アスカとシンジは、空の軌跡の世界で本当の幸せを見つけた ~アスカ・ブライト!~   作:朝陽晴空

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※空の軌跡 evolution FC版をプレイしながらやっているのですが、ミストヴァルトの攻略が難しすぎて投稿が遅れました……。毒ダメージがきついので対策してから攻略をお勧めします。


第十話 さらばロレント! ~消息を絶ったカシウス~

 

 落ち着いたクラウス市長の話によると、自分が家を留守にしている間に強盗がは居たらしい。家に居たミレーヌ婦人とメイドのリタは屋根裏部屋に閉じ込められただけで怪我は無いらしい。

 その話を聞いたエステル達はホッと胸をなでおろした。人的被害が無かったのは不幸中の幸いだった。しかしこのまま遊撃士協会で話していても仕方が無い。シェラザードとエステル達は他の仕事をロレント支部に所属する他の遊撃士に任せて市長邸へと向かうのだった。

 

「うわー、メチャクチャじゃない」

 

 市長の部屋を見たアスカは感心したように呟いた。本棚から出された本が散乱し、ツボは倒され、箱はこじ開けられ、書類が床に散乱している。そして目を引くのが開けられて中身が空っぽになった金庫だった。

 

「女王陛下に贈るはずだった宝石も盗まれてしまったよ。折角君達が運んでくれたのに申し訳ない」

 

 クラウス市長は落胆を隠せない表情でそう呟いた。エステル達は悪いのは強盗犯なのだから市長が謝る必要は無いと言った。他の部屋の様子を聞くと、他の部屋はほとんど荒らされてはいないらしい。話を聞いたシェラザードは考え込むような仕草をした後、捜査の分担を提案した。

その内容はシェラザードが市長の事情聴取を行い、エステル達が市長邸の現場検証をすると言うものだった。「慎重に、そして確実にね」と言い残して、シェラザードは市長と話すために部屋を出て行った。

 

※エステル達はこれから事件の調査を行います。後でシェラザードからクイズ形式で質問をされるので、遊撃士になったつもりで挑戦してみてください。

 

 

 

 

 まず四人は荒らされた市長の部屋から調べ始める事にした。真っ先に調べたのは宝石の入った金庫。よく見ると扉を壊して開けたわけではなさそうだった。犯人は何らかの方法で暗証番号を知って入力したらしい。

 

「蓄光パウダーを使ったんじゃない?」

 

 アスカは前の世界に居た時、同級生の女子と蓄光パウダーを使ったアクセサリを作った事があった。蓄光パウダーを暗証番号を押すボタンにまぶして置いて、市長にボタンを押させる。その後、部屋を暗くして市長の指によってパウダーがはがれたボタンを調べれば暗証番号が判ると言う算段だ。

 問題は、誰がそのパウダーをこの金庫の扉にまぶしたのかと言う事だ。市長の家の住民ではない事を考えると、犯人は絞られてくる。部屋を掃除するメイドのリタにいつ金庫の扉を掃除したか聞く必要もある。

 本棚に並べられていた市長の愛読書や書類は床に散乱していた。しかし、引き出しの中に入っていた行政関係の書類には手が付けられていなかった。そして本棚には価値のある貴重な本も残されていた。

 部屋にあった小物入れは、錠前が焼き切られていた。これは多分、導力銃を使ったのだとシンジは推察を述べた。すると犯人の一味には導力銃の使い手が混じっている事になる。

 部屋の中を調べ終わったエステル達は市長の部屋の前にあるテラスを調べる事にした。市長の部屋は2階にあり、地上から侵入するには何か道具必要だ。エステルはテラスの手すりに傷がある事に気が付いた。しかも新しい傷だ。ハシゴか、あるいはロープのフックか、金属製のものを引っ掛けた跡のようだった。

 ミレーヌ婦人の話によると、玄関には鍵が掛けられていて、開けられた形跡はなかったらしい。犯人が玄関から入ったという線は消えた。メイドのリタからは強盗犯達は覆面を被っていて顔は見えなかったが、そのうちの一人は背の低い女性ではないかと言う話が聞けた。

 最後にエステル達は屋根裏部屋を調べた。屋根裏部屋にはセルべの葉が落ちていた。セルべの木はロレントの街周辺に生えているものではない。犯人達の落として行ったものに間違いはなさそうだ。

 最後に玄関の鍵が壊されていない事を確認し、エステル達は1階の応接間で市長と話しているシェラザードの所へと向かった。全ての手掛かりがそろったと判断したシェラザードは、エステル達に事件に関する質問をした。

 

 

 

 

※ここから事件に関する三択クイズになります。正解すれば遊撃士としての評価が上がるので挑戦してみてください。

 

 ◆市長邸の強盗事件◆

 

 【依頼者】クラウス市長

 【報 酬】???? Mira

【制 限】緊急要請

 

 

 

 

 

 

 Q1.犯人の狙ったものは?

 

 【お金になりそうな品物】

 【金庫の中の宝石】

 【食料】

 

 

 

 Q2.犯人達の構成は?

 

 【男女二人組】

 【複数人の男性と女性のグループ】

 【女性による単独犯】

 

 

 

 Q3.犯人の侵入方法は?

 

 【玄関の鍵をこじ開けた】

 【2階のテラスから】

 【屋根から屋根裏部屋に侵入】

 

 

 

 Q4.今回の犯行の人物像は?

 

 【マルガ鉱山の関係者】

 【クラウス市長の身内】

 【最近訪ねてきた旅行者】

 

 ※解答は後書きで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へえ、良く調べたじゃない。これで犯人を特定できそうだわ」

 

 シェラザードの出した質問に全て正解を導き出したエステル達に、シェラザードは満足した様子だった。シェラザードは市長に、ここ数日の間に自分の部屋に旅行者を通したか尋ねた。市長はナイアルとドロシー、ジョゼットの名前を挙げた。

 ナイアルとドロシーは犯行時刻にはずっとエステル達と一緒に居たのでアリバイがある。となると残る犯人候補はジョゼットだけと言う事になる。

 

「でもあんな上品そうな子がお金のために盗みを働くなんて思えないよ」

「アンタバカァ!? 見かけは関係ないの、アリバイが無いなら疑うのが筋でしょう?」

 

 シンジがジョゼットを擁護すると、アスカはシンジを怒鳴りたてた。シェラザードもアスカの意見に同意する。犯罪者は見た目で判断できるとは限らない。ジェニス王立学園の制服も盗んだり、複製することも出来るとシェラザードは言った。

 

「でも、本物のお嬢様って感じだったし、人当たりの良い子だったと思うし、犯人なんてあり得ないと思うけど」

 

 エステルもシンジと同様の意見を述べてジョゼット犯人説を否定した。友達になりたい、とまで思った相手である。エステルはヨシュアに同意を求めたが、ヨシュアは首を横に振った。

 

「残念だけど、僕は逆意見だよ」

 

 ヨシュアはクラウス市長が宝石を金庫に入れた時、ジョゼットは狩人が獲物を見るような目をしていたと言った。だからジョゼットは普通の女学生には見えないとヨシュアは話した。エステルとシンジとクラウス市長はショックを受けたようだった。

 ジョゼットに話を聞く必要があると判断したシェラザードはジョゼットが居ると言う《ホテル・ロレント》にエステル達を伴って向かうのだった。ホテルのフロント係に聞くと、ジョゼットは既にチェックアウトして発着場へと向かったらしい。

 ロレント空港の発着場に着いたシェラザードは、飛行船の搭乗チケットを売っている青年、アランに声を掛ける。ジェニス王立学園の制服を着た女生徒を見かけなかったかと尋ねられたアランは、清楚で可憐な白のスカートと、紺のハイソックスのコントラスト、と女子の制服へのこだわり振りを語った後、ここ数ヵ月は見ていないと話した。

 アランは乗客のチェックをしているから、飛行場には来ていないと断言すると、シェラザードは困った表情になった。飛行船を使わずにロレントに来たとなると、捜索範囲が広がる事となる。ジョゼットに仲間が居るのならば、その仲間達の潜伏場所があるはずだ。

 

「そう言えばエステル、アンタ、変な葉っぱを拾っていたわね」

「コレの事?」

 

 アスカに言われてエステルは市長邸の屋根裏部屋で拾ったセルべの葉を取り出した。このセルべの葉に関してはアスカ達にも共通の思い出がある。エステルが虫取りから帰るとセルべの葉っぱを服に付けて帰って来たものだった。エステルの服を洗濯していたシンジ達は直ぐに思い付いた。

 

「強盗犯達のアジトがある場所は……!」

「ミストヴァルトの森!」

 

 アスカとシンジは顔を見合わせて叫んだ。ミストヴァルトはロレント地方の中でも危険な森とされる。シェラザードはこのままエステル達と同行する事に決めた。エステル達もシェラザードが居てくれれば心強い事この上ない。

 エステル達が発着場を出ると、ロレントの街中でナイアルとドロシーにすれ違った。二人は街道を歩いてでも今日中にボースの街へ行くのだと話した。大スクープが待っていると息巻いてミルヒ街道の方へ去って行った。

 

 

 

 

 ロレントの街の南口からブライト家への分かれ道を越えてシェラザード達はエリーズ街道を突き進む。その途中の橋に、大型の魔獣が陣取っているのが見えた。普段はミストヴァルトの森の奥に居る魔獣が街道の橋を塞いでいる理由は分からないが、倒さなければ先には進めない。

 

 ◆エリーズ街道の手配魔獣◆

 

 【依頼者】遊撃士協会

 【報 酬】1000 Mira

 【制 限】7級以上

 

 エリーズ街道に凶暴な魔獣【ライノサイダー】が出没中です。

 当支部所属遊撃士のすみやかなる退治をお願いします。

 

 自分達より格上の手配魔獣だったが、先輩遊撃士のシェラザードも仲間に居る今、アスカは先陣を切って魔獣に戦いを挑むのだった。鎧の様に固い皮膚は、シンジの導力銃やシェラザードの鞭では効果的なダメージを与えられない。

 シェラザードの戦術オーブメントは風属性が強化されていて、エアストライクの上位魔法、スパークル、エアリアルが唱えられる。シェラザードのスパークルによって雷が落ち、麻痺させられた魔獣はアスカとエステルにそれほど手傷を負わせる事無く倒れるのだった。

 ミストヴァルトの森の入口に着いたシェラザードは、身に着けた追跡術のスキルにより、数人の集団が少し前に森の奥へと足を踏み入れた気配を感じ取った。逃亡犯の追跡も遊撃士に必要な技術よ、とシェラザードは語った。

 

「アスカ、エステル、森の中では静かにね」

 

 シェラザードに『アンタバカァ!?』と『あんですって~!』禁止令を出されたアスカとエステルは渋い顔をした。ミストヴァルトの森の中を飛び回る蜂のような姿をした魔獣は毒攻撃を仕掛けて来て、そして霧状の魔獣は臭い息を吹きかけて来て導力魔法の詠唱を解除してしまう。新米遊撃士の鬼門と呼ばれる所以がエステル達にも理解できた。ミストヴァルトの森を探索中にエステル達は運良く『ベアズクロー』を採取する事に成功する。

 そしてエステル達が森の奥へと進むと、森の中の開けた場所に数人の集団の気配がするのを感じ取れた。その集団の中にはあのジェニス王立学園の制服を着たジョゼットの姿も交じっていた!

 

「まったくチョロいもんだよね」

 

 お嬢様の演技をしていた時とはまるで違う、不敵な笑みを浮かべたジョゼットの手には市長の金庫から盗まれた宝石が握られていた。その様子をエステル達は茂みの中から見つめていた。

 

「それにしても、お嬢にはビックリだぜ。あんな演技が出来るなんてよ」

 

 強盗犯の一人が感心したように呟いた。他の強盗犯の一味もその言葉に同意した。

 

「騙される方がバカなのさ。あのお人好しの市長や、お坊ちゃん遊撃士といい……手を握ってやったら顔を赤くしちゃってさ、おめでたい奴ら!」

 

 ジョゼットがそう言って笑うと、強盗犯の一味の三人の男達も声を上げて笑う。

 

(あ、あんですって~っ!?)

(シンジをバカにしていいのはアタシだけよ!)

 

 エステルとアスカは心の中で怒りの声を上げていた。薄々騙されていた事に気が付いていても、ガッカリと落ち込んでしまうシンジ。普段からアスカがシンジの事を素直に褒めたりすればシンジもそのような事を気にせずに済むのに、とヨシュアはため息を付いた。それよりも、飛び出しそうなエステルとアスカを抑える事が先決だ。

 ヨシュアになだめられたアスカとエステルの二人は、隠れてさらに強盗団の話を聞く事にした。話によると、マルガ鉱山で逃げた見習い鉱員は強盗団の一味の一人だった。鉱山で宝石を奪うのに失敗したため、ジョゼットが市長邸に行く事になったらしい。

 

「それにしても、あの遊撃士連中はバカばかりだったな。特にあのツインテールのノーテンキ女! 『友達になりたい』だってさ! 笑いをこらえるのが大変だったよ!」

 

 ジョゼットが大笑いをすると、三人の男達も腹を抱えて大笑いをする。そしてついにエステルの我慢のリミッターが外れてしまった!

 

「そんなにおかしいの!?」

 

 茂みから飛び出したエステル達にジョゼットは驚いた表情になる。

 

「黙って聞いていれば好き放題言ってくれちゃって! 覚悟しなさい!」

 

 怒りの表情に満ちたエステルは棒を構えてそう言い放った。自分の純情を弄ばれたシンジも珍しく怒りの表情を浮かべて導力銃を構えている。

 

「詰めが甘かったようね、子猫ちゃん」

 

 シェラザードは余裕を持った大人の表情でジョゼット達に言葉を投げかけた。

 

「遊撃士協会規約に基づき、あなた達の身柄を拘束します。無駄な抵抗は止めた方が良いですよ」

 

 ヨシュアは至って落ち着いて冷静な表情でそう言い放った。強盗団の男三人は遊撃士と聞いて腰が引けてしまい、ジョゼットに助けを求めた。するとジョゼットは制服を脱ぎ捨てて、他の強盗団と同じくゴーグル帽子姿の飛空艇乗りに服装を変えて、導力銃を構えた。

 

「遊撃士と言っても、女とガキの集まりさ。ビビる事はないよ!」

「ガキですって!?」

 

 アスカにガキと言う言葉はNGワードである。これでアスカは一切ジョゼットに手加減をしないだろう。ジョゼットはアスカの地雷を踏んでしまったのだ。

 

「ボク達《カプア一家》の恐ろしさを骨の髄まで染み込ませるんだ!」

「おーっ!」

 

 ジョゼットの号令に勇気づけられた男三人はエステル達に向かって突撃を開始。ここに戦の火蓋が切って落とされた!

 ジョゼットは導力銃でエステル達を狙って来る。導力銃を持った相手と戦うのはこれが初めてだった。導力銃を止めるのは導力銃しかない。シンジは導力銃を持つジョゼットの腕に狙いを定めた。他の仲間の助けは期待できない、シンジにとって一番緊張する瞬間だった。

 そしてシンジの攻撃がジョゼットに命中し、ジョゼットが腕を抑えてうずくまると、エステル達は男達との戦いに専念した。集中攻撃をしようと固まった男達にはアスカとエステルの旋風輪、ヨシュアの絶影、そしてシェラザードの操る風系の強魔法、エアリアルの集中砲火が襲い掛かった。

 

「そ、そんなバカな……」

 

 四人全員膝を突く形になったジョゼットは、信じられないと言った表情で呟いた。そして得意げな表情になったエステルは、ジョゼットの懐から宝石を取り返す。この宝石のせいもあって、ジョゼットをボコボコにするわけにもいかず、相手をシンジに任せていたのだ。

 

「さて、ここからは事情聴取と参りましょうか」

 

 シェラザードは笑顔で鞭を構えてジョゼットに近づいて行く。それはジョゼット達にとって悪魔の笑顔とも言える顔だった。

 

「興味深い名前を言っていたわね、確か《カプア一家》とか」

「さあ、何のことだか」

 

 ジョゼットは知らないと、とぼけるとシェラザードはさらに嬉しそうな笑顔になって持っていた鞭を鳴らす。

 

「強情な子は、嫌いじゃないわよ」

 

 怒らせると、ミサトさんより数倍怖いとアスカとシンジは心の中で思った。シュッと音を立てた鞭がしなると、ジョゼットは跳んでなんとか鞭を交わした。絶対にシェラザードは楽しんでいる、とエステル達は思うのだった。

 しかしその時、空をつんざくような轟音が辺りに響き渡った。上空からの攻撃を、シェラザードはジョゼットから離れて跳んで交わす。そして小型の飛行艇がエステル達の目の前に着陸するのだった。

 

「アハハ! 形勢逆転だね!」

 

 元気を取り戻したジョゼットは三人の男達と一緒に飛行艇へ駆け寄る。飛行艇の運転席からはジョゼットと同じ水色の髪をした青年が顔を出した。おそらくジョゼットの兄だろう。

 

「キール兄! 待ってたよ! 早くボク達に加勢してよ!」

「いや、ここは退却する。ボースで面倒な事件が起きたんだ!」

 

 ジョゼットに呼びかけられたキールはそう言って、ジョゼット達に早く飛行艇に乗るように促した。悔しそうな顔をして、飛行艇の脚に飛び乗るジョゼット。そんなジョゼットに怒ったエステルが声を張り上げる。

 

「待ちなさい!」

「勝負はお預けだ、いずれ決着をつけてやるからね!」

 

 ジョゼット達を乗せた飛空艇は北の空の方へと飛び去って行ってしまった。地団駄を踏んで悔しがるエステルとアスカ。宝石を取り戻せたからそれで良いじゃないかとヨシュアはなだめていた。シンジは今夜の夕食はアスカの好きな献立にしようと決めた。それでアスカは機嫌を直してしまうのだ。

 

 

 

 

 宝石を市長に返したシェラザード達は、遊撃士協会でそのあらましを報告した。アイナはボースを根城にする空賊が絡んでいたとは大変な事件になったわね、と心配そうな表情になった。

 シェラザードは空賊を逃がしてしまったのは自分の修行不足、師であるカシウスの領域にはまだ及ばないと嘆いていた。エステル達も自分達に責任があると言ったが、シェラザードは市長邸の現場検証は完璧だったと褒めるのだった。

 

「アイナ……推薦状を書いてもいいんじゃないかしら」

「そうね、私もそう思います」

 

 シェラザードの言葉に、アイナも穏やかな笑顔で答えた。推薦状?聞きなれない言葉にエステル達は不思議そうな顔をした。その前に今回の事件の評価を……と言う事で、エステル達の遊撃士手帳に評価が書きこまれる。ボーナスBPも加算されて、エステル達は準遊撃士7級に昇格した。ハイタッチをして喜び合うエステルとアスカ。シンジとヨシュアも感慨深そうに遊撃士手帳を眺めていた。

 

「それと、これをあなた達に渡すわ。受け取ってね」

 

 そう言ってアイナはエステル達に正遊撃士の推薦状を渡した。今のエステル達は準遊撃士。見習いのようなものだ。正遊撃士になるにはリベール王国にある全ての地方の遊撃士協会の支部で推薦を受ける必要がある。エステル達が今アイナから受け取ったのはロレント支部の推薦状だ。

 

「アタシ達が貰っちゃっていいの?」

 

 いつも自信満々なアスカも戸惑っているようだった。正遊撃士になるにはそれなり実績を上げなければならない。ロレント支部に居る先輩遊撃士を差し置いてルーキーの自分達が推薦を貰うのはまだ先の話だと思っていた。

 カシウスの代理の依頼と、今回の事件解決の活躍で実績としては十分だとアイナは話す。ただし、ロレント地方での実績だとアイナは釘を刺した。他の地方支部でも実績を上げ、推薦を貰う必要がある。その支部はボース、ルーアン、ツァイス、グランセル。まだ初めの一歩だとシェラザードはニヤリと笑った。

 アスカとシンジは自分の価値を認めてもらった事に深い感慨を覚えていた。2年前まで居た世界ではエヴァンゲリオンに乗って使徒を倒すパイロットとしてでしか自分の価値を認めてもらえなかった。こうして身近な人々に自分自身を必要とされ、感謝されるのは嬉しいものだった。

 

「あら、何かしら?」

 

 カウンターの奥にある通信機の赤いランプが光り、呼び出し音が鳴るとアイナは受話器を取った。何かあったのかな、とエステル達はこの時は事の重大さに気が付いていなかった。

 

「もしもし、こちら遊撃士協会、リベール王国・ロレント支部です」

 

 アイナが落ち着いた声で通信機に話しかける。ご無沙汰しております、とアイナは通信機の相手に答えていた。しかし、通信を黙って聞いていたアイナの表情が厳しいものに変わる。そのただならぬ様子に、エステル達にも緊張が走った。通信を終わって受話器を置いたアイナはそのままの固い表情でエステル達に向き直る。

 

「アイナさん、何かあったの?」

「あんたがそんな顔をするなんて珍しいわね」

 

 エステルとシェラザードが不思議そうな顔をして尋ねた。アイナはそんな二人の言葉に答えず、真剣な表情で告げた。

 

「ボースのルグランさんからの連絡でね、定期飛行船《リンデ号》がボース地方で消息を絶ったの」

 

 定期飛行船《リンデ号》は先日カシウスが乗ってロレントから飛び立った飛行船だ。エステル達は驚いてアイナに詳細を尋ねるが、アイナは悲しそうな顔で首を横に振る。王国軍による大規模捜索が行われているらしい。そこまで話したアイナは言葉を詰まらせた。

 

「……そして、行方不明になった定期船にカシウスさんが乗っていたらしいの」

「……えっ?」

 

 アイナの言葉を聞いたアスカは驚きのあまり息を飲んだ。アイナの話によると、乗客名簿にカシウス・ブライト、45歳と名前が書かれていたのだと言う……。

 

 

 

 

「アスカ、今日の夕食はハンバーグだから」

「うん、美味しそうね、ありがと……先に食べてて」

 

 シンジはエステルの部屋のドア越しにアスカに声を掛けた。部屋の中ではエステルがアスカを慰めている。自分の実の父親の事にショックを受けているだろうに、エステルは強い子だな、とシンジは思った。

 自分以上にパニックに陥っている人間が側にいると、返って自分が落ち着いてしまうと言う心理を聞いた事がある。いまのエステルはその状態なのかもしれないとも考えた。

 遊撃士協会からブライト家に帰ったシンジとヨシュアは、夕食の準備を始めた。カシウスの失踪にショックを受けたアスカは支えられながら家へと帰り、エステルの部屋で休みを取る事になった。

 湯気が上る料理が並べられたダイニングキッチンのテーブル席に座ったシェラザードは、大好物のワインに手を付けずに真剣な表情でタロット占いをしていた。何度占いをしても『運命の輪』と言うカードが出て来る事に、難しい顔をしていた。

 

「アスカはどうしたの?」

「先に食べててくれって」

 

 食卓に一人で戻って来たシンジに、シェラザードはそう声を掛けた。シンジの言葉を聞いたシェラザードは、深いため息を吐き出した。14歳の頃に会ったアスカは、強がっていたが本当は親からの愛情に飢えた寂しがり屋の少女だとシェラザードは見抜いていた。アスカの実の父親は小さい頃に自分と母親を捨てて行ってしまった話も聞いていた。アスカにとってカシウスは父親のような存在になりつつあったのだろう。また父親を失う悲しみを味わいたくないと思うのは当然の事だった。

 

「シェラザードさんはアイナさんの話していた事件、どう思います?」 

 

 ヨシュアに尋ねられたシェラザードは腕組みをしながら考え込むような表情で答える。

 

「カシウス先生は一流の遊撃士よ。事件発生現場に先生がいるのなら、直ぐに解決されているはずだわ」

 

 あり得ない事が起きた、その事実はその場に居たシェラザードとヨシュア、シンジに重い沈黙になって圧し掛かって来た。そんな三人の元に、二階のエステルの部屋のドアが開き、アスカとエステルの二人がやって来た。

 

「ふーん、今日のハンバーグは一段と美味しそうじゃない」

 

 明るい表情でそう話すアスカに、シェラザード達はあっけにとられて驚いた顔になった。アスカの隣ではピースサインをする笑顔のエステルが立っている。

 

「ほらほら、アンタ達も冷めないうちに食べなさいよ!」

 

 席に座ってハンバーグに食らいつくアスカを見て、シンジはホッとした笑みをこぼした。シェラザードはワインに手を伸ばそうとしたが、ヨシュアに止められた。アスカとエステルが元気を取り戻して一安心だが、そこまで無礼講と言うわけではない。

 

「あたし達ね、ボースへ行ってみたいと思うの」

「もしかしてあなた達、先生の消息を確かめに行くつもり?」

 

 食事の途中でエステルがそう言うと、シェラザードはそう尋ねた。

 

「もちろんよ! あの髭親父は殺そうとしても死ななそうな化け物だけど……エステルの言う通り、遊び歩いているなら、お灸をすえてやらないとね!」

 

 アスカはボースのある方角を人差し指で指して、声を張り上げた。前向きなアスカとエステルの二人に、シンジとヨシュアは顔を見合わせて嬉しそうに笑った。

 

「ヨシュアも付き合ってくれるんでしょう?」

「うん、もちろんだよ」

 

 エステルが尋ねると、ヨシュアは快諾した。アスカはシンジに声を出して尋ねるまでも無い、とチラッとシンジに視線を送ると、シンジは嬉しそうな顔で頷いた。たまにシンジはアスカの奴隷なのかと誤解する人も居るが、シンジは自分の嫌な事は拒否する強さを持っているのだ。

 定期飛行船はボースで起きた事件で運航を停止している、となると街道を歩いて行くしかない。シェラザードは街道を急いで半日も歩けばボースに着くと話した。そして、シェラザードはエステル達と一緒にボースへと付いて行くと宣言した。

 

「先生に何かあったって聞いて、弟子のあたしが留守番なんてしてられないわよ」

「シェラさんは、タロット占いでボースで素敵な彼氏と出会う、って出たんじゃないですか?」

 

 シンジの辛辣なツッコミに、シェラザードはギクッとした。親しくなった相手には遠慮なくものを言うのも、シンジに隠された性格の一つだった。エステルとアスカは長期の旅行に備えてパジャマや道具一式をそろえると言ってエステルの部屋へと入って行った。シンジも夕食の片づけを終えてヨシュアの部屋に行こうとした時、シェラザードに呼び止められる。

 

「アスカはすっかり元気になったようね」

「はい」

「でもあの子は感情の浮き沈みが激しい所があるから」

 

 シンジにはシェラザードの心配が良く分かった。アスカは気が強いように見えるが、内面はもろいものだとシンジも気がついていた。

 

「大丈夫です、アスカは僕と……エステルと、ヨシュアで支えます」

 

 シンジは決意を秘めた力強い瞳でシェラザードにそう言い放つのだった。




※推理クイズの答え合わせ

 Q1.犯人の狙ったものは?

 【お金になりそうな品物】
〇【金庫の中の宝石】
 【食料】



 Q2.犯人達の構成は?

 【男女二人組】
〇【複数人の男性と女性のグループ】
 【女性による単独犯】



 Q3.犯人の侵入方法は?

 【玄関の鍵をこじ開けた】
〇【2階のテラスから】
 【屋根から屋根裏部屋に侵入】



 Q4.今回の犯行の人物像は?

 【マルガ鉱山の関係者】
 【クラウス市長の身内】
〇【最近訪ねてきた旅行者】
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