アスカとシンジは、空の軌跡の世界で本当の幸せを見つけた ~アスカ・ブライト!~   作:朝陽晴空

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第二十一話 テレサ院長の危機! 孤児院に舞い降りた女神!?

 

 最上階のスイートルームを追い出される形となってしまったエステルたちに、フロント係の男性は「本当に申し訳ございません」と謝り、宿泊料金を返した。他の部屋は埋まっていて、遊撃士協会の二階に泊まるしかないとエステルたちがロビーで話していると、見知った男性がやって来て声を掛けた。

 

「よお、新米遊撃士たちじゃないか!」

 

 その男性はリベール通信の記者、ナイアルだった。

 

「意外な所で会いましたね」

 

 不思議そうな顔でヨシュアが言うと、ナイアルは頭をかきながら答える。

 

「お前達もルーアンに来ているとは思わなかったぜ。それで、何かあったのか?」

 

 ナイアルに尋ねられたアスカは最上階の部屋であった出来事を怒りながら身振り手振りを交えて話した。

 

「ははは、それは傑作だな!」

 

 アスカの話を聞いたナイアルは愉快そうに笑った。

 

「アンタねぇ、笑い事じゃないのよ!」

 

 頬を膨れさせたアスカがナイアルにそう言うと、事情を聞いたナイアルはエステルたちに自分が予約した部屋を譲ると話した。

 

「えっ、いいの?」

 

 驚いたエステルが尋ねると、ナイアルはニヤリと笑ってうなずいた。あの顔は何かネタを要求するような表情だとエステルたちにも判った。ナイアルが予約を取った部屋は地下の奥にあるらしい。

 

「本日はサービスさせて頂くつもりが、このような事になって済みません」

 

 フロント係の男性はお詫びの印として、食事の時はドリンクを無料サービスすると話した。エステルたちはフロント係の男性にお礼を言ってホテルの地下へと向かった。

 エステルたちが部屋に着くと、ナイアルはこの前の空賊事件を載せたリベール通信が大きな売り上げだったと話した。特にリシャール大佐の情報部の活躍を取り上げた記事は大きな反響があったらしい。

 リシャール大佐は空賊事件解決の功績が認められ、国王陛下から勲章を授与されたようだ。記事のおかげでボーナスも出たし、ドロシーのお守りからも解放されたとナイアルは大喜びだった。

 

「でもドロシーさんって、一人にしておいて大丈夫ですか?」

 

 シンジが心配そうな顔でナイアルに尋ねると、ナイアルは深いため息をついた。

 

「それを言うな、考えないようにしてるからな……」

 

 ナイアルはボーナスを使ってバカンスを満喫していると話したが、ヨシュアは疑り深い目でナイアルを見つめた。

 

「バカンスだと言いながら、スクープを追っているわけですね?」

 

 ヨシュアに尋ねられたナイアルは、頭をかきながらため息を吐き出す。

 

「相変わらず鋭い小僧だな。夕飯もおごってやるから、話を聞かせてもらおうか」

 

 エステルたちはナイアルとホテルのバーで夕食を取った後、酔い潰れてしまったナイアルをホテルの部屋まで連れて行き、エキストラベッドを部屋に入れてもらって眠りに就くのだった。

 

 

 

 

 その日の夜、子供たちが寝静まったマーシア孤児院では、テレサ院長が自分の部屋で子供たちの破れた服を縫い直していた。

 

「繕いものが多いのは、子供たちが元気だからかしら……」

 

 裁縫に区切りがついたテレサ院長は、女神エイドスに子供たちの加護を祈って眠りに就こうとした。その時、外から物音と油の匂いがしてくるのに気が付いたテレサ院長は、ハッとした表情になって窓の外を見ると……火柱が上がっているのが見えた。

 

「みんな、起きなさい!」

 

 子供たちが眠っている部屋にテレサ院長は駆け込んだ。クラムが寝ぼけ眼で起き上がると、テレサ院長は他の子供たちを起こそうと再度大きな声で呼びかけた。

 

「先生、どうしたんだよ……」

「火事です!」

 

 クラムの質問にテレサ院長が切羽詰まった表情で答えると、子供たちも事の重大さを理解したのか、あわてて飛び起きた。子供部屋のある二階からテレサ院長と子供たちが階段を降りると、一階は火の海になっていた。

 

「みんな、急いで出口へ!」

 

 走り出したテレサ院長たちの目の前に、焼け崩れた天井の木材が落ちて来て、出口を塞いでしまった!

 

「そんな……ああ、女神エイドスよ、どうかこの子たちの命をお助け下さい……!」

 

 女神に必死に祈りを捧げるテレサ院長。子供たちも不安そうにテレサ院長にすがり付く。周りを炎に包まれ、もうダメかと覚悟した時、信じられないことが起こった。出口を塞いでいた燃え盛る木材が吹き飛んだのだ。

 そこには月の明かりに照らされた水色の髪の少女が立っていた。テレサ院長が見たことも無い不思議な服を着た少女は、子供たちの方を見て穏やかに微笑んだ。その少女が起こした奇跡とその少女の神秘的な姿を見て、テレサ院長は思わずつぶやいた。

 

「女神エイドス様……」

 

 

 

 

 次の日の朝、二日酔いになったナイアルは痛む頭を手で押さえながら取材に向かうと言ってルーアンの街へと姿を消した。エステルたちも遊撃士協会へと向かう。ジャンはどんな依頼を押し付けて来るのか、期待と不安が入り混じった気持ちで遊撃士協会へと足を踏み入れた。

 

「ジャンさん、おっはよー!」

 

 元気良くあいさつをするエステルに、ジャンも笑顔で応えた。

 

「さあて、君達にはどんな仕事をお願いしようかな」

 

 眼鏡の奥で目を細めたジャンは書類をペラペラとめくって行く。厄介な仕事になりませんようにとエステルたちが祈っていると、受付にある通信機の呼び出し音が鳴った。

 

「はい、こちら遊撃士協会……」

 

 ジャンが話している相手は、マノリア村の宿屋の主人のようだった。最初は冗談混じりに言葉を交わしていたが、話をしているうちに、ジャンの表情が深刻なものに変わって行く。エステルたちは不思議そうな顔でジャンの様子を見つめていた。

 

「何か事件でもあったの?」

 

 アスカが尋ねると、ジャンは深刻な顔で答える。

 

「事件か事故かは判らないんだが……昨日の夜、マーシア孤児院が火事になったそうだ」

 

 ジャンの言葉を聞いたエステルたちは血の気が引いたような顔になった。

 

「うそ……そんなの冗談よね?」

「マノリア村の宿屋の主人がわざわざ連絡して来たんだ、間違いない」

 

 エステルがつぶやくと、ジャンは真剣な顔で否定した。マーシア孤児院を知っているのかとジャンに尋ねられたエステルは首を縦に振った。

 

「院長先生と、子供たちは無事なんですか?」

 

 ヨシュアが深刻な顔で質問すると、ジャンは悲しそうな顔で、安否確認は取れていないと答えた。ジャンはエステルたちにマーシア孤児院の事件の調査を依頼すると話すと、エステルたちは真剣な表情で引き受けるのだった。

 

 ◆マーシア孤児院の調査◆

 

 【依頼者】遊撃士協会

 【報 酬】???? Mira

 【制 限】緊急要請

 

 ★マーシア孤児院で火災があったそうだ。調査しないと。

 

 

 

 

 エステルたちがマーシア孤児院にたどり着くと、目に飛び込んで来たのは無残にも焼け落ちてしまった孤児院の建物だった。あまりの酷さにエステルたちは悲しそうな顔で目を伏せる。

 

「もしかして君たちは遊撃士かい?」

 

 エステルたちは瓦礫の片付けをしていたマノリア村の人々に声を掛けられた。昨日の夜、孤児院から火の手が上がるのを村人は目撃したのだと話した。

 

「院長先生と子供たちは!?」

「大丈夫、みんな無事だよ」

 

 アスカの質問に村人が答えると、エステルたちはホッと息をもらした。テレサ院長と孤児院の子供たちはマノリア村の宿屋に居るらしい。火事による怪我もなかったようだ。

 村人たちは瓦礫の片付けを続けると話したが、ヨシュアはそれに待ったをかけた。不思議に思った村人が尋ねると、ヨシュアは事件現場を片付けるのは自分たちの調査が終わってからにして欲しいと頼んだ。

 村人たちはヨシュアの頼みを聞き入れ、しばらく休憩を取る事にした。ヨシュアはこの場所を見た時から、火事にしてはおかしな点が多すぎると感じたとエステルたちに話した。

 エステルたちは孤児院の現場検証を開始した。植えられていたハーブは根元から乱暴に引き抜かれていた。花壇が荒らされた板。暖炉に使う薪が散らかっていた。食料品が入った樽や、ミルクタンクは倒されて中が空になっていた。

 

「えっ……これってどういう事?」

 

 孤児院の入口を調べたアスカは驚きの声を上げた。焼き焦げた木材の一部が、爆発でもあったかのように粉々に砕けていたのだ。しかし、爆弾の残骸らしい火薬類は辺りに見当たらない。火薬を使わない爆弾なんてあるのだろうか。ヨシュアもその疑問に答えることが出来ず、この件は保留となった。

 石壁がひどく崩れ落ちている場所が火事の火元だと思われた。エステルたちは鼻を突くような匂いがする事に気が付いた。一通り調べ終わったエステルたちは調査の結果を整理してみる事にした。

 

「火は室内ではなく屋外から広まった、これがどういう意味か分かるかい?」

 

 ヨシュアは真剣な表情でエステルたちに尋ねた。

 

 ※ここから事件に関する三択クイズになります。正解すれば遊撃士としての評価が上がるので挑戦してみてください。

 

 ◆三択クイズ◆

 

 Q.火事の原因は?

 

 【山火事】

 【放火】

 【オーブメント機器の発熱】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん、僕もそう思う。この辺りでは可燃性の高い油のにおいがする」

 

 エステルたちの答えを聞いたヨシュアはしっかりとうなずいた。シンジとアスカはヨシュアに指摘されて、ガソリンの匂いだとはっきりと気が付いた。この世界でも導力革命の前は石炭や石油を燃料として使っていたのだ。

 

「さらに火事とは関係無いハーブ畑まで荒らされているとなると、人為的なものを感じるよ」

 

 ヨシュアがさらに自分の推理を話していると、聞き覚えのある凛とした声が響いた。

 

「……それは本当の話ですか……?」

 

 エステルたちが声のした方を見ると、そこには悲痛な表情を浮かべたクローゼが立っていた。

 

「どうして……誰が……こんなひどい事を……どうして……こんな……酷い事ができるんですか!?」

 

 クローゼは目に涙を浮かべながら、大きな声で叫んだ。クローゼがこんなに取り乱す姿を見たのは初めての事だった。

 

「……信じられないよね、こんな事をする人がいるなんて……」

 

 エステルも悲しそうな顔で、クローゼの手を優しく握った。

 

「エステルさん……」

 

 不安そうな表情のクローゼに、エステルが優しく微笑む。

 

「でも院長先生と子供たちは無事だって聞いたから、もう安心していいからね」

「……ありがとうございます、少し落ち着きました」

 

 クローゼは息を吐き出すと、手を握るエステルにお礼を言った。クローゼの話によると、朝の授業中に孤児院で火事が起きたと知らせを受けたらしい。ここに来るまで心臓が止まる思いだったとクローゼが言うと、エステルはもう一度クローゼを握る手に力を込めた。

 現場調査を終えたエステルたちは、クローゼと一緒にマノリア村に居るマーシア孤児院の子供たちに会いに行く事にした。エステルとアスカを先頭に、中心に居るシンジとクローゼを守り、後方をヨシュアが警戒する陣形で街道を進む。シンジは距離の近くなったクローゼに声を掛けて励ましているようだったが、全力疾走するアスカには会話の内容まで聞き取る余裕は無かった。

 

 

 

 

 マノリア村の宿屋に到着したエステルたちは、息せき切ってテレサ院長や子供たちの居る二階の客室へと駆け付けた。テレサ院長と子供たちの姿を見たクローゼは息を飲んだ。クローゼの姿に気が付いた子供たちが駆け寄る。

 

「みんな、大丈夫? 怪我は無い?」

 

 子供たちが元気に大丈夫だと答えると、クローゼは笑みを浮かべた。

 

「クローゼ、来てくれたのね。エステルさんとヨシュアさん、アスカさんとシンジさんも一緒に来てくださってありがとう」

 

 テレサ院長は穏やかな笑みを浮かべてエステルたちに声を掛けた。エステルたちは遊撃士協会から連絡を受けて、火事の調査をしていると話した。

 

「姉ちゃん、何かわかったのか?」

 

 クラムに聞かれたエステルたちは困った表情で顔を見合わせた。子供たちに聞かせたくない話の内容だ。そんな雰囲気を察したテレサ院長は、クローゼに子供たちと下の食堂で何か甘い物でも食べて来るように話した。

 クラムは渋っていたが、クローゼに強く誘われて一緒に部屋を出て行った。子供たちの姿が部屋から消えると、エステルたちは安堵の息をもらす。クローゼも自分の意図を忖度してくれたのだと感じたテレサ院長は穏やかな笑みを浮かべた。

 

「調査にいらしたとおっしゃいましたね。どうぞ、何なりと聞いてください」

「ご協力ありがとうございます」

 

 エステルたちに向き直ったテレサ院長に、ヨシュアはお礼を言ってから話に入った。火災現場を調査したところ、放火の可能性が高いとヨシュアが話すと、予想していたのかテレサ院長は驚きもせずに聞いていた。

 犯人に心当たりはないかとヨシュアに尋ねられたテレサ院長は、見当もつかないと悲しそうな顔で答えた。強盗が入るほどお金には余裕は無い、恨みを買った覚えも全く思い浮かばないと話した。

 

「金銭目的や怨恨の線は薄いわね」

 

 テレサ院長の話を聞いたアスカは考え込むような顔でそうつぶやいた。

 

「そうなると、愉快犯の可能性が強いです」

 

 ヨシュアは真剣な表情でテレサ院長に告げた。何か変わった事は無かったと尋ねられたテレサ院長は、多分無関係だろうと前置きした上で話し始めた。

 炎に包まれた孤児院から脱失しようとした時、天井の梁が焼け落ちて来て入口が塞がれてしまい出られなくなった。その時、信じられない事に水色の髪の少女が天井の梁の残骸を吹き飛ばし、助けてくれたのだと話した。その少女は見た事も無い服を着ていて、月明かりに照らされた穏やかな笑顔は女神エイドス様のように見えたと。

 その少女はテレサ院長と子供たちの無事を確認すると、村人たちが来る前に立ち去ってしまったらしい。アスカとシンジは少女の特徴を聞いて思わず目を合わせた。しかし二人は浮かんだその考えに確信を持てなかった。自分たちが知っているその‘少女’は瓦礫を粉砕する力など持っていないはずだ。だから二人は口を噤んで話さなかった。

 

「アスカもシンジもどうしたのよ、ボーッとしちゃって?」

 

 エステルに声を掛けられた二人はごまかし笑いを浮かべた。自分で放火して助けるマッチポンプの様な事を孤児院にしても犯人にメリットがあるとは思えない。エステルたちはその少女を犯人候補から一旦外す事にした。

 エステルたちが話を続けていると、クローゼが部屋に戻って来た。孤児院の子供たちは下の食堂でケーキを食べているらしい。

 

「先生、お客様をお連れしました」

 

 クローゼがそう言うと、部屋に入って来たのはダルモア市長と秘書のギルバードだった。エステルたちは少し驚いて二人の姿を見つめた。

 

「おや、遊撃士諸君も来ていたのかね。さすがはジャン君、仕事が早くて結構な事だ」

 

 エステルたちの姿を見たダルモア市長は感心したようにつぶやいた。テレサ院長に近づいたダルモア市長は神妙な顔で、火事の知らせを聞いて飛んできたのだと話した。無事で本当に良かったと言ってダルモア市長は安堵の息をもらした。

 

「ありがとうございます、ダルモア市長。お忙しい中、訪ねてくださって恐縮です」

 

 テレサ院長は穏やかな笑みでダルモア市長にお礼を言った。これも市長の仕事だとダルモア市長は答えた。

 

「それにしても、誰だか知らないが度し難い仕業をするものだ」

 

 ダルモア市長は目を閉じて穏やかながらも憤慨する表情を見せた。

 

「ジョセフが愛していた建物が、あんなにも無残な姿になって……テレサ夫人の心痛、お察し申し上げる」

 

 続けてダルモア市長はテレサ院長に遺憾の意を伝えた。

 

「いえ、子供たちが無事ならば、あの人も喜んでいると思います。あの人の遺品が燃えてしまったのが心残りですけど……」

 

 テレサ院長の言葉を聞いて、シンジは愛する人の遺品が無くなってしまうのは悲しい事だと思った。自分の母親の遺品も父親のゲンドウによって全て処分されてしまっている。そのせいで自分は母親の顔すらハッキリと思い出せない。悲しそうなテレサ院長をシンジは同情するような視線で見つめた。クローゼも同じ気持ちでテレサ院長を見つめた。

 

「遊撃士諸君。犯人の目星はついているのかね?」

 

 ダルモア市長は真剣な表情でエステルたちに尋ねた。

 

「金銭目的や怨恨の線は薄そうです。もしかしたら愉快犯の可能性があると考えています」

 

 ヨシュアがダルモア市長にそう答えると、秘書のギルバードが口を挟んだ。

 

「市長、今回の事件、ひょっとして彼らの仕業ではないでしょうか」

 

 ギルバードの言葉を聞いたダルモア市長は硬い表情になって黙り込んだ。

 

「ねえ、アンタの言ってるヤツラって、昨日アタシたちに絡んで来たアイツらの事?」

 

 アスカが確認するように質問すると、ギルバードはしっかりとうなずいた。

 

「ああ、倉庫区画に集まっているチンピラ共だ。奴らは市長に盾突いて問題ばかり起こしているんだ。市長に迷惑を掛けて面白がっている様子だ。だから市長と仲の良い院長先生に嫌がらせをしても不思議じゃない」

 

 ギルバードがキッパリと断言すると、ダルモア市長は厳しい表情でギルバードを怒鳴りつけた。

 

「ギルバード君、憶測で罪を擦り付ける様な事を口にするのは止めたまえ。冤罪を生み出したらどうするつもりだ」

「申し訳ございません。私の考えが不足しておりました……」

 

 叱責を受けたギルバードはかしこまってダルモア市長に謝った。ダルモア市長は自分達が余計な憶測を言わなくても遊撃士であるエステルたちが犯人を見つけるだろうと話した。

 

「遊撃士諸君には期待しているよ」

「任せなさい!」

 

 アスカは堂々とダルモア市長に向かって言い放った。ダルモア市長は満足気にうなづくと、テレサ院長の方を向いて質問をした。

 

「孤児院があのようになってしまって、これからどうするおつもりですかな?」

 

 孤児院を再建するには資金が必要だ。しかしテレサ院長にはお金が無い。悲しい顔でテレサ院長は黙り込んでしまった。

 

「それなら、僕が貯金を出すよ!」

 

 たまらずそう叫んだのはシンジだった。そんなシンジに向かってアスカは怒鳴った。

 

「アンタバカァ!? 家一軒建てるのに足りる訳無いじゃない。……だからアタシもお金を出すわよ」

 

 アスカはふくれっ面を装いながらもそう言った。テレサ院長の悲しそうな顔に耐えられないのはアスカも同じだった。

 

「それならあたしも!」

 

 エステルまでもが名乗りを上げるが、ヨシュアは冷静だった。自分たちが出せるのは、当面の生活費ぐらいだ。孤児院を立て直す資材費には到底届かない。

 そんな暗い雰囲気を打ち砕くようにダルモア市長は咳払いをする。

 

「王都グランセルにダルモア家の別邸があってね、住む者も居ないので空き家同然となっている。それで提案なのだが、しばらくの間子供たちとそこで暮らしてはどうだろうか?」

「えっ?」

 

 ダルモア市長の言葉を聞いたテレサ院長は驚いた顔でダルモア市長を見た。ダルモア市長は穏やかな笑顔で話を続けた。

 

「もちろんお金を払えなどとは言わない。いつまでも滞在してくれても構わない」

「で、ですがご迷惑では……」

 

 困惑するテレサ院長に、ダルモア市長は明るい口調で笑い飛ばした。

 

「迷惑なものか、屋敷の管理をして頂ければ願ったり叶ったりだよ。もちろん、謝礼もお出しする」

 

 ダルモア市長の話を聞いたテレサ院長は困った顔で話し始める。

 

「ありがたい申し出ですけれど、いろいろな事が起こりすぎて気持ちの整理が付かなくて……少し考えさせて頂きませんか?」

 

 テレサ院長に向かってダルモア市長は真剣な表情でうなずいた。

 

「無理もない……ゆっくりとお休みなさい。今日の所はこれで失礼するよ。いつでも連絡を待っているよ」

「ありがとうございます」

 

 もう一度テレサ院長はダルモア市長にお礼を言った。ダルモア市長とギルバードが部屋を出て行った後、エステルは笑顔で感激したようにつぶやいた。

 

「凄い、市長さんってとっても太っ腹な人よね」

「元貴族だったと言うのもうなずけるね」

 

 ヨシュアもエステルの意見に同意してつぶやいた。クローゼは不安そうな表情でテレサ院長に尋ねる。

 

「テレサ先生、市長の申し出、受けるおつもりですか?」

 

 テレサ院長は考え込むような顔で目を閉じると、クローゼに尋ね返した。

 

「あなたはどうしたら良いと思いますか?」

 

 クローゼは悲しそうな顔で黙り込んでしまった。しばらくして、震える声でクローゼは話し始めた。

 

「一般論ですが、受けるのが良いと思います……」

 

 王都には行かないでくださいとクローゼは言う事が出来なかった。

 

「クローゼ、あなたは昔から聞き分けの良い子でしたね……」

 

 テレサ院長は穏やかな笑顔でそう言って、クローゼの手を優しくなでた。

 

「我慢しないでいいのよ、正直なあなたの気持ちを言ってちょうだい」

 

 テレサ院長にそう言われたクローゼは、目に涙を浮かべてしばらくの間沈黙した。

 

「あの場所が無くなってしまったら、ジョセフおじさんとテレサ先生に優しくされた思い出まで消えてしまう気がします……ごめんなさい、愚にもつかないわがまましか言えません」

 

 クローゼが謝ると、テレサ院長は首を軽く横に振って優しく話し掛けた。

 

「私も気持ちは同じです。あの場所は思い出が詰まった場所。でも今生きる事の方が言うまでも無く大切です」

「はい、そうですね……」

 

 悲しそうな顔で答えるクローゼを、エステルたちは黙って見守っていた。テレサ院長は結論は直ぐには出さない、自分たち孤児院の事よりも学園祭の準備に集中しなさいとクローゼを元気付けた。学園祭は子供たちも楽しみにしているから、とテレサ院長が話すと、クローゼはやっと笑顔を見せた。

 

「エステルさん、ヨシュアさん、アスカさん、シンジさんも、調査は大切ですが無理はなさらないでくださいね」

 

 テレサ院長はエステルたちの方に顔を向けると、穏やかな口調で声を掛けた。

 

「絶対に犯人を捕まえて、罪を償わせますから!」

 

 エステルはテレサ院長に向かって強い決意をにじませながらそう言った。

 

 

 

 

 マノリア村の宿屋を出たエステルたちは、顔を見合わせ改めて闘志を燃やしていた。遊撃士協会に戻ってジャンに調査報告をしてから捜査方針を決める事で意見は一致した。

 クローゼは宿屋を出てからずっと沈み込んだ表情をしていた。エステルはそんな雰囲気を和らげようと、クローゼに質問をした。

 

「ジョセフさんって、テレサ院長の旦那さんだったの?」

「はい、数年前にお亡くなりになりましたけど、私も随分と可愛がって貰いました」

 

 話しているうちに孤児院の思い出に心が温まったのか、クローゼは明るい笑顔になった。クローゼは孤児院出身の子供ではないが、とある事情により孤児院の世話になった事があったのだと言う。ジェニス王立学園に通う事になってから、再びマーシア孤児院を訪れるようになったとクローゼは話した。

 

「私、何とかして先生や子供たちを元気付けてあげたいんです」

 

 クローゼは凛とした表情でそう言った。エステルたちも、もちろんそのつもりだと話していると、街道の方から孤児院の子供たちのうちの一人、マリィが血相を変えて走って来た。

 

「クローゼお姉ちゃん! クラムが怖い顔をしてどこかに行っちゃったの!」

「えっ?」

 

 マリィの言葉を聞いたクローゼは驚いて息を飲んだ。マリィの話によると、ダルモア市長とギルバードが来た時、クラムは二階へと上がってしまったらしい。しばらくして降りて来たクラムは怒った顔で「絶対に許さない!」と叫んで外に飛び出して行ってしまったのだとマリィは言った。

 

 ※ここから事件に関する三択クイズになります。正解すれば遊撃士としての評価が上がるので挑戦してみてください。

 

 ◆三択クイズ◆

 

 Q.クラムが向かった先は?

 

 【孤児院を放火した犯人の所】

 【ダルモア市長とギルバードが居る市長邸】

 【街の不良達がいる倉庫区画】

 

 きっとクラムはあそこに向かったに違いない……! そう確信したエステルたちは、クローゼと一緒に急いでルーアンの街へと戻るのだった。

 

 ※後書きに三択クイズの答えがあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 ◆三択クイズ◆

 Q.火事の原因は?

 【山火事】
〇【放火】
 【オーブメント機器の発熱】

 ◆三択クイズ◆

 Q.クラムが向かった先は?

 【孤児院を放火した犯人の所】
 【ダルモア市長とギルバードが居る市長邸】
〇【街の不良達がいる倉庫区画】
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