アスカとシンジは、空の軌跡の世界で本当の幸せを見つけた ~アスカ・ブライト!~   作:朝陽晴空

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第二十話 アスカもマジギレ!? ワガママ公爵!

 

 倉庫街で十人の男達に囲まれてしまったエステル達。嫌らしそうな目でエステル、アスカ、クローゼを見る男達から守ろうと、ヨシュアとシンジは勇気を振り絞って立ち向かった。

 多勢に無勢、ヨシュアとシンジが男達によって叩きのめされ、悲鳴を上げるエステルとアスカとクローゼは倉庫に連れ込まれる……。嫌な想像がエステルたちの頭をよぎった。

 

「お前達、何をしているんだ!」

 

 青年の声が、にらみ合いの続く倉庫街に響き渡った。声を発した青年が近づいて来ると、エステルたちを取り囲んでいた男達は顔を歪めた。

 

「君達、いい歳をして恥ずかしいと思わないのかね!」

 

 青年が堂々とした口調でそう言い放つと、リーダー格の男は負けじとにらみ返した。

 

「うるせえ、市長の腰巾着が口出しすんじゃねえ!」

「私の事を呼んだかな?」

 

 威厳のある声と共に現れた品格のある壮年の男性は、クローゼの話によるとルーアン市長ダルモア氏らしい。青年の方は秘書のギルバード。市長の姿を見た男達は動揺してお互いに顔を合わせてヒソヒソと話し始めた。市長に傷の一つでも付けたら王国軍が動くだろう。謝るだけでは済まない。

 

「今日の所は見逃してやる!」

「待ってくださいよ、兄貴~!」

 

 陳腐な捨て台詞を残して、エステルたちを取り囲んでいた十人の男達は走り去って行った。ダルモア市長は余裕を持った表情でエステルたちに話し掛けた。

 

「街の者が迷惑を掛けて申し訳ない。私はルーアン市の市長を務めているダルモアという。こちらは、私の秘書のギルバード君だ」

 

 ダルモア市長に紹介されたギルバードは爽やかな笑顔をエステルたちに向けた。

 

「その胸の紋章からすると、君たちは遊撃士だね? よろしく頼むよ」

 

 エステルたちが自己紹介をすると、ダルモア市長は有望な新人が来たら遊撃士協会の受付のジャン君は喜ぶだろうと話した。

 

「有望かどうかは判らないけど……」

 

 エステルは照れくさそうな表情でダルモア市長に答えた。ダルモア市長はクローゼの姿に気が付くと不思議そうな顔で尋ねる。

 

「そちらのお嬢さんは王立学園の生徒のようだね」

「はい、お初にお目にかかります、二年生のクローゼ・リンツと申します」

 

 クローゼがかしこまってあいさつをすると、ダルモア市長は穏やかに微笑んだ。

 

「王立学園のコリンズ学園長とは親しくさせてもらっているよ。そう言えば、ギルバード君も王立学園のOBだったね」

 

 ダルモア市長の言葉にギルバードはうなずいた。君の様な優秀な後輩がいてくれると鼻が高いとギルバードが言うと、クローゼは照れくさそうにはにかんだ。

 

「今度の学園祭、期待しているよ」

「はい、頑張ります」

 

 ダルモア市長に声を掛けられたクローゼは明るい笑顔で答えた。

 

「それでは失礼するよ。先ほどの連中が手を出して来たら私の所に報せてくれたまえ、ルーアン市長として厳粛に対処しよう」

 

 そう言ってダルモア市長はギルバードと共に去って行った。貫禄があるダルモア市長を見送ったエステルたちは感心してため息をついた。ダルモア市長とギルバードが来てくれなかったら今頃自分たちはどうなっていたか分からない。その意味でももう一度エステルたちは大きな安堵のため息を吐き出すのだった。

 

 

 

 

 倉庫街でトラブルに巻き込まれたエステルたちがルーアン支部の遊撃士協会に戻ると、受付には眼鏡を掛けた青年が立っていた。

 

「いらっしゃい、遊撃士協会へ! おや、クローゼ君じゃないか」

 

 青年はエステルたちの中にクローゼの姿を見つけた青年は声を掛けた。

 

「こんにちは、ジャンさん」

 

 クローゼは青年に対してあいさつを返した。受付に居る青年がジャンのようだ。クローゼは学園長の依頼を遊撃士協会に伝えに来るうちにジャンと知り合いになった。

 

「あれ、君と一緒に居るのは準遊撃士の……」

 

 エステルたちの紋章に気が付いたジャンは不思議そうな顔になった。エステルたちが自己紹介をすると、ジャンは嬉しそうな顔で歓迎の気持ちを示した。ボース支部のルグラン老人からは連絡を受けていたと話した。

 

「僕の名前はジャン。君達の監督者となるから、これからよろしくな」

「うん、よろしくお願いね、ジャンさん!」

 

 エステルは元気にジャンに答えた。そんなエステルの返事にジャンは目を細める。

 

「君達には大いに期待しているよ、空賊事件では活躍したそうじゃないか」

「フン、どんな依頼も任せなさい!」

 

 ドンと胸を叩いて宣言するアスカに、シンジは不安げな視線を送った。ジャンの言葉を聞いたクローゼが驚きの表情になる。

 

「私、リベール通信の最新号で読みました。あの事件を解決したのは皆さんだったんですね」

「ボクたちは大した事はしていないよ」

 

 クローゼに尊敬の眼差しを向けられたシンジは照れくさそうに答えた。

 

「王国軍が居なかったら空賊を捕まえられなかったからね」

 

 ヨシュアも冷静にそう付け加えた。ジャンはそんなに謙遜する事は無いとエステルたちを励ましながら、直ぐにでも転属手続きをするように勧めた。急かすジャンに戸惑いながらもエステルたちは転属手続きの書類に必要事項を書き込んだ。

 

「これで君達もルーアン支部の所属となったわけだ。この忙しい時期に来てくれて助かったよ。もう逃げられないからね」

 

 眼鏡の奥で目を細めて笑うジャンに、エステルたちの背中に悪寒が走った。

 

「今、王家の偉い人がこのルーアン市に来ているんだけどね……」

 

 ジャンは困った顔で話を切り出した。その表情から厄介な依頼だとシンジは直感した。アスカが大口を叩くから大変な事になるんだ、とシンジは心の中でそう思った。

 その王家の人物は‘視察’と称してルーアン市に来ているが、実際は‘観光’だろうとジャンは話した。ダルモア市長は万が一の事が起きてはいけないと、ルーアン市街の警備を強化しているらしい。

 倉庫街にはエステルたちに絡んで来たならず者が居る。ダルモア市長が目を光らせていたおかげでエステルたちは助かったのだとも言えた。エステルたちは倉庫街であった出来事についてジャンに話した。

 

「そうか、君達も倉庫区画に行ったのか。あそこは『レイヴン』と名乗っているチーマーのたまり場なのさ」

 

 ジャンの話を聞いたアスカはあきれた顔でため息を吐き出した。

 

「ふーん、カッコつけてるつもりかしら」

 

 レイヴンは昔からルーアンの街に居たが、そんなに住民達に迷惑を掛ける存在では無かったとジャンは話した。最近になって行動が過激になり、ダルモア市長が心配する気持ちも分かるが、遊撃士協会はルーアンの街だけに構っているわけにはいかない。エステルたちが来てくれて本当に助かったとジャンは言った。転属手続きを済ませたエステルたちの遊撃士としての仕事は明日からジャンジャンバリバリ始める事になった。

 

 

 

 

 エステルたちが遊撃士協会を出ると、空はすっかりと茜色に染まっていた。白い街並みが夕陽に染まる美しい光景は、エステルたちの心を奪った。鐘の音が街に鳴り響き、巨大な跳ね橋である《ラングランド大橋》が巻き上げられた。

 

「圧巻されるわね。あの跳ね橋ってどのくらい開いているの?」

「三十分ぐらいです。早朝、昼前、夕方の三回、通る船が無くなるまでです」

 

 エステルの質問にクローゼはそう答えた。クローゼは暮れなずむ街を眺めて気が付いたようにエステルたちに声を掛ける。ホテルに泊まるつもりならば早めに予約を取った方が良いとクローゼは話した。

 エステルは遊撃士協会の二階で泊まるつもりだったが、アスカはせっかく観光地に来たのだからホテルに泊まりたいと言い出した。シンジは最初アスカにワガママを言うなと毅然とした態度で対応したが、結局アスカに押し切られてしまった。

 

「いらっしゃいませ。ホテル・ブランシェへようこそ」

 

 ホテル《ブランシェ》でイケボのフロント係の男性に迎えられたエステルたちは部屋が取れるかどうか尋ねると、最上階のスイートルームなら空いているとフロント係の男性は答えた。

 

「最上階の部屋って、やっぱり高いよね?」

 

 エステルは振り返って後ろに居るヨシュアたちの顔を見回した。準遊撃士は見習いで、高額報酬の仕事を受ける事はあまりない。贅沢な生活は出来ない。アスカはガッカリとした顔でため息をついた。

 

「予約をお願いします」

 

 フロント係の男性にシンジがそう言うと、アスカは驚いた顔でシンジを見つめた。普段から財布の紐が固いシンジからは想像できなかった。

 

「ロレントの居酒屋でバイトしていた時の貯金があるから大丈夫だよ」

 

 シンジはアスカに向かってそう微笑みかけた。相変わらずシンジはアスカには甘いとエステルとヨシュアは苦笑していた。アスカは厳しい表情でシンジに詰め寄る。

 

「アンタ、そう言うお金はもっと大切な時に使うもんよ!」

 

 せっかくシンジが気を遣ったのに、このままでは逆効果になりかねない。察したフロント係の男性はシンジに助け舟を出した。

 

「通常の客室の宿泊料金と同じで構いませんよ」

「えっ、いいの?」

 

 エステルは驚いてフロント係の男性に聞き返した。

 

「遊撃士の皆様にはお世話になっておりますので、サービスさせて頂きます」

「ありがとうございます!」

 

 シンジは明るい笑顔になってフロント係の男性にお礼を言った。怒る理由を無くしたアスカも恥ずかしそうにしながらも笑顔になる。シンジはアスカの笑顔が見れて良かったと喜んだ。

 

「ふふ、皆さん良かったですね」

 

 クローゼも嬉しそうなシンジたちの姿を見て穏やかに微笑んだ。クローゼが学園に帰るとエステルたちに話すと、学園までクローゼを送り届けようかという話になった。

 

「大丈夫です、通い慣れていますから」

 

 クローゼはエステルたちの申し出に対してそう答えた。クローゼは学園からマノリア村まで来れるのだから心配は要らないのかもしれないとエステルたちも納得した。

 

 

 

 

 クローゼを見送るため、エステルたちは一旦ホテルの外に出た。

 

「今日はありがとうございました」

「お礼を言うのはこっちの方よ」

 

 頭を下げるクローゼにエステルは照れながらそう言った。

 

「いろいろ案内してくれてありがとう」

「私の方こそ、皆さんを危険に巻き込んでしまってすみません」

 

 ヨシュアが笑顔でお礼を言うと、クローゼは申し訳なさそうな顔で謝った。

 

「ボクの方こそ、クローゼさんを守れなくてゴメン」

 

 ダルモア市長とギルバードが倉庫区画に来なかったら、自分はやられていただろうとシンジは苦しげな表情でクローゼに謝った。

 

「はいはい、お互いにペコペコ頭を下げるのはそこまで。辛気臭いったらありゃしない」

 

 見かねたアスカが割って入ると、シンジとクローゼは目を合わせて笑った。アスカは面白く無さそうな顔でそんな二人を見つめた。

 

「そうだ、皆さんも来週末にある学園祭にいらっしゃいませんか?」

「ガクエン菜?」

 

 クローゼの言葉の意味が分からず、エステルは不思議そうな顔でつぶやいた。そんなエステルを見てアスカはあきれたような顔でため息をついた。

 

「学園でやるお祭りみたいな行事の事よ」

「あら、アスカさんはご存じなんですか?」

 

 クローゼに尋ねられて、アスカは面倒な事になったと顔をしかめた。自分が異世界からやって来たと説明すると長い話になってしまう。

 

「何となくそんな感じがしただけよ」

「そうですか……」

 

 アスカがそう言うと、クローゼは納得していない様子だが、それ以上追及はして来なかった。

 

「お祭りか、楽しそうだね! 出店とかイベントとかあるの?」

 

 エステルは飛び切りの笑顔でクローゼに尋ねた。もちろんあるとクローゼが答えると、エステルは絶対に行くと約束した。

 

「遊撃士協会で、ジャンさんから忙しくなるって話を聞いたのを忘れた?」

 

 ヨシュアにそう指摘されると、エステルはガックリと肩を落とした。ヨシュアもそんなエステルを見てかわいそうだと思ったのか、あわてて笑顔を取り繕った。

 

「まあ、学園祭の当日だけなら良い息抜きになるんじゃないかな?」

「やったぁ、ヨシュア大好き!」

 

 笑顔を取り戻してヨシュアに抱き付くエステルを見て、アスカとシンジはヨシュアはエステルに甘いなと思った。そんなやり取りにクローゼは楽しそうに笑みをこぼした。

 

「それでは私はそろそろ失礼しますね」

 

 クローゼはそう言うと街道の方へと立ち去った。

 

「可憐で凛とした雰囲気を持った女の子、あたしが男だったら惚れてるわね」

 

 エステルはクローゼの姿が消えた方角を見ながらそうつぶやいた。

 

「まあ悪巧みをしている様子は無さそうだね」

「全く、あの空賊の生意気ボクっ子じゃないんだから」

 

 ヨシュアの言葉に、エステルはウンザリとした顔でぼやいた。

 

「ほら、サッサと行くわよ、最上階の良い部屋が取れたんだし!」

 

 アスカは上機嫌な様子でエステルたちを急かした。シンジも一大決心をして予約を取った甲斐があるものだ。ホテルの中へとエステルたちは戻った。

 

 

 

 

 ホテルの最上階のスイートルームに足を踏み入れたエステルは子供のようにはしゃぎながら部屋の中を見て回る。アスカはそんなエステルにため息をつきながらも部屋には大満足のようだった。

 スイートルームのバルコニーに出たエステルたちは、綺麗なルーアンの街並みを見下ろせる絶景を堪能した。陽が完全に沈んで星空が見える頃になれば更なる絶景が見えるはずだ。エステルたちが楽しみに胸を膨らませていると、部屋の中から男性の声が聞こえた。

 

「ふーむ、なかなか良い部屋ではないか、気に入ったぞ」

 

 驚いたエステルたちが部屋に戻ると、貴族風の男性と黒服の老人が立っていた。貴族風の男性は前髪を切りそろえると言う独特のヘアスタイルをしていた。白髪に眼鏡を掛けた黒服の老人は困った顔で男性に声を掛ける。

 

「閣下、この部屋は既に利用客が居るとの事、予定通り市長殿の家に滞在なされてはいかがですか」

「うるさい、フィリップ! あそこからは海が見えぬではないか!」

 

 貴族風の男性は黒服の老人に怒った顔で言い返した。そしてバルコニーに出ようとした貴族風の男性は部屋の中で立ち尽くすエステルたちの姿を見ると、驚いて声を上げた。

 

「な、なんだ貴様達は!? 曲者だ、出合え、出合え!」

「アンタこそ曲者じゃない、勝手にアタシたちの部屋に入って来て!」

 

 アスカは貴族風の男性に負けないくらいの怒りの表情でそう言い放った。

 

「アンタ呼ばわりとは失礼にも程がある。この部屋は私がルーアン視察中の滞在場所する事に決めた。とっとと出て行け!」

 

 貴族風の男がそう言い放って部屋の出口を指差すと、アスカも口を大きく開いて怒鳴り返す。

 

「アンタバカァ!? 出て行くのはそっちじゃない、カボチャ頭!」

 

 アスカは貴族風の男性の頭を指差した。貴族風の男性の男性は自分の自慢の髪型をバカにされた事で更に怒りのボルテージが上がった。

 

「これだから無知な庶民は嫌いなのだ、この私が誰か判らずにそのような無礼な口を利くとはな!」

「変なオジサンでしょう!?」

 

 ヒートアップするアスカと貴族風の男性のにらみ合いを、シンジは不安そうに見つめていた。遊撃士が民間人に手を出したなんて事はあってはならない。

 

「この紋章が目に入らぬか! 私の名はデュナン・フォン・アウスレーゼ! リベール王国元首、アリシア二世陛下の甥にして、公爵位を授けられし者である! 頭が高い!」

 

 貴族風の男性がそう言ってリベール王家の紋章が描かれたスカーフを突き付けると、エステルたちはポカンとして口を開いた。

 

「驚きのあまり声も出ない様だな」

 

 勝ち誇ったように鼻を鳴らすデュナン公爵。

 

「あはははははは!」

 

 エステルはお腹を抱えて大声で笑い出した。ヨシュアやシンジ、アスカにも笑いは伝染し四人は目に涙を浮かべるほど笑った。

 

「オジサン、そのギャグ面白い、メチャクチャウケる! よりによって女王様の甥だなんて!」

「エステル、この人は天才コメディアンだよ」

 

 ヨシュアも笑いながらエステルに声を掛けた。四人のバカにした態度に、デュナン公爵は歯を食いしばるほどの怒りを覚えていた。

 

「誠に申し訳ございませんが、閣下の仰せられた事は本当です」

 

 真面目な顔をした黒服の老人がエステルたちに告げると、エステルたちの笑いは止まった。

 

「わたくし、公爵閣下のお世話をさせて頂いております、フィリップと申します」

「は、はあ」

 

 エステルは困った顔でそう答えた。

 

「こちらにおわすデュナン公爵は、正真正銘、陛下の甥御でございます」

 

 フィリップという人物は信用できると判断したエステルたちは、遊撃士協会で聞いたジャンの話を思い出した。「王家の人物がルーアン市に視察に来ている」と言っていた。

 

「ふはは、参ったか。次期国王となるこの私の命令だ、部屋を私に譲れ!」

 

 そう言ってデュナン公爵は高笑いをしたが、アスカは怒った顔になって言い返す。

 

「ふざけんじゃないわよ! いくら王族だからってね、そんな横暴、許されると思ってんの!」

 

 ヤバい、アスカの手が出てしまうと危険を察知したシンジはアスカを止めようとした。しかしシンジよりも先にアスカの腕をつかんだのは執事のフィリップだった。

 

「お嬢様、しばしお待ちくださいませ! ……閣下はそうと決めればテコでも動かない御方……どうか……どうか……お願いいたします……」

 

 フィリップが土下座をして何度も頭を下げるのを見て、アスカの怒りもしぼんでしまった。

 

「フン、仕方ないわね。執事さんに免じて部屋を譲ってあげるわ」

「ありがとうございます、ありがとうございます」

 

 フィリップは深く何度も頭を下げてエステルたちに頭を下げた。

 

「まだアタシたちには豪華すぎる部屋だったしね」

 

 そうつぶやくアスカの作り笑顔が少し寂しそうにシンジには見えたのだった……。

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