施設では早速、防衛戦の作戦会議が執り行われる。全員参加の戦いであるため、最初から外に出ての話し合いとなった。すぐに作戦行動に出るためにも、外の方がいい。
この間にも島に近付くモノが無いとも限らないので、姉妹姫が哨戒機を飛ばしていた。発見したら作戦会議どころではなくなり、総力戦にすらなるだろう。
最初から島から出て行かない者達は決まっている。そもそも出られない姉妹姫と、恐怖が溢れる可能性が高い潮。この3人は施設の最終防衛ラインとなる。
「こういう時は、誰が仕切ればいいのかしらね。アタシやお姉は戦術とかわからないわよ」
「そうねぇ。そもそもまともに戦う方法がわからないものねぇ」
力任せで雨雲を晴らすレベルの艦載機の爆発を起こす中間棲姫が言うことでは無いと施設の者達は思っていたが、今はここで話を進めるためにスルー。
こういう時は、鎮守府で戦ってきている艦娘に任せるのが一番と、姉妹姫は作戦会議では一歩引いた。ここまで戦略的な会議はしたことがないため、素人同然の2人は基本的には口出ししない。
「ビス子さんや、こういう時は仕切ってちょうだいな」
「誰がビス子よ誰が」
「まーまー。リーダーシップはこの中ではトップでしょ。それに監査なんだからヒトを見る目もあるだろうし、一番いい感じに作戦考えられるんじゃない?」
北上の軽口にビスマルクが苛立ちを見せるものの、その直後に煽てられて口を噤んだ。ここで変に仲違いのようなことをすれば士気が下がりかねないため、あまり余計なことはしない。それに、褒められたら悪い気分ではない。
事実、今ここにいる者の中では最も作戦立案には向いているだろう。監査をしているというのもあるが、鎮守府でも旗艦を務めて仲間達を先導する役目を持っているため、戦略を立てるのは苦手ではない。
「まぁいいわ。意見が無いなら私が進めるけれど、大丈夫かしら」
施設の者達が作戦立案出来ないというわけでは無いのだが、慣れている者に任せる方が確実。そのため、ビスマルクを中心とした打ち合わせで良しとされた。
そのビスマルクのことを知るリシュリューがそれでいいと言ったことがさらに後押ししていた。信用度が高いと考えてもいいと仲間達が信頼を置いたようである。
「それじゃあ、私が話を進めていくわね。今回の部隊は、3つに分ける。1つ目は、私とグラーフがここに来るまでに発見した敵対深海棲艦の居場所に向かう部隊。2つ目は、そこから移動していることを考慮して、別の場所に調査を仕掛ける部隊。そして3つ目は、万が一のために施設の守りを強化する部隊よ」
施設近海と言っても、海は当然広い。何処から来るかなんてわかったものではないのだ。故に、ここから2つの部隊を作って、こちらから立ち向かう。
しかし、だからといって全員が出払うのは危険だ。島から移動出来ない姉妹姫に何かがあった時、対応が出来るものが少な過ぎるのは危うい。そのためにも、強力な防御性能を持つ者は施設に残り、侵略を防ぐ必要がある。八方向にバリアが張られたとしても、何が起きるかわからないのが黒幕絡みの敵だ。
「貴女達の実力はある程度は理解しているつもりだから、そこから配分するわ。何か文句があったら言ってちょうだい。善処するから」
ビスマルクは理解していると話しているが、実際のところ、ここの
だがそれ以上にここで大切になるのは、おそらく相性。充分過ぎるくらいに仲がいい者は引き剥がさないようにする。そうしなければ、全力が出せなくなってしまうかもしれない。
「まず、艦種はなるべく分けさせてもらいたい。都合がいいことに戦艦は私を含めて3人いるのだから、部隊に1人ずつとしましょう。空母も3人だから均等に分けたいところだけれど、ズイホー、貴女は確か殆どドロップ艦に近いということだったわよね」
「うん、申し訳ないけど、戦力として一人前としてカウントされるのは厳しいかも」
「
「おおきに。精一杯やらせてもらいますわ」
このような感じで、ビスマルクが3つの部隊に人員を振り分けていく。配分としては基本的には均等。偏らせた時にその隙をつかれるとそこから崩れる可能性がある。
「部隊の旗艦はそこの戦艦か空母がやる方向でいきましょう。第一部隊、実際に見かけた場所に行く部隊は私、ビスマルクが旗艦を務めるわ。そこから動いていないのなら真っ直ぐそこに向かえるから、そこは私が適任だと思ってる」
これに関しては満場一致。問題は次。
「第二部隊、ある意味
片方は施設の最終防衛ライン。万が一突破された場合、もしくは裏をかかれて忍び寄られた場合、中間棲姫を絶対に守らなくてはならないため、島の防衛力は出来る限り高めておく必要がある。
勿論、鎮守府からの対策として、小型化されたバリア装置があるため、島に近付いただけで治療される可能性はある。それでも、そのバリアすら突き抜けてくる可能性を考慮すると、防御力を高めることは損ではない。
ビスマルクとしては、リシュリューの方が守りに強いと判断してこの問いをしている。望むべくは、リシュリューに戦場ではなく施設防衛に入ってもらうため。そうなれば、戦場で欧州棲姫の姿を見る確率がグンと減るはず。
適当ではない完璧な理由をつけて、最悪から離れるための手段を提示した。本人には知られないように。
「それで言うならリシュリューの方が上ね。何と言っても、あの大きな艤装は簡単には突破出来ないもの」
知ってか知らずか、戦艦棲姫が援護射撃。防衛能力はリシュリューの方が確実に高いと言い切った。
実際、自分の数倍の大きさの尻尾型艤装を使えば、そんじょそこらの攻撃は軽くいなしてしまうだろう。それこそ、コロラドの扱う白鯨の次に強力な攻防一体の艤装だ。
「そうね、
「でしょう。だから、私がその第二部隊の方を受け持つわ。リシュリューが防衛部隊で」
「Oui. 適材適所、というものね。任されたわ」
戦艦棲姫の言葉に納得し、リシュリューも自分が島を守るべきだと認識する。そもそも施設を守りたい気持ちは強めであるため、攻めるよりは守る方が向いていると自分でも考えているようである。
ビスマルクは内心ホッとしていた。これでリシュリューが戦場に出たがった場合、どうやって施設に押し込めようかと考えていたのだが、全てが言い訳みたいになってしまって勘繰られる。そうなったら最後、暴走まで一直線だっただろう。
それに、暴走するかどうかはさておき、それほどまでに強い艤装を持っているのなら、攻めより守りで活躍してもらいたい。仕事はないかもしれないが、後ろに協力な仲間がいるという事実が、戦闘を楽にするというものである。
「なら、戦艦棲姫と相方の空母棲姫には第二部隊、リシュリューとコマンダン・テストには防衛部隊をお願いするわ。コマンダン・テストは空母では無いけれど、ズイホーが一緒にいるし、むしろ姉姫と妹姫も哨戒機は出すでしょうから、充分ね」
施設を守ることは、黒幕の手の者を撃退するよりも重要だ。むしろ、敵を取り逃したとしても、施設が無事であれば問題ないというレベル。それは誰もが納得する。
「あとはうまく配分するわ。……っと、1つ聞きたいのだけれど、ミシェルは……その、戦闘員としてカウントしていいのかしら?」
配分で困ったところはそれもある。リシュリューの問題は防衛部隊というところでどうにか出来たが、ミシェルに関してはなかなか難しいところ。見た目は艦娘卯月。しかし、戦闘力は皆無と言ってもいい。
「ミシェルもここを守りたいぴょん!」
「その意気込みはいいことだと思う。でも、かなり危ないことになるわ。戦えない子がそこに行くというのは、それだけでもリスクが」
「Bismarck、ちょっといい?」
ミシェルのやる気に少々困っていたビスマルクだが、そこにジェーナスが口を挟む。
「Michelleもね、この施設のことが大切で大好きなの。だから、参加させてあげてほしい」
「そうは言ってもね、今回の戦いは普通の戦いじゃないのよ」
「Michelleは潜水艦としても戦えるの。だから、海の上じゃなくて海の中だったらどうかしら」
ミシェルの特性として、理解出来ないものはその身に影響を及ぼさないというものが大きな部分を占めているが、忘れてはいけないのが、ヒトのカタチをしつつも
今でも漁の時に素潜り出来るくらいに、ほとんど潜水艦のような特性を持っている。そのため、今回の戦いは他の潜水艦達と共に海中で参加すればいいのではないかとジェーナスは提案した。
勿論、無理に突っ込むようなことはしないし、危険だと思ったらすぐに撤退する方針。それだけはちゃんと理解してもらっている。ミシェルとて、ジェーナスが悲しむことはしたくないと心に刻み込んでいるのだから、それを守らない理由はない。理解を超えた、本能レベル。
「確かに今回は潜水艦の部隊も必要だと思っていたわ。でも、本当に大丈夫なのね? 脅すようで悪いんだけど、
今回の戦場はいつになく苛烈になる可能性がある。いくら敵が海上艦で、潜水艦は比較的安全だとしても、何が起きるかわからない。
しかし、ミシェルにはそこが理解出来ていない。死ぬのが怖いとかそういうことではなく、
怖いものなしという長所にも短所にもなる性質になってしまっているが、ミシェルは至って真剣だ。自分の、仲間の居場所を守ることに、何故恐怖を感じる必要があるのか。みんなのために動くことは悪いことじゃない。
「ミシェルはジェーナスちゃんのところに帰るぴょん。何があっても、どんなことをされても。それ以外わかんないもん」
ビスマルクは艦娘卯月を知っているが、こんな真っ直ぐな瞳をするような者では無かったと思っていた。だから今目の前にいる者は、卯月ではない、ミシェルという固有の存在。施設には無くてはならない、大切な仲間。施設で力を合わせるのなら、ミシェルだって前に出る。
「……仕方ないわね。それじゃあ、海中の安全を確保するため、潜水艦達は常に海中を巡回してちょうだい。ミシェル、ヨナ、あと潜水艦の姉妹ね。4人で行動すること」
「りょーかいぴょん!」
ビシッと敬礼するミシェル。それに倣って、伊47は深く頷き、潜水艦姉妹も表情は無いが親指を立てる。
「よし、それじゃあ改めて部隊を編成していくわよ」
ここから防衛戦が始まる。最初の難関はクリア出来たが、まだ油断は出来ないのは確か。慎重に、しかし大胆に、今回の敵を確実に斃す。
部隊編成の結果、組まれた部隊は次回で。