※2024/6/8追記:今後の展開を考慮し、ドラマの舞台となる高校の名前を一部変更しました。
翌日_東京_阿佐ヶ谷_
アーケードの商店街。メイとリョージ、隣り合って歩く。リョージ、立ち寄ったコンビニで買ったギーナを食べ歩き、右隣のメイはそれを少しだけ呆れた顔で見つめている。
「ほんとリョージってギーナ好きだよね?」
「だって美味いし」
「まぁそうだけど」
「あとギーナの一番のポイントはカカオが84%なところなんだよね。83でも85でもなくて」
「別に私は聞いてない」
下校路の道中にあるコンビニでギーナを買ったメイとリョージは、少しだけ寄り道をしてアーケードを歩く。
「すげぇ、クリスマスツリーだ」
メイの左隣を歩くリョージ、アーケードを抜けた先に設置されたクリスマスツリーに気付く。
「なんかさ、クリスマスツリーがこんな感じでポンって置かれてるだけでテンション上がんない?」
「リョージは子どもか」
メイ、アーケードの入り口に設置されたクリスマスツリーを微笑ましく見上げているリョージと手を繋ごうと左手をリョージの右手に向けようとする。
「まだ子どもですけど何か?」
だがギーナをかじりながら揶揄うように無邪気に笑うリョージの横顔を見て、メイは“いま”手を繋ぐことを諦めて右手に持っていたギーナの箱を開ける。
「・・・少しは否定しなさいよ」
メイ、文句で照れ隠しをしながらギーナを一口かじる。リョージ、それを見て微笑ましく笑う。
「で?リョージはどこ行こうと思ってるの?来週のクリスマス?」
「んー、どうしよう?」
「もしかして何も考えてなかったの?・・・嘘でしょ」
「だって急に“そういやメイって暇じゃね?”ってパッと思いついて勢いで言っただけだから、まだ何も考えてない」
「何よそれ」
メイとリョージ、互いにギーナを食べながら来週のクリスマスの話をしてクリスマスツリーを横目に歩みを進める。
「ハイOKです!」
「“恋人繋ぎ”。お蔵入りになっちゃったな~」
「ですね」
阿佐ヶ谷で行われたギーナのCM撮影を終えた俺と堀宮は、マネージャーの菅生の運転する車で事務所へと向かっていた。
「CMで使われる予定の曲だと“さあ手を繋いで僕らの
「そうですね」
「とはいってもメインはあくまで
本来であれば撮影用に特別に設置されたクリスマスツリーのところでメイとリョージが手を繋ぐシナリオだったが、今朝になってそのシナリオは急遽“手を繋がない”ものへと変更された。理由としてはここで手を繋いでしまうと商品以上に視聴者の注目が“メイとリョージ”に向けられてしまう、ということらしい。
ちなみにギーナの担当者曰く、一昨日に青山のスタジオで撮影したパターン1の様子を見学した上で決めたという。
「それに良かったじゃん。結果的にさとるが最初に言ってた意見が通った形になったし」
「いやあれは」
「意見を言うにしても次からはもう少し穏便にお願いしますよ、夕野君」
「・・・次からはなるべく気を付けます(悪いのは俺だけど寄って集って蒸し返すのはやめろ・・・)」
堀宮が打ち合わせでの担当者との“ひと悶着”を蒸し返し、事情を知る運転席の菅生が追い打ちをかける。
“『何で恋人同士の関係でもないのに“恋人繋ぎ”をしないといけないんですか?ただ2人で並んでギーナを食べるだけじゃ駄目なんですか?』”
確かにあれは、思い返すと独りよがりで喧嘩腰だと誤解されかねない言い方だったと今は反省している。堀宮の言う通り、主役はあくまで“商品”であって“登場人物”ではないから、極端なことを言えば紹介したい人に宣伝したい商品の魅力さえ伝わればそれでいいのがCMの在り方というものだ。
ただそれがCMだとしても、俺は映画やドラマと同じ熱量でやるのは変わらない。
「まぁ
「慰めてくれるのはありがたいですが頭は撫でなくても大丈夫です」
後部座席の右側に座る堀宮が、菅生に軽く叱られた俺の頭を左手で撫でながら慰める。結局のところ今日の撮影で彼女と“恋人繋ぎ”をすることはなかった。だからどうしたという話だが。
「あ、そうだ将大さん?この後の打ち合わせの中身ってまだあたしたち聞いてないんだけどなんか知ってる?」
俺の頭を左手で撫で続けながら、堀宮は菅生を下の名前で呼びタメ口でこの後に事務所で行われる打ち合わせの話を聞く。初対面ときからそうだったが、堀宮は
「申し訳ないですが海堂からの伝言で“内容についてはまだ何も言うな”と言われていますので」
そんな堀宮とは対照的なかしこまった口調が運転席のルームミラー越しに告げられると、俺の頭を撫でる左手の動きがスッと止まった。
「・・・何も言うなってことはさあ・・・・・・“超ビッグ”な
そして碧眼を輝かせいつものように優し気な笑みを浮かべながら、どこか不敵かつ狡猾な
“『2年後ぐらいには牧静流を名実共に追い抜いてる予定だけど、基本的にみんなとは仲良くするのがモットーだから気楽な感じでよろしく』”
こんな感じで不気味かつどこか怖いオーラを纏う姿を最初に見たのは、彼女がカイプロに入ってきた日のことだ。
“『言っとくけどあたしは本気だからね。牧静流なんてスッと追いついて、グッと一気に突き放してやるから』”
堀宮は16歳ながら今年で芸歴11年目になる子役上がりの女優だが、子役時代は同世代にあの牧がいたこともあってこれといった役柄や仕事に恵まれず、オーディションで何度も一緒になってはその度に負かされてきた経験があってか、彼女は牧のことをかなりライバル視している。
“『堀宮さんは牧さんのことをどう思っているんですか?』”
事務所で初めて会った日のこと、俺は堀宮から勝手に奢られたジュースを飲みながら隣で同じものを飲んでいた彼女に思い切って聞いたことがある。
“『・・・そうだね・・・
最後はわざとらしく誤魔化しておどけていたが、青空のように澄んだ碧眼に限りなく憎悪に近い“黒い炎”が宿っている錯覚を覚えるほど、堀宮は晴れ渡る空のようないつもの笑顔はそのままに内に秘めていた感情を露にした。
“『・・・・・・ここまで相手のことを嫌いになれるまで自分と向き合える堀宮さんは、本当に“
と実際に言ったかどうかは定かじゃないが、堀宮曰く俺は牧への感情を打ち明けた彼女に対して感心した様子で言ったらしい。俺的には信じ難いが、言われた本人がそうだと言うならきっと間違いはない。
“『芸能界はね・・・嫌われてなんぼの世界なんだよ。女優だろうと男優だろうとね』”
いつかの月9の顔合わせで牧が俺にそう言って自らの覚悟を見せたように、俺たち役者は相手からここまで嫌われ、そしてここまで相手のことが嫌いになってもなお相手を恐れずに自分の武器1つで時に人生すらも賭ける勝負を続けていく。優し気な笑みの裏にあった堀宮の背負う
少なくともいまの俺には、
“『・・・もう・・・チョー良いこと言うじゃんさとる!』”
ともあれこの日の会話がきっかけでほぼ一方的ながらも堀宮との距離は近づき、“気の合う先輩と後輩”の関係となって今に至る。
「・・・何も言うなってことはさあ・・・・・・“超ビッグ”な
「・・・・・・生憎ですが、単なるマネージャーに過ぎない私からは何も答えられません」
初めて会った日に見せたときと同じような感情を向ける堀宮に、菅生は“またか”と言わんばかりに少しだけ考え込んだ末にいつもの調子で突き放す。
「・・・じゃあ図星ってことで
「でしたらお好きにどうぞ」
「うっわほんっと相変わらずノリ悪いなぁ将大さん、そんな調子じゃ一生彼女なんて出来ないよ?」
そして菅生からの“お好きにどうぞ”というどっちつかずな返しに堀宮は俺の頭を掴んだまま煽り始める。
「そうですね」
「そうですねって・・・・・・あのさぁ、マネージャーとして仕事ができることは別として“そういうところ”はマジで直したほうがいいよほんとに。さとるもそう思わない?」
「“ドサマギ”で俺を巻き込まないでください」
だが俺たちの扱いに慣れている菅生から淡々とした態度で一枚上手の対応をされた堀宮は溜息交じりに左隣に座る俺を巻き込んで文句を溢す。どうでもいいけれど、何だかんだで褒めるべきところはきっちり褒めるところが何とも彼女らしい。
「ちぇっ、さとるも将大さんも2人して“真面目ちゃん”かい」
とりあえず“中立”の立場にいる俺は不毛な争いから逃げる選択肢として菅生と同じスルーで場をやり過ごすと、堀宮は俺と菅生へ悪態をつきながらスッと俺の頭から左手を離して右側の車窓に顔を向けた。
「・・・もっと気楽に楽しもうよ・・・・・・バカ真面目に仕事してたってつまんないしさ・・・」
右側に流れる車窓に顔を向けたまま分かりやすく拗ねた様子の堀宮が誰に言うでもなくボソッと呟いたのを最後に、車内は今までの賑やかさが嘘だったかのように
“『・・・
果たして堀宮が呟いた言葉は単純に“ノリが悪い”俺と菅生に向けたものなのか、それとも“自分自身”に言い聞かせたものなのか。流石に俺はそこまで堀宮の考えていることを理解しているわけじゃないから、現時点ではどうすることもできない。
「・・・ふぁ~・・・」
沈黙が30秒ほど続いたあたりで右隣からあくびが聞こえると、堀宮はひと仕事終えた疲れからかそのままうたた寝を始めた。ただ本人からしてみればうたた寝というよりふて寝に近い、のかもしれない。
それよりも今は、海堂から告げられた打ち合わせがどのようなものなのかだ。“来年から一気に忙しくなる”という言葉が関係あるとしたら、堀宮の言っていた通り図星の可能性が高い。それに口は超が付くほど堅いとはいえ、
「夕野君。事務所に着きましたらすぐに社長室に向かってください」
前方を見てハンドルを握ったまま、菅生は起きている俺に声をかける。
「了解です」
本当は俺もこの後の打ち合わせのことを菅生から聞きたかったが、せっかく気持ちよくうたた寝し始めた堀宮の機嫌を損ねさせるとまた“
『しかし早いもので10月も明日で終わってしまうわけですが_』
徐に視線を右隣に移した瞬間、車が交差点を曲がり切った反動で自分の太腿の上で脱力しきっていた堀宮の左手が後部座席にゆっくりと落ちた。
“『いやマジかぁ~、完全に手を繋ぐつもりで気持ち作ってきたから割とショックだわ~』”
撮影の準備中、スタッフや見学しに来た担当者にギリ聞こえない声量で堀宮は俺に笑いながら愚痴ってきたことを思い返す。何食わぬ顔で時にふざけたような態度で平然を装いながらも、本当はどんな仕事だろうと誠心誠意を持って全力を尽くす“芯”のある真面目な
『それでは
だから堀宮もまた俺と同じように、商品が主役のCMであろうと同じ熱量で与えられたキャラクターを作り上げて来たのだろう。CMとはいえ一緒に芝居をしてみたら、明るく可愛らしい雰囲気に反して俺と同じく“入り込んで”芝居をするタイプだということに気付いたからだ。
でも役作りの
“・・・昨日の
本来だったらさっきのCM撮影で繋ぐはずだった堀宮の左の掌を見つめる。一度も繋がれなかった掌を見ると、勢いに乗せられたとはいえせっかく今日の撮影のために準備したことが無駄になるのは寂しいと、少しだけだが俺も思う。
『頼り無く 二つ並んだ 不揃いの影が 北風に 揺れながら 延びてゆく』
そんな俺と隣で眠る堀宮の心情を知ってか知らずか、ロードノイズでかき消されてしまうほど小さな音量で車内に流れるFMから、ついさっきまで阿佐ヶ谷で撮影していた俺たちの出演するCMに起用される予定の曲が流れる。全く、タイミングが良いのか悪いのか。
“すいません菅生さん、ラジオ止めてもらっていいですか?”
狙って図ったようなタイミングで流れてきた“あの曲”にどことない気まずさを感じた俺は咄嗟に菅生へ言葉を掛けようとしたが、事務所に着くまで無音の車内で黙って過ごすのはもっと気まずいと直感して思いとどまる。
『凸凹の まま膨らんだ 君への想いは この胸の ほころびから 顔を出した』
そして俺は何とも言えない車の中の沈黙から目を逸らし、自分の左手に視線を移す。
“『だったらさ・・・・・・ここからスタバに着くまで私と手でも繋いでみる?』”
つい昨日、“いつか彼氏とデートをするような役を演じることになったときのためのシミュレーション”として左隣を歩く蓮と“恋人繋ぎ”をした左の掌。初めて面と向かって蓮を相手に芝居をしてみたら、
“あれだけ芝居が上手かったら、牧はまだ無理でも堀宮と同じぐらいは
『口笛を遠く 永遠に祈る様に遠く 響かせるよ』
なんてことを間違って直接口になんてしたら、オーディションは“実力よりも相性”だと分かっていながらストイックに女優としての自分を磨き続けている
『言葉より 確かなものにほら 届きそうな気がしてんだ』
とにかく
『さあ手を繋いで僕らの
それでも助演や端役で地道に経験を積んでいく“下積み”は、間違いなくこれからの自分に繋がる財産になる。隣でうたた寝している堀宮も、そうやって長い“下積み”とオーディションでライバルから居場所を次々と奪われていった悔しさを乗り越えてチャンスを掴んだはずだ。
『その香り その身体 その全てで僕は生き返る』
蓮だって中2のときに出演した『HOME』以降は中々役に恵まれていないが、あの時とは比べ物にならないほど着実に力を付けてきている。
“『私と憬・・・どっちが先に自分の芝居を恥ずかしがらずに堂々と見れるようになれるか、勝負しようよ』”
だから俺は・・・
『夢を摘むんで帰る畦道 立ち止まったまま そしてどんな場面も二人なら笑えます ように』
FMから流れる曲で無意識に昨日を思い浮かべた憬は、左側の車窓に視線を向けたまま環と“恋人繋ぎ”をした左の掌を軽く握った。
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「単刀直入に言うと、プライムタイムの連続ドラマに
事務所に着いて一直線に堀宮と共に海堂の待つ
「えっ!?プライム帯のドラマのオファーですか?」「えっ!?プライム帯のドラマのオファー!?」
「2人揃っていきなりデカい声を出すんじゃねぇ・・・・・・ただし、まだ“企画の段階”だがな」
その今までにない“プライム帯のドラマ”という単語に、俺と堀宮は思わずハモリながら声を上げてしまい海堂から注意を受け、ひとまず俺は我に返って一旦冷静になる。
「それで?オーディションはいつ?」
だが同じソファーの右隣に座る堀宮は溢れ出したテンションを抑えきれずドラマの内容や企画の意図が一体どんな内容のものなのか、そもそもオファーの内容がどういうことかを詮索せずに応接間のテーブルを挟んだ反対側のソファーに座る海堂に堂々とした態度で問う。
「あたしもさとるも準備は万端だから明日からでも大丈夫だよ。ね?さとる?」
「勝手に俺を巻き添えにしないでください」
それにしても堀宮は、こんな見るからに任侠映画の親方のような風貌の海堂に対してよくここまで物怖じしない態度で接することができるからその点は純粋に凄いと思っている。正直俺は海堂のサングラスから覗く無駄に鋭い眼光とオールバックに無精髭、見るからに高級なグレーのスーツや腕時計を身に付ける“如何にも”な出で立ちは、初めて会った日から1年と4か月以上が経った今でも少しだけ怖く感じる。無論、強面な外見を除けば普通に良い人なのだが。
「いや、今回は是非ともお前たち2人に出て頂きたいとのことだ」
そんな海堂が俺たちに言ったのは、オーディションではなく直々に出演して欲しいというこれ以上ないぐらいに“有難い”オファーだった。
「えっ?じゃあ」
「早まるな杏子。これはあくまでまだ“企画の段階”でのオファーだ。“万一の可能性”は考慮しておけ」
ただそれはあくまで現時点では企画に過ぎず確定事項ではないため、あたかもオファーが決まったかのようにぬか喜びしそうになっていた堀宮を軽く咎める。
「も~不安を煽り水を差すようなこと言わないでくれます海堂さん?」
だがそのオファーが今までの仕事とはわけが違うということは、まだ企画の中身を聞かされていない時点で俺も十分に感じていた。なにせこれは、“プライム帯”の連続ドラマで
「てゆーかさとるはこの状況でもよく冷静でいられるね?」
「まだオファーの中身が分からないんで喜んでいいのか何とも言えないですよ」
「は~相変わらず冷めてんなこの子は~」
「(“この子”って言ってるけど俺とアンタ1コしか違わないんだけど)別に冷めてはないですよ。寧ろ、こうやって感情を抑えないと落ち着かないくらいです」
「こうやってって言われても平常運転すぎてあたしはわかんないよ」
隣に座る堀宮は冷静さを保つ俺を“冷めている”と茶化すが、内心では堀宮ばりに感情がハイになっている感覚がある。なにせこれは“プライム帯”の連続ドラマで
「そうだ、何か企画書のようなものは貰ってないの海堂さん?」
「人をあまり急かすな・・・・・・杏子、憬、先ずは
と言った具合でどこかお気楽で浮かれたやり取りをしていた俺たち2人に呆れ半分な視線と溜息を送りながら、海堂は堀宮に急かされる恰好でバッグの中から10ページほどの企画書を取り出して俺たちに手渡した。
「・・・ユースフル・・・デイズ・・・」
「今から俺が話すことは企画書の中身をかいつまんで話す形になるが、来年の夏ドラマとして『ユースフル・デイズ』のドラマ化が水面下で企画されていてな_」
『ユースフル・デイズ』。日本において“三大出版社”の一角として数えられる大手出版社の週刊漫画雑誌にて1996年2号から1999年52号にかけて連載されていた
そんな『ユースフル・デイズ』の大まかなストーリーとしては私立
物語の中心となる登場人物は1年次からのクラスメイトである
これは余談だが、今回のドラマ化に先駆けたメディア展開として去年(※1999年)の4月から12月にかけて同じ民放テレビ局でアニメ化されているが、憬はアニメ化されていることはおろか『ユースフル・デイズ』という漫画自体を読んだことすらない完全な“初見”である。
「配役のオファーは杏子が千代雅、憬が園崎純也だ」
そのうち俺と堀宮が演じることになるかもしれない園崎純也と千代雅は、原作では小学校時代からの幼馴染という設定だという。どうでもいいが最初のドラマといいさっきまで撮っていたCMといい、心なしか俺は異性の幼馴染がいる役を当てられることが多い気がする。まぁ、現実でも小6からずっと仲良くしている幼馴染がいるわけだから、ある意味この純也という役は今まで演じてきた役の中では素の自分と共通するところが多いのかもしれない。
「他の2人は誰が演じるとかは決まっているんですか?」
「悪いが配役についてはまだ“機密事項”でな、正式に企画が通り製作発表が行われるまで一切の口外を禁じられている。無論、向こうも同じようにお前たち2人にオファーが行っていることは“機密事項”扱いされているから状況としてイーブンってとこだ」
ちなみに本作の主人公の1人にあたる神波新太と転校生の半井亜美の配役については現段階では“機密事項”になっている。
「・・・にしても、オーディションの年齢制限が15歳から18歳って、随分狭くないですか?」
「そうだな・・・・・・何せこれは、今までのテレビドラマの常識を塗り替える“新時代のドラマ”にするというコンセプトがあるからな・・・」
そしてこのドラマの最大のポイントと言っていいのが、生徒役のキャスト陣の年齢を主要人物からエキストラに至るまで全員15歳から18歳までの実際の高校生にあたる年齢の演者で構成するというものだ。当然、視聴率が物を言うプライム帯のドラマにおいてここまで攻めたキャスティングをするというのは、少なくとも俺は聞いたことがない。
「・・・“新時代”のドラマ・・・って言っても、杏子さんはともかく本当に俺で大丈夫なんですか?」
「何だ嫌なのか?」
「いえ、寧ろこのようなチャンスを頂けることは物凄くありがたいです。ただ・・・どうしても“新時代”の意図を知りたくて・・・」
「・・・すまないが
「・・・そうですか・・・」
「ただ俺の口から今言えることは・・・・・・お前たちに“向こう20年の俳優界の未来”が託されたということだ_」
その疑問をぶつけて返って来たのは確証を得られるような望んでいた答えとは少し違うものだったが、真っ直ぐに俺たちの眼を捉えるサングラス越しの視線が重大さを物語っていた。企画書に書かれているのはブラウン管に映れば間違いなく視聴者の目に留まる“同じような顔ぶれ”の俳優が顔を揃える良くも悪くも王道でありきたりなドラマなどではなく、 “新世代の俳優”が俳優界の“これから先の20年”を引っ張っていく第一歩となる、文字通りの全く新しい“ドラマ”。
「_というのが今回のオファーの全容ってところだが・・・・・・お前たちはどうする?」
海堂は企画の全容を俺たちに話すと、“さて、お前たちはどうする”と言う言葉と共にサングラス越しに眼光で意思を伝えてくる。
「・・・もちろん俺は引き受けますよ・・・役者なんで・・・」
考えるまでもなく、その答えは1つだ。自分を必要としてくれる人たちがいるのであれば、その人の期待に自分だけの持つ芝居で答える。芝居の上手い役者が
大役を託された俺は、この“チャンス”をものにして高みを目指すのみだ。
「・・・杏子はどうだ?」
決意をぶつけた俺を一瞥した海堂は、続けて堀宮にオファーへの意思を問う。
“・・・そういえば・・・”
海堂の言葉で視線を右隣に向けた瞬間、俺はあれだけテンションを抑えきれずにいた堀宮が企画書を渡されてから一言も言葉を発していないことに気が付いた。
「はい・・・・・・誠心誠意、引き受けさせていただきます」
そして海堂に向けて堀宮は、普段の明るくはっちゃけた振る舞いからは全く想像がつかないほどの真摯な眼差しと口調で自分の意思をぶつける。
「・・・・・・その言葉に異論はないな?」
「・・・ありません」
海堂からの鋭い眼光を真正面から火花を散らして対峙するように凝視する堀宮の表情は、今まで見たことがないくらいに大人びて視えたのと同時に、それまでずっと分厚いベールで隠されていた“
2023年の一番乗りはもろたで工藤・・・・・・明けましておめでとうございます。世間はめでたく新年を迎えましたが、作中では未だにクリスマスネタを擦り続ける駄作者はこちらです。はい。
ちなみに本編に登場した『ユースフル・デイズ』の内容は今後のストーリー展開次第で添削が加わるかもしれませんが、ご了承ください・・・・・・劇中劇書くの死ぬほどムズイ。
ということで今年はアクタージュSS史上2人目の100話突破の大台を目指し、相も変わらずの“低空飛行”で頑張っていきますのでどうぞよろしくお願いいたします。
果たしてハーメルン界隈に前書きの元ネタが伝わる人はいるのだろうか?