或る小説家の物語   作:ナカイユウ

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映画館
百鬼夜行は
ヌーの群れ

7/29追記:今後の展開を配慮しストーリーの一部を変更しました


scene.20 親友

 「3年ぶりくらいだね、“十夜ちゃん”」

 「“ちゃん”づけは止めろよ “マキリン”。女の子じゃないんだから」

 

 環たちが撮影に臨む憬を見届けているのと時を同じくして、牧は従兄弟(いとこ)であり物心がついた頃からの付き合いでもある十夜と3年ぶりの再会を果たしていた。

 

 「だって私の知ってる十夜ちゃんは私と同じくらいの背丈で天使みたいに可愛かったからさ」

 「どんだけ前の話だよそれ」

 「それがちょっと会わなくなったら別人みたいに大きくなって・・・さすがの私でもすぐには分からなかったよ」

 「しばらくマキリンと会わないうちに20センチくらい背が伸びたからね。成長期ってやつ?」

 

 同じくらいの目線で話していたはずの相手も、時が経てば互いに顔を動かさなければ目線が合わないくらいに身長差は広がる。だが互いの距離感というものは月日が経とうと疎遠になろうとそう容易く変わるものではない。

 

 「良いなぁ~私なんか中学に入ってまだ5センチしか伸びてないのに」

 「そのうちマキリンも伸びるよ。オレみたいに」

 「ごめんそこまで大きくはなりたくないわ」

 「えぇいいじゃんモデルみたいでさ」

 「これから伸びるにしても160ちょっとで止まってくれるのが理想ね。あまり背が伸びすぎると役柄も制約されていくだろうし・・・それよりもこのまま伸びなかった場合が一番最悪だよ」

 「ごめん、その辺は分かんないわオレ」

 「別に十夜ちゃんは気にしなくて良いよ。これは私の身勝手な願望だから」

 

 そんな牧にとっては十夜もまた、心を開いて何でも話せる数少ない存在の1人である。

 

 「でも良かったよ、何も変わってなくて。十夜ちゃんが芸能界に入ったって聞いた時は私の知ってる十夜ちゃんにはもう会えないのかなって思っちゃったくらいだったから」

 「どういうことだよ?」

 「見た目は随分と大人びたけど話してみたら前会った時と何ら変わってないし」

 「まあね。人なんて生き物はそう簡単に変われるものじゃないからね」

 

 そうして2人は3年ぶりの再会を味わうかのように互いを見つめ合って笑い合う。その光景に気付いた一部のスタッフが思わず見入ってしまうほど、幼馴染2人のツーショットは絵になっている。

 

 「・・・でも十夜ちゃんがまさか役者になるなんて、どういう風の吹き回し?」

 「可笑しいか?」

 「うん。だって“芸能界は嫌”じゃなかったの?」

 

 ある程度話が弾んできたタイミングを計って、牧が十夜にどうしても聞いておきたかった核心に迫る。

 

 「・・・信頼してる幼馴染(ともだち)から役者に向いていると言われたから仕方なくだよ。大した理由じゃない」

 

 憬たちの方へ視線を向けたままの牧に、十夜は当たり障りのない理由で言葉を返す。

 

 “・・・嘘ばっかり・・・”

 「・・・へぇ・・・でも随分と楽しそうじゃない?今の十夜ちゃん」

 

 だがそうやって仕方なく芸能界に入ったという割には、ここにいる十夜の眼は生き生きとしている。もちろん“それ”を、牧は見逃さなかった。

 

 「ところでマキリンは“技術だけじゃどうすることもできない“領域”を隠し持った役者がいる”っていう話は信じる?」

 

 牧からの問いかけに十夜は答えになってないような逆質問で返してくるが、小さい頃から時折奇矯(エキセントリック)な行動や言動をするところがあるのを知っている牧は、そんなことでは驚かない。

 

 「・・・信じるも何も、そういう役者は十夜ちゃんのすぐ近くにいるでしょ?」

 

 そう言い終えた牧は再び視線を十夜の方に戻すが、当の本人は100人程のエキストラと共に本番前のカメリハに臨む憬の方へ視線を向けている。

 

 「・・・さすが“絶世の美少年”・・・お目が高いこと」

 

 牧からの皮肉めいた誉め言葉などどこ吹く風のように、十夜はノーリアクションで憬の姿を凝視し続ける。

 

 “・・・・・・そうか”

 

 

 

 “『明日、あなたにはあるドラマの撮影現場に行ってもらうわ。是非この目で見てもらいたい役者が1人いるから』”

 

 

 

 “こいつか・・・・・・”

 

 視線の先で月島たちと話し込んでいる憬の横顔を見て何かを確信した十夜は、憬を凝視したまま静かにほくそ笑んだ。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 「この辺りで美沙子の身体が地面に落ちるから美沙子が飛び降りたところから一気にここまで美沙子を目で追うように全力で走るように」

 「はい」

 

 リハの開始直前、憬は月島の指示で最終的な位置の確認をしていた。

 

 第10話過去パートのラストシーン。屋上の上に立つ美沙子の姿を目にして直樹は名前を叫ぶが、美沙子はそのまま屋上から飛び降りてしまう。直樹は落ちていく美沙子に向かって必死に走っていくが、その想いは虚しく美沙子の身体は地面に叩きつけられ直樹は幼馴染の凄惨な死を遂げる。

 

 「それで目の前で美沙子の身体が地面に叩きつけられて、直樹はその場で立ち止まって茫然と見つめる」

 

 そして変わり果てた美沙子の姿を見た直樹はその場で放心状態になって茫然と事切れた美沙子の前に立ち尽くす、という展開だ。ちなみに美沙子のところに全力で走る場面からの台詞は一切ない。

 

 「カメラはこっちで合わせるからこの位置から向こう側ならどこで止まっても構わないよ。ただし美沙子が落ちる位置をしっかりと考えておくように」

 「分かりました」

 

 月島に余裕そうな表情で二つ返事に了承しながらも、内心はそこまで穏やかとは言えない状況だ。

 

 これから撮影を行うシーンは、今までの中で最も難しいと言えるシーンと言えるだろう。直樹の表情や仕草1つで、美沙子の変わり果てた姿を1から100まで全て表現しなければならないからだ。

 

 直樹がどれだけ美沙子のことを大切に想っていたのか。直樹が幼馴染の死を完全に受け入れるまでには10年を費やすことになることから、直樹の悲しみは想像を絶するものなのだろう。やがてその感情はやり場のない怒りへと変換されここから10年近くもの間、直樹はあらゆる非行や犯罪に手を染め自堕落な人生を歩むことになる。

 

 “・・・結局、美沙子はこのまま死ぬんだよなぁ・・・”

 

 当たり前だ。台本(シナリオ)に書かれている現実を変えることが出来るのはその中にある世界を構築している監督や演出家だけだ。そしてカメラや観客の前に立った役者がやるべきことはたった1つ。与えられた役として芝居で目の前でその生涯を全うし、その期待に応えることだ。

 

 

 

 「はいカット。ではこちらで最終確認を行ったのち、15分後に本番の撮影に移ります」

 

 

 

 「・・・ふぅ・・・」

 

 カメリハをやり終え、俺は思わずひと息をつく。俺には自分が大切にしていた誰か、あるいは大切にされていた誰かが死ぬという経験をしたことは今まで一度もない。

 そんな感じでかつてないほどのシリアスな直樹の感情と普段の自分の感情がジェットコースターのように上下することは、芝居とは言え思った以上にキツいものがある。

 

 ひとまず本番に向けて感情を全てリセットするため、俺は天を仰ぐようにして空を見上げる。昨日一昨日と満天の如く青天井だった空は、どんよりと曇っている。

 

 まるでこの後の“2人”を暗示しているかのように・・・

 

 「何1人でポツンと黄昏てんだよ」

 

 撮影エリアの端で天を仰ぐように曇り空を見上げていると誰かから声をかけられ、俺は声のする方へと顔を向ける。

 

 「よぉ、おとといぶり」

 

 目線の先にいたのは初日の撮影でワンパンチを見舞ってしまった伊藤役の新井だった。ちなみに今日はエキストラとしてこの撮影に参加している。

 

 「・・・えっと、確か名前は・・・伊藤、でしたっけ?」

 「それは俺の役名な」

 「あぁすいません」

 

 だが人の名前を覚えるのがあまり得意ではない俺は、新井のことを素で役名である伊藤として覚えてしまっていた。殴って怪我をさせてしまったにも拘らず、さすがにこれは最低だ。

 

 「まぁあんな状況じゃ伊藤って覚えられちゃっても仕方ないわな」

 「いやほんとに申し訳ないです」

 「でも俺としてはある意味嬉しい限りだぜ。こうやって“主役様”の脳裏にちゃんと俺の姿が残ってたってことだからな」

 

 そう言うと新井は名前を“ある意味最悪”な形で間違えて落ち込みかけていた俺を満面の笑みで励ます。

 

 「俺は新井遊大(あらいゆうだい)だ。よろしく」

 「・・・夕野憬です。よろしくお願いします」

 

 まるでどっかの誰かのように初対面から馴れ馴れしく接する新井とやや緊張気味の俺の2人は自己紹介を終え、15分の休憩時間(インターバル)を雑談で乗り切る。

 

 「えっ!?夕野っち俺とタメなん!?」

 「はい、俺も中2です。ていうか夕野っちって・・・」

 「なんだよせっかくタメなんだからタメ口で行こうぜ夕野っち!」

 「あぁ・・・そうだよね」

 

 ただし約一名が交友関係激狭な人見知りのせいで、ほぼ新井に主導権をリードされる形でインターバルは始まった。

 

 「新井くんはどれくらい役者をやってんの?」

 「俺か?まぁ5,6年ってとこかな・・・あぁそうだ、自慢じゃないけど3月まで“ユウダイ”って名前で “テレビ戦士”やってた」

 「へぇ・・・そうなんだ」

 「あれ、ご存じない感じ?」

 「ごめん。小学校に上がった時ぐらいからMHKは大河ドラマか朝ドラしか観てないんだよ俺」

 「えっ・・・マジで?」

 「うん。マジ」

 

 MHKで夕方くらいから放送中のテレビ戦士が出てくる番組自体は知っているが、そんな“子供向け”の番組など最大級にませていた頃の俺が観るはずもなかった。

 

 もちろん驚きを隠せない新井がおかしいわけではない。きっとこれは俺がズレているだけだ。

 

 「小1からそんなのを観るなんて夕野っち・・・・・・良いセンスしてんじゃねぇか」

 「えっ?」

 

 そう言うと新井はおもむろに俺の肩を拳で軽くつつく。正直言ってどこが良いセンスなのか俺にはさっぱりわからないが、リアクションを見る限り感心してくれているようだ。

 

 「俺も小4あたりから勉強で大河とか朝ドラも観るようになったんだけどよ、やっぱ民放のドラマとはちげぇんだよね。何かこう上手く説明出来ねぇけどさ、出てる役者のレベルが違うみたいな?」

 「大河とか朝ドラは民放に比べて主演もそうだけど助演から端役まで芝居が安定していることが多いからね。出演している子役だってみんな大体上手いし出られるだけでもその人にとっては大きなステータスになると思う。ブランド力だったら月9も中々だけど大河朝ドラとなるとレベルも違うだろうし」

 「それだよそれ!それが言いたかったんだよ俺!」

 「大作映画の主演を張るような俳優・女優が何十人も出演するし、出演したことで俳優としてブレイクを果たした役者も数知れずな上に当然掛けられている予算も段違い。それに大河の主演や朝ドラのヒロインを飾ればそれだけで各局がその話題をこぞって取り上げる。あんなキラーコンテンツは世界から見ても中々ないと思うよ」

 「・・・ていうか夕野っち・・・ドラマの話になるとすげぇ饒舌じゃん・・・」

 「あ」

 

 新井から指摘されて俺は初めて空気も読まずに知識をベラベラと喋り続けていたことに気が付いた。ドラマや映画、そして役者の話題になるとついつい止まらなくなってしまう厄介な癖。

 

 「ごめん・・・うるさかっただろ・・・?俺ダメなんだよ。この手の話になるとつい・・・」

 

 (コイツ)のせいで俺は、転校してきた環とクラスメイトとして出会うまで周囲から宇宙人のように扱われていた。直そうと思っても幼少期から身に沁み込んでしまったものはそう簡単には直せない。

 

 流石にこれは顔面パンチを笑って許してくれた新井もドン引きするだろう。

 

 「・・・・・・ブッ」

 

 だが俺の予想に反して新井は堰を切ったようにその場で腹を抱えて大笑いしだした。

 

 「ハハハハッ!・・・・・・っほんっと最高だわ夕野っちは!」

 「・・・馬鹿にしてんの?」

 

 何となく馬鹿にされている感じがして少しだけ苛立ちながら言葉を返すが、新井に悪意がないのは何となく分かっている。この感じ、やはり初めて会った時のどっかの誰かに似ている。

 というより、もしかしたら俺はそういうタイプの人間に好かれる傾向があるのかもしれない、と勝手に解釈する。

 

 「いや・・・そう言う意味じゃなくてよ、夕野っちみたいな“ガチな奴”と話していると楽しくてさ、マジで」

 「ガチな奴?」

 

 そんな新井は俺のことを“ガチな奴”と言ってくれた。意味はよく分からないが間違いなくこれは純粋な誉め言葉だろうというのは新井の表情を見れば分かる。そうして話していくうちに、心の中にあった警戒心というものが徐々に解かれ始めていった。

 

 「俺の周りって軟派な奴らばっかだからさ、一緒にいてもなんか刺激がないんだよね」

 「・・・そうなんだ」

 

 そしてここから、俺は新井の役者としての一面を垣間見ることになる。

 

 「もちろん良い奴らだし、別にそいつらが悪いわけでもねぇ。でも俺ら子役出身からしてみれば天馬心と牧静流の存在があまりにも大きすぎて、みんなあの2人には勝てねぇと半ば諦めムードってわけさ」

 「天才子役と言えばあの2人だったからね」

 

 天馬心と牧静流。この2人が子役として如何に飛び抜けていたか、彼らの活躍を当時ら目撃していた人たちにとっては説明不要のことだ。

 

 そしてそのうちの1人は、子役上がりの演技派として今なお最前線で活躍している。

 

 「つっても少しはハングリー精神を持てよなって話よ。俺だっていつまでも天馬や牧の背中を追うばかりじゃなくて隣に立てるような役者になりてぇし」

 

 最初は馴れ馴れしくてふざけているように思えたが、新井も新井なりに役者としての確たる信念を持っている。少なくともそうでなければきっとMHKから“テレビ戦士”に選ばれることはなかっただろう。

 

 「しかし、なんで辞めちまったんだろうな天馬心は・・・俺にはさっぱりだ」

 

 そう言った新井の表情は、どこか寂し気なものだった。

 

 もちろん一度だけしか会っていない天知の真相など、俺なんかが知る由は尚更ない。だが、目標にしていた憧れの存在が突然目の前から消える。その寂しさだけは星アリサの引退を目撃した俺でも何となく分かる。

 

 「・・・天馬心がいなくなって、新井くんは寂しい?」

 「いや、全然」

 

 だが俺の心配なんか無用だと言わんばかりに、新井は首を横に振る。

 

 「だって今は夕野っちがいるからよ」

 「・・・俺が?」

 

 そして困惑している俺をよそに、新井は俺の肩に手をかける。

 

 「夕野っちは俺にとって“ライバル”だからな」

 「ライバルって・・・それは大袈裟じゃね?」

 

 まともに話してものの数分であだ名をつけられ、ライバルとして勝手に認められる。まだこの世界に完全に染まり切っていない俺ははっきり言って新井のペースについていくので手一杯だ。

 

 「いや、役者ってのは一度でもなっちまえばみんなライバルなんだよ。なんせ俺たちは共に拳を交えたしな!見事に一発KOで俺が負けたけど」

 「それはごめんて」

 「だから気にすんなよおとといのことは。マジで大したことなかったから」

 

 すると新井は俺が一昨日付けた傷跡を見せつける。まだ少し荒れてはいるが、傷口は完全に塞がっている。確かにこの程度なら、引きで撮れば誰一人気付かないことだろう。

 

 「それに俺は、お前のような“持ってる(ガチな)奴”と一緒に何度でも芝居をやりてぇし」

 

 そして言い終えると新井は俺に手を差し出して、握手を求める。

 

 「てことで今日から俺と夕野っちは“戦友(ライバル)”だ。改めてよろしくな!」

 「・・・おう。よろしく」

 

 真っ直ぐな目で見つめる新井の握手に俺は応じると、新井は俺の手を握力がダイレクトに伝わるくらいに力強くしっかりと握る。少しばかり痛みが伴うが、新井の芝居に対する情熱がひしひしと伝わってくる。そんな握手だった。

 

 「確認終わりました!カメラ、音声、照明、共に準備OKです!」

 

 少し離れたところから黛が最終調整の完了を現場のスタッフやエキストラに伝える。インターバル終了の合図だ。

 

 「さて、俺たちも位置に着くか」

 「そうだな」

 

 気が付くと時間はあっという間に過ぎ去っていた。ある意味最悪な第一印象を与えてしまったであろう新井との雑談は最初こそどうなることかと思ったが、終わってみれば何だかんだ意気投合し、良い話も聞けた。

 

 「・・・1人で寂しく空を眺めるよりもよ、こうやって下らない話をしてるほうが気分は晴れるだろ?」

 「・・・言われてみれば」

 

 撮影の開始場所へと戻る途中で、隣を歩く新井が俺に話しかける。言われてみれば確かに、これまであった重荷のような感情がスッキリとリセットされていた。

 

 「ありがとう。おかげで気が一気に楽になった感じがするよ」

 「あんまり1人で気負いして何でも抱え込むなよ夕野っち。所詮役者なんてカチンコがかかってない今なんかただの一般人と変わんねぇんだから」

 

 “役者というのはカチンコの合図で役に入り、カチンコの合図で役から抜け出す”

 

 昨日の撮影で、言葉は違えど牧から似たようなことを言われた。同じような答えなのに随分とシンプルな響きに感じる。俺のことを大袈裟だと言った牧の言う通り、役者という生き物は自分の思っている以上にシンプルなものなのかもしれない。

 

 「俺にはこの程度のアドバイスしかできねぇけど、まぁあれだ。カメラが回ってない時ぐらいは肩の力抜いとけってことだ」

 「・・・いや、凄く参考になったよ。ほんとにありがとう」

 「礼はいらねぇよ」

 

 アドバイスへの感謝を伝える俺の背中を一発叩くと、新井は「頑張れよ!人をまたぶん殴らない程度にな!」と半ば弄りつつも笑顔で俺を激励して駆け足で自分の定位置に向かって行く。

 余計なことを言いやがってと思う反面、そんな新井からの激励のおかげで心はかなり楽になった。

 

 

 

  “・・・蓮?”

 

 新井に続いて俺も自分の定位置となる校門前へと歩みを一気に進めようとしたその時、早乙女たちと撮影を見学に来た環と不意に目が合った。その瞬間、まるで時間がスローモーションになるような感覚に襲われる。

 

 “・・・もしも親友がいなくなったら・・・”

 

 もしも環と出会わなければ、俺は何を考えているか分からない変人のまま相変わらず1人ぼっちで一日を過ごしていただろうし、こんな自分を受け入れてくれる芸能界(世界)があるということにも気づけなかった。

 

 そんな大切な存在(親友)が突然この世界からいなくなるということは、死にたくなるくらい受け入れ難いことだ。

 

 “役者だったらキッチリ決めてこい”

 

 環が俺の目を真っ直ぐ見据えたまま、小さく頷く。本当にそう思っているかは分からないがそのような言葉が込められたような視線に、俺も同じように小さく頷いて答える。

 

 “ありがとう、蓮”

 

 感情ひとつで迷っていては何も始まらない。この現場に立った以上は、何が何でも最後まで直樹として芝居を全うする。

 

 “今度こそ最後まで()り切る”

 

 親友とのアイコンタクトは時間にして僅か1秒程度だったが、俺にとってはそれだけの時間があれば十分だった。

 

 “俺は・・・役者だ”

 

 

 

 のおかげで、さっきまで心の奥にあった迷いに似た感情は今度こそ完全に消え去った。

 




牧のあだ名をマキリンにするかマッキーにするかで3日ほど本気で悩みました。マジです。

ちなみに今日は前回予告した通り2本立てで行く予定ですが、実を言うとscene21はまだ出来上がっておりません。進行状況としては現時点で大体7割ほどが書けていると言える状況ですので、更新まで今しばらくお待ちください。

何とか今日中には遅くも上げられるように領域展開を駆使してでも急ピッチで執筆していきます。万が一上げられなかったら、その時は本当にごめんなさい。

そしてやろうと思ってすっかり忘れていました。ここまでに登場した主な登場人物の紹介です。少々長くなりますが以下の通りです。今後も必要に応じて公開していきたいと思います。

ではまた後ほど。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
※プロフィール等はscene20(時系列:1999年)時点のものになります。
※今後のストーリー展開に影響を及ぼすことを避けるため、情報は最低限にしています。


・夕野憬(せきのさとる)
職業:俳優(現:小説家)
生年月日:1985年6月30日生まれ
血液型:A型
身長:170cm(14歳) → 179cm(現在)


・環蓮(たまきれん)
職業:女優
生年月日:1985年9月16日生まれ
血液型:O型
身長:162cm


・牧静流(まきしずる)
職業:女優
生年月日:1985年1月1日生まれ
血液型:B型
身長:153cm


・早乙女雅臣(さおとめまさおみ)
職業:俳優
生年月日:1974年12月9日生まれ
血液型:AB型
身長:183cm


・山吹敦士(やまぶきあつし)
職業:俳優
生年月日:1982年8月11日生まれ
血液型:A型
身長:171cm


・水沢令香(みずさわれいか)
職業:女優
生年月日:1975年8月3日生まれ
血液型:O型
身長:165cm


・月島章人(つきしまあきと)
職業:脚本家・演出家
生年月日:1964年3月28日生まれ
血液型:A型
身長:173cm


・一色十夜(いっしきとおや)
職業:俳優
生年月日:1983年4月2日生まれ
血液型:AB型
身長:169cm
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