『_今日の蓮。杏子さんにも全然負けないくらい綺麗で華があって、可愛かった。_』
先にシャワーを浴びている静流が上がってくるタイミングをほんの少しだけ気にしつつ、自分の部屋の勉強机を前に携帯片手に親友からの予想外の返信を見て、私は一瞬だけ目を疑った。
「・・・うわ」
これが現実なんだと理解が追いついた瞬間、思わず気の抜けた変な声が出た。親友の私から“今日の感想”を聞かれたら主語がなくともあの芝居バカはバトルロワイアルの感想か私の演技の出来栄えを正直に返してくるだろうと考えていたから、まずそこで面を食らった。
「あんまり似合ってるなんて思わなかったんだけどな・・・」
そして次に、私にとっては着させられてる感が凄くて似合ってるようには思えなかったドレスを華があって綺麗だったと褒められたことへの、嬉しさと恥ずかしさが半々ぐらいの何とも言えない気持ちが襲ってきた。
「(これって・・・私が悪いってことだよね?)」
相手が憬だったら“今日の感想よろしく”とだけ伝えておけば映画の感想が返って来るだろうと過信しすぎた私が悪いと言われたら、もうそれまでだ。でもあの芝居バカは、そんな最低限のワードさえあればこっちが補足しなくても分かってくれるくらいには、私のことを理解していると思った。
「(・・・何て返そう)」
別に相手が親友だったら伝わるかなと思ったメッセージが上手く伝わらなかったことがショックとかじゃない。ただ今まで憬が言ってきた“華がある”という意味はあくまで私が可愛いかどうかではなくて、
“『お前って人を好きになったことある?』”
だけど役作りの過程で雅を演じる堀宮さんへ恋愛感情のようなものを持ち始めてからの憬は、まだ見たことのない“感情”を私に見せるようになった。
『_ありがとう。でも芝居バカな君のことだから映画の感想返してくるかと思った_』
また変な深読みをして思考回路が斜め上へと行ってしまう前に、一旦頭を冷やして冷静になるためにメールを返す。幸か不幸か明日の撮影は1組のキャストだけで行い、次の出番は雅とのシーンで憬の出番がないから会うのは少しだけ間が開くことになる。
「・・・はぁ」
メールを返したら、無意味に溜息が出てきた。自分でもよく分からないし、親友として嫌いになったというのは1ミリたりともないけれど、何だかこのところの私は憬といると妙に落ち着かなくなっている。あのバカにもついに“好きな人”が出来たかもしれないっていうことを除いたら、何一つ変わってないはずなのに。
「・・・初めてだな。あいつからシンプルに“可愛い”って言われるの」
そんな相変わらずなはずの親友が、初めて私のことを
「可愛い、ね・・・」
私のことが可愛いって、考えれば考えるほど風の吹き回しが分からない。役作りでそういう感情を堀宮さんへ向けるのは百歩譲って分かるとして、なんでこんなメールをあいつは私に返したんだろう。いつものあいつだったら、あれぐらいでもちゃんと伝わるはずなのに・・・
“『だから照れてねえって・・・』”
「///・・・だから何でだよもう」
気が付いたらまたよく分からない斜め上なことを考えていて、それに気が付くと同時に自己嫌悪の言葉が出る。本当にどうした私?何であのバカのことを思い浮かべてよく分からない
♪~_
「(・・・憬からだ)」
と、自分で自分に向けて喝を入れたタイミングを図るように、憬からの返信が来た。
『_悪い。台本読みながらメール返したからちょっとだけ純也の感情が入ってたかもしれない_』
『_それはだいぶバカだね君。で、映画の感想は?_』
『_とりあえず映画の感想はメールだと上手く書けないから次会ったときに直接話す。あと馬鹿言うな。_』
『_ちなみにオフっていつ?_』
『_今のところ水曜と木曜。だけど日曜の撮影が雨で延期になったら木曜になる。_』
『_りょーかい。じゃあ水曜日に学校で_』
『_了解。今日はおやすみ。_』
『_おやすみ_』
「・・・はぁぁ」
やり取りを終えたら、さっきよりも大きな溜息が出た。文脈からして、結局あのメールは役作りの途中で私からのメールを返したせいで純也の感情が乗ったまま送ってしまったという、俄かには信じがたいけど憬だったら十分にあり得る理由だった。もちろん親友の立場からしても“どんな理由だよ?”って聞きたくなる話だけど、
「芝居バカすぎるでしょ。憬のやつ」
心の中から出てきた言葉が、そのまま口から次々と出て行く。終わってみればあの芝居バカが“バカをした”だけのこと。だから私にメールで可愛いと言ったのは憬の感想ではなく、純也の気持ちが抜け切らない状態で返信してしまっただけのことだ。
「なんか私だけバカみたいじゃん・・・」
なのに私は何を勘違いして満更でもない気持ちでちょっとだけ喜んでいたのか。あいつにとっての“可愛い”の対象はあくまで雅を演じる堀宮さんであって、私はただの親友。今まで通りで何も変わらないことなんて分かり切っているのに、よく分からない期待をして1人で悩んで。本当に馬鹿だ。
“『だから照れてねえって・・・』”
じゃあ・・・撮影初日や屋上で話してたときに見せたあの
「・・・ムカつく」
自分で口にした言葉に、ハッとなって我に戻る。
「(あれ?・・・私怒ってた?)」
いつの間にか私は、閉じた携帯に向かってイライラとした気持ちをぶつけていた。憬が私に怒らせるようなことをしたわけでも、嘘をついたわけでもない。そもそもあいつは超が付くほど嘘が下手くそだから、あの表情が嘘なんかじゃないことは同じ役者である以前に親友として分かり切っている。もしあれがさっきのメールのように役作り中の感情だったとしても、入り込む芝居をするあいつにとっては真実だし、憬がそういう
“でもどうして、私はイライラしてるんだろ・・・”
「・・・役作りの続きしよ」
とにかくこんなふうに気持ちがこんがらがってきたときは、どっかのバカみたいに自分がいま演じている役を掘り下げて“芝居バカ”になるに限る。しょうもないことでウジウジと悩んでなんかいたら、いつまで経ってもライバルになんて勝てないのだから。
♪~_
「今度はなに?」
切り替えようと机の引き出しに保管している台本に手を伸ばそうとしたところで、嫌がらせの如く携帯が鳴る。しかも次は電話だ。
「はい」
『あ、蓮ちゃん今日はお疲れ~』
「お疲れ様です」
あの二手勝負をした後に交換した電話番号に出ると、耳元から聞こえてきたのはひと仕事を終えた後とは思えないくらい元気のいい堀宮さんの声。こんな時間に何の用だろうか。
『急でごめんだけど今って話せる?1分ぐらいで終わるから』
「はい、大丈夫ですけど」
とはいえ静流はまだシャワーから上がっていないので、1分で済むならと堀宮さんからの電話に付き合うことにする。声の感じからして、舞台挨拶の感想とかではないと私は予想する。
『実は明後日のオフに水族館でも行こっかな~って思ってるんだけど、蓮ちゃんもオフだったら一緒に行かない?』
内心で“人がせっかく気分転換しようとしてるときに”と間の悪さを少しだけ抱えながら話に乗ると、まさかのプライベートでの遊びの誘いときた。当然こんなことを急に言われても意味も意図も分からない。さっきの憬もそうだけど、この人もどういう風の吹き回しなのか。
「何でそうなるんですか?」
『ほら。あたしたちってドラマで親友やってるくせにカメラの外だとそれっぽいことしてないじゃん。だからプライベートで一回ぐらいは“友達”として一日過ごしてみたいなって。蓮ちゃんも思ったりしない?』
「・・・“役作り”ってことですか?」
『そゆこと♪蓮ちゃんあったまいい~』
“ウィンウィンでしょ”と言いたげに、堀宮さんは水族館へ行く理由を明かす。本当の目的は役作りという、聞いてみればいかにもこの人らしい納得の理由。自分の演技のためなら周りから嫌われるようなことをするのも厭わないこの人も、憬とは違う意味で芝居バカだ。
「ちなみにそれって私に“メリット”はありますか?」
ただこっちもそんな飛び抜けた
『もちろん無理にとは言わないけど、損だけは絶対させないよ』
半信半疑な疑問を吹き飛ばすかのように、自信満々な口ぶりで堀宮さんは答える。声を聞くだけでも、スピーカーの向こうの表情がしてやったりと笑っているのが伝わってくる。
「わかりました。明後日行きましょう、水族館」
『ありがと蓮ちゃん!マジのマジで大好き!』
「いきなりデカい声出さないでビックリするから」
『あははっ、ごめんごめん』
向こうが
『じゃあ場所と時間は明日メールで送るからよろしくね。じゃ、おやすみ』
「はい、おやすみn・・・・・・途中で切るなし」
こうして自分の思惑通りになったのが嬉しいのかわざとらしいくらいご機嫌になった堀宮さんは、伝えることだけを伝えて私が“おやすみなさい”と言い切る前に電話を切った。わざわざ言うほどのことじゃないけれど、こっちが話している途中に遮られるのは私の中で4番目か5番目くらいにはイラっとくる。
「・・・なんで水族館なんだろ?」
だけど堀宮さんと1分間だけ話したおかげか、ほんのちょっと不本意だけど最低限の気分転換はできた。それにしてもどうして水族館なんだろうという疑問が、電話が終わった後に頭の中で浮かび上がる。どうせだったら最後に聞けばよかったと軽く後悔しつつ、台本を取り出して理由を考える。
【雅ってほんとにペンギンが好きだよな?】
【うん。だってムチってしてて触り心地よさそうだから】
「シャワー空いたよ、蓮」
ドラマの4話で純也と雅が水族館でデートする場面があることを思い出したのと同時に、部屋の扉をノックする音と静流の声が耳に届いた。
「もしかして熱心に学校の勉強中?」
「じゃなくて役作り。今までも本気でやってきたけど、今回のドラマは本当に賭けてるから」
「じゃあオンエアめちゃくちゃ期待しちゃけどいいかな?」
「うん。楽しみにしてて」
「あははっ、何だか今回はいつも以上にやる気じゃん」
「当然でしょ。良い役を貰えたからにはみんなの期待に応えないとだから」
堀宮さんがどういう“魂胆”を企んでいるのかを頭の片隅で考えつつ、私は静流と仕事の話を軽くして着替えの部屋着を抱えてバスルームに向かいシャワーを浴びた。
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同日_東京都文京区_某大手出版社_
「失礼します」
夕方5時過ぎの大手出版社のオフィスビル。徹夜で書き上げ何とか期限に間に合わせた第4話の第一稿が入った封筒を片手に抱え、ビルの10階にある小会議室のドアを三回ノックして、ノックのリズムをサインにして僅かながら過剰に緊張している心を落ち着かせて僕は中へと入る。
「お世話になっております。ドラマ『ユースフル・デイズ』の脚本を書かせて頂いている草見修司です。この度は先生に直接お会い出来て光栄です」
小会議室のドアを開けて中に入り、企業の面接に来た“就職活動中の大学生”の如く畏まった姿勢と態度で僕はイスに座り待っていたその人へ挨拶する。上地さんを介したやり取りこそあるものの、相手は現時点で名前と作品以外は何も存じ上げていない初対面である上に、こちらは脚本を書かせて貰えている立場でもあるが故に上から目線に見えるような態度だけは避けようとこの部屋に来るまでに考えた末の、自分なりの社交辞令。こういうときに限りつい数か月前までは演劇以外の世界を知らなかった不届きな“新参者”しかいないという状況は、決して心持が強いほうではない僕としては穴があれば入りたい気分とまでは行かなくとも、心細いのは否めない。
「いえそんな、草見先生こそお忙しい中で私からの要望を聞いていただいてありがとうございます」
「僕みたいな無名の
「世界は違えど、自らの美学を文字にして世に送りだしている時点で草見先生も立派な“先生”ですよ」
こんな畑違いな無名の劇作家にわざわざお会いしたいと伝えてくれたその人は、畏まる僕に目を合わせるや立ち上がって一礼し、物柔らかな話し声で僕を出迎える。胸元あたりまでスッと伸びたきめ細やかな髪と、公に自らの正体を一切明かしていないことが勿体なく感じてしまうほどに綺麗で端正な顔立ちと、あまり
「改めまして、原作の
「ええ、こちらこそよろしくお願いします。逢沢先生」
この
「では、こちらが第4話の第一稿になります」
初対面ということで“天気の話”のひとつでもしたほうが一般社会においては良いのだろうが、予め上地さんから“世間話とマルチタスクが苦手”だということを聞いている僕はこれ以上の雑談はせず用意されたイスに座り早速本題となる原稿を逢沢先生へと渡す。
「はい。確認します」
受け取った封筒を丁寧に開けて、先生は僕の書いた第4話の第一稿に早速目を通し始める。当然ながら原作者から直々に自分の書いた台本を隅々までチェックされる状況はプロデューサーを介しているとはいえ今回のドラマが始まってからというもの常に続いているもので慣れていたつもりだったが、いざ目の前で自分の書いたものを読まれるのは少なからず緊張するもので、心拍数が僅かながらに上がりつつあるのを心臓部から伝う微振動で僕は実感する。
「なるほど、ここで変えるか・・・」
1ページにつき10秒から15秒ほどのハイペースで台本をめくりながら、時折こちらに聞こえるか聞こえないかほどの小さな声量でその場で感じた率直な本音を呟きメモを加え、添削の時間は淡々と進んでいく。ただ見ているだけで話しかける隙すらない怒涛さを肌で感じるほどの集中力で、逢沢先生は僕の書いた台本と
【都大会。ベンチに入れたんならマジで頑張れよ新太】
【言われなくても。純也こそ頑張れよ、インターハイが目標なんだから】
【おうよ】
第4話は、前回に緊張のせいでスランプ気味だった亜美を純也が励ましたことがきっかけで亜美が純也へ好意を抱き始め、新太と純也、雅と亜美の4人がそれぞれ都大会の当日を迎えていく中でこの4人の関係がいよいよ大きく動き始めていくという、原作においてもドラマにおいてもターニングポイントとなる重要な回だ。
【雅は神波くんと園崎くん、どっちを応援したい?】
【えぇー・・・それは、どっちも】
無論だが僕は原作が存在する作品には敬意を持って関わることを心に決めているため、この度の第4話においても基本的に展開自体は原作準拠で書かせてもらった。
【じゃあさ、もし雅が“勝利の女神”だったら、どっちを勝たせたい?】
ただし、
「・・・ありがとうございます」
時間にして約10分かもう少しといったところか、こちらが何かを話しかける隙すら与えないほど添削に集中していた逢沢先生のチェックが終わる。上地さんから聞かされていたマルチタスクが苦手だという話も、第一印象の時点では爪を隠していた芸術家気質な一面をこの眼で視て理解した。
「どうでしたか?」
「細かな添削はこちらにメモ書きをさせていただきましたが、展開の流れ自体はこのままでよろしいかと」
「ありがとうございます」
物柔らかな口調と優しそうな笑みで、容赦なく“書き直し”を要求された。展開を変える必要が無さそうなのは幸いだが、やはり僕と逢沢先生はこの作品に対する考え方に多少なりとも違いがあるらしく、これまで第一稿で通った試しがないので想定の範囲内だ。無論、お互いが表現者であるからこそ作品に向き合う姿勢は厳しいほうがより良くなることは、演劇を通じて学んでいる。
「それと、4話のシナリオを読んで思ったことがあるのですがよろしいですか?」
「はい。ご意見があれば是非お願いします」
第一稿の台本を封筒にしまい込み正面に座る僕の前へと差し出して、逢沢先生はこの眼に視線を向ける。微笑みながらも真剣な表情が物語る疑問の正体は、次の言葉が出てくる前から分かっていた。
「凪子が雅へ新太と純也のどちらを応援するかと聞く場面。凪子の深読みしないサバサバした性格を考えれば答えを濁した雅にこれ以上言及することなく“そっか”の一言で済ませたままでも良いと私は思うのですが、
やはり聞かれたのは、僕がこの作品のシナリオに初めて仕掛けた“改変”だった。
「逢沢先生の原作を悪く言う意図は全くないということを念に置いた上で聞いて欲しいのですが、あのままのシナリオでは映像化したときに凪子というキャラクターが十分に
喧嘩と戦争が嫌いな僕は演出家や原作者、そして演者と争うようなことはしたくない。だが僕にも劇作家である前に
「役者というのは、演者である前に“生身の人間”であり、生身の人間が演じる以上は大なり小なり演者自身の“人間性”というものが役に反映されていくものだと僕は考えています。もちろん中には完全に自分というものを排除して人格ごと入り込む“規格外”の役者も稀にいるのですが、大抵の役者は芝居を見ているとその人自身の人間性、すなわち“生き様”が見え隠れするものです」
無論それはただの独りよがりではなく、実際に撮影現場を見学させてもらい演者たちの空気感をこの身で体感した上で決めている。例えこのシナリオが、お気に召すようなものではないとしてもだ。
「演劇然り、映画然り、ドラマ然り。実写は演者の生き様から発せられる一つとして同じものなどない“個性”も含めて作品にとっての起爆剤になり得るものです・・・漫画や小説においてもそれぞれ違った個性を持つ登場人物が1つの世界に揃うことで物語が始まり広がっていくように、全てが正解にはならない“現実のシナリオ”もそうであるべきだと僕は思います」
“『何だか、このまま戻る気にはどうしてもなれなくて』”
「なるほど・・・・・・つまり草見先生は、凪子が
一部を改変する選択をした理由を伝えると、逢沢先生はじっと僕の眼を見つめたまま意味深な質問をぶつける。暖かな笑みは絶やさず、しかし瞳に映える感情は真剣に、鋭く切り込んでいく。その情け容赦のない姿勢に、彼女の芸術家たる所以が色濃く現れている。
「どういう意味でしょう?」
「何となくいまの話を聞いていたら、随分と凪子を演じていただく役者さんに“期待”を抱いているように聞こえましたので」
「“期待”ですか・・・」
僕の見解は、
「確かに期待はしています。10代の少年少女なんて、大人になってしまった僕からすれば伸びしろの宝庫のようなものですから」
実際にその通りではあるから、濁すことなく正直に逢沢先生へと伝える。
「ただし期待とは言っても、贔屓はしていません。あくまで僕は演者に対して主役脇役問わず“平等”に視ているだけですから」
当然、僕は環さんのことを特別視などしていない。ただひとつ、彼女とほんの少しだけ話をして脚本家の視点からメインキャストの4人と同格の期待をするに値すると判断しただけのことだ。
「でもだからこそ、僕は作品のために“1人”に偏らず登場人物を生かしたい・・・・・・そう考えています」
顔合わせの初日はメインキャストを始め平均年齢や夜10時台のドラマとは思えないネームバリュー度外視のキャスティングに不安を覚えていたが、撮影が始まり各々の実力が明るみになってからは、そういった意味での不安は消えていた。無論それらとは違う意味での懸念はまだあるのだが、全てをひっくるめてこの作品を“最高のドラマ”にしようと僕は決めた。
恐らく逢沢先生も、『ユースフル・デイズ』がどういうドラマになっていくのかを知った上で、上地さんにこの作品を授けて僕にシナリオを託したのだろうと、信じている。
「・・・草見先生にひとつだけお願いがあります」
シナリオの一部を改変したことへの釈明を終えた僕に、逢沢先生は1つの約束を取り付けた。
「“結末”だけは、絶対に変えないでください」
「もちろんです・・・僕もそのために脚本を書いています」
無論、このドラマにおける僕の答えは最初からたった1つだ。
ドラマも
三点リーダーの使い方を思いっきり間違えていたことに今更ながら気づきましたが、もう面倒なんで全角スタイルのまま行きます。