アスカとシンジは、空の軌跡の世界で本当の幸せを見つけた ~アスカ・ブライト!~   作:朝陽晴空

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第二十五話 ワクワク学園生活、シンジのキスシーンにアスカはモヤモヤ?

 

 遊撃士協会で報告を終えたエステルたちは、クローゼの案内でヴィスタ林道を抜けてジェニス王立学園へと向かった。森の中の細い道を抜けると、大きな門と広い中庭、風格のある校舎を備えた立派な学園だった。

 中庭を囲むように教室のある本館、東西に講堂と部活棟があり、南東と南西にはそれぞれ男子寮と女子寮がある、小さな村とも言える敷地の広さだ。今は教室で授業中だと言う事もあり、中庭には手入れをする用務員の姿しか無い。

 

「本当は直ぐにでも生徒会長にエステルさんたちを紹介したいのですが、まず学園長先生の部屋へとご挨拶に伺いましょう」

 

 クローゼはそう言って正面に位置する本館を指差した。学園長の部屋は本館の一階、職員室の隣にある。学園内を探検したい気持ちを抑えて、エステルたちは学園長室へと向かった。

 学園長の部屋のドアをクローゼがノックすると、中から老人の声が聞こえる。返事を聞いたクローゼがドアを開いて中に入ると、エステルたちも続いて学園長室に足を踏み入れた。

 

「学園長先生、ただ今戻りました」

 

 あいさつをしたクローゼは席に座っている学園長に近づいて行った。エステルたちもゆっくりと続いた。学園長は眼鏡を掛け、ひし形の博士帽を被り、長く白いあごひげから知的な雰囲気を感じ取れた。

 

「おや、君たちは……ほう、その若さで遊撃士とは大したものだ」

 

 エステルたちの遊撃士の紋章に気が付いた学園長は感心したようにつぶやいた。クローゼは学園長に孤児院の放火事件の調査結果を含めた一連の事情を説明した。学園長は深刻な表情で話を聞いていた。

 

「わしらも、何かの形で協力できると良いのだが……」

 

 学園長は深いため息を付きながら目を閉じて考え込んでから、ゆっくりと目を開いた。

 

「まずは、学園祭を成功させて子供たちを元気付ける事、そこから始めるのが良いだろう」

「はい、その通りだと思います」

 

 クローゼは学園長の言葉に深くうなずいた。クローゼが学園祭の手伝いをエステルたちに頼んだ事を伝えると、学園長も笑顔で賛成した。

 

「どうかよろしくお願いする」

「はい、微力ながら尽くさせて頂きます」

 

 学園長にヨシュアはそう答えた。学園長は学園祭に関しては生徒会長のジルに一任していると話した。学園長はエステルたちが学生寮に泊まる手配もしておくと話した。学園祭の手伝いに集中できるようにとの心遣いだった。

 

 キーンコーンカーンコーン。

 

 授業の終了を告げるチャイムが学園内に鳴り響いた。学園長は早速、生徒会長にエステルたちを紹介すると良いだろうとクローゼに告げた。

 

「次は生徒会室にご案内しますね」

 

 クローゼは振り返ってエステルたちに告げた。生徒会室は部活棟の二階にあると言う。エステルたちは学園長にあいさつをして学園長室を出た。

 

 

 

 

 授業が終わった学園内は教室から解放された生徒達の姿であふれていた。生徒達は学園祭の準備で盛り上がっているようだ。中庭では出店の場所を考える生徒達の姿があった。

 エステルたちが生徒会室に入ると、真っ赤なリボンで小麦色の髪を束ねた、眼鏡を掛けた制服姿の少女が机の上に置かれた書類と忙しそうに格闘をしていた。同じ机には紫色の短く髪を切りそろえた制服姿の少年が付いていた。

 

「ただいま、ジル、ハンス君」

 

 クローゼが声を掛けると、二人はクローゼたちの方に顔を向けた。

 

「お帰り、クローゼ。あれ、その人たちはどちらさま?」

 

 ジルがエステルたちを不思議そうな顔で見つめる。

 

「こちらは、遊撃士のエステルさんとヨシュアさん、アスカさんと……シンジさんです。四人とも学園祭に協力してくださるって」

 

 クローゼはそう言って笑顔でエステルたちを紹介した。ジルはエステルたちをザっと見回していたが、シンジに目を止めるとニヤリと笑った。そのジルの視線に悪寒を感じるシンジ。アスカが自分をからかう時と同じだと思ったからだ。

 

「初めまして、私は生徒会長を務めている、ジル・リードナーです。学園祭の実行委員長をしているわ」

「俺は副会長のハンスだ。学園祭で行われる演劇の責任者をしている」

 

 ジルとハンスもエステルたちに自己紹介をした。

 

「ところで、エステルさんは剣は使える?」

「まあ、父さんから剣も習った事があるけど」

 

 ジルに尋ねられたエステルがそう答えると、ジルは満足気にうなずいた。再びシンジとヨシュアをなめまわすように見たジルは笑顔になって言い放つ。

 

「エステルさんには学園祭の演劇で剣を使ってクローゼと戦ってもらうわ」

「え、演劇!?」

 

 学園祭の手伝いと聞いていたが、まさか劇に出演する事になるとは。エステルは驚きの声を上げた。劇の中で騎士の戦闘シーンがあるので、剣の腕が立つエステルたちが出てくれると盛り上がるとジルは話した。

 

「女騎士が戦うなんて、珍しい演劇だね」

「何を言っているんだ、戦うのはれっきとした男の騎士だぜ」

 

 ヨシュアのつぶやきに、ハンスはそう答えた。その言葉の意味が解らず、エステルたちも不思議そうな顔になる。

 

「うーん、シンジ君とヨシュア君も素材としては申し分ないわね」

「ああ、全くもって同感だぜ」

 

 シンジとヨシュアを見つけてつぶやくジルに、ハンスも笑顔で同意した。シンジは先ほどから嫌な汗がずっと止まらなかった。

 

「えっと、ボク達も劇に出るの……?」

 

 シンジが不安そうな顔で尋ねると、ジルはうなずいた。ハンスは配役の男女を逆転させることで昔ながらの定番劇でも大きなインパクトを与えられるのではないかと考えたらしい。

 

「性差別からの脱却! ジェンダーの平等! と言うスローガンで無理やり押し通しちゃったわ。本当はただ面白いと思っただけなんだけど♡」

 

 ジルはそう言って笑顔でシンジとヨシュアを見つめた。

 

「ちょっと待ってよ、その話の流れだと、ボクたちがやらされる役って……」

「シンジ、観念しなさい!」

 

 不安そうな顔になるシンジに、アスカもジルと同じニヤリとした表情を浮かべて声を掛けたのだった。

 

 

 

 

 学園祭の演劇に出る事になったエステルたちは講堂で衣装合わせをする事になった。劇の演目は『白い花のマドリガル』。百年前のリベール王国を舞台にした物語だ。百年前のリベール王国は貴族制度がまだ存在しており、貴族と平民は対立していた。そんな情勢の中、貴族出身の赤の騎士ユリウスと、平民出身の青の騎士オスカーが王家の姫セシリアを巡って決闘をする事になると言う話だった。

 

「へーえ、これが舞台衣装なんだ」

 

 赤の騎士ユリウスの衣装を着たエステルは感心したようにつぶやいた。モルガン将軍が着ていたリベール王国の軍服に似ている。

 

「クローゼさんも似合ってるわよ」

「ふふ、ありがとうございます」

 

 青の騎士オスカーの衣装をまとったクローゼをエステルが褒めると、クローゼはお礼を言った。

 

「それで、なんでアタシが公爵役なのよ」

 

 豪華な装飾が施された服に身を包んだアスカは不満そうに顔を膨れさせた。公爵と聞くと、あのデュナン公爵を思い出してしまう。

 

「ごめんごめん、アスカさん。赤と青の対立と言う構図の方が見た目にも分かりやすいのよ」

 

 ジルは手を合わせて謝る仕草をした。アスカが怒っているのは配役に対しての事だけではない。台本の内容に関してもアスカは大きな不満を持っていた。

 

「それで、ヨシュアとシンジの役は?」

「二人の騎士の身を案じる王家の白の姫セシリアと、御付きのメイドさ」

 

 エステルの疑問の声に、舞台袖に居るハンスが答える。

 

「待ってください、ボクはまだ心の準備が出来ていません!」

 

 戸惑うシンジの手を引いて、ハンスは無理やり舞台へと引きずり出された。長い黒髪のカツラを被り、白いドレスを着たシンジは美しい女性へと変貌していた。同じくメイド服を着たヨシュアも然り。

 舞台に居たエステル、アスカ、クローゼ、ジルは息を飲んでセシリア姫となったシンジを見つめていた。

 

「な、何か言ってよ……」

「このまま放置されるのは辛いものがあるよ……」

 

 シンジとヨシュアは困った顔でエステルたちに言った。

 

「思ったより、違和感無いじゃない」

 

 アスカが顔を赤らめてシンジを見る。クローゼも感激した様子でシンジの姿を見てポツリとつぶやいた。

 

「とても……綺麗です」

「うんうん、俺も街で見かけたら思わず二度見しそうだな」

 

 ハンスも二人の意見に同意してうなずいた。

 

「ボク、男ですよ」

 

 シンジはそう言ってハンスをにらみつける。ジルは満足気な様子で人差し指で眼鏡をグイっとずらした。意気上がるエステルたちを他所に、シンジとヨシュアは心の中で涙を流すのだった。

 

 

 

 

 その日の夜から、エステルとアスカ、ヨシュアとシンジはそれぞれ学園の女子寮と男子寮に泊まる事になった。エステルとアスカ、クローゼとジルは同じ部屋となった。

 ジルはルームメイトになったエステルとアスカに、お互い『さん』付けは止めようと提案し、エステルとアスカは快く了承した。クローゼも加わる事になり、呼び捨てにする練習が行われた。

 

「あ、アスカ……」

 

 さん、と言いそうになる言葉を、クローゼはやっとの事で飲み込めた。

 

「まあ、まだ固いけどそんなもんね」

 

 アスカはそうつぶやきながら、前の世界に残して来た《友達》の事を思い返していた。呼び方を惣流さんからアスカにするまで、それなりに苦労したんだっけ。

 

「ジルとクローゼって仲が良いんだね」

 

 エステルがそう言うと、ジルはクローゼとはジェニス王立学園に入学してから一年半もの間ずっと一緒の腐れ縁だと話した。

 

「羨ましいなあ、あたしもロレントの街に友達は居たけど、家が街から離れた森の中にあったからずっと一緒には居られなかったな」

 

 そうエステルがつぶやくと、ジルは大きなため息を吐き出した。

 

「何言っているのよ、エステルにはアスカが側に居るじゃない」

「そうだったわね」

 

 エステルはアスカを見てペロッと舌を出して笑った。十四歳の時にアスカに出会って二年以上、エステルはアスカと同じ部屋で寝食を共にしているのだ。

 

「それに、あんな上玉の男達と一緒に旅をしているくせに、女所帯を羨ましがるとは納得いかないね」

 

 ジルがからかうようにそう言うと、エステルは目を閉じてウンザリとした顔でため息をつく。

 

「もう、何を言ってるんだか。ヨシュアとシンジはあたしの弟みたいなものだってば。ねえアスカ」

「そ、その通り、アイツとはただの同居人よ」

 

 アスカは目を泳がせながらもエステルに同意した。

 

「ふーん、弟で同居人ねえ。あんたたちがそのつもりでも、ヨシュア君とシンジ君の方はどう思っているのかしら?」

「えっ?」

 

 ジルがそう尋ねると、エステルはキョトン顔になった。

 

「年頃の男の子は抑えが効かないって言うし、ましてあんたたちみたいな健康美あふれた子が一日付きっきりだったら我慢を強いられたりして……」

「もうジルってば、人をからかうのはそのくらいに」

 

 悪乗りしているジルをクローゼがたしなめた。

 

「そんなまさかヨシュアがあたしの事を……だなんて」

 

 エステルは顔を赤くしてモジモジしている。アスカは常日頃からシンジをからかって、色仕掛けのような事をしている。この世界に来る前に初キスもしたし、自分を命懸けで助けてくれたのだから、アスカはシンジに好かれている自信があった。しかしクローゼの出現により、アスカは自分の自信が揺らいでいるのを感じた。クローゼのような子に優しくされたら、シンジはなびいてしまうのではないか。

 

「ふふ、二人とも意識している」

「ジル!」

 

 ニヤケ顔のジルを、クローゼは厳しい表情で叱った。

 

「おっと急用を思い出しちゃった! それじゃ、おやすみ。先に寝てていいから」

 

 ジルはクローゼの説教から逃れようと、部屋を出て行った。

 

「エステルさん、アスカさん、お二人が使うベッドですけど……」

 

 そこまで話したクローゼは、エステルとアスカが上の空になっている事に気が付いた。クローゼの言葉は耳に入っていないようだ。

 

「エステルさん、アスカさん!」

「ふえっ!?」

「な、何よ!?」

 

 クローゼが大きい声で呼びかけると、エステルとアスカは飛び上がって驚いた。それからしばらくして戻って来たジルと四人でたわいのない話をしながら、エステルたちは眠りに就くのだった。

 

 

 

 

 こうして、エステルとアスカ、ヨシュアとシンジの学園生活は始まった。家族以外の同級生と朝食をともにして、午前中の授業を教室で受ける。第三新東京市の第壱中学校のようにタブレット端末など無いからペンとノートで受ける授業はアスカとシンジにとっても新鮮だった。

 昼食後の午後の授業では、エステルが上半身を直立させたまま爆睡すると言う大技を披露した。やはり日曜教会の学校と同じく授業は少々苦手のようだった。放課後は講堂で演劇の稽古が連日夜遅くまで続いた。

 楽しくも忙しい学園生活は光陰矢のように過ぎ去って行き、学園祭の前日を迎えるのだった。

 

「よし、リハーサルは終了だ。今日は早めに休んで明日に備えてくれ!」

 

 監督であるハンスの号令により、最後の練習は夕方には終了した。セリフを間違えずにリハーサルを乗り切ったエステルたちは安堵の息をついた。クローゼとシンジは少し残って練習をすると言って、他のスタッフ達と別れた。

 

「これでテレサさんや孤児院の子たちも喜んでくれるかな」

「はい、シンジ……さんのお陰で素晴らしいエンディングになりそうです」

 

 講堂のステージで最後まで秘密の練習をしていたシンジとクローゼはため息をついた。秘密の練習の内容は、演劇の最後の方で行われる青い騎士オスカーとセシリア姫が口づけをする場面だった。

 もちろん実際には唇が触れ合うものではないが、キスをしていなくてもしているように見せかけるのには演技力が必要なのだ。みんなの前で練習するのが恥ずかしいシンジとクローゼは講堂に残ってこっそりと練習を重ねていた。

 

「クローゼさんはテレサさんや孤児院の子たちの事を本当の家族のように思っているんだね」

 

 シンジが尋ねると、クローゼはうなずいて自分の身の上を話し始めた。

 

「ええ、私、生まれてすぐに両親を事故で亡くしているんです。裕福な親戚に引き取られましたが、家族がどのようなものか知らなかったんです」

「ごめん、辛い事を思い出させちゃって」

 

 そうシンジが謝ると、クローゼは首を横に振った。

 

「いえ、気になさらないでください。十年前のあの日、テレサ先生に会って私は家族の温かさを知ったんです。《百日戦役》の時、帝国軍から逃げてルーアンに来ていた私は知っている人とはぐれてしまって……テレサ先生と、旦那さんのジョセフさんに保護されました」

「そんな事があったんだね……」

 

 クローゼの話を聞いたシンジはため息をついた。

 

「先生たちと過ごしたのは、たった数ヵ月の事でしたけど……テレサ先生とジョセフさんは本当にとても優しくしてくれて……その時、初めて知ったんです。家族が暮らす家がどんなに暖かいものなのかを……。ごめんなさい、つまらない話を延々と聞かせてしまって」

 

 今度はクローゼの方が謝ると、シンジは首を横に振った。

 

「僕もクローゼ……さんの気持ちは分かるよ。僕も五歳の頃、母さんが事故で死んだんだ。それから僕は父さんに捨てられて、親戚の家に預けられる事になったんだ」

「そう……なのですか」

 

 シンジが自分の事を話すと、クローゼは驚いた顔でそうつぶやいた。

 

「だから僕もカシウスさんに会って、家族の暖かさを教えてもらったんだ」

「えっ、シンジさんの御家族ってカシウスさんだったんですか?」

 

 そしてシンジの口からカシウスの話が出ると、クローゼはさらに驚いて手で口を押えた。シンジも目を丸くしてクローゼに尋ねる。

 

「クローゼさん、カシウスさんの事を知っているの?」

「はい、帝国軍から私を助けてテレサ先生と引き合わせてくれたのがカシウスさんなんです」

 

 シンジに尋ねられたクローゼは嬉しそうな笑顔でうなずいた。

 

「……演劇、絶対成功させようね」

「シンジさんが頑張ったんですから、大丈夫ですよ」

 

 シンジとクローゼはお互いに見つめ合ってうなずいた。自然と手を握りそうになった二人は、ハッと気が付いて触れた手を離して顔を赤らめた。

 

「あの……私の役、アスカさんと代わった方が良かったですか?」

 

 突然クローゼから話を切り出されたシンジは沈んだ表情になった。

 

「クローゼさん、ボクとじゃ嫌なら正直に言ってくれても良いよ」

「いえ、そういう意味では無いんです。アスカさんに申し訳ない気がして」

 

 落ち込んだシンジの表情を見たクローゼは慌てて言った。誤解の解けたシンジはホッとした顔で笑ってクローゼに語り掛ける。

 

「アスカはボクの事をからかって楽しんでいるだけだよ」

「私にはそうは見えないのですが……」

 

 目聡いクローゼは、アスカがシンジに好意を持っている事を感じ取っていた。同じ部屋で寝る前に交わす会話でも、アスカはシンジの事を話すときは嬉しそうな顔になる。クローゼはアスカにも役を交代するように提案していたが、アスカは頑としてはねつけていた。

 

「何だ、やっぱりここに居たんだ」

「予行演習が終わったのに、まだ練習していていたのか」

 

 講堂にやって来たのはヨシュアとハンス、エステルとジルだった。

 

「あれ、アスカは来てなかった? 講堂に探しに行ったと思ったんだけど……」

 

 エステルは不思議そうな顔で辺りを見回しながらシンジとクローゼに尋ねたが、二人もアスカの姿を見ていなかった。

 

「お二人さん、キスシーンは上手く行きそうかい?」

「うん、大丈夫だと思うよ」

 

 ジルに質問されたシンジは、少し顔を赤らめながらそう答えた。

 

「みなさんはどうしてこちらに?」

「そろそろ夕食を食べようと思ってさ、呼びに来たんだ」

 

 クローゼに聞かれたハンスはそう答えた。

 

「それにしても、騎士と姫ってお似合いの二人ね、このまま付き合っちゃえば?」

「もう、ジルってば。アスカに聞かれたら大変ですよ」

 

 からかうような口調で話したジルをクローゼは軽い調子で諫めたが、ジルの瞳は真剣だと気が付いた。

 

(……やっぱり、シンジはクローゼと付き合う方がお似合いだって、みんなそう思うわよね)

 

 舞台袖に隠れて話を聞いていたアスカは、ジルの言葉に胸を撃たれる思いだった。

 

「僕達、衣装を着替えるから先に食堂で待っていてよ」

「分かった、それじゃあ行くぜ、ヨシュアの大将」

 

 シンジの言葉にうなずいたハンスはヨシュアにそう声を掛けた。ヨシュアはハンスに向かって不服そうに口をとがらせる。

 

「何で大将なのさ……」

「ふふ、ヨシュアってばすっかりハンスとも仲良くなったみたいね」

 

 エステルは嬉しそうな顔でヨシュアの事を見つめていた。ヨシュアは礼儀正しいが他人を寄せ付けないところがあるので、エステルは心配だった。シンジがヨシュアと出会った時も、ヨシュアはシンジに刺々しい態度をとっていた。

 

「アスカはボクたちの事を三バカトリオって呼ぶけどね」

 

 そうつぶやくシンジの顔はどことなく嬉しそうだ。シンジはもう二年も会っていない学友たちの姿を遠い目をして思い浮かべた。

 

 

 

 

 その日の夕食は明日の学園祭の景気付けを兼ねて少し豪勢なものとなった。明日の学園祭が終わればエステルたちも依頼を終えて学園を去る。学園での最後の晩餐でもあった。

 

「あーっ、もう今日も一日忙しくてお腹ペコペコ」

 

 エステルはそう言ってテーブルに倒れ込んだ。エステルの話によれば、シンジたちが講堂で練習している間、エステルとヨシュア、ジルとハンスは学園祭の準備の手伝いをしていたのだと言う。

 校舎の飾り付け、資料の捜索、そして旧校舎に出現した魔獣退治までやったと聞いたシンジとクローゼは、自分たちだけが演劇の練習をしていた事を謝ったが、エステルたちは笑って許した。

 

「明日は演劇の他に、もう一つ新しいイベントを思い付いたのよ」

「新しいイベント? なんだそりゃ?」

 

 ジルが腰に手を当ててそう言い放つと、ハンスが不思議そうな顔で尋ねるが、ジルはそれは明日のお楽しみだと話した。食堂には続々と学生たちが集まり、明日でお別れとなるエステルたちはこの数日間で知り合った生徒たちに囲まれた。

 シンジが沢山の人に取り囲まれるのは、中学校に転入した際に自分がエヴァのパイロットだと知られた時だった。今は遊撃士として注目されている事もあるが、エヴァに乗らない自分も価値を認められるようになったのだと実感するのだった。

 そして寮に帰ったエステルたちは、明日の学園祭に備えて早めに眠りに就くのだった。

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