アスカとシンジは、空の軌跡の世界で本当の幸せを見つけた ~アスカ・ブライト!~   作:朝陽晴空

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第二十四話 ダルモア家の家宝を取り戻せ! 《怪盗B》の挑戦状!

 

 ルーアンの街に戻ったエステルたちは、カルノーに試作品の導力銃を届けた。エステルたちは発見した導力銃が壊れてしまっていた事を謝ったが、カルノーはこの程度の故障なら修理できると笑顔で許してくれた。

 遊撃士協会に立ち寄ってジャンに報告をすると、エステルたちは準遊撃士4級に昇格した。目を輝かせて喜ぶアスカに、ジャンはさらに追加で仕事を用意しているとニヤリと笑った。

 

 ◆古地図の調査◆

 

 【依頼者】ジミー

 【報 酬】1000 Mira

 【制 限】5級

 

 ルーアンの教会で依頼人のジミーと顔を合わせたエステルたちは驚いた。ジミーはエステルたちがルーアンの街に初めて来た日に、砂浜で魔獣に襲われていた青年だった。掲示板の依頼を見て来たと伝えると、ジミーは砂浜に居る理由を話し始めた。

 ジミーは『大海賊シルマー』の残した宝の地図を手に入れ、街道から外れた砂浜で探していたのだと言う。しかし自分で探すには限界があったため、遊撃士に頼む事にしたらしい。

 

「それで、シルマーって誰よ?」

 

 アスカが尋ねると、ジミーは大きな声を上げた。

 

「大海賊シルマーを知らないなんて、それでもルーアン市民かい!?」

「勝手にルーアン市民にしないでよ」

 

 この世界の住民でもなかったけどね、とアスカは心の中で付け加えた。

 

「百年ほど前にルーアン周辺を荒らしまわっていた海賊ですね」

 

 クローゼはシルマーの事を知っていたようだ。ジミーは地図に書かれた財宝の隠し場所である砂浜を調べようとしたところを魔獣に襲われたので、魔獣退治のプロである遊撃士に調べて欲しいと頼んだ。

 

「あれ? この前、浜辺で変なものを見つけなかったっけ」

 

 エステルがそうつぶやくと、ジミーは目を輝かせてエステルに質問を浴びせる。

 

「何だって!? どんな物だった!?」

 

 尋ねられたエステルに代わってアスカが答えた。

 

「短剣と海図の切れ端だったわね、シンジ?」

「うん、ボクが持っているよ」

 

 シンジがそう言うと、ジミーはシンジの肩をつかんで身体を揺らした。

 

「は、早く見せてくれ~!」

「落ち着いてください」

 

 ジミーに揺さぶられながら鞄を探ったシンジは、持ち手にドクロが描かれた短剣と、海図の切れ端を渡した。

 

「おおっ、これこそ大海賊シルマーの宝の地図に違いない!」

 

 そうジミーが叫ぶと、エステルたちは一斉に目を丸くして驚きの声を上げた。

 

「アンタバカァ!? 宝の地図は自分で持っているって言ってたじゃない」

「これは宝の地図の地図なんだ。財宝の隠し場所を示した地図の隠し場所を示した地図なんだよ!」

 

 あきれた顔でアスカが言い放つが、ジミーは自信たっぷりにそう言い切った。ジミーは嬉しそうな顔をして、新たな海図を持って教会を飛び出していった。

 

「何とまあ、能天気が過ぎると言うか……」

 

 エステルはジミーが去って行った方向を見てつぶやいた。

 

「君と同じじゃないかな」

「あたしは能天気じゃないっ!」

 

 ヨシュアとエステルのやり取りを見て、アスカたちから笑い声が上がった。一つ依頼をこなしたエステルたちは、次の依頼へと取り掛かるのだった。

 

 

 

 

  ◆整備用鞄の運搬◆

 

 【依頼者】ソームズ

 【報 酬】1000 Mira

 【制 限】5級

 

 バレンヌ灯台まで定期点検で使う整備用鞄を運んでくださる遊撃士を探しています。

 

 《グラナート工房》の主人であるソームズに会ったエステルたちは、メンテナンス道具一式が入った重い鞄を渡された。

 

「何よ、女の子に重たい物を持たせる気?」

 

 アスカに言われたシンジは、心の中でブツブツと文句を言いながら、ヨシュアと交代で整備用鞄を運ぶこととなった。届け先はバレンヌ灯台のフォクト老人。気難しい所があるから注意した方が良いとソームズの助言を受けたエステルたちは工房を出た。

 

 ◆探索の護衛◆

 

 【依頼者】アメリア

 【報 酬】1500 Mira

 【制 限】5級

 

 叔父がクローネ山道に出掛けるそうなので護衛の遊撃士を探しています。

 マノリア村でお待ちしています。

 

 バレンヌ灯台に向かうついでに、エステルたちは護衛の依頼も引き受ける事にした。

 

「ほらシンジ、何をノロノロしているのよ、キリキリ歩きなさい!」

 

 アスカは重い鞄を抱えながら汗を流して街道を歩くシンジに向かって檄を飛ばす。ルーアンの街からマノリア村まで、シンジにとっては地獄の道のりだった。クローゼが心配そうな顔でシンジを見つめるが、クローゼに重い鞄を持って貰うわけにはいかないと思ったシンジは、作り笑顔で精一杯強がるのだった。

 

「マノリア村まで後、74セルジュ! 頑張れ!」

 

 エステルも励ましてはくれるが、前衛で魔獣と戦っているため、シンジの代わりに重い鞄を持つわけにはいかない様だ。村に到着すればヨシュアが交代してくれる。シンジは情けない所を見せまいと気合いを入れ直した。

 マノリア村で休憩をとる事にしたエステルたちは、宿屋に居るテレサ院長の所へ顔を出した。子供たちは元気に村の広場で遊んでいた。ホッと安心したエステルたちがのんびりしていると、血相を変えた村の女性が話しかけて来た。

 

「遊撃士の方ですよね? 叔父が一人でクローネ山道に行ってしまったみたいなんです!」

「もしかして、あなたがアメリアさん?」

 

 エステルが尋ねると、女性はうなずいた。アメリアの叔父を助けるため、エステルたちは急いでクローネ山道に向かわなければならない。最初の計画では整備用鞄を灯台に届けてから護衛を引き受けるつもりだった。こうなっては仕方が無い。エステルたちは整備用鞄を宿屋に預け、クローネ山道へと急いで向かった。

 

 

 

 

 エステルたちがクローネ山道にたどり着くと、魔獣に追いかけられ、崖まで追い詰められた男性の姿を見つけた。エステルたちは全力で駆け付け、魔獣に戦いを挑んだ!

 

「はぁ、何とか間に合いましたね」

「本当、ギリギリだったよね」

 

 魔獣を倒した後、クローゼとエステルは顔を見合わせてつぶやいた。助けられた男性はオーヴィットと名乗り、珍しい食材を集めていたのだと話した。名前を聞いたアスカはしばらく考え込むような顔をした後、オーヴィットに指を突き付けた。

 

「あーっ、アンタってば、ロレントでホタル茸の採取を依頼して来たヤツね! アンタのせいで危険な目に遭わされたんだから」

「フン、遊撃士は常に危険と隣り合わせの職業だろう。私のせいではない」

 

 オーヴィットは鼻を鳴らしてアスカに言い返した。マノリア村のアメリアから助けるように頼まれたと伝えると、意外にもオーヴィットは大人しくアメリアに心配を掛けた事を謝るためにマノリア村へと帰ると言う。目的の食材はすでに見つけたらしい。その食材のせいで魔獣に追いかけられていたのかもしれない。

 マノリア村までオーヴィットを送り届けたエステルたちは、宿屋に預けていた整備用鞄を受け散ってバレンヌ灯台へと向かう事にした。結局重い鞄はまたシンジが運ぶ事になってしまった。

 バレンヌ灯台に到着したが、フォクト老人が居るのは灯台の最上階。玄関先に置き配が許されるはずも無く、重い鞄を運んで階段を昇らなければならない。灯台の中では魔獣が襲って来る事も無いため、ヨシュアが交代して鞄を運んだ。

フォクト老人はエステルたちが重い鞄を運んでくれた事に感謝していた。前に会った時、フォクト老人から気配りの心が大切だと教えられたことを思い出したシンジは、フォクト老人に尋ねた。

 

「何か他にお困りの事はありませんか?」

「それなら草むしりをしてもらおうかのう」

 

 フォクト老人はシンジの質問にそう答えた。こうしてしばらくの間、エステルたちは草むしりをする事になってしまった。アスカは少し恨むような目つきでシンジを見ていたが、草むしりを終えると、フォクト老人から《作業用ヘルメット》と《闘魂ハチマキ》を譲り受けたのだった。

 

 

 

 

 掲示板に張り出された依頼を終わらせた後、エステルたちはジャンから《特別な依頼》の紹介を受けた。

 

 ◆燭台盗難事件◆

 

 【依頼者】市長秘書ギルバード

 【報 酬】5000 Mira

 【制 限】4級

 

 ダルモア家の宝『蒼耀の灯火』が何者かの手によって盗まれてしまいました。

 燭台を取り戻してください、お願い致します。

 

 市長からの依頼とあって、報酬も高額だった。エステルたちは気合いを入れて市長邸へと向かった。エステルたちが市長邸の玄関ホールへと足を踏み入れると、ため息をついている秘書ギルバードの姿があった。

 

「やあ、君たちか」

 

 エステルたちに気が付いたギルバードは爽やかな笑顔になる。ヨシュアが状況を尋ねると、ギルバードは黙って空っぽの台座を指差した。燭台は玄関ホールにある台座の上に飾られていたらしい。

 盗まれた『蒼耀の灯火』は導力革命後に造られた芸術品で、ダルモア家の家宝として受け継がれており、売値を付けたら数百万ミラになるだろう名品だとギルバードは話した。

 

「数百万ミラ!?」

 

 エステルはビックリ仰天した。犯人は金銭目的で盗んだ事は間違いないとアスカたちが話していると、ギルバードは難しい表情になる。

 

「それが、金銭目的では無いかもしれないんだ」

「何ですって!?」

 

 ギルバードの言葉を聞いたアスカは驚きの声を上げた。ギルバードはエステルたちに台座に残されていたと言うカードを見せた。カードに書かれていた文面はこうだった。

 

『ああ、求めるものよ。

 この街中に聳え立つ、三つ目の巨人の元へと向かうのだ。

 さすれば汝らは蒼き光へと至らん。     怪盗B』

 

 カードを見たエステルたちはポカンと口を開いた。書かれている内容から犯人が残した犯行声明だろう。金銭目的なら余計な事はしないはずだ。

 

「この文章は謎かけの様にも見えますけど、どんな意味でしょう?」

 

 クローゼの疑問に対してアスカは、厳しい表情になって答える。

 

「これはアタシたちへの挑戦状よ! 謎を解けば燭台を返してやるって言っているのよ、しゃらくさい!」

 

 エステルたちはルーアンの街にある『三つ目の巨人』を探しに行く事となった。もちろん、巨人そのものが実在するとは考えられない。何かを例えたものだろう。聳え立つと書かれている事から、細長い塔のような建物だと考えられる。

 

「もしかして、あそこかもしれない」

 

 ヨシュアはそうつぶやくと、ラングランド大橋を渡り北街区にある灯台の元へと向かった。灯台の上に付けられたライトは、〇〇〇と信号機のような形をしていた。

 

「なるほど、『三つ目』に見えなくもないわね」

 

 ヨシュアの予想通りカードが見つかると、アスカは感心したようにつぶやいた。次のカードにはまた謎かけの文章が書かれていた。

 

『ああ、求めるものよ。

 赤と黒とが繰り広げる果てなき円舞へと向かうのだ。

 さすれば汝らは蒼き光へと至らん。     怪盗B』

 

 カードを読んだエステルたちはウンウン唸って考えたが、思い付く手掛かりは無い。赤と黒の建物が街の中にあれば目立つはずだ。もしかすると建物では無いのかもしれない。

 

「考えすぎて頭が痛くなっちゃった。そこのお店で何かジュースでも飲まない?」

 

 頭がオーバーヒートしたエステルは、灯台の近くにあるカジノバー《ラヴァンタル》を指差した。こうして居ても仕方ないと考えたアスカたちも、気分転換の必要性を感じてエステルの意見に賛成した。

 

「よう、新米遊撃士じゃないか」

 

 バーのカウンター席にはナイアルが座っていた。面白い事は無いかと聞かれたエステルたちは《怪盗B》が残したカードの事を話した。遊撃士が仕事の内容を民間人に漏らすのは褒められた行為ではないが、謎かけが解けなければ燭台は取り戻せない。

 

「何だ、そんな簡単な謎かけが解らないのか」

「えっ、ナイアルさんはもう解ったの?」

 

 ナイアルがニヤリとした顔でそう言うと、エステルは驚いた顔でナイアルを見つめた。

 

「まあ、お前達は真面目なお子様だから知らないだろうけどよ、このバーの二階にはカジノがある。ギャンブルの一つである『ルーレット』は、赤と黒の数字にチップを賭けてルーレットを回す遊戯なのさ」

「なるほど、それならばカードの文章と符合しますね」

 

 ヨシュアは感心したようにうなずいた。今回は偶然にもエステルの発言が解決へと導いた。運も実力の内、準備中の二階のカジノへと行ったエステルたちがオーナーの許可を取りルーレットを調べると、次のカードがあった。

 

『ああ、求めるものよ。

 陸の港で身を休める、一つ目の獅子の元へと向かえ。

 さすれば汝らは蒼き光へと至らん。     怪盗B』

 

 『陸の港』と言うキーワードに着目したエステルたちは港へと向かった。港に着いたエステルたちは『一つ目の獅子』を探し始めた。

 

「獅子と言えば、コイツがそれっぽいわね!」

 

 アスカは港にあるクレーン車を自信たっぷりに指差した。しかし、港の作業員に許可を取ってクレーン車を調べてみても、カードは見当たらない。意地になったアスカは調べている間に段々と顔が真っ赤になって来た。

 

「ぐぬぬぬっ……! きっとここにあるはずよっ!」

「アスカ、もう別の所を探そうよ」

 

 シンジは必死の思いでアスカをクレーン車から引き離した。クレーン車はライトが一つ付いていて、一つ目の獅子に見えない事は無い。ヨシュアは何かを見落としていると考えた。

 

「わざわざ『陸の港』という言い方をしているのが気になる。普通なら『港』の一言で良いはずだ」

 

ヨシュアのつぶやきを聞いて、クローゼに閃くものがあったようだ。

 

「あの……もしかして、空港の事ではないでしょうか?」

「それだ!」

 

 クローゼの言葉に、エステルたちは目を輝かせてルーアン空港へとダッシュした。空港に着いたエステルたちは、階段の下で放置された一つ目のライトの導力運搬車を見つけた。

 

『ああ、求めるものよ。

 鋼鉄の鶴の側で安らぐ樽たちの元へと向かえ。

 さすれば汝らは蒼き光へと至らん。     怪盗B』

 

「鋼鉄の鶴って、さっき見たばかりじゃない!」

「うん、港には樽もたくさんあったし間違いないと思うよ」

 

 カードを読んだアスカは直ぐに反応し、シンジもアスカの意見に同意してうなずいた。今度こそはとシンジは作業員に何度も頭を下げてクレーン車をまた調べさせて欲しいと頼み込んだ。せっかくシンジが作ってくれたチャンスだ、アスカは気合いを入れてクレーン車を調べた。しかしやはりカードは見つからない。

 

「もう良いかい、遊撃士の嬢ちゃん。こっちも仕事でクレーン車を使うんだ。朝から樽を倉庫に運び込んでいて忙しいんだ」

「ごめんなさい……」

 

 作業員の男性にアスカはしおらしい表情で謝った。こんなに気落ちしているアスカは久しぶりだ。自信満々の推理が二度も打ち破られたのだからショックも大きいのだろう。慰める言葉が思い付かないシンジは黙ってアスカの肩を抱いた。

 

「今、作業員の人が気になる事を言っていたね。クレーン車の周りにある樽を倉庫に移したって」

 

 ヨシュアはそうつぶやくと、依頼で知り合った作業員のハーグに樽を調べたいと話した。ハーグは港で取り扱う荷物は商品なので捜査令状無しに中身を調べる事は出来ないが、倉庫の鍵を探してくれた恩もあるので、こっそりと調べさせてあげようと話した。

 

「ハーグ君、倉庫の前で何をしているのかね」

「ポルトス主任!」

 

 ハーグが倉庫に入ろうとすると、倉庫の中から出て来た中年の男性の姿にハーグは跳び上がって驚いた。ハーグが正直に遊撃士の捜査に協力しようとしていると話すと、ポルトス主任はあっさりと樽を調べる許可をくれた。

 

「ところでポルトス主任は倉庫の中で何を?」

「ちょっと気になる事があってな、合鍵を使って中に入ったのだ。遊撃士の捜査に協力してあげるんだよ」

 

 ハーグに尋ねられたポルトス主任は堂々とした振る舞いでそう言って、街の方へと姿を消した。

 

「合鍵なんてあったかな……?」

 

 ハーグはそうつぶやきながらも、倉庫の中から樽を運び出した。何個もの樽を運ぶ港の作業員の体力にエステルたちは舌を巻いた。樽を調べていたヨシュアはカードを見つけた。次のカードに書かれていたのは謎かけではなく謝罪文だった。

 

『申し訳ない、樽が運ばれてしまったのは私の考えが足りませんでした。

 お詫びとして、探し物をお返しいたします。この樽の中を調べてみてください。

 君たちの手で、この燭台を正しい持ち主の元へと戻してください。

 おや、もう時間切れのようだ。それではまたお会いしましょう。

                                 怪盗B』

「あれ、このカード……まだインクが乾いていない」

「ええっ!?」

 

 カードを調べていたヨシュアがそう言うと、エステルたちは驚きの声を上げた。アスカは嫌そうな表情で辺りを見回す。

 

「どこかでアタシたちを見てたって事? 気持ち悪いヤツね……」

 

 倉庫の前でキョロキョロと辺りを探っていたエステルたちに近づいて来たのは、先ほど立ち去ったポルトス主任だった。

 

「君たち、そこで何をしているんだ?」

「えっ、ポルトス主任? さっき話したじゃないですか」

 

 突然現れたポルトス主任にハーグは裏返った声で尋ねた。

 

「何の話だ?」

 

 不思議そうな顔をするポルトス主任を見て、ヨシュアは悔しそうな顔でつぶやいた。

 

「しまった、騙された!」

「さっきここにいたポルトスさんって、偽者だったって事?」

 

 シンジの質問に、ヨシュアはしっかりとうなずいた。犯人がポルトスに変装して倉庫に入り、カードの中身を書き換えていたのだろうとヨシュアは話した。

 

「じゃあ追いかけなきゃ!」

 

 エステルはそうつぶやくと、偽のポルトスが姿を消した街の方へと走って行ってしまった。

 

「待ちなさい、エステル!」

 

 アスカもエステルを引き留めようと追いかけた。落ち着いているヨシュアに、クローゼが不安そうな表情で尋ねる。

 

「追いかけなくていいのですか?」

「偽物を見破れなかった時点で、僕達の負けさ。エステルは犯人の背中を見る事も出来ないよ」

 

 ヨシュアがそう言うと、シンジとクローゼは沈んだ表情になった。何はともあれ、まずは燭台が無事かどうか確かめなければならない。ヨシュアは樽の中身を改めた。

 

 

 

 

 『蒼耀の灯火』を取り戻したエステルたちはダルモア市長に調査結果を報告した。怪盗Bの正体はまるでつかめなかったが、ダルモア市長は燭台を無事に取り戻せただけで十分だと、穏やかな笑顔でエステルたちを労わった。

 エステルたちは調査を続行すると申し出たが、ダルモア市長は他にも遊撃士の力を必要としている人々が居るはず、その人達の力になって欲しいと諭し、調査は終了となった。

 何となくスッキリしない気持ちで市長邸を出たエステルは、ヨシュアが悩んでいるのに気が付いた。

 

「どうしたのヨシュア、一人で抱え込むのは良くないわよ?」

「犯人はどうして燭台を盗んだのかなって気になるんだよ」

 

 エステルが尋ねると、ヨシュアはそう答えた。結局動機は判らずじまいだった。

 

「最後のカードに書かれた内容も意味ありげでしたね。‘正しい持ち主’という言い方が引っ掛かります」

 

 クローゼはダルモア市長に燭台を返したのは正しかったのか気になっているようだった。

 

「犯人がどうやって忍び込んだのかも明らかになっていないのよ、こうなったらこっそりと屋敷を調べちゃおうかしら」

 

 アスカも苛立った顔でそうつぶやいた。アスカの言葉を聞いたシンジが心配そうな顔でなだめる。

 

「そんな事したらボク達が泥棒みたいになっちゃうよ」

「分かってるわよ、言ってみただけ!」

 

 アスカは腕組みをしてシンジに怒鳴った。

 

「みんな、ここは我慢だよ。僕達の助けを必要としている人たちは他にもいる」

 

 ヨシュアはそう言ってクローゼの顔を見つめた。

 

「そっか、仕事が終わったらクローゼの依頼を引き受けるって約束だったわね」

 

 エステルは気が付いたようにそうつぶやいた。溜まっていた仕事も終わり、ジャンにこの件を報告すればジェニス王立学園へと行くことが出来る。エステルたちは気分を切り替えて遊撃士協会へと向かうのだった。

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