アスカとシンジは、空の軌跡の世界で本当の幸せを見つけた ~アスカ・ブライト!~   作:朝陽晴空

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第十六話 絶体絶命! 人質にとられたアスカ!

 

 エステル達が川蝉亭の酒場に顔を出すと、目を回したオリビエがテーブルに突っ伏していた。そのオリビエをニコニコ顔で見つめているのは、ワインでほんのりと頬を赤くしたシェラザードだった。

 

「いい所に来たわね、お姉さんと一緒に飲みましょう?」

「未成年に飲酒を勧めてどうするんですか」

 

 シンジは少し固い表情でシェラザードを注意した。しかしシェラザードは身体をくねくねさせてイヤイヤと拒絶する。

 

「シンちゃんってば、つれないっ。一緒に飲むったら飲むのっ!」

 

 精神年齢が二十も低下したようなシェラザードの口振りに、エステル達はため息をもらす。駄々っ子モードに入ってしまったシェラザードを鎮めるには更なる生贄を捧げるしかない。

 

「オリビエさんがまだイケるみたいですよ」

「ヨシュア君、ボクを殺す気かい?」

 

 明るい笑顔でヨシュアがそう言うと、オリビエはすがるような目で訴えかけて来た。アスカはそんなオリビエに目もくれず、夕食を食べるために奥のテーブルへと向かった。

 

「アスカ、オリビエさんを放って置いて大丈夫なの?」

「本人たちが幸せなんだから、止める必要はないんじゃない?」

 

 まだまだ大人の恋愛と言うものがわかってないわね、とアスカは心配顔のシンジの手を引っ張ってテーブルへと座らせる。エステルとヨシュアも同意見の様で、アスカとシンジと同じテーブルへと座った。

 

「面倒だから、あんたに口移しで飲ませちゃおうかしら」

 

 シェラザードはニヤリと笑ってワインを口に含ませて、テーブルに突っ伏しているオリビエの髪を引っ張り、顔を起こす。シェラザードの唇がオリビエに迫る。

 

「うわあああああっ!」

 

直後にオリビエの悲鳴が響き渡った。

 

 

 

 

 伸びてしまったオリビエは夕食を食べ終わったシンジとヨシュアによって二階の部屋のベッドへと運ばれた。

 

「さすがの超マイペース男も、シェラ姉には勝てなかったか」

 

 エステルはそう言ってため息を吐き出した。対照的にシェラザードは晴れやかな笑顔で「久しぶりに堪能したわ」とご満悦だ。もう酔いが醒めてしまっている常人離れしたシェラザードを、シンジは冷や汗を流しながら見つめた。

 

「コイツ、もう使い物にならないわね」

 

 アスカはベッドで仰向けになってグロッキーになっているオリビエを見下ろしてそう言い放った。

 

「これから空賊との戦いになる可能性が高い。シェラさんはオリビエさんを酔い潰らせてついて来れないようにしたんですよね?」

 

 何もかも理解していると言った顔のヨシュアがシェラザードにそう問い掛けると、シェラザードは不思議そうな顔をする。

 

「えっ?」

「えっ?」

 

 ヨシュアも驚いて聞き返した。シェラザードはごまかすかのように夜が更けたので宿の周辺の調査を開始すると宣言した。目撃証言があったのは西の桟橋だ。宿を出たエステル達は桟橋の方を見るが、人の姿は無い。

 怪しい二人組は街道の方へ姿を消したとロイドは証言をしていた。それならば、街道の方からやって来るかもしれない。エステル達は街道を見張る事にした。見つからずに街道の様子を探ることが出来る場所は、偶然にもエステル達が四人で泊っている部屋の窓だった。

 

「そんな……どうして……?」

 

 街道からやって来た二人組の人影を見て、シンジはショックを受けた。プラグスーツを着た二人組の姿を見られると期待していたのに、現れたのは空賊の一味であるキールとジョゼットだったのだ。

 空賊の服に身を包んだキールとジョゼットの姿は見間違えようが無かった。アスカも落胆したが、落ち込んでいる場合ではないとシンジの肩に手を置いて励ました。空賊事件を解決して自分達の義父であるカシウスの行方を知るのも重要な目的だ。

 

「気づかれないように後をつけるわよ」

 

 シェラザードの忠告に従い、エステル達は静かに外へ出た。キールとジョゼットは西にある桟橋の方へと向かったようだ。外に出れば桟橋での会話が聞き取れる事は夕方に実証済だ。エステル達は物陰に隠れて耳を澄ませた。

 

「ねえドルン兄、最近おかしいと思わない?」

 

 ジョゼットが不安そうな顔でキールに問い掛けると、キールは考え込んで黙ったまま答えなかった。

 

「ボク達、今までケチな盗みはやって来たけど……人質を取って身代金を要求するなんてやりすぎだよ」

 

 そう言ったジョゼットの頭を、キールはポンと優しく手を置いて撫でた。

 

「やっぱりお前は心底、悪党には成りきれないか」

「な、何言ってるのさ!」

 

 ジョゼットはそう言ってキールの手をはね除けた。それでもキールは笑みを崩さない。

 

「俺は嬉しいんだよ。何だったらお前だけでも故郷に帰ると良い。仕送りはしてやるからさ」

 

 するとジョゼットは凄い剣幕でキールに詰め寄った。

 

「ボクが居なかったら、料理も洗濯も出来ないくせに! ボクがロレントに行ってた間に、部屋が酷い事になってたじゃないか!」

「さすがにそれは御免被りたいが……心が完全に染まっちまう前に、足を洗う事も考えておけよ」

 

 キールが優しい口調でそう諭すと、ジョゼットは悲しそうな顔で黙り込んだ。それから考え込むような表情になってからキールはポツリとつぶやいた。

 

「ドルン兄貴の様子が変だと俺も思う。身代金の額を吊り上げるために人質の一部解放にも応じないって言うのも限度がある」

「やっぱり、アイツ等に何か吹き込まれたんじゃないのかな」

 

 ジョゼットは不安そうな顔でキールに向かって訴えかけた。話を聞いたエステル達は『アイツ等』と言うキーワードに反応して考え込むような顔になる。ほどなくして一隻の手漕ぎボートが湖の向こうから姿を現した。

 その手漕ぎボートには黒兜を被った黒と赤を基調した軍服の男女が乗っていた。長い髪が兜から覗いている女性士官は必死にボートを漕いでいる。黒兜を被った男は直立したまま隙の無い構えを見せていた。

 

「よう、時間通りじゃないか」

 

 キールが黒兜の男に声を掛けると、口元しか露出していない兜の男は黙ってニヤリと笑った。

 

「それで、上手く行きそうか?」

「陛下は身代金を払う事を決意なされたようだ」

 

 キールが尋ねると、黒兜の男は落ち着いた声でそう答えた。思わず喜びの声を上げようとするジョゼットの口を、キールは慌てて押えた。人気が無いとは言え、宿の人間に聞かれてしまう可能性がある。

 

「王国軍の動きはどうだ?」

「今のところ、お前達のアジトを突き止めた様子は無い。だが遊撃士が数名、お前達のアジトの近くに来ていたようだ。油断しない事だな」

 

 再びキールに尋ねられた黒兜の男はそう言って口角を上げた。その遊撃士と言うのはもしや自分達の事ではないかとシェラザードとアスカとヨシュアは考えた。しかし霧降り峡谷に空賊のアジトがあるにしても、濃い霧のため探すのは難しい。

 

「シェラ姉、突入して一気にケリをつけようか?」

 

 エステルは持っていた棒を握りながらシェラザードにそう尋ねた。ここでキールとジョゼットを捕まえてアジトの場所を吐かせるのも手だが、また逃げられたらどうしようもない。

 

「それよりも、あの二人がここに来たって事は、近くに空賊艇があるって事じゃない。それを押えてしまえば空を飛んで逃げられないはずよ」

 

 アスカはそのエステルの意見に異議を唱えた。空賊艇を押えるならばキールとジョゼットが黒兜の男と話している間に動かなければならない。

 

「ねえ、ヨシュアはどう思う?」

 

 エステルがヨシュアにそう尋ねると、ヨシュアは黒兜の男をじっと見つめて固まってしまっている。エステルがもう一度ヨシュアに声を掛けると、気が付いたヨシュアはアスカの案に賛成した。

 

「……えっと、ボクの意見は?」

 

 おずおずと遠慮しがちに手を上げたシンジに、アスカはあきれた顔でため息を吐き出した。

 

「ハァ? アンタ、アタシの意見に反対した事なんてあったっけ」

「ないけど」

 

 シンジは自信無さげにそうつぶやいてうつむいた。シェラザードはそんなやり取りを見て、まだ成長してないと、困った顔でため息をついた。

 

 

 

 

 街道に出たエステル達は、飛行艇が着陸できそうな場所を調べた。

 

「なるほど、《琥珀の塔》か。街道から外れて人が寄り付かない場所だから、潜伏場所としてはうってつけね」

 

 シェラザードは空賊の飛行艇を見て感心したようにつぶやいた。木登りが得意なエステルは街道沿いの木に登り、遠目から飛行艇を発見した。その早さにはシェラザードも驚くほどだった。飛行艇の周りには空賊の男達の姿も見える。

 飛行艇の方にも見張りが居ると予想はしていた。キールとジョゼットが戻る前に制圧してしまうべきか、と物陰に隠れて様子をうかがっているエステル達は考えた。

 

「キミたち、ボクにいい考えがあるよ」

「オ、オリビ……」

 

 突然後ろから声を掛けられたエステルが驚きの声を上げようとすると、ヨシュアが後ろからエステルを抱き寄せて口を押えた。不思議そうな顔をしてシンジが尋ねる。

 

「大丈夫ですか……?」

「胃の中の物をすべて吐き出して、冷たい水を被ったらスッキリしたよ」

 

 オリビエは髪をかき上げてそう答えた。もうエステル達はあきれるしかなかった。

 

「こんな面白い事、黙って見ていられないからね」

「ウォッカ樽を一気飲みさせておけばよかったかしらね」

 

 シェラザードは腕組みをしながらため息をついた。

 

「それは確実に死んでしまうよ」

 

 オリビエはげんなりとした顔でそうぼやいた。

 

「それで、アンタの考えって何なの?」

 

 これ以上余計な話をしている暇はない。アスカは苛立った口調でオリビエに尋ねた。するとオリビエは胸を張って自分の考えを披露する。

 

「ここを制圧して、あの兄妹を捕まえたとしても、アジトの場所について口を割らない可能性がある。それどころか、足手まといだと切り捨てられるかもしれない」

「それは解かっているわ。だから何かいい考えがあるか聞いているの」

 

 シェラザードは真剣な眼差しでそう尋ねた。

 オリビエの作戦とは……こっそりと空賊艇に忍び込んで、の船倉の荷物の影に隠れる事だった。

 

「シンジ、アタシに固い物を当てないでよ!」

「仕方ないだろ、狭いんだから!」

 

 六人で船倉スペースに隠れるのには無理がある。アスカとシンジは身体を密着せざるを得なかった。なんとかエステル達は見つかる事無く空賊艇はアジトに向かって飛び立って行った……。

 

 

 

 

 アジトに着陸した空賊艇からキールとジョゼット、空賊の男達がバラバラと出て来た。空賊の男達はこの狭苦しいアジトでの生活に不満を持っているようだ。お互いに愚痴をこぼし合っていた。

 

「はあ……ここに来てから昼夜逆転の生活。ドルン兄貴も人使いが荒いから休ませて欲しいぜ」

「たっぷり休ませてあげるわ」

 

 少女の声がした方を空賊の男達が見ると、そこには武器を構えたエステル達が居た。空賊の男二人組は驚いた顔で固まってしまった。

 

「遅いっ!」

 

 棒を構えたアスカはそう言ってエステルとタイミングを合わせて空賊の男に突撃した!あっという間に伸されてしまう空賊の男達。侵入者の通報をさせる暇は無かった。

 

「今回もあんたに感謝しなくちゃいけないわね」

「フッ、ハーケン門の件、気が付いてくれていたんだね」

 

 エステル達はハーケン門でモルガン将軍から聞き出せなかった軍の調査状況を教えてもらった恩がオリビエにある。シェラザードにお礼を言われたオリビエはまんざらでもない様子だった。

 

「でも、隠れている所を見つけられたらどうするつもりだったんですか?」

 

 シンジは不安そうな顔でそう質問をつぶやいた。

 

「その場合は空賊艇を制圧してしまえば良かったのさ。そうでしょう、オリビエさん?」

 

 オリビエの代わりにヨシュアがそう答えた。聞かれたオリビエは不思議そうな顔をしてヨシュアに返した。

 

「えっ?」

「えっ?」

 

 ヨシュアも驚いた顔をして声を上げた。まあ結果オーライよ、とシェラザードは笑顔でつぶやいた。予想通りこのアジトがあるのは《霧降り峡谷》のようだった。外は濃い白い霧で覆われている。アジトが特殊な場所にあると言う推測も当たったらしい。今となっては役に立つ情報ではないが。

 人質の救出を最優先、空賊達を制圧してカシウスの行方を突き止める。方針が固まったところでエステル達は行動を開始した。空賊団のアジトは迷路のようになっていた。空賊達は偶然見つけた古代遺跡をアジトとして使っているのだろう。

 エステル達は空賊団が奪ったものの中に指輪を発見した。おそらく南街区の強盗事件で奪われた指輪だ。しばらく進むと中から男達の声が聞こえる部屋があった。エステル達が部屋に突入すると、ベッドで寝ていた空賊、くつろいで酒を飲んでいた空賊達はあわてて武器を手に取った!

 部屋の中に居た空賊達は十人、シェラザードはエアリアルの魔法、アスカはヒートウエイブの範囲魔法で応戦するがエステル達は手傷を負った。戦った後、シンジはエステル達はもちろん、重傷を負わせてしまった空賊達の治療に大忙しだった。

 

「人質はどこに居るの? 喋らないと痛ーい目に遭うわよ」

 

 シェラザードは嬉しそうな笑いを浮かべると、空賊の男に向かって鞭を振り下ろした。男は悲鳴を上げて後ろにさがる。

 

「ふふふふふ、手加減しているから、そう簡単に気絶出来ないわよ?」

「この下の階ですっ!」

 

 恐れをなした空賊の男は口を割った。しかしシェラザードはまだ満足がいかない様子で鞭を構えたまま空賊の男ににじ寄った。

 

「キールとジョゼット、それにあんたたちのボスはどこに居るの?」

「それは口が裂けても言えねえぞ!」

「ふーん、自分達の仲間は売れないか。許してあげるわ」

 

 シェラザードが鞭を思い切り振り下ろすと、吹っ飛んだ空賊の男は後頭部を背後にあった二段ベッドにぶつけて気絶した。

 

「相変わらず容赦ないわね」

 

 エステルは鞭をノリノリで構えているシェラザードを見てため息をつくのだった。

 

 

 

 

 空賊達のアジトを捜索しているうちに、エステル達は珍しいものを見つけた。それは導力式の掃除機だった。この世界にも掃除機はあるのか、と箒と塵取り、はたきで掃除をしていたシンジは関心を持った。

 その掃除機の中に、黒いノートが挟まっていた。

 

「これは、二重帳簿ね」

 

 ノートをペラペラとめくって中を確認したアスカがそうつぶやいた。

 

「何かの犯罪の証拠になるかもしれないわね、取っておきなさい」

 

 シェラザードに言われたシンジはその黒いノートを鞄にしまった。空賊のアジトを進むとまたもや空賊の男達の声が聞こえる部屋を見つけた。そこはやはり空賊達の休憩室だった。エステル達は降伏勧告をするが、数に勝っている空賊達は襲い掛かって来た!

 エステル達が空賊たちと戦いを繰り広げる激しい物音は、その奥の部屋に居た人質となった定期船の乗客たちにも聞こえていた。空賊同士の仲間割れが起こったのかとざわつく室内。

 ドアが勢い良く開かれ、姿を現したのはエステル達だった。胸の遊撃士の紋章をつけたエステル達の姿に、乗客たちは驚いて言葉が出なかった。

 

「私たちは遊撃士よ。あなたたちを助けに来たわ!」

 

 シェラザードがそう宣言すると、乗客たちは歓声を上げた。しかしエステルは室内を見回して不思議そうな顔になる。

 

「人質になった人は全員ここに居るの?」

「ああ、そうだが」

 

 定期船の船長らしい男性も不思議そうな顔でそう答えた。

 

「カシウス・ブライトと言う人は乗って居ませんでしたか?」

 

 ヨシュアが尋ねると船長は渋い顔をした。

 

「この娘はエステル・ブライト、カシウスさんの娘なの」

 

 アスカがそう説明すると、船長は重い口を開いた。

 

「娘さんになら話してもいいだろう……遊撃士のようだし。カシウス・ブライトさんは、ボース到着後、この《リンデ号》が空賊に襲われる前に定期船を下船していたんだよ」

「あんですって~!?」

 

 船長の話を聞いたエステルは部屋中に響くほどの大きな驚きの声を上げた。シェラザードは真剣な表情になって船長に尋ねた。

 

「でも乗客名簿には名前が載っていたはずだけど?」

「カシウスさんに自分が定期船を降りた事は秘密にして欲しいと頼まれたんだ」

 

 船長がそう答えると、アスカは拳を握り締めながら叫んだ。

 

「あの髭親父、余計な心配させやがってーっ!」

「まあこれで疑問は解けたわね」

 

 シェラザードは腕組みをしながらホッとした表情で息を吐き出した。

 

「それなら父さんは、今一体何をしているのよ! これだけの騒ぎになっているのに顔も出さないなんて!」

「落ち着いてエステル。今はここに居る人たちの安全を確保する方が大事だよ」

 

 カシウスに当たり散らす様に叫ぶエステルをヨシュアが抑え込んだ。シェラザードはこれから空賊のボスを倒しに行くので、飛行船の乗員のみんなはこの部屋で待機するようにと指示した。

 

 

 

 

 エステル達が階段を下りて空賊のアジトをさらに進むと、突き当りの部屋から聞き覚えのある声が聞こえて来た。キールとジョゼットが居ると言う事は、ここが空賊団のボスの部屋に違いない。

 部屋の中ではキールとジョゼットが声の太い大男と言い争いをしているようだった。身代金が手に入ったら人質を皆殺しにするなどと言う物騒な話に、エステル達は闘志を燃やして部屋の中に踏み込んだ。ジョゼットは驚いてエステル達に問い掛ける。

 

「な、なんであんたたちがここに居るんだよ!」

「《琥珀の塔》の前に止めてあった飛行艇にこっそり乗り込んだのよ。いわゆる密航ってヤツ?」

 

 エステルが自慢気な笑顔で言い放つと、ジョゼットは怒った顔で言い返す。

 

「何を偉そうに言ってるんだよ、この能天気オンナ!」

「うるさいわね、この生意気ボクっ子!!」

 

 負けじとエステルが言い返すと、ジョゼットは頭に血がのぼってさらに言い返した。

 

「単純オンナ、暴力オンナ!」

「あ、あんですって~!?」

「口喧嘩そのくらいにしなよ」

 

 シンジが口を挟むと、エステルとジョゼットはシンジをにらみつけた。どうしてこんな損な役割なのかとシンジはため息を吐き出した。

 

「残るは、あなたたちだけです。降伏した方が身のためですよ?」

 

 ヨシュアが勧告すると、キールとジョゼットは悔しそうに歯を食いしばった。

 

「手前ら、何やってやがる! こいつらをぶっ殺せばそれで済む話じゃないか」

 

 太い声であごひげを生やした、水色髪の大男は椅子から立ち上がると、テーブルの上に乗って大きな笑い声を上げた。

 

「がはは、その程度の人数でこのドルン・カプアを捕まえに来るとはな!」

 

 ドルンは脇に導力砲を抱えていた、そして先制攻撃とばかりにエステルに向かって砲弾を発射した!

 エステルが立っていた場所の壁が砲弾の衝撃で崩れ落ちた!

 

「エステル!? エステル、どこに居るんだ、返事をしてくれ!」

 

 土煙をあげて崩れ落ちた壁の瓦礫の山を見て、取り乱したヨシュアは必死に呼びかけた。敵であるはずのキールとジョゼットも驚いて息を飲んだ。

 

「ヨシュア、落ち着きなさい! 敵は目の前に居るのよ!」

 

 シェラザードがヨシュアを落ち着かせようと肩に手を乗せた。いつも冷静だったヨシュアがこんなに乱れるのはアスカとシンジも見たことが無い。アスカとシンジも浮足立ってまともに戦う事は出来なかった。

 

「ちっ、こうなったらあたしがやるしかない!」

 

 シェラザードは何とか心を落ち着けて風属性の魔法エアリアルを発動させて、キールとジョゼットから武器を奪う。ドルンの暴挙に動揺して戦えなかったのはこの二人も同じだったのだ。

 

「さあ、残るはあなた一人よ、ドルン・カプア!」

 

 鞭を構えたシェラザードはそう宣言する。キールとジョゼットは膝を折り、戦う気力は無い。室内で放たれる導力砲は厄介だが、散開していれば被害は少ない。しかしその陣形が裏目に出た。

 

「おっと、こいつの頭をぶっ飛ばされたくなかったら武器を降ろすんだな!」

 

 ドルンはその怪力でアスカの身体をつかんで抱き寄せると、導力砲の砲身をアスカの頭に突き付けたのだった。

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