やっぱり天知Pは、黒スーツがよく似合う
「オイ聞いたか!?この“
「マジ?つってもどうせ通行人Aみたいなもんだろ」
「それがよォ、中学時代の主人公で出たらしいぜ!俺は見てねぇけどな」
「いやいやいやそれはあり得ないって!だってあのドラマの主演は早乙女だぜ!?」
「私知ってるよ。昨日そのドラマ見てたから」
「うっそマジで!?えっ?誰!?」
「2組の夕野君。クレジットに同姓同名の名前が載ってたから絶対そうだよ」
第10話の放送翌日、“
「ていうかセキノって誰?」
「アイツだよ。2組にいるなんかよく分かんねぇやつ」
だがドラマに出たことや芸能事務所に入ったことを周りに秘密にしていたことや、クラスの全員から好かれていた環とは違い、クラスの中ではどちらかというと “目立たない”側にいた憬の噂は信憑性のないどこか疑心暗鬼な目で見られていた。
補足をするとドラマより前に撮影したCMも1か月前から放送されているが、後ろ姿しか映っていないということもあってこの学校にいる生徒は誰一人知らない。
「なぁ夕野が月9に出てたの見たか?」
「どうせモブだろ?」
「それが割とガッツリ出番があってさ、もうはぁ!?ってなったわ」
当然それは、憬のクラスである2年2組も例外ではなかった。
「マジ?だってチョット顔が良いのと“環のツレ”ってだけでなぜか周りから一目置かれちゃってるオタクっぽくて絡みづらいあの夕野だぜ?」
「でもその癖この間の期末テスト、アイツ学年5位だったしおまけに帰宅部の分際で運動神経も滅茶苦茶良いし。やたら無駄にスペック高けぇんだよな夕野って」
「ほんと謎だよなあいつは」
「お、噂をすれば来たぞ」
扉をくぐり2組の教室へ入った瞬間、陰口のようなテンションで俺の噂をするクラスメイトの声が耳に入ってくる。
「やっぱ俺は信じらんねぇな。そんな夕野が月9に出てたなんて」
HOME第10話の放送翌日、俺の周りを取り巻く環境は少しばかり変わった。もちろんそれは同じく“芸能人”である蓮とは少しかけ離れたものになったが、別にクラスの“人気者”という訳じゃなかった俺からしてみれば、これは想定していた範囲内のことだ。
「なぁ、夕野って本当に昨日の月9に出たんか?」
「出たよ、数分だけだけど」
席について少しすると、クラスメイトの戸塚と鶴見が疑ってかかるように俺に話しかけてきた。
「環には会えた?」
「会えた」
「んでどうだった?」
「別にいつも通りだったよ。環は環のままだった」
この2人は有島ほど話すことは少ないが、クラスの中では有島と共に仲良くやっている連中だ。
「いいなぁ~、っていうかお前もう芸能人じゃね?」
「まぁ一応ね、事務所入ったし」
「うぉーカッケェ!」
「てか芸能事務所ってどうやって入んの?」
そのうちの1人の戸塚が、結構核心に迫るような疑問をぶつけてきた。
「あーあれか・・・」
言葉にしようとしたが、あれはどうやって説明すればいいのだろうか?少なくとも、そのまま説明していいような内容ではないのは確かだ。
「詳しくは言えないけど、街歩いてたらいきなりスカウトされた」
とりあえず“一般人向け”に話せる範囲は、こんな感じといったところか。
「えっ?何それ怖くね?」
「“スカウトマン”は神出鬼没だからね。俺もびっくりした」
「いやそれスカウトってよりほぼ誘拐じゃね?」
「まぁ・・・ある意味な」
「うわ怖えぇ~!」
ある意味ほぼ正解となる答えを鶴見から言い当てられ、内心で一瞬動揺が走る。
“ていうかこんなに密集してたっけこのクラス?”
そして周囲を見渡すと、気が付けば俺の席の周りには人だかりが出来ていた。
どうやら俺にかけられていた疑心が確信へと変わっていったようだ。
「ねぇ昨日の月9観たんだけどあれ絶対夕野君だよね?」
「リアタイで観たけどすげぇカッコよかったぞオイ!」
「お、おう、ありがとう」
月9に出演するということがどれだけ
「ヨッ、芸能人!」
普段はあまり話さないような連中が、塊のようになって俺のところに話しかけてくる。別に悪気はないのだろうが、どう対処すればいいのかイマイチ分からずストレスが溜まっていく。
「オイ夕野、せっかくだからアレやってよ」
「・・・アレって何?」
「美沙子!ってやつ」
すると俺が教室に入ってきた時に陰口のように俺の噂を離していた日吉が俺に即興で芝居をするように催促してきた。
「嫌だよ」
別に悪い奴ではない。だがこいつとは見事なまでに馬が合わないから、出来ることならあまり関わりたくはないというのが俺の本音だ。
「だってご本人が目の前にいるんだぜ!そりゃ観たくなるでしょ?」
「そんなの知らねぇし、やらねぇよ」
「頼む!一回でいいからさ!」
“俺はお前のそういうところが嫌いなんだよ・・・”
「おいみんな注目だ!今から“俳優・夕野憬”の一人舞台が始まるぞ!!」
俺に対して環の連れその1のように思っているであろう奴が、ここぞとばかりに俺のことを棚に上げる。まるで見世物にされているような気がして、次第に腹が立ってきた。
「・・・オイ」
“俺が演技以外で他人に手を出したのは、この時が最初で最後だ。気が付くと俺は、“余計な発破”をかけた日吉の胸ぐらを力任せに掴んでいた・・・“
というイメージを頭の中で膨らませ、俺は日吉へ殺気を送る。
「いい加減にしろよ・・・・・・俺は “見世物”じゃねぇんだよ・・・」
“お前はもう
本音を言うとあと一歩のところで俺は本当に日吉の胸ぐらを掴んでいるところだった。だが海堂から言われた“あの言葉”のおかげで、どうにか踏み留まることができた。これは有名人になればきっと誰もが通っていく道だ。こんなことで自分を制御出来なくなるようじゃ、役者として“蓮の隣”には立てない。
「おいおい、そんなキレることはねぇだろ・・・」
目の前にいる日吉は何とか強がりながらも明らかにビビっている。そこら辺のチンピラ程度は容易に振り払える程度の殺気一つで、俺にたかっている奴らは一瞬で黙り込んだ。もちろんこれは、芝居なんかではない。
「うぃーす」
そんなタイミングに大量の水を差すかのように、前の席に座る“あいつ”が空気も読まずに割って入って来た。
「よぉ夕野、昨日のドラマ観たぜ!すげぇ演技だったなアレ!まるで別人みたいだったぜマジで!ていうかマジで別人じゃね?ってんなわけねぇかアレは夕野だもんな!」
俺たちが今置かれている状況などどこ吹く風で、有島は第10話の俺の芝居をハイテンションで褒め称えながら俺の肩に手をかけてくる。
「・・・・・・ってアレ?何かスゲー空気重くね?」
そのおかげで映画やドラマのワンシーンだったら見せ場の1つになり得るだろう場面も、これで一気に台無しだ。まぁ、喧嘩をするのは嫌いだからこれはこれでいいのだが。
「有島・・・お前は空気を読むっていう言葉を知らねぇのか?」
有島のせいでカオスな状態になった
「空気を読むって言葉の意味くらい俺も知ってるぜ。けど、こんな重っ苦しい空気を読みたい奴なんて、誰もいねぇだろ?」
すると有島はすまし顔のような笑みで想定の斜め上を行く返答をして、場の空気はとうとう収集がつかなくなっていく。本当に有島という奴は色んな意味でこのクラスを掻き回す“ムードクラッシャー”にして、たった一言でその場の空気を変えてしまうクラスの“ムードメーカー”だ。
「はいじゃあみんな席ついてー」
チャイムとほぼ同時に担任の浅井が教室に入ったことにより、2年2組で巻き起こった “騒動”はひとまず収束し、あの後に日吉とも形だけとは言え和解した。
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「夕野君?サインしてくれない?」
「おっ、“早乙女ジュニア”じゃん」
帰りの挨拶が終わり教室を出ると、これまで一度も話したことはおろか顔すらも知らなかった違うクラスの女子や、学校生活で二度と関わることがなかったであろう3年生の先輩グループにも声をかけられ絡まれる。
当然これらの“雑音”は基本的には無視をするに限る。変に反応してサインをしたり無茶ぶりに答えたりなんてしたら、俺は“
「オイ何だよシカトかよ冷てぇな」
「ハハハ」
スルーで通り過ぎる俺を先輩グループは揶揄いながら笑うが、俺にとってはどうでもいいことだ。別に俺は有名人になりたいが為に芸能界に入って役者になったわけではないからだ。
だが俺の本当の思いなど全く知らない周囲の連中は、つい昨日までは全く見向きもしなかったのにこぞって俺のことを有名人のような目で見るようになった。もちろんそんなことは、俺にとっては大したことではない。
「一緒に帰ろうぜ、夕野」
昇降口で上履きからスニーカーに履き替え、屋外に出ようとしたところを有島が呼び止める。
「・・・別にいいけどお前の家逆方向じゃね?」
「夕野から借りてたエピソード4のビデオを返すついでに“エピソード5”を借りようと思ってよ」
「また“星間戦争”借りんのかよ」
「そりゃあ4を観終わったら5を観たくなるっしょ普通?」
「それぐらい買えよ自分で」
「ついこの間
「そもそもゲームやらねぇからいいよそういうのは」
だが有島は “有名人”になった俺に、いつも通りのテンションで話しかけてくる。何を考えているのかよく分からない“天才と馬鹿は紙一重を地で行くような奴”だが、こいつとは初対面の時から妙に馬が合う。
「今時ゲームどころかゲーム機すら持ってないのは夕野ぐらいだぜ?」
「いや探せば何人かいるだろ」
どんなに芸能人になって周りから遠い存在になって行こうとしても、相も変わらず1人の“ダチ”として近い距離のまま接する。
「つーことでエピソード5、お借りしやす」
「金曜までに返せよ、有島」
有島からすれば別に大したことではないだろうが、俺にとってはこいつの“優しさ”が何気ない救いになっている。そんななりふり構わない有島の人間性を、俺は1人の“ダチ”として心の底から信頼している。
「ところで環は元気にやってるか?」
「元気にやってるって、親みたいなこと言うなお前」
こうしてこの2,3か月は1人きりで歩いていた帰り道に、うるさいクラスメイトが加わった。
「相変わらず元気だったよ。あと、ちょっとだけ頼もしくなってた」
「頼もしいのは割と元からじゃね?」
「いや、女優としてだよ」
春休みに渋谷へ映画を観に行った時の強がりなだけの弱虫はもういなかった。
「俺も負けてられないな・・・」
女優には向いていないと自分で自分を責めていたあの時を乗り越えた環のことを思い返しながら、憬は独り言を呟く。
「へぇ~、何か俺にはそういうのよく分かんねぇけどイイ感じじゃん。ライバルみたいでさ」
「ライバルか・・・良いねそれ」
その独り言に反応した有島からの言葉に、憬は笑みを浮かべながら言葉を返す。
“私と憬・・・どっちが先に自分の芝居を恥ずかしがらずに堂々と見れるようになれるか、勝負しようよ”
“・・・役者になってくれて・・・・・・ありがとう”
同じ役者、同じ芸能人。そして同じような有名人になろうとも俺たちの関係は変わることはない。ドラマの撮影終わりに蓮と交わした“宣戦布告”と、渋谷で交わした“約束”を果たした親友への感謝がそれを教えてくれた。
「そういや夕野ってさ、終業式ん時に芸能界はここにいるみんなとは生きている世界が違い過ぎるって言ってたよな?」
俺の左隣を歩く有島が、急に物思いに沈むように呟く。
「あー・・・言ったっけそんなこと?」
「とぼけんなよ。この俺の記憶力を侮ったら痛い目見るぜ」
「痛い目ってなんだよそれ・・・」
確かにそんなことを有島に向けて言ったことはハッキリ覚えている。もちろん有島の記憶力が高いということも俺は知っている。
「・・・ごめん。確かに言ってたわ」
あの時はまだ実質CM1本しか仕事をしておらず、それ以外はレッスンの日々だったから芸能界という世界に生きているという実感は殆どなかったが、あの
蓮が徐々に周りから遠い存在になっていったように、俺もやがて同じようになっていく。
「悪いがあの言葉、俺は絶対に嘘だと思うぜ」
「嘘?どういうことだよ有島?」
そんな俺からの疑心に、有島は堂々とした口調で俺に自論をぶつける。
「“芸能人”だとか“有名人”だとか、周りの奴らが必要のねぇ余計な壁を作って変に距離をとっちまうせいで世界がおかしくなるんだよ。もちろんただ揶揄うためだけに近づいて来るような奴は論外だとして、夕野は芸能人になってから俺との関係は変わったか?」
俺と同じく芸能人になった環はともかく、有島との関係は確かに俺が芸能界に入って月9に出てからも距離感は変わらず、ずっとダチのままだ。
「多分変わってない」
「だろ?」
そう言い終え、有島は口角を上げて俺に向けて無駄に白い歯を見せつける。
「ぶっちゃけ俺は芸能界のことなんてさっぱり分かんねぇし、きっとそっちの世界じゃ朝起きて飯食って学校にいくような俺らとは一日が違うかもしれねえ。でも俺はそんな世界にいる奴とこうやって話してるわけよ。それってつまり、お前や環がいる芸能界も俺のいるフツーの世界も全く一緒ってことじゃねぇの?」
蓮が徐々に周りから遠い存在になっていったのは、周りが勝手に月9の主要キャストに選ばれたからと勝手に盛り上がり、勝手に“人気者”として祭り上げていったからだ。その結果、クラスの連中との距離は必然的に出来上がってしまった。
それでも俺と有島は“有名人”と“一般人”ではなく、それぞれ“親友”、“ダチ”として蓮のことを思い続けていた。だから俺たちの距離感は、ずっと変わらないままでいられている。
生きている世界が違い過ぎるのは自分たちが勝手に壁を作って分別しているだけで、本当はそこに違いなんて全くないということ。真横にいるダチに指摘されて、初めてそれに気が付いた。
「有島ってさ・・・良いこと言うよな」
「やっと分かったかお前!」
白い歯を見せるように笑いながら、有島は俺の肩を叩く。本当に俺の身の回りは、食えない奴らばかりだ。
「俺は待ってるぜ。いつか夕野と環が同じドラマとか映画に主役とヒロインで出るのをよ」
芸能界も、学校生活も。
「もちろん、1人のダチとして」
「・・・おう・・・待ってろ」
HOME第10話の放送翌日、俺の周りを取り巻く環境は大きく変わった。月9ドラマにたった“数分間”出演しただけなのに、俺は一夜にして学校中の“有名人”になった。だが有名人になれたおかげで、“ダチ”の大切さを改めて思い知った。
ちなみにダチの有島がエピソード5のビデオを返しに来た金曜日、あの早乙女雅臣が突如記者会見を開きスターズ退所&渡米を発表してお茶の間をざわつかせると、俺が月9に出演したという話題は一瞬にして掻っ攫われていき、ちょうど一週間後には俺の“学校生活”は再び平穏なものに戻った。
もちろんこれは、あくまで“学校生活”に限った話である。
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9月某日_高輪
「以上が今回オーディションを行う“ユウト”役の応募者一覧になりますがいかがですか?」
高輪の住宅街に鎮座する4階建てのマンション。その1階と2階の半分を占領するような形で、テレビドラマや映画などを手掛けている制作プロダクション『フォルティシモ』はオフィスを構えている。
「思いの外集まったことはともかく、肝心なのは彼らと作品の世界観との相性がどれだけ良いかってところだ」
その2階にある会議室のスペースでは、映画監督の
「万が一この中で満足のいく役者がいなかった場合、どのようにしようと國近さんは考えていますか?」
この映画のプロデューサーでありフォルティシモの代表取締役でもある
「そうなった場合はもちろん仕切り直しさ。どんなにシナリオが良くても演者がそれに追いつけないとなったらどう足掻いても駄作へまっしぐらだ」
そんな制作協力元のプロデューサーの圧など物ともせず、國近は憮然とした態度で言葉を返す。
「悔しいが幾ら俺たち
「ならやはり私が何度も忠告していたように無名の子や新人に拘らずある程度キャリアのある15歳前後の子でも良かったのでは?今からならまだどうにか間に合わせることができます」
「俺たちのような連中とスポンサーの板挟みを強いられる坂野さんの気持ちは、俺だって分からない訳じゃねぇ・・・でもアンタの言うような“型にはまりきってる”奴じゃ、この役はダメなんだよ」
「しかし、最悪の事態になった場合11月からの撮影にはとてもじゃないが間に合いませんよ」
「だったら妥協してコイツが凡退な作品で終わってもいいっていうのか?」
このようにして夕方から始まったキャスティング会議は監督とプロデューサーが1対1で対立してしまうという展開が続き、難航を極めていた。
「あの・・・」
「ん?何だ山下?」
そんな中、キャスティングディレクターの山下が喧嘩寸前の口論を交わす2人に水を差すように声をかける。
「実はこの中で1人、個人的に思わず目に留まった子が1人いるんです」
そう言うと山下は何十とあるプロフィールの中から1人の少年のものを國近に差し出す。
「・・・見たことねぇな。誰だコイツは?」
「夕野憬、14歳。つい3か月前にカイ・プロダクションからスカウトされて同事務所からデビューしたばかりの新人です」
「カイ・プロダクション・・・“おやっさん”の事務所か・・・」
おもむろに國近は、オファーを受けた際に菅生が作成した憬のプロフィールに目を配る。
CMとドラマがそれぞれ一本と至ってシンプルかつ短い経歴は、他にオファーをかけた応募者の中でも際立っている。ここまでくれば初めてオーディションに挑むド新人と何ら変わらない。
「ちなみに彼は出演したドラマの『HOME -ボクラのいえ-』では演出を務めている月島章人氏から直々にオファーを貰い、早乙女雅臣さんの演じる主人公の東間直樹の少年時代の役に抜擢されています」
「ほぉ~、ド新人の割にはやるじゃねぇか」
「彼のマネージャーである菅生という方が仰っていたので、情報に間違いはないでしょう」
「だろうな・・・そもそもあの人は経歴を詐称する姑息な奴を雇うような人じゃねぇから」
山下の説明に耳を傾け相槌を打って言葉を返しつつ、國近は憬のイメージを脳内で具現化する。
身長は170cm。中2にしてはやや背丈はあるが主演の背丈も180cmほどあるから、平均身長は少しばかり上がるがひとまず絵面は及第点ってとこか。宣材写真を見る限り顔立ちは整っているが垢ぬけたような華やかさは“まだ”備わっていない。ということで見た目はひとまず合格。問題はこの夕野憬という少年がどれ程のポテンシャルを持っているかだ。あの
まるで売れない少年漫画のプロローグみたいな話だ。だが一見何の変哲もなさそうなこの宣材写真を見た瞬間、得体の知れない“衝撃”が俺の心の中を駆け巡った。
「そう言えば今日は『HOME -ボクラのいえ-』の放送日ですね。運が良ければ彼の姿がテレビに映るかもしれませんよ?國近さん」
プロデューサーの坂野が誘導尋問をするかのように揺さぶりをかける。
「オイオイ初っ端から躓きたくないからって誘導尋問は勘弁してくれよ、坂野さん」
過度な期待は禁物だが、コイツは只者ではないだろう。そんな予感がした。
過去と現在を行き来するのはその都度頭の中にあるスイッチを切り替えないといけないので思った以上に労力を伴います。
例えるなら銀河鉄道と羅刹女を行ったり来たりするような、そんな感覚なのでしょうか・・・ごめんなさい多分違いますね。
さて、気分転換に話題沸騰中の“あの映画”でも観に行きますか。