気がつけばそこは──   作:ようせいさん

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毎日投稿を続けたかったけど、中々書くのに手間取ったせいでこうなってしまった。




四話

 

 

転生と憑依。

 

転生。

現代日本において転生などといった言葉は、殆どの意味で生まれ変わりを指す。因みに転生を英語で言うとリインカネーションなんて言うらしい。転生っていうよりはリインカネーションの方が言葉の響きとしてはカッコいいよなと俺は思うが、これはさておき。

 

今、俺が現在進行形で体験しているモノ。

それは生まれ変わりを意味する転生、ではなく間違いなくあの世界で生きていた筈の──誰かの身体へ憑く、文字通りの憑依だった。

 

それも憑いた先が、あのFGOにおけるあの主人公の身体、だなんて誰も思わない。かくいう俺もその一人だ。

目が覚め、俺が間違えてアルトリアキャスターをキャストリアと呼んでしまったあの時点で、もう主人公である藤丸立香の身体に憑いてしまっていたんだ──

 

それでも俺はここがFGOの世界線だということを否定し続けた。否定し続けなくてはいけなかった。認めてしまったら、俺はその時点で残酷でいて儚くも美しいこの世界で生きなくてはいけなくなる。

そう思っていたからだ。

 

よく知るゲームのキャラに似てる人物を見た。

──そっくりさんかコスプレだろう。

 

戦闘の中で魔術を扱うところを見た。

──そんなもの、異世界に行ったらよくある事だろう。

 

着ていた魔術礼装の使い方を、俺は知らない筈なのに身体は何故か覚えていた。

──……分からない。

 

右手の甲に刻まれた盾を連想させる模様の令呪。

──嫌な予感が、した。

 

 

でも、現実ってのはどうにもならないほどに残酷で、厳しいものなんだ。

 

 

お前は、藤丸立香の身体を──

──ああ、認めなきゃ、いけなくなっちゃったじゃあないか。自分が知らずにも"やってしまった"事を。

 

心のどこかでそうでなければと、何度願った事だろう。もしも、俺をこの身体に憑依させやがった神様ってのが本当にいるのだとすれば、一つだけ言わせて欲しい。

 

──くそったれ、地獄に堕ちろ。ってさ。

 

 

 

 

妖精王オベロン。

彼は俺の姿を見て藤丸立香とそう呼んだ。

あの、藤丸立香なのか。

俺が……藤丸立香。

 

彼の姿を見て他のみんなは、己の名前を取り戻した様で、各々が己の名前を噛み締めていた。

トリストラムは、やはりトリスタンで。

キャストリアは、アルトリア・キャスターだった。

そっくりさんでも、コスプレでもない。

 

土地の縁を頼りに召喚された英霊がトリスタン。

この異聞帯に住む住人がキャストリアもといアルトリア・キャスター。

 

キャストリアが実は英霊ではないということに、それなりに驚きはしたが、それで何かが変わるわけではない。彼女とは友達くらいの関係でいられたのなら嬉しいなとは、ちょっぴり思った。

 

 

 

俺たち四人は情報収集の為、この異聞帯──妖精國ブリテンに四つあるとされるうちの一つの街、ソールズベリーへと向かっていた。

 

そして今、俺らがいる場所は、あのコーンウォールの森を抜けた先にある平原のど真ん中。キャストリアによると南側に位置するとのこと。

 

俺たちがコーンウォールを抜けた辺りからこの世界の空は夕焼けとなっていたが、ソールズベリーを目指す内に暗い闇に包まれ始めた。

周辺はもう見えない程に暗く、オベロンがこれ以上進むのは危険だと判断した為、今日はここで野宿する事になった。

 

キャストリアは簡易的な魔術を扱って、焚き火を起こすのだが、それをライターも無しにやってのけるのだから、魔術とは実に神秘だなぁと、ど素人並の感想しか浮かばなかった。

 

オベロンとトリスタンは少し用事があると二人して、向こうの茂みに行くと言ったきりまだ帰ってこない。俺とアルトリアの二人が残された。

 

燃ゆる焚き火の炎から、無数の火の粉が舞い散るのを見て、つい呟いてしまった。

 

──藤丸立香、かぁ……

 

小声であるのにも関わらず、どうやらそれは彼女に聞こえていたようで、不思議に思ったのだろう。

 

「○○、どうかしたんですか?」

 

アルトリアはそう言った。

焚き火の明かりによって彼女の顔がよく見える。

気を抜けば今すぐにでも寝てしまいそうな表情をしている。

辛うじて彼女が起きていられるのは、恐らくあの時俺が言った事が気になってるからだろう。

 

だが、何故彼女は俺を藤丸立香とは呼ばずに、俺の名前で呼ぶのだろう。

 

──いや、なんでもないんだ。それよりもキャストリア……いやアルトリアはなんで俺の名前をそう呼ぶんだ……?

 

するとアルトリアは、お前は何を言ってるんだ?といった表情を浮かべて、

 

「もしかしてオベロンが呼んでいる方が良かったでしょうか……?私的には、こっちの名前の方があなたにあってる気がして──まあ、あなたが嫌なら私も呼び方を変えますが……ダメでしたか?」

──いや、好きなように呼んで欲しい。その方がそっちも楽だろうしさ……

「では、これからも○○と呼ばせていただきますね!えへへ……」

 

わーいって子供みたいに手を広げて無邪気に喜んでいるアルトリアを見ていると、ほんの少しだけこの世界に来て良かったんじゃないだろうかと勘違いしそうになる。

 

でも、キャストリアのその言葉に、ほんの少しだけ俺は救われた気がした。

 

──……そっか、ありがとアルトリア

「──あと、わたしの事もアルトリアではなく、キャストリアと呼んでください。その方が、おそろい感あって、友達みたいじゃないですか」

 

ね?と、上機嫌に言うキャストリアの顔は、闇夜を輝かせるように燃ゆる火の光によって、温かみを感じさせる赤らみを帯びるように、ほんのりと照らされていた。その光景は、妖精としての彼女を、より妖精たらしめるかの如く、酷く幻想的だった。

 

──友達……うん。改めてよろしくキャストリア

 

俺はキャストリアの手を手に取って、軽く握りしめ握手の形をとった。

だが、それを見ていたキャストリアはどうしていいか分からずに戸惑っていた。今のキャストリアの様子を見るからに、この異聞帯にはもしかすると握手の概念がないのかもしれない。

 

だから、俺は元いた世界にはそういう習慣があるんだという事を簡潔に伝えた。

 

「そういう、習慣があるんですね。なるほど、とても気持ちの良いものなんだ。握手って……」

 

えへへと、キャストリアはまんざらでもない顔で、この異聞帯において異文化のものであるそれを容易に受け入れていた。

 

軽く握った彼女のその手は、細長くしなやかな曲線を描いていて、まさしく少女の可憐な手だった。これが手袋越しだとしても、俺は嬉しかった。

 

よろしくなキャストリア。と内心俺がそう思っていると、なにやらこちらを見やる二つ分の視線を感じた。どこからくるものなんだろうとキャストリアに悟られないよう探すのだが見当たらない。

また、今は夜な為に辺りは暗く、視線の正体を見つけるというのは、中々に困難なものだった。

 

だが。

 

「ああ、あれを見てくれトリスタン。僕たちはとても尊いものを見ている気がするぞぉ……」

「ええ、私もそう思います……これが、尊いというものなのですね」

 

すぐ近くの茂みから二人の声が聞こえてきた。

もしかして、あの二人。あそこで俺たちの会話を楽しく観てやがったのか……?

しかもさっきから尊い尊い聞こえてくるのだが、一体あの人たちは何が尊いのだろうか。

 

 

 

 

「よしよし、彼らの仲は順調のようだ。例え中身が変わっていたとしても、彼の本質は変わらないということだね。……だとすれば僕たちの勝利条件も変わらないってことだ……」

 

 

 

 

 

──ここが、ソールズベリーか……!

 

妖精の街と言われて、それは大層凄いものなのかなと期待に胸を寄せていたが、人が造りし街と対して変わることのない、西洋の技術を用いて造られた家々が建ち並ぶ。窓はガラスではなく木材で作られていて、それは真上に動くもののようで、降りてこないように一本のつっかえ棒で固定して、風通しや光が当たるようにしている。

 

また作るのが大変そうなあのグリーンカーテンなるものも壁際に作られていた。いいなアレ、夏になるとあれが日陰になって涼しいんだよな……

 

石畳でできた道の真ん中には、細長くつづく噴水が造られており、その周りを囲うように色とりどりの花を咲かせた低木が丁寧に植えられている。

 

噴水は時間経過とともに、並べられた振り子が連動するように、低く湧いていた水が予備動作を見せた後、高く打ち上がった。

瞬間、線香花火を思わせる無数の水飛沫が一斉に飛び交う。それは殆ど石畳の道に落ち、水玉模様を形作ったが、その内の幾つかは俺の顔へ降り注いだ。おかげで髪は多少濡れてしまった。すぐに乾くとは思うから気にはしない。でもこれがほどよい冷たさで、少し心地が良い。

 

それはさておき。

 

一つ疑問があった。

この街に来たはいいが、人はまだ見かけていない。

今のところはと言うべきだが、あんな事があった為、できればいてほしいと願う──

 

右を向けど、左を向けど、妖精だらけ。

幸い、あの妖精たちはコーンウォールの時の妖精たちとは違うことだけは分かった。感じる視線だとかそう言った類のものに狂気はなさそうと見た。

 

でも見る妖精みんな笑顔なのが、かえって不気味だ。あの時みたくならなければいいのだが……

 

キャストリアはこれを見て「この街はこれが日常なんです」と言うのだが、これが日常って……

表情筋さんが過労死してしまうぞ、大丈夫かあの妖精たち。

 

街中をぶらぶらと歩く途中、オベロンからこの異聞帯で生きる人間、について詳しく説明された。本来はもっと後に言うつもりだったらしいのだがと口にしてはいたがな。

 

あの村である程度はキャストリアから聞いていた為、この異聞帯において人の待遇は知ってたが、まさか自由権もとい独立権なる物を獲得した人間もいるのだと思わなかったが。

 

まあその他の人間の扱いは聞いていた通りだった。

俺は生きるための餌なのかなとは思ってたが、実際は妖精社会を豊かにする為の道具、または奴隷なのだと言うもんだから、より扱い酷いんだなと思ってしまった。なんだが妖精という存在が人間並に怖く感じた今日この頃。

また汎人類史の方でもこの異聞帯でも俺たち人間は妖精たちにとって退屈しのぎの嗜好品でしかないそう。俺たち人間は、彼らにとっての酒みたいな類のものなんだな。

 

「はぐれてしまった君の仲間を捜す為にも、ひとまず酒場に行こうか。ヒトが集まるところには耳寄りの情報があるからね」

 

さあ酒場へ行こうかとオベロンは言うのだが、キャストリアは小難しそうな表情を浮かべ、無言でその場に立ち尽くす。

 

そんなキャストリアを見たオベロンはニヤリと何やら悪巧みをしていそうな顔で、彼女へこう告げた。

 

「あー、ところでアルトリア。この街で主のいない人間が見つかったときの処遇を知ってるかい?」

 

それを聞いたキャストリアはなんだか冷や汗を流し、表情を強張らせていた。

 

「牧場から逃げ出した脱走者として捕まり、ニュー・ダリントン送りさ」

「……『国立殺戮劇場』の、ダリントン!?でで、でも、ここ自由の街ソールズベリーですよ!?風の氏族の長が統治するこの街で、そんな酷い仕打ちをするはずが──」

 

今、普段キャストリアの口からは聴かないような、殺伐とした言葉が聞こえた気がする。

なんだ、国立殺戮劇場って……

名前が物騒すぎるぞ。妖精ってそんな事までするのか、だとすれば妖精たちはそうとう拗らせてるに違いない。うん、きっとそうだ。

 

「長とはいえ、女王の決定には逆らえないさ。だからこそ信頼できる協力者は一人でも多い方がいい」

「この子は右も左もわからない迷子、しかも人間だ。僕は見ての通り王子だから出自不明な人間を『自分の従者』として言い張るのは無理がある」

 

俺の頭を優しく撫でながら、何処ぞの悪の総帥みたいな表情を今もキャストリアに向けるオベロンは話を続けた。

 

「だが君ならばこの子と釣り合いはとれている。ずっと一緒とまでは言わないさ。ソールズベリーにいる間だけでいい。なにより──君だってその方が都合がいいだろ?」

「……確かに……ひとりでいると職質されますもんね、今のブリテン」

 

一人空を見つめ、哀愁をその身に漂わせるキャストリア。その反応を見れば一目瞭然。過去に何度か、どこかの街で一人でいたキャストリアは問答無用で職務質問されたのだろう。

 

ああ、見える。

警察の役割を持つ妖精に、一人でいるキャストリアが捕まって職質されているところが見える。

これは、脳内再生余裕ですわ!

 

「でで、でもでも人間を従者に出来るのは、じょじょ、上級妖精で。わたしが○○のご主人様になるってコトで──」

「あ──うわべだけの話だけどね?それともアルトリアは彼の事をペットにしたいのかな?」

 

ニヤニヤしながらキャストリアを揶揄っている妖精王オベロン。

いいぞ、もっとやれ。

 

「えへへ、それもいいかな…………──はっ!?

わ、わわわわたしにはまだそういうことは早いですって!いや、ほんとに勘弁してください!」

 

翡翠色に輝くその双眸は渦を巻き、彼女の顔からはぷすぷすと煙が吹き出し始めていた。

「よし決まったね」と、その一連を見ていたオベロンは指をパチンと鳴らし、続けてこう言った。

 

「しばらく君はアルトリアの持ち物となる訳だが、この妖精國で安全に旅する為だ。ひと芝居うてるね?」

 

オベロンの悪ふざけという名の船に、俺は乗り掛かる事にした。

理由は簡単──そっちの方が面白いから。

 

──これからよろしくお願いいたします。我が主、アルトリア

 

俺は主人に付き従う従者を演じるべく、キャストリアの前で文字通り跪いた。

 

隣にいたオベロンは今にも笑いそうなのを必死に堪えていて、トリスタンは苦笑いを浮かべている。

肝心のキャストリアは──フリーズしていた。

まるでそこだけ時が止まっているかのようだった。

悪ふざけが過ぎたのだろうか……?

 

「──」

「わ、悪ふざけが過ぎたようだね……っ。アルトリアには刺激が強過ぎたようだっ……」

 

おい、オベロン。笑うか喋るかどっちかにしてくれ。思わずこっちも笑いそうになるじゃないか……!

 

なお、アルトリアがスタンを喰らったサーヴァントみたいに動かなくなってしまったせいで、俺たちが酒場に向かうのは数分も後になったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

酒場に入った途端、オベロンが酒場中にいる人たちに向かって挨拶をかましてくれたおかげで、元々賑やかだったものが更に賑やかになってしまった。オベロンの影響力は凄まじいモノだと確認させられた気分になる。

 

でも周りのヤジの中に、ツケだとか、前に貸した金だとか、お金は返してね?だとか入っていたのは何故だろう。

もしかし無くともこの異聞帯でオベロンが何かやらかしているのだろうかと、少し気になった。

 

途中、無一文の下りから始まり、オベロンの召喚されてからの話がここで語られる事になった。

裸一貫で目が覚めた後、地道な活動を得てこのブリテンで名を挙げたのだという。

 

ずっと立ち続けるのも流石に疲れるからと、オベロンは自身のお気に入りの席へと俺たちを案内する。

そのついでとばかしに新しい給仕さんとやらに果実水四つを注文していた。

 

お金は大丈夫なのだろうかと不安になりつつも俺はオベロンに案内された席にそそくさと着こうとした。

 

その瞬間、ゲーム内で何度も聴いたあの声をふと耳にした。

 

思わず、え?と反応をしてしまった事が良かったのやら悪かったのやら……

そこにいた新しい給仕とは。

 

──レオナルド・ダ・ヴィンチ(ライダー)だった。

 

なんでここにいるんですかね、ダ・ヴィンチちゃん。

 

白黒の給仕服を身に纏い、その小さな背中に背負った茶色のランドセルからは、メカメカしい巨大な義手を生やしている。

よくその状態で給仕が出来るなとツッコミたいところだが、どうやら移動する際は引っ込めているようだった。

 

「え──」

 

 




二部六章関連の二次創作が増えつつあるのがとても嬉しい。

モルガンママに、妖精騎士トリスタン、妖精騎士ランスロットと色々増えたなぁって思いつつ、妖精騎士ガウェインがまだだなぁと捜してたけど見当たらないの辛い。

誰か書いて……なんでもするから、なんでもしますからぁ!!

拙い文章しか書けないから許して、許して……

続けるべきか?

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