS”。

 ここでは只今絶賛放送中の月9ドラマ、『HOME -ボクラのいえ-』の撮影が行われている。

 

 「本当に大丈夫ですか?会議室の前まで行かなくても?」

 「良いっすよ。それに中学生にもなって同伴されるって割と恥ずかしくないすか?」

 

 16時15分。マネージャーの菅生が運転する車が、顔合わせの開始時間45分前にSMSに着いた。

 顔合わせが夕方という時間帯になったのは、今まさに撮影スタジオで行われている第8話の撮影終わりに行う関係だという。

 

 ちなみにまだ新人である俺は、最寄り駅までは電車を使って現場に通っている。

 

 「(意外と年頃・・・?)気持ちは分からなくもないのですが、初めての顔合わせで緊張されていると思って」

 「大丈夫です。気持ちは高めて来たんで」

 「(高めすぎて空回りしなければいいが・・・)・・・そうですか」

 

 菅生は会議室の前まで同伴すると言ってくれたが、そのような真似をされると逆に緊張するので断った。

 菅生とはレッスンなどを含めた1ヶ月以上の付き合いを通じて、互いに軽口を交わせるほどの関係性になった。だが、茶髪パーマに律義な口調というギャップにはまだ違和感が拭えないのだが。

 

 「くれぐれも力み過ぎないで下さいね」

 

 車から降りる時に菅生が憬に向けて“(フラグ)”をかけ、憬はその言葉に「心配するな」と言わんばかりに“大丈夫だ”という意思を伝え、堂々とした足取りでエントランスへ向う。

 

 

 

 “やべぇ・・・すっげぇ緊張する”

 

 そして見事にフラグを回収した。エントランスを抜け、顔合わせが行われる会議室が近づくに連れて、一気に緊張感が高まっていく。

 それはスターズのオーディションで味わったものとはまた違うものだ。“堂々としろ”と言い聞かせれば言い聞かせるほどかえって鼓動が高鳴っていく悪循環。

 

 “取りあえず心の準備をしよう”

 

 幸いにも予定時間まではまだ30分以上残っていたこともあり、1階にある広めの休憩スペースの椅子に座り気分を落ち着かせる。

 

 “現場の連中は全員お前のことを疑ってかかって来ることだろう”

 

 海堂の言う通り、いきなりド新人の中学生にこんな“大役”が務まるはずがないと思われることは当然のことだ。

 映画や舞台ならまだしも、稽古をつける時間もロクに取れないような民放の連続ドラマの撮影でこのような配役を行うのはギャンブルに近い。

 

 “全然HOME(ホーム)じゃねぇよな、これ”

 

 今更になって俺はとんでもない仕事を引き受けてしまったことを自覚した。思わず心に響き渡る、『自分の行動に責任を持て』という海堂の言葉。

 そういう割には随分と無茶苦茶なオファーを受けさせられたがもう引き返せないし、少なくとも俺の中では“断る”という選択肢はなかった。

 

 最初のCM(仕事)から契約を経て1ヶ月は“養成期間”という名のレッスンでほぼ事務所に缶詰めのような状況だったから、こうして芝居をできる場を与えられただけで気分は晴れやかだった。

 

 “堂々としろ。俺は”役者“だ”

 

 時間は残り30分。そろそろ本番の撮影が終わる頃だろうか。俺は深く息を吸い込むと視界を遮断して短い瞑想に入り、高まり過ぎた心を落ち着かせて精神を整える。

 

 “会ったらなんて話そうか”

 

 異様なまでの緊張感の正体がようやく分かってきた。この期に及んで俺は、顔合わせのこと以上に環に会った時の心配をしていた。

 俺はその感情を一度置き去りにして、瞑想に入る。

 

 

 

 「大事な顔合わせを前にして“居眠り”をこくなんて、さすが “大物新人”さんは違うね」

 

 突然右隣から女の人の声がして思わず目を開ける。当然、“居眠り”などはしていない。

 

 「俺は別に居眠りなんかしてな・・・」

 

 隣の席に視線を向けた瞬間、俺は視線の先に映った女性の姿に絶句した。

 

 「ん~?どうした新人さん?大丈夫かー?」

 

 いきなり現れた“実力派若手トップ女優”を前に放心状態の俺を、隣の席に座る彼女は安否確認でもするかのように手を振って容赦なくからかい続ける。

 

 「・・・牧、静流・・・」

 「おぉ生きてた生きてた。てっきり緊張し過ぎて気絶したかと思ったよ」

 

 相手の名前を言うだけで精一杯になっている俺に、彼女は容赦なく食って掛かってくる。

 

 「えっ?・・・マジで本物ですか?」

 「当たり前じゃん。あと意外にミーハーなのね」

 「いや、いきなり人気女優が隣に座ってきたら驚くでしょ普通」

 「何言ってんの?こんなの芸能界じゃ普通のことだよ。新人さん」

 「・・・あぁ、確かにそうっすね」

 

 普通の人が突然目の前に大物芸能人が現れたらびっくりするだろうが、今俺がいるのは芸能界。言われてみると確かに当たり前のことだ。おかげで俺は何も言い返せない。

 

 「それより、何で俺のことが分かったんですか?」

 「ん~、“役者の勘”。みたいなやつかな?」

 

 そう言うと牧は静かに立ち上がり、俺もそれに合わせて立ち上がる。

 

 「牧静流です。いきなりこんな大仕事を任されて大変だろうけどよろしく」

 

 少し(ウェーブ)がかったレイヤーカットの赤い髪に宝石の如く透き通る青紫(バイオレット)の瞳。そして右目の下には彼女のトレードマークである泣き黒子(ぼくろ)

 年相応でどこか愛らしさのある可憐な顔立ちにそぐわぬ役そのものに憑依したかのような没入感の深い芝居を武器とする彼女の活躍は、“子役時代”からテレビで何度も見ている。

 

 「俺は、夕野憬です。なるべく足を引っ張らないように頑張ります」

 「いいよタメ口で。堅苦しいのはあまり好きじゃないし」

 

 

 

 こうして俺は顔合わせをする前に、思わぬ形で“美沙子”と鉢合わせをした。

 




何気にこの回が形になるまで3週間ほどかかりました。よく考えたらアクタージュって民放ドラマの話がないんですよね・・・まさかの盲点。
えっ、時代劇?・・・ライダーキック?・・・あれは色々ぶっ飛び過ぎて参考に出来ませんでした・・・全ては自分の力不足です、はい。

てことでいきなりわけわかめいみふみこ状態になった挙句、エタるという単語が脳内でよぎるほどのところまで追い詰められましたが何とかスランプを脱して形にすることが出来ました。

これ以降はどうにか週1ペースでストックも増え続けているので暫くは大丈夫そうです。こんな序盤で終わらせるつもりは早々ないんで・・・あ~あ、言っちゃったよ。








やっぱり創作は、マイペースにやるのが一番いいですね。



※10/21追記 今後の展開を考慮し、誤差の範囲ですがストーリーを変えました
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