或る小説家の物語   作:ナカイユウ

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お久しぶりです。シンプルにモチベが底をついてました。


scene.118 本当の気持ち

 【異性同士の友情というものは・・・どうやら成立しないらしい

 

 

 『ユースフル・デイズ』の原作65話にて、雅が心の中で語った独白。果たしてそれが本当のことなのか、恋愛経験なんてない俺には分からない。

 

 

 “『最近調子はどう?』”

 

 

 少なくとも俺にとって、蓮はずっと()()だ。いや・・・今となっては親友としてずっといて欲しい存在という表現のほうが正しいのだろうか。

 

 

 “『レンちゃんが自分以外の違う男に取られたりしたら、サトルは嫌か?』”

 

 

 そういう関係で居続ける為には絶対に知りたくなかった、知らないままでいたほうが良かった感情に、王子からの()()()()()で気付いてしまった。結果としてそれは、純也という役を自分の中で作る上で重要なピースのひとつであったから、どうにか俺は最低限それを形に出来ている。

 

 

 “『あたしたちが演ることは、“たかが芝居”なんだから』”

 

 

 ただそこから先に、未だ俺は進めていないままだ。その理由は自分の中で、まだ堀宮が演じる雅に対して俺が蓮に感じているものと同じ気持ちで接することが出来ていないからだ。どれだけ入り込もうとしてもそれは純也の感情ではなく、ただ自分を投影しただけの感情(モノ)に過ぎない。

 

 

 “『憬はどうしたいの?』”

 

 

 悪い言い方をするとしたら、蓮への感情が()()()になって思うように演じることが出来ない・・・と言ったところだろうか。本当に、自分は一体何をしたいのか、どうしたらいいのか、模索しても答えが視える気配もない。

 

 

 

 いや、()()()()()()()()に俺が抱える“本当の気持ち”を言ってしまえば、もしかすると停滞から抜け出せる糸口が見つけられるかもしれない。

 

 

 

 ただそれを言ってしまったとき・・・・・・俺たちはもう二度と元には戻れなくなるだろう・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「よお。お疲れ」

 

 昼休み。購買で買ったパンとミックスジュースを片手に屋上へと上がると、蓮が一足早く待ち伏せるようにフェンスの向こうに広がる薄曇りの景色を見つめながら立っていた。

 

 「お疲れ。前は聞かなかったけど寝ないでちゃんと最後まで観れた?」

 

 俺が挨拶を掛けると、振り返って蓮は開口一番に映画の感想を聞いてきた。そういえばあのバトルロワイアルこと『殺戮教室』を観た感想は、メールだと長くなりそうだからと今日まで保留にしていた。

 

 「あんな血が飛び散る物騒な映画で居眠り出来るわけないだろ」

 「確かに。子どもが間違って見たらトラウマものだよねあれ」

 「そもそもR15指定だから間違えようがねえよ」

 

 とはいえいきなり保留にしていた感想を聞いてくるかと一瞬ツッコミそうになって、こいつも俺と大差のない芝居バカだということをすぐ思い出して、お互いフェンスに寄りかかって殺戮教室の話に花を咲かせる。

 

 「とにかくタイトルからしてよくあるバイオレンス系のエンタメ作品だろうなって感覚で観始めたら、人間の心情をこれでもかというほど生々しく表現した殺し合いをテーマにしたヒューマンドラマだった・・・まず序盤の先生から“殺し合い”をしてもらうことを告げられた生徒たちの反応とその空気感で一気に引き込まれたな。殺し合いをすることになっていきなりパニックになって叫んだりするでもなく、生徒全員がいま置かれている状況を全く理解出来ずにただざわざわしているところが却ってリアルで観ている観客(こっち)にも恐怖や緊張が伝わって、それが最高潮にまで上がった絶妙なタイミングで先生がいきなり銃を取り出して1人の生徒を容赦なく撃ち殺して_」

 

 ただいざ感想を語り出してしまえば俺のほうも悪い癖が働いて相手がどう思っているかなんて構わずにひたすら起承転結まで喋り通す。この癖のおかげで俺には友達が少ないと言われてしまったら、反論の余地もない。

 

 「_あれだけ描写がグロデスクなのに最後までスクリーンから目が離せなかったのは、監督がこの作品を通じて観客や現代社会へ伝えたいことと、作り手が表現したいものをしっかりと受け止めて完璧な形で表現して見せた演者が本気でぶつかり合った先でそれぞれの意思が合致した結果なんだって思う」

 

 だけどここにはいま、そんな俺の悪いところも全て受け止めてくれる親友(ひと)がいる。だから俺もつい油断して、遠慮なく喋り通してしまう。

 

 「憬にしては短く纏められたほうなんじゃない?」

 「本気で言ってるかそれ?」

 「バラエティーとかに出たら7割くらいカットされるか序盤の下りでMCから止められそうだけど」

 「何だよ全然駄目じゃねえか」

 

 例のごとく一通りの感想を喋った俺を見て、蓮は揶揄い半分の言葉と共に微笑ましく笑う。ほんの1ヶ月前までは()()()()()()()()()()()()に気付いてからも、たまに芝居バカが抑えられなくなる俺を見てバカだなと言いたげに暖かく見つめる表情は何一つ変わらない。どんなに役作りで悩んでいるときでも、こうやって蓮と何気なく話しているだけで心が軽くなってくる。

 

 「ホント俺ってつくづくテレビに向いてねえなって思うわ。番宣でバラエティーとか出たらやらかす自信しかない」

 「私は楽しみにしてるけどね。ゲストで出てきてスタジオを変な空気にする憬のこと」

 「ざけんな」

 

 

 だからこそ蓮とはずっと“今のまま”でいたいのに、さっきから仄かに感じるこの()()は何なんだ?

 

 

 

 「・・・ほんとにありがとね。観に来てくれて

 

 ほんの少しの間を空けて、左側でフェンスに背を預ける蓮が空のほうを見上げるような眼つきで呟く。右手に持っていたトライアングルは、俺が殺戮教室について熱く語っているうちに食べ始めていたのか、いつの間にか透明な袋の中身は空になっていた。

 

 「当然だろ。蓮が出てんだから」

 

 表情は穏やかさを保ったまま声色だけが落ち着いた様子に些細な違和感を覚えつつ、俺はいつも通りに同じ方向に視線を投げて答える。

 

 「・・・言っとくけど、蓮の演技はお世辞抜きで普通に良かったよ。最初から最後まで安定感があったし、レンコを殺そうとしてるときの表情と眼は本当に善悪の判断が出来なくなるまで追い詰められた人間の表情(かお)をしてた」

 

 察した俺は敢えて視線を左へ移さずに、目を合わせないまま隣の親友へ芝居の感想を伝える。もちろんこれは蓮だからと必要以上に褒めているのではなく、バカ正直な本音だ。

 

 「カスミは間違いなく、蓮が演じたからこそあれだけ作品の中で際立った役になった」

 「でも結局、主人公(ヒロイン)に全部喰われちゃったけどね」

 

 その本音を遮るように、蓮は自虐的に笑いながら反論する。

 

 「(きみ)も感じたでしょ。本気で死ぬことも厭わないと覚悟したレンコを前にした瞬間、死ぬことに怯え続けるカスミが一瞬で引き立て役に成り下がったところをさ

 

 

 

 『それでカスミの命が救われるんだったら・・・私はここで死んでもいい』

 

 

 

 「・・・そうだな

 

 向けられた悔しさの裏返しが込められた笑みと視線に、俺は気なんて遣わず思ったままに相槌を打つ。じゃんけんで自分が負けることさえ許せないこいつのことだから、自分が主役に喰われたところを親友に観られて良い気分になるわけがないということは最初から想像していた。

 

 「だけど、主人公が助演に存在感を喰われたらこの物語は崩壊するからどうしようもない」

 「知ってるよ。だから私はレンコがより魅力的に観客(みんな)へ映るように、持ってる力を全部使って引き立て役を演じ切った・・・調子に乗ってるみたいに聞こえるかもしれないけど、堀宮さんの演技があれだけ光らせることができたのは私がそれだけちゃんと演じることができたってことだと思う」

 

 下手に気遣われることが一番嫌いなことも分かり切っているから、俺はフォローも貶すこともせずそのままの形で答え続ける。一足早くメインに選ばれてしまった今ではある種の嫌味に聞こえてしまうかもしれないが、蓮の悔しさは同じ役者として痛いくらいに分かる。

 

 「でもさ、悔しいものは悔しいんだよ

 

 その気持ちを代わりに表すかのように、視線を右から前に移して蓮は呟く。割り切れない感情(きもち)を吐き出すその顔から笑みが消えて、何かを睨むかのような表情でパックのオレンジジュースを口へと運ぶ。

 

 「久々に見たよ・・・お前がここまで怒ってるの

 

 俺にとっては初めて嘘をついたあの日以来に見る、蓮の怒った表情。いつもだったら“私が初めて出た映画を観に行ったとき以来でしょ?”と容赦なく揶揄ってくるはずがその様子が全くないこいつを前に、屋上に上がったときから感じる予感めいた不穏さが一段階ほど上がる。

 

 「本当に悔しかったんだな?」

 「当然だよ。私は助演になりたくて役者になったわけじゃないから」

 

 怒っていることを否定することなく、蓮は淡々とした口ぶりで答える。気持ちが分かると優しい言葉を掛けるには躊躇いが生じる横顔から募るのは、超えたいと思う人に対する言葉じゃ伝えられないあらゆる感情が乗った発展途上の今しか見れない等身大の幼馴染の姿か。こいつもこいつで、色々と抱えているということだろう。

 

 「そういう憬も、いつもよりちょっとだけ元気がないよね?」

 

 視線が再びこちらに向けられ、静かに笑む。俺の中では普段通りでいたつもりだった。けれどほんの一瞬のどこかしらで綻びが出ていたのか、黄金色の瞳が役作りで悩み続けたまま撮影に挑んでいる俺の感情を捉える。

 

 「嫌味に聞こえるかもしれないけど・・・メインキャストも色々と大変なんだよ

 

 ここで強がっても相手を傷つけるだけと、俺はありのままに答え続ける。他の役者(ひと)と比べたらちっぽけなものかもしれないが、俺だってありったけの悩みを抱えている。

 

 「未だに正解が全く分からないんだよな・・・・・・70点までは掴めるけどそこから先の糸口がないって感じでさ・・・

 

 それが何だ。メインに70点程度の芝居が許されるのか。そんなわけない。俺が演るべきなのは、及第点でも合格点でもなく、()()()()だ。

 

 

 

 

 

 

 もう言ってしまえよ。お前はそうやって芝居の糧を増やしてきただろ?ずっとやってきたことじゃねえか。

 

 

 

 いや・・・それを言ったら俺と蓮はもう戻れなくなるから無理だ。

 

 

 

 だからどうした?芝居に犠牲は付き物だってことはお前が誰よりも知ってることだろ?

 

 

 

 “だからどうした”で済ませられる簡単な問題じゃねえんだよ・・・これは・・・

 

 

 

 そうやって無意識に立ち向かうべき現実から逃げ続けてきた結果が今だろ。違うのか?

 

 

 

 ・・・頼むから蓮がいるときだけは奥底で黙っていてくれ

 

 

 

 じゃあやめちまえよ。役者なんか。自分を犠牲に出来ない中途半端な奴に、他人を演じることへの喜びなんか一生かけても分からない。

 

 

 

 ・・・言ってくれるな。()()の分際で

 

 

 

 それはこっちの台詞だ。いい加減そろそろ覚悟を決めて真剣に考えて判断しろ。親友という今の関係に甘え続けて自称70点の芝居のまま最後まで貫くか、今の関係を犠牲にしてでも先を掴むか・・・・・・同じ役者としてメインに相応しい芝居を求められている(おまえ)なら、迷う理由もないよな?

 

 

 

 

 

 

 「・・・憬が撮影に行ってたこの前の日曜日。ちょうどお互いにオフだからって理由で堀宮さんに誘われて、一緒に池袋の水族館に行ったんだよ」

 

 再び10秒未満の少しの沈黙が流れた後、蓮が呟くようにその沈黙を解いた。

 

 「マジか。そんなこと杏子さんから一言も聞いてないぞ」

 「君がカメラの前で真剣に芝居している裏で、私は堀宮さんと休日(オフ)を満喫してたってわけ。羨ましいでしょ?」

 「あぁ。シンプルに羨ましい」

 

 本当に傍から見れば、何一つ変わらない様子の俺と蓮。だけど()()()()()()()。それは蓮が殺戮教室の舞台挨拶を思い返して機嫌が悪くなったのが伝ったからではなく、最初から何かが()だった。学校の屋上に上がって蓮の姿をこの眼が捉えた瞬間(とき)から密かに片隅で感じていた、いつもの俺たちの空気の中に流れるほんの僅かにつっかえるような違和感じみた予感(もの)

 

 「そこで堀宮さんから言われたんだよ・・・・・・()()()()()()()()()()()()()って

 

 その予感は、久しぶりに向けられた怒りに似た感情によって()()へと変わった。

 

 「ねえ?それってホントなの?

 

 頭の中が一瞬だけホワイトアウトして、サッと全身から血の気が引く感覚が伝わった直後に、防衛本能が働いたのか自分でも驚くほどの冷静さがこの意識へ押し寄せる。

 

 「本当に話したんだな・・・・・・あの人は

 「うん。残念ながら

 

 そして一瞬の防衛本能が切れて湧き出るのは、堀宮に対する困惑の心境。元から何を考えているのか分からないところが多々あったが、本当に何が目的なのか意味が分からなさすぎて、逆に怒りも呆れも全く湧いてこない。役者としては本当に心から尊敬はしていて人当たりも良くて悪い印象はない。けれど中身が全く見えないから、どうしても純也の感情にリミッターが掛かってしまう。

 

 「・・・本当だよ

 「・・・そう

 

 理由はたった1つ。純也として雅のことを意識するたびに、いま目の前にいる親友が()()()となって立ち塞がっているからだ。

 

 「本当は付き合ってないでしょ。堀宮さんと

 

 堀宮と付き合っていることを打ち明けると、蓮は笑みを消して冷たく言い放った。わざわざ考えるまでもなく、今こいつは俺に対して本気で怒っている。

 

 「どうしてそう言い切れる?」

 「付き合っているのはあくまで役作りのためで、堀宮さんが周りの人たちのことを利用しているように、君も純也の役を演じるために必要だからと堀宮さんのことを利用しているに過ぎない・・・・・・要は恋人って(てい)をとったビジネスパートナーみたいなものってわけ。違う?」

 「ビジネスパートナーとかよくそんな言い回しを思いつくな」

 「これ以上ふざけた態度取ると本当に怒るよ?

 

 急に湧いて出た秀逸な例えを褒めるも、ふざけるなと一蹴された。

 

 「・・・どこまで杏子さんから聞いた?

 「憬と付き合ったのは役作りのためで撮影が終わるまでの関係なのと、憬もそれを受け入れたってこと・・・

 

 同時に殺戮教室の話になったときに堀宮に対してあれだけ怒っていた理由も察した。

 

 「なのに私にシラを切ろうとした君を見て・・・・・・ふざけんなって思っちゃった

 

 そして結果的に、俺は蓮に対して()()()()()()()()()()()()をしてしまった。

 

 「いくら役のためだからって・・・嘘で隠そうとするのは駄目でしょ・・・

 

 “”という感情を自覚してからずっと自分の気持ちに嘘を吐き続けてきた俺を見つめる右眼から流れた一筋の涙を掌で拭いながら、やや掠れた声で蓮は無理やり口角を上げて怒りが乗った悲しみをぶつける。初めて見る、芝居ではない親友の涙。

 

 「初めて見たよ・・・蓮が素で泣いてるところ」

 「私も驚いてるよ・・・泣くつもりなんて1ミリもなかったのに」

 

 一体何がキッカケで、俺は蓮のことをここまで傷つけてしまったのだろうか。嘘吐きが世界で一番嫌いなこいつのことは親友としてよく知っているはずなのに、泣くほど傷つけてしまった理由が思い当たらない。

 

 

 

 いや・・・ひょっとして泣いているのは、(こいつ)が俺のことをそれだけ・・・・・・って、今それを考えるのは違うだろ・・・

 

 

 

 「・・・逆に蓮は、どうして杏子さんのことをここまで嫌うんだ?

 

 ただ間違いなく鍵になっているのは堀宮であることは聞かなくとも分かるから、俺は蓮にここまでして嫌う理由を問いかける。

 

 「そんなに嫌っているように見える?」

 「まあ、思い切り顔に出てるし」

 「ははっマジか~、女優失格じゃん私」

 「そんなことねえよ」

 

 そんなふうに見えていたのかと、涙を拭った蓮は無理やり笑みを取り繕って形だけでもおどける。

 

 「・・・悪かった。最初に顔を見たときに気付くべきだった」

 「罰として次に映画を観るときは憬の奢りで」

 「分かったよ」

 

 映画一本分の奢りのおかげで少し機嫌を直すも、悔しいという横顔に映し出されていた単なるライバル視を超えた明確な怒り。ここまで感情的になった蓮の表情を見て、先ほどのあれが喰われたことへの嫉妬心のみならず、本人へ対する憎悪じみた感情も含まれていたとこのタイミングで知る。

 

 「・・・堀宮さんのこと、役者って意味で言うなら純粋に尊敬してるし恩だって感じてる。バトルロワイアルのときも色々と助けてもらったし、今のドラマだって堀宮さんが雅を完璧に演じてくれているおかげで、私も凪子を上手く演じられてるところもあるから」

 「本当に演技が上手いからなあの人は」

 「そうなんだよ。雅になってるときは本当に雅にしか思えなくて、やっぱり上手いなこの人って・・・」

 

 順調かと思っていた裏側で向こうもそれなり以上に苦しんでいたことに気付けなかったと謝った俺に、蓮は堀宮を嫌う理由を打ち明けていく。

 

 「・・・それでも、私はどうしても憬を駒みたいに利用するのは人としてどうしても許せないって思った」

 

 役者としては尊敬しているけれど、人としてはどうしても許せない。これが堀宮から俺とのことを明かされた蓮が出した答え。

 

 「()()()()()()だとしてもってことだよな?」

 「うん。例え相手が君じゃなくても同じ」

 「・・・そうか」

 

 薄曇りの空をそのまま表すかのように、蓮は淡々と堀宮に対する憎悪に近い気持ちを吐き出していく。

 

 「気にすればするほどあの人の()()()だってことも分かってるのに・・・

 

 “思う壺”という一言で、俺はなぜ堀宮が休みの日に蓮を遊びに誘って、そこで付き合っていることをわざわざ明かしたのか目星がついた。

 

 「杏子さんと一緒にいて俺が分かったのは・・・・・・あの人は常に芝居をしているってことだよ

 

 カメラが回っているときは勿論のこと、友達と過ごすような普段の何気ないプライベートの1コマですら芝居の糧を探して、取り入れる物は取り入れる。未だ本性がよく分からない俺にとって堀宮杏子は、そういう人だ。

 

 「擁護するつもりはないけど、あの人はどんなときでも自分の中にある芝居に繋がるものをずっと探しているんだよ・・・本当の自分を殺してまで

 

 芝居のためなら、自分が芸能界で一番になるためなら、一切手段を択ばない。気さくに笑顔を振りまく裏で、例えそれで自分の心が傷つこうが、そのためだったら自ら望んで傷つきに行く。清純派と呼ばれる可愛らしい外見をしていながら、まるで生き方は芸能界に身を捧げている()()だ。

 

 「いっそのことそれぐらい振り切れることが出来たらもっと“ラク”に芝居が出来るかもしれない・・・けど、俺はあの人ほど器用じゃないから、純也のことを未だに掴めない・・・」

 「・・・憬も苦労してるんだね。色々」

 「きっとお前や杏子さんたちと比べたら全然だろうけどな」

 

 それに引き換え俺はどうだ?苦しんでいると言いながら、まだどこかで逃げ道を無意識に探そうとしているんじゃないのか?

 

 

 

 

 

 

 ホンモノの役者になりたいんだろ?お前は?

 

 

 

 あぁ、何も取り柄がなかった独りぼっちの俺に生きる意味を与えてくれたのがこの世界だから、当然だろ。

 

 

 

 だったら今すぐにでも捨てろ。躊躇う必要(こと)はない。今までお前が演ってきたことと全く同じことを、ただ演ればいいだけの話だ。

 

 

 

 

 

 

 「・・・れ」

 「あぁもう一人で悶々としてるのが馬鹿馬鹿しくなってきたっ!」

 

 気まずさを孕んだ沈黙が数十秒ほど流れた後、名前を呼びかけた俺の声を蓮が明らかにわざと大きな声で遮った。

 

 「憬・・・私がいま憬の前にいるのは、堀宮さんとのことを言いに来たってだけじゃない・・・・・・だから・・・今から私が演技じゃない()()()()()()を憬に言うから、憬も()()()()()()で言葉にして返して欲しい・・・

 

 すると蓮はフェンスに寄りかかる俺の前に立ち、何かを決意した表情で言葉を紡ぎながら、真っ直ぐにこの眼を見つめた。

 

 

 

 ・・・やめてくれ。

 

 

 

 「・・・・・・・・・好きです




親友からの、まさかの一言_



さすがにこれ以上休むと一行目を書き始めるのにもかなりの労力を使って“また気が向いたらでいいや”という状態になりそうだったので、無理やりモチベを上げて何とか書き上げました。

なるべくここまで間が空かないようこの小説のほうも更新し続けるつもりではいますが、ちょっと今は自分のモチベと相談して1話分を書けそうなタイミングが来たら書くという状態ですので、下手をするとまた数ヶ月後とかになるかもしれません。今年の年明けにいまやっている長編を終わらせると嘯いてましたが、普通に無理でした。本当にごめんなさい。

それでは最後にメリークリスマス。そして少し早いですが、よいお年を。
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