あたしには、
「おかあさん!いまのシーンもういっかいみたい!」
「もう、杏子は本当に静流ちゃんが好きね」
「うん!だっておしばいちょううまいし!めちゃくちゃかわいいし!」
子供心でも一目見ただけで分かる他の子役とは頭一つどころか二つぐらいは飛び抜けた演技力の高さと、インタビューやドラマの宣伝で出ていたバラエティ番組で見せる同い年とは思えないほどしっかりした振る舞いで自分の親ぐらいの年齢の人たちと話す大人っぽさと、ふと見せる年相応な可愛らしさ。
「いいなぁ・・・げいのうじん」
ちょうど将来の夢を“芸能人”にすると心に決めた5歳ごろのあたしは、その人が天才子役としてテレビの画面の中で活躍している姿にひたすら夢中になっていた。
「じゃあ杏子もやってみる?」
「・・・え?あたしがげいのうじんになれるってこと?」
「そう。だけど静流ちゃんみたいになるには、めちゃくちゃ頑張らないと駄目だけどね?」
「だったらめっちゃがんばる!がんばって静流ちゃんとお友達になる!」
そんなあたしに、“メイクさん”として芸能界と繋がりがあったお母さんが知り合いの人からの伝手で児童劇団を紹介してくれたことが、全ての始まりだった。
「堀宮杏子です!よろしくお願いします!」
こうして晴れて児童劇団に入ったあたしは、一人前の子役になるために挨拶といった礼儀作法から滑舌や喜怒哀楽の表現といった芝居の基礎を身につけていく稽古漬けの日々を送って、少しずつ演技力というものをこの身体に吸収していった。
「ねえ、あたしはいつになったらオーディションに合格できるようになるの?」
「自分を信じてこのまま頑張っていればそのうち来るわよ」
それでもあの人のようにとんとん拍子にスターダムを駆け上がっていけるのは芸能界においてほんの一握りの中の一握りで、周りにいる子役の中でも飛び抜けて芝居が上手いわけでもないあたしにはそんな“外れ値の才能”なんてなかったから、最初の1年は共演が叶わないどころかオーディションすらも通らないような日が続いた。
「向いてないのかなぁ・・・あたし」
小学校に上がってしばらくすると、あの人は更に人気者になっていきもはや“国民的”と呼んでもいいくらいの人気子役になっていた。一方であたしは、CMの仕事かほとんど台詞も出番もないほぼエキストラも同然の仕事を年に数回ほど当てるのがやっとの状況が続いていて、自分の才能の無さにやる気を失いかけていた。芝居自体はちゃんと上手くはなっている感触があったのが、尚更それを加速させていた。
「わたしは、杏子ちゃんが人気者になってテレビで活躍してる姿・・・見てみたいって思う」
だけどその度に幼稚園のときからずっと一緒にいる引っ込み思案な幼馴染に励まされて、その度にあたしは頑張ろうと胸に誓ってどうにか心を切り替えることができた。
「そっか・・・こうやって泣けばいいんだ」
やがて週4日の
「昨日のドラマ観たよ杏子ちゃん!またテレビに出るなんてすごいじゃん!」
「今回も端役だからそんなに凄いことじゃないよ」
「でも見てて全然違う人かなって思うくらい上手だったよ!」
「あははっ、でもまだまだあたしは“ここから”だから♪」
そんな自由研究じみた独学の努力が形になり出したのか、次第にオーディションを通過する回数も増えていき、端役ながらも台詞や見せ場のある役を貰えるようになった。クラスのみんなはテレビにちょいちょい出るようになったあたしのことを“すごいすごい”と言ってアイドルみたいに盛り上げてくれたけど、その程度で満足なんかしなかった。あたしが目指している場所はクラスで1番の人気者なんかじゃなくて、憧れているあの人がいる“居場所”だったから。
「杏子ちゃんならきっとなれるよ・・・・・・だって杏子ちゃんは、わたしの“ヒーロー”だから」
だからクレジットの
「・・・やった・・・やっと共演できるところまで来た」
現状に満足せず、誰もが憧れ目標にしているあの人が立ち続けている居場所を目指し続けて3年ほどが経ったとき、あたしはついに憧れていたあの人、牧静流との共演を果たすことになった。初めての共演となったドラマで与えられた役回りは牧静流の演じるクラス内で巻き起こるいじめのリーダー格の少女とつるんでいる“取り巻き”の1人。悪い言い方をすればメインを際立たせるための引き立て役だったからもちろん満足はしていなかったけれど、1クール続く連続ドラマでほぼ毎回に渡って登場する役に選ばれたことは素直に嬉しかった。
「あたしは堀宮杏子。ずっと静流ちゃんと一緒にお芝居したいって思ってたから、共演出来て嬉しいよ」
何よりずっと憧れていた人と同じカメラの前で芝居が出来る。このことが本当に嬉しかった。
「今日からよろしくね!静流ちゃん!」
そしてついに牧静流と面と向かって会えた初顔合わせの日。あたしは顔合わせ終わりに会議室を出てマネージャーのいるロビーへと歩いていく彼女を呼び止めて、挨拶ついでに声を掛けた。
「・・・杏子ちゃんってさ、もしかして私に憧れて役者になったの?」
握手をするために手を差し伸べたあたしに、彼女は意味深に笑みを浮かべてこう聞いてきた。
「うん。だってあたしにとって静流ちゃんは何でも出来る天才子役で、ずっと憧れなんだから!」
返ってきた言葉の真意なんて全く理解していなかったあたしは、そのまま受け取って返した。まだ
「そう・・・じゃあ、杏子ちゃんは私の“真似っこ”ってことだね」
純粋な気持ちのまま憧れて続けていたことを真っ直ぐに伝えると、彼女はグッとその可憐な顔を眼前にまで近づけて、あたしに言った。
「私さ・・・・・・あなたみたいな憧れてるだけの“真似っこ”が
そう言ってあたしのことを“真似っこ”呼ばわりした
「日本の未来は♪」
「・・・・・・」
「世界が羨む♪」
「・・・・・・」
「恋をしようじゃないか、って合いの手入れてよセーラ~」
「世良です。申し訳ありませんが歌はNGなので」
「いやここは“合いの手”で歌じゃないんですけどねセーラさん?」
「普通に歌ですよ杏子さん」
「なんてこと・・・ついにセーラも“クソ真面目冷酷マネージャー”の将大さんに毒されてしまったのですね」←※ミュージカル女優っぽく喋ってます。
「(また始まった・・・)“あのお方”に対してそのような物言いは、幾ら杏子様とて看過できるものではごさいません」←※渋々そのノリに付き合ってます。
「あははっ、いいねセーラ!今からでも女優目指せば?」
「簡単に言わないでくださいよ」
新宿の映画館で行われた主演映画の舞台挨拶終わりの帰り道。スケジュールの話の後に始まる、仕事以外の他愛のない話といきなり始める寸劇をしながら暇を潰す、マネージャーの“セーラ”が運転する車の中での家に着くまでの自由時間。
「言っておきますが、こういうのは仕事終わりだけですよ?」
「分かってるって♪こう見えてあたしって与えられた仕事は真摯に向き合うタイプだから」
「“マジのマジ”ですからね?」
「うんうん。マジのマジ」
ちなみに普段は教育係だった将大さん(※さとるのマネージャー)譲りの真面目さを持つセーラだけど、あたしが一日のスケジュールをこなした後に気まぐれで始める寸劇には意外にもちゃんと乗ってくれる(※しかもちょっと上手い)ユーモアがあったり、何気に気が合うところもあるからセーラのことはマネージャーである前に人として割とあたしは気に入っている。
「しかし杏子さん。一日の仕事が終わってお疲れのはずなのに今日は一段と元気ですね?」
「そうかな?いつも通りじゃない?」
そんなハンドルを握る1月からあたしの専属マネージャーになった“セーラ”こと世良さんが、バックミラー越しに視線を送りながらいつもより2割増しくらい仕事終わりのテンションが高いあたしに真面目なテンションで聞いてきた。
「・・・もしかして憬さんが観に来てくれたことが嬉しかったのですか?」
今日の舞台挨拶に“サクラ”とはいえちゃんとさとるが観に来てくれたからテンションが高いのかと聞いてくるセーラ。少しだけテンションが高めなあたしに向けるその視線は、予想を当てに行く口ぶりに反してどこか不安げだ。
「ねえ?どうしてセーラは不安そうな顔してんの?」
バックミラーにチラリと映る目に視線を合わせて、あたしは逆に問いかける。将大さんのアシスタントマネージャーをしていたときを含めると何気にもう1年近い付き合いになるセーラには、どうやら理由は“お見通し”みたいだ。
「舞台の上で憬さんのことを確認していたならもうお分かりかと思いますが、“あの人”がお忍びで来られていたので・・・」
あたしからの逆質問で全てを察したセーラから、核心を突く一言が返る。
「念の為にスタッフの方に頼み込んで観客の名簿を確認すべきだったかもしれませんね」
「“こんなこと”に責任なんか持たなくて大丈夫だよセーラ。どこの席に座っていようとあたしなら分っちゃうし、そこまでして遠ざけてるわけでもないから」
少し無理して作ったハイテンションで若手マネージャーの緊張を解く必要がなくなり、心持ちを元に戻して本題に入る。
「でもまさかさとるの隣に座ってた人がよりによって“牧静流”だったなんてさぁ、もうどういうシナリオって話よ・・・」
舞台挨拶で今日来てくれた観客に向けて挨拶をして、監督の作間さんや共演者たちと『殺戮教室』のちょっとした撮影秘話で観客を盛り上げているなかで、さとるの隣に座っていたあいつとほんの一瞬だけ視線があった。
「しかも一瞬だけ目が合ったんだけどさ・・・・・・あいつ、あたしのこと見下してた」
あたしのことを視ていた瞳は、あからさまに見下していた。
「・・・あの
舞台挨拶の途中の1秒にも満たない程度の一幕を思い出したら、今までの人生で5本の指に入るくらい物騒な言葉が口から出てきた。ふとバックミラーの中を見ると、セーラの目が少しだけ引きつっているのが見える。きっと今のあたしが物凄く怖い顔をしているんだろうなっていうのは、自分でも分かっている。
「あ、もちろん今のはマジのマジで例え話だから気にしないでねセーラ!あくまで芝居でって話だから」
セーラの感情を見て、たったいま口から出てきた言葉を“ジョーク”にする。全くあたしときたら、何を天性の才能に嫉妬する秀才じみたことを口にしてムキになっているのか。あたしは誰もが羨む天才女優・堀宮杏子でなければいけないから、こんな嫉妬で埋め尽くされた“負け言”を人前で吐くことなんて全くらしくない。
「・・・私が杏子さんのマネジメントを任されたのは、社長や菅生からの命令ではなく“私自身の意思”によるものです」
と、自分で自分を戒めているとハンドルを握るセーラが呟くように切り出す。
「・・・え?マジのマジで?」
「はい」
もちろん本当に初耳だったあたしは、久しぶりに頭が真っ白になる感覚に襲われた。一体どうしてこんなタイミングでカミングアウトしたのか、この瞬間は分からなかった。
「だから、誰にも負けない国民的女優になることを目指すあなたのことをマネージャーとして支えて、“一番高い”ところに連れて行きます」
次に発せられたのは、理由ではなくマネージャーとしての意思表示だった。だけどこの一言で、あたしはセーラが何を伝えたいのかを
「そうだね。セーラも子供だったときはあたしと“同じ”だったもんね」
「やめてくださいよ。“過去の話”は歌と並んでNGなので」
「ごめんごめん。もうあと5年は黙っておくから」
それは少し前までのあたしのように、セーラもまた才能に恵まれた
「いつもありがとう・・・セーラ」
ついつい感化されて本名の“世良さん”と呼ぼうか悩んだ末に、こんなのはらしくないと呼び慣れた名前で日頃の感謝を告げる。芸能界という世界で一番になれずに挫折した“悔しさ”を誰よりも知っている人が、味方になって支え続けてくれる。こんなに嬉しいことはないって、あたしは思う。
“『私は私の“やり方”で行くから・・・もう杏子の助けはいらない』”
“それ”はやめて。それだけは今は思い出したくない。だってあたしは、みんなのことを踏み台にしてでも一番になるって決めたから・・・じゃなきゃあたしは何のためにあずさのことを・・・
♪~_
「(メール・・・さとるからだ)」
『_お疲れ様です。感想は長くなるので一番印象に残ったところだけにしておきますが、レンコが「私はここで死んでもいい」と言っていた場面での演技が特に良かったです。_』
「ふっ、件名つけ忘れてるよさとる」
こういう如何にも携帯を使いこなせていないのが丸わかりな堅苦しい件名のない無題のメールに、思わず笑いが込み上げる。本当にさとるはただのメールでのやり取りでさえ予想外なところを見せてくれるから、純粋に面白いしメールでやり取りをするだけでも楽しい。
「?どうされました杏子さん?」
メール1つで嫌なことを忘れさせてくれる後輩につい表情が綻んだあたしに、セーラは視線を前に向けたまま理由を聞く。どうされましたと聞いてるくせに、声色のごく僅かな違いで機嫌を取り戻した安堵が伝わってくる。全く、どこまで“人たらし”なんださとるのやつ。
「ううん。何でもない」
こんなにもただ一緒にいるだけで楽しい人を好きになれたら、そんな人が自分のことを好きになってくれたら、本当に“幸せ”なんだろうな・・・
“『最後に“勝つ”のは私ですよ・・・堀宮さん』”
「ちょっと眠くなってきたから今から寝るね」
「はい。家の前まで着いたところで声をかけます」
「ありがと~セーラ」
さとるから送られた件名のないメールに返信を送って、あたしはまどろみに身をゆだねて瞼を閉じた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『_おつかれ~!今日はマジのマジで観に来てくれてありがとねん♫P.S.件名付け忘れてるよ~ヾ(¯∇ ̄๑)ドンマイ_』
「やべ・・・」
寮に着いて寮母さんの作った夕飯を食べて入浴を済ませるという自由時間までの
『_次から気を付けます。明日からもよろしくお願いします。_』
気付いたときは一瞬だけ恥ずかしさが込み上げてきたが、かと言って訂正するのもそれはそれで恥ずかしいから、潔く間違いを認めてメールを返信する。もちろん今度こそ件名はちゃんと付けた。
『_( ¯﹀¯ )エッヘン_』
「(相変わらず返信が早い・・・)」
返信を送ってから僅か10秒ほどで、堀宮から顔文字だけの返信が返ってきた。堀宮がよく送ってくる顔文字の意味は何となくは分かるようにはなったものの、とてもじゃないが機械音痴な俺にはこういうメールの書き方はまだレベルが高いから無理だ。メールが返ってくる早さといい、本当にこの人は携帯電話を使いこなしている。
“『やっぱり憬くんはどこまでも“正直者”だね』”
「・・・さて」
本人のイメージをそのまま文字にしたかのようなメールのやり取りを終えて、俺は気持ちを切り替え部屋の机に並べている第3話の台本とノートを開いて明日からの撮影に向けた予習も兼ねた役作りを始める。
「(来週はマジで忙しいからな・・・)」
とにかく3話と2話の撮り残しているシーンの撮影が交互にある明日からの一週間は忙しい。まず『ユースフル・デイズ』のスケジュールを簡潔に説明すると、明日はロケ地のキャンパスで中庭のシーンとエンディングの撮影があり、明後日は天候が良ければ予定通り貸しグラウンドで都大会に向けて練習するシーンの撮影。そして火曜はスタジオ、金曜は水族館を貸し切って撮影を行い、その合間を縫うように月曜は7月からクランクイン予定の出演映画に向けたスタッフ陣との顔合わせも兼ねた打ち合わせが本郷監督のオフィスで行われる。といった具合に今のところは水木が休日代わりと言わんばかりに2日分のオフはあれど、このドラマが始まってから4月までとは比べ物にならないほどハードなスケジュールが続いている。おまけに本郷の映画がクランクインすれば今以上に忙しくなるだろう。
「(・・・純也はペンギンを見て、何を思ったんだろう?)」
改めて、いまの俺と同じかそれ以上にハードなスケジュールを涼しい顔してこなしている“他の3人”やこういう生活を子役のときからずっと続けている牧のことが、人として凄いと尊敬するのと同時に恐ろしくも思えてくる。置いていかれないようにするには俺も俺でもっと役の精度を上げるために切り詰めて行かないといけないところだが、スタミナが切れて撮影に影響が出ないようペース配分にも気を配らないといけないのが、何とももどかしい。
【海が解明されてるのって、たった15%らしいんだってさ】
【マジ?ってかなんで急に海の話?】
【深い意味はないんだけどね、海みたいにパーセンテージが分かっていたら、人はもっと自分と上手く向き合えるのかな~って、ペンギン見てたら思った】
【え?最近何か嫌なことあった?】
【前から思ってるけどジュンってちょいちょいデリカシーないわよね?】
金曜日に撮影する水族館デートの場面を台本と役作り用ノートを併用しながら読んで、ペンを相棒にして純也の感情を今一度紐解く。自分の感情を隠し切れない不器用な俺とは違い、心に“感情”を秘めていても平気な顔をして周囲には何とか隠せる程度には器用で、誰とでも気さくに話しかける明るさがありながらも、心の内が中々見えない闇深さもある。
【・・・ペンギンってさ、どうして飛べなくなったんだろうな?】
来週には本番だというのに、性格が自分と全然違う純也の“ここから先”の感情はどうしてもまだ不明瞭なままだ。
“『結末に近づくことが役作りの全てじゃない。憬君がこれから演じる純也は絵の中にいる少年なんかじゃなくて、お前にしか演じることの出来ない純也だ』”
「・・・っ」
つい魔が差して該当のシーンが描かれている原作本の3巻に手を伸ばそうとして、本郷が言っていた言葉を思い出してその手を俺は止める。
「(そうだ・・・純也は“俺”だ)」
そうだ。原作に描かれている正解をただなぞったところで、それは俺の演じる純也にとっての正解ではないし、求められていない。だから既に記された正解が全てだと過信せずに、自分なりの解釈で照らし合わせていかなければならない。じゃなければ、雅との心の距離は縮まらないままだ。
♪~_
台本とノートに書いた箇条書きのバックボーンと睨めっこしていた意識に、携帯に届いた着信が割り込む。
「・・・蓮か」
堀宮からだと思いながら画面を開けると、蓮からのメールが一件届いていた。“おつかれ”という四文字の件名で、内容は大体把握した。
『_おつかれちゃん。ってことで今日の感想よろしく_』
「いやざっくりしすぎだろ・・・」
想像より大雑把なメールに思わず独り言が漏れたが、返ってきたメールの内容は大方の予想通りだ。
「・・・何て返そうか」
メールを読んだ俺は“自習”を中断して、返信するメールの内容を考える。ただでさえメールは未だに少し不慣れで、今日の感想は次に現場か学校であったときにでも話そうと頭の片隅で考えていたから、文章が出てこない。堀宮のときみたいに演技の感想を言うか。でもせっかくだから感想は直接話したいな。じゃあいっそのこと緊張気味でもどうにか乗り切ったことを称えてやるか、逆に挨拶で噛んだところがお前らしくて面白かったとでも言って軽く揶揄っておくか。いやさすがにそれは怒るか・・・
“『憬の言ってることって嘘がないから、君からおめでとうって言われるのは素直に嬉しいよ・・・』”
『_今日の蓮。杏子さんにも全然負けないくらい綺麗で華があって、可愛かった。_』
何だかんだで3分ほど考えた末に、俺は素直にドレスが似合っていたという感想を蓮へと送り携帯を閉じてその意識を再び台本とノートへ向ける。
「・・・?」
台本とノートへ意識を向けようとして、俺はもう一度携帯を開いて自分が蓮へと送ったメールの中身を確認する。
「・・・うわ」
それを自分の目で読み返した瞬間、返したメールに感じたことのない寒気に似た感覚が全身を襲った。どうして悩みに悩んだ末に俺はこんな“らしくない”メールを送ったのか、自分でも理解が出来ない。少なくとも蓮には、こういうことを伝えたくてメールを返したわけじゃない。どうして堀宮のときみたいに映画の感想を返さなかったのか。そもそも感想を聞かれたら先ずは親友の演技の感想を忖度無しに言うのが
というか、こんなメールを送られて万が一にも蓮が勘違いでもしたら・・・
“・・・いや、さっきから何考えてんだよ。俺”
♪_
思い上がりかけた自分を無理やり正して今度こそと台本とノートへ意識を向けようとしたタイミングで、蓮からの
『_ありがとう。でも芝居バカな君のことだから映画の感想返してくるかと思った_』
恐る恐ると開いたメールには、文字にすると素っ気なく感じてしまう普段の親友と
その返信の真意は?_
新年、明けましておめでとうございます。
去年の休載期間も含めると何だかんだでもう2年近くchapter4をやっている気がするので(※決して引き延ばしているつもりはございません)、年内にいまやっている長編を終わりまでもっていくことを目標に今年は頑張ります・・・と言いながら年の瀬になってもメインキャストや主人公を取り巻く三角関係の決着がついていなかった場合は、本当にごめんなさい。
ということで改めてになりますが、本年も拙作をよろしくお願いいたします。