アスカとシンジは、空の軌跡の世界で本当の幸せを見つけた ~アスカ・ブライト!~ 作:朝陽晴空
1
アスカも復活し、レイストン要塞へ乗り込むメンバーの準備は整った。しかし肝心の潜入方法が思い付かない。普通の方法では無理だ。しかしアスカが名案を思い付いた。この方法を使えば堂々とレイストン要塞へ入れると話した。
「そうか、兵士に成りすまして入るんだね」
「アンタバカァ!? 所属不明の兵士なんて怪しまれるに決まっているじゃない」
シンジの発言にアスカはそう答えた。
「どこかの部隊に成りすますにしても、王国軍の方に協力者がいないと無理だね」
ヨシュアはシンジの意見をさらに指摘した。
「それなら猫になってシード少佐に拾ってもらうとか」
「……あきれてものが言えないわ」
エステルのバカすぎる提案にアスカはウンザリした顔でため息を吐き出した。場を和ませるためのジョークにしても大滑りだ。
「要塞の定期メンテナンスをしている《ライプニッツ号》に乗れば要塞の中へ入れるって事!」
「なるほど、それは名案ね」
キリカはアスカの作戦に及第点を出したようだ。しかしエステルたちは王国軍の兵士たちに顔がバレてしまっている。整備員として乗り込むのは難しい。そうなると、積荷に紛れて乗り込む事しかない。だがティータはその作戦の穴を指摘した。
「要塞に持ち込まれる積荷は生体感知器でスキャンをされるんです。前に猫のアントワーヌが潜り込んで騒ぎになったから」
ティータは困った顔でエステルたちに事情を説明した。エステルたちが荷物のコンテナの中に隠れても生体スキャンをされては見つかってしまう。
「それなら生体スキャンをごまかす器械があればいいけど……」
ヨシュアはそうつぶやきながら、記憶の中で何かが引っ掛かっている気がしていた。
「アンタたちバカじゃないの? ラッセル博士の発明品があるじゃない」
アスカがそう指摘すると、ティータも思い出したようだった。
「お姉ちゃんたちをお家に案内した時、おじいちゃんが作ってた発明品です!」
ティータの言葉を聞いたエステルたちもラッセル博士に実験を手伝わされた事を思い出した。ただラッセル博士がどんな発明をしたのか理解していたのはアスカだけだった。
「あのオーブメントがあれば、生体感知器のスキャンを無効化する導力場を形成出来ます!」
ティータは嬉しそうにそう言った。
「マジかよ……」
アガットが感心と驚きが入り混じったため息を吐き出した。
「それでそのオーブメントはどこにあるんだ?」
「多分、研究所のどこかにほったらかしになっていると思います……」
マードック工房長に尋ねられたティータは恥ずかしそうにそう言った。キリカはエステルたちにその生体感知器のスキャンを無効化するオーブメントを探しに行くように告げた。
その間にキリカはレイストン要塞の詳細なデータを用意しておくと話した。キリカはマードック工房長に《ライプニッツ号》がレイストン要塞へ行けるように約束を取り付けるように頼んだ。
エステルたちはツァイスの街にあるラッセル博士の自宅兼研究所へと向かう事にした。発明品の山から目的の物を探すには人手が要る。アスカが復活して良かったとエステルたちは思うのだった。
2
ラッセル博士の研究所に着いたエステルたちはさっそくオーブメントを探す事にした。ラッセル博士は発明をする事が趣味なので、発明品を完成させた途端に興味を無くして放り出してしまうのだ。
しらみつぶしに家探しをしていては時間が掛かりすぎる。ティータは発明品の山が転がっている場所にエステルたちを案内した。幸運な事に、ラッセル博士はあれから黒のオーブメントに掛かりきりで新しい発明品を作っていない。発明品の山の表層に目的の物がある可能性が高い。
「ヨシュア、みてみて、これって面白い!」
エステルは自動で床を動き回る円盤のような物体を見て声を上げた。
「それは自動雑巾がけ器です。床を水拭きしてくれるんですよ。でも、スイッチを切らないと壁に当たって方向を変えても動き続けるのが欠点で……」
ティータが律儀に発明品の解説をした。しかしヨシュアはウンザリとした顔でため息を吐き出して、エステルに発明品で遊ぶのを止めるように言った。
「これは……生卵をゆで卵にする器械!?」
料理好きとなってしまったシンジの目がキラリと光った。
「あの博士にしては実用的な発明品じゃない。どうして捨ててあるの?」
アスカは感心したようにつぶやくとティータに尋ねた。
「おじいちゃんは、固ゆで卵じゃなくて半熟卵が好きなんです」
「アイツバカァ!?」
ティータから理由を聞いたアスカはそう叫んだ。ともかく探し始めてそれほど時間が掛からずに、目標の生体感知器のスキャンを無効化するオーブメント《感知妨害器》は見つかった。
エステルたちは遊撃士協会へと戻って《感知妨害器》の発見を報告した。キリカの方もレイストン要塞の詳細データは準備出来ていると答えた。キリカは無断転載は厳禁よ、と言ってエステルたちにレイストン要塞概略図を見せた。
レイストン要塞概略図を見たエステルたちは、軍事機密情報が遊撃士協会にある事に驚きの声を上げた。キリカは情報の入手ルートはエステルたちにも話せないのだと言った。
遊撃士協会は非合法な手段を使う場合もある事も心しておきなさいとキリカは告げた。リベール王国軍と遊撃士協会の関係は他の国に比べて良好であり、その友好関係を崩さないためにも兵士との交戦は最小限に抑えるべきだとキリカはエステルたちに言った。
「アガットも、向こうが敵対の意思を見せないのなら、わざわざ挑発して戦うのは避ける事ね」
「ちっ、仕方ねえな」
キリカはアガットの性格を熟知していて釘を刺した。
「そして……ティータ。遊撃士でもないあなたを危険な任務に参加させるのは気が進まないけれど……決心はついたのね?」
「はい、《感知妨害器》を動かせるのはわたしだけだと思うんです」
キリカの言葉にティータはしっかりとうなずいた。操作方法を覚えれば、アスカにも《感知妨害器》を使う事が出来るかもしれない。しかしティータを潜入作戦に同行させるのは、自分のミスで祖父がさらわれてしまった汚点を自分の手で取り戻そうとするティータへのキリカの思いやりでもあった。
「俺はこの足手まといになりそうなガキを連れて行くのは反対だ」
せっかく話がまとまりかけたところでアガットがそう言うと、場の空気は険悪なものになった。
「だからアタシたちがティータを守ってあげるんじゃないの! 人の願いを叶える手助けをする、それがアタシたち遊撃士の仕事じゃないの!?」
「フン、ひよっこが一人前の口を利きやがって……」
アスカがアガットに噛みつくと、アガットは鼻を鳴らしてそう言った。
「だがまあ、他に潜入方法が無いのなら仕方が無い。今回は特別に連れて行ってやるよ」
アガットが吐き捨てるようにそう言うと、泣きそうだったティータの顔がぱぁっと華やいだ。
「ありがとう、アガットお兄ちゃん!」
「お兄ちゃん……かよ、ケッ」
ティータがそう言うと、アガットは顔を横にそむけた。
「かわいい妹なんだから、しっかりと守ってあげなさいよ」
「うるせえ!」
エステルがそう言うと、アガットはいつもよりムキになっているように答えた。工房船《ライプニッツ号》の準備完了までには、少し時間が掛かりそうだとキリカは話した。その間にアスカの肩慣らしのためにも遊撃士の依頼をこなすようにキリカに勧められた。
◆続・臨時司書の残業◆
【依頼者】コンスタンツェ
【報 酬】1000 Mira
【制 限】3級
いたずらで隠された本はまだあるようだ。
書名は『ハーツ少年の冒険・下巻』だ。
今度の隠し場所のメモは暗号文ではなく絵文字だった……
今エステルたちが引き受けている依頼と言えばこれだった。ツァイス地方のどこかの場所だとは言え、何の手掛かりも無い。しかしティータはこの図で示された場所に心当たりがあると話した。トラット平原の奥まった場所にある小さな広場で、ラッセル博士の野外実験場の一つだと話した。
「研究所の中では出来ない実験をやったりするんですよ。魔獣が入って来れないように四隅に導力灯が設置されているんです」
「どんな実験かは聞きたくもないわ……」
アスカはウンザリとした顔でつぶやいた。アスカもオーブメント装置には興味はある方だが、度を越した実験は御免だ。あまり悠長に時間を掛けているわけにもいかないので、エステルたちはティータに先導されてトラット平原へと向かった。
ティータの先導でトラット平原の外れの森に隠されたように存在している小さな広場にたどり着くと、確かに苔むすほど老朽化した四本の導力灯があった。壊れそうな導力灯を見て、エステルたちは嫌な予感がした。
「やっぱり、魔獣達が集まって来たよ……」
シンジが嫌そうな顔をしてそうつぶやいた。トラット平原に棲む魔獣達の群れが集まって来ていたのだ。しかしフルメンバーのエステルたちにとってはウォーミングアップのようなものだ。特に前衛のアスカは鬱憤を晴らすかのように魔獣達をなぎ倒した。
油紙に包まれた形で『ハーツ少年の冒険・下巻』は埋められていた。エステルたちは悠々と依頼人の元へと向かう。こうして長い連続依頼も終わると思ったのだが、世の中は厳しかった。
「さあ、次で最後の一冊ね」
依頼人のコンスタンツェに本を渡すと、やはり無理難題をふっかけて来た。
「こうなったら意地よ、最後までやってやるわ!」
アスカの言葉を聞いたコンスタンツェは満足そうな笑みを浮かべて最後の依頼を提示した。
◆続々・臨時司書の残業◆
【依頼者】コンスタンツェ
【報 酬】2000 Mira
【制 限】3級
いたずらで隠された本はいよいよ残り一冊となった。
書名は『変身術入門』だ。
ヒントとなる文章は以下の通り。
◆暗号クイズ◆
『ひろばでアそぶこどもがフたりいた。
じゅうでウたれたこどもはカいだんをころげおちた。
ゆうげきシは、そげきはんノあとをおう。
キょうかいのしんぷはよんでいたホんからかおをあげた。
こんなところでアえるとは、ついているものダな』
※遊撃士としての資質が問われるクイズです。
暗号を解いて本の隠し場所を明かしてください。
暗号文を難しい顔で読んでいたエステルは早々にギブアップした。ツァイスの街から遠く離れた場所に隠されているのなら、この依頼は諦めなければならない。しかし暗号が解けたらしいアスカは得意げな笑顔になった。
「ふっふっふ、意外と近い場所に隠されていたから助かったわね」
アスカはそう言うと、エステルたちを遊撃士協会へと先導した。受付のキリカが、まだマードック工房長から連絡が来るには早すぎる時間だとエステルたちに告げると、アスカは別の用事だと言って二階へと上がった。
二階には同じ支部所属の遊撃士のウォンが居た。ラッセル博士の事件に集中しているエステルたちに代わって雑務をこなしてくれている。ウォンはエステルたちに気が付くと笑顔であいさつをした。
アスカの目的は遊撃士協会の二階の多目的室にある本棚だった。エステルたちも協力して本棚を調べると、『変身術入門』は見つかった。エステルたちは喜び勇んで依頼人のコンスタンツェに本を渡した。
「凄いわ、全部の本を見つけてくれるなんて、頑張ったわね。偉い偉い」
コンスタンツェはそう言うと、エステルたちにご褒美だと《妨害3》のクオーツを渡した。生成するのに大量の七耀石が必要とされる高級クオーツに驚くエステルたちに、コンスタンツェは遠慮しないでと言ってエステルたちを見送るのだった。
二階の資料室から、エレベータで中央工房一階のエントランスホールのロビーに降りたエステルたちは、コンスタンツェが受付のヘイゼルと話している事に気が付いた。
まさかコンスタンツェが非常階段を使ってエステルたちの先回りをしたのか? しかしコンスタンツェが長期休暇を取っていたと受付のヘイゼルに話すと、ヘイゼルも不思議そうな顔をした。
「もしかして、今まであたしたちが会っていたコンスタンツェさんって……」
「うん、ルーアンの街で会った変装の名人《怪盗B》に間違いないね」
エステルの言葉にヨシュアはそう答えた。今頃資料室に引き返しても、怪盗Bは姿を消しているだろう。エステルたちは遊撃士協会へと報告に戻る事にした。
3
遊撃士協会へと戻ったエステルたちは、ツァイス地方で解決した今までの依頼をキリカに報告した。するとキリカはエステルたちに累計BPから《準遊撃士・2級》に昇格したと告げた。
「やったね、アスカ」
シンジが穏やかな笑顔でアスカに声を掛ける。アスカの夢である《準遊撃士・1級》まであと一歩だ。グランセル支部の推薦状をもらったら、先に正遊撃士になってしまうけれど。
「2級になれたのはそりゃあ、嬉しいけど……ラッセル博士がレイストン要塞に監禁されている今は跳び上がって喜ぶ事なんて出来ないわよ」
そう言ってアスカはティータの方を見た。
「ラッセル博士を救出した後でたくさん喜べばいいのよ」
エステルはそう言ってアスカとシンジを励ました。そろそろ《ライプニッツ号》の準備が出来ているはずだとキリカは、エステルたちにツァイスの空港へ向かうように指示した。
ラッセル博士の救出作戦を立案実行しながら、ツァイスの街での遊撃士の活動もサポートするキリカにはとても頭が上がらない。ツァイス支部に来てそれほど経たないのにエステルたちは感謝しきれないほど世話になっていた。
エステルたちはキリカにお礼を言いながら遊撃士協会を出てツァイス空港へと向かった。アガットが居るとはいえ、準遊撃士のエステルたちには難しいミッションだ。キリカは作戦の成功を祈るのだった。
エステルたちが空港の発着場に着くと、空飛ぶ工房船《ライプニッツ号》が出航の準備を大忙しでしていた。グスタフ整備長の怒号が飛び交う。
「ちょうどいいタイミングで、王国軍からの依頼があってね。これでレイストン要塞に入れるぞ」
マードック工房長は嬉しそうな笑顔でエステルたちに話し掛けた。ライプニッツ号は巨大なレーンに乗せられてエステルたちの前へと到着した。その迫力にエステルとヨシュアは度肝を抜かれた。
「ボクたちはエヴァに乗って出撃するなんて事はもう無いだろうね」
「当たり前じゃない」
シンジのつぶやきに、アスカはあきれた顔でため息をついた。二人はライプニッツ号よりも大きな乗り物で戦っていた。ライプニッツ号から鉄の足場が伸ばされ、グスタフ整備長が降りて来た。
「ティータの嬢ちゃんよ、ラッセル博士の話は聞いたぜ。みんなラッセル博士には大きな恩があるからな、力になるぜ」
「ありがとうございます、整備長さん!」
グスタフ整備長にティータは明るい笑顔でお礼を言った。グスタフ整備長は真剣な表情になってエステルたちの方を向いて尋ねる。
「それで遊撃士の嬢ちゃんたちは準備は出来たのかい?」
レイストン要塞に乗り込めば街に戻って補給する事も出来ない。エステルたちはグスタフ整備長に向かって真剣な表情でうなずいた。
「ようし、それなら乗った乗った、工房船《ライプニッツ号》へようこそ、歓迎するぜ!」
グスタフ整備長は笑顔でエステルたちを迎え入れた。
「博士の事をよろしく頼む。そしてティータ君を守ってやってくれ」
「任せなさい!」
見送るマードック工房長の言葉に、アスカは胸を張って堂々と答えた。
「それでは行ってきます」
シンジはそう言ってマードック工房長に頭を下げた。エステルたちを乗せたライプニッツ号はツァイス空港を飛び立ち、レイストン要塞に向かって行った……。
4
エステルたちの乗ったライプニッツ号は、順調にヴァレリア湖の上空を飛んでいた。徒歩で曲がりくねった街道を歩いても半日と掛からない道のりだ。直線距離で進めばさらに短い時間でレイストン要塞へ到着する。
グスタフ整備長はエステルたちを船倉にあるコンテナの一つの前に案内した。
「お前さんたちにはこのコンテナに隠れてもらう」
「アンタバカァ!? この狭い箱に六人で入れっての!?」
グスタフ整備長がそう言うと、アスカは怒った顔で叫んだ。
「ダミーとして擬装用の機材を入れるからさらにスペースは狭くなるな」
そのグスタフ整備長の言葉を聞いたシンジはあわてて尋ねる。
「いくつかの箱に分かれるとか、もっと大きなコンテナを用意してもらえませんか?」
「そいつはリスクが高くなるから出来ない相談だな」
生体スキャンを無効化する探知妨害器は一つしかないし、大型コンテナはチェックが厳しい。覚悟を決めたエステルたちはどのようにコンテナの中に入るのかどうか話し合った。
おしくらまんじゅうのように立って密着するような体勢で入る事になるのだが、男子三人・女子三人と人数が半端なので必然的に男女の身体が密着する事になってしまう。
「とにかく、アガットとティータをくっ付けるわけにはいかないわ!」
「何でだよ!?」
初っ端からアスカがそう言いだすと、アガットは声を上げた。
「アンタとティータは十二歳も離れているのよ、ロリコンを一緒にするわけにはいかないわ」
アスカは腕組みをしてアガットにそう言い放った。アガットは青筋を立てて怒鳴り返す。
「俺はロリコンじゃねえ!」
「ロリコンって何ですか?」
ティータが不思議そうな顔で尋ねた。
「ほらアスカも、加持さんとはもっと歳も離れていた事だし……」
「それは関係無いでしょうがバカシンジ」
シンジが仲裁すると、アスカはそれ以上しつこくアガットをなじる事はしなかった。
| エステル | アスカ | ティータ |
| ヨシュア | シンジ | アガット |
結局ヨシュアもシンジもエステルやアスカを他の相手と向かい合わせにさせる気持ちにはなれず、この隊列でコンテナに入る事にした。レイストン要塞までのフライトは30分、グスタフ整備長はその間に擬装コンテナの用意をしておくと話した。
擬装コンテナがバレたらエステルたちだけでなく、中央工房の作業員全員が王国軍から睨まれる事になる。ライプニッツ号の乗員たちは緊張感を持って仕事に臨んでいた。
エステルたちは待っている間ライプニッツ号の中を見て回っていたが、いつの間にかティータとアガットの仲が良くなっている事に気が付いた。ティータは笑顔でアガットをお兄ちゃんと呼んで、アガットの戦術オーブメントの点検をしていた。
アガットも戦術オーブメントをいじるティータの姿を穏やかな笑顔で見つめていた。
「そうだ、アガットお兄ちゃんって妹さんがいるんですか?」
ティータに聞かれたアガットは顔色が変わった。
「……どうしてそう思うんだ?」
「あのあの、何となくそう感じたんです。聞いちゃいけない事でしたか?」
鋭い目でアガットに睨まれたティータは困った顔でそう答えた。アガットは故郷にミーシャというティータと同じ歳位の妹が居ると答えた。遊撃士の仕事があるので、あまり会いに行けないと話した。
「なるほど、アガットはロリコンじゃなくてシスコンだったのね」
アガットとティータの話を物陰で聞いていたアスカはそうつぶやいた。
「アスカ、盗み聞きは良くないと思うよ」
シンジに促されてアスカはその場を離れるのだった。
5
擬装コンテナの準備が完了したと連絡を受けたエステルたちは船倉へと向かい、擬装コンテナ前に集合した。周りから見ると隙間無く金属のプレートが積まれているように納められていて、真ん中の空間にエステルたちが入る事になる。
一番最初にコンテナの奥に入ったのはヨシュアだった。次にエステルが入る事になったのだが、詰めないと残り四人が入れないため、エステルは顔を真っ赤にしながらヨシュアにピッタリ身体をくっ付けた。
「ほら、頭はこっちに向けて」
ヨシュアに言われた方にエステルが顔を向けると、口付けが出来そうな至近距離で見つめ合う事になる。それはアスカとシンジも同じ事だった。長い時間お互いに真正面から見つめ合う事は恥ずかしいものだった。
さらに腕や肘に当たってしまう柔らかい部位、鼻孔をくすぐる髪の香りなど、シンジとヨシュアは我慢するのが大変だった。ティータとアガットは身長差があったため、お互いの顔が近づく事は無かった。
エステルたちが擬装コンテナに入ってから10分も経たないうちに《ライプニッツ号》はレイストン要塞の南東ブロックに位置する飛行船発着場へと着陸した。船倉から次々とコンテナが運び出され、シード少佐の小隊による検査を待っていた。
グスタフ整備長とシード少佐は顔見知りのようで、エステルたちはコンテナの中で話を聞いていた。話題が中央工房の襲撃事件になると、シード少佐は犯人の手掛かりをつかんだので数日中に事件は解決するだろうとグスタフ整備長に話した。
シード少佐の配下たちは、発着場から降ろされて並べられたコンテナを感知器で調査を始めた。「異常無し」「OKです」確認をする声が静かな発着場に響いた。しかし、とあるコンテナの前で「生体センサーに反応あり!」と声が上がった。
そのコンテナはエステルたちが潜んでいるコンテナのようだった。エステルたちは息を飲んだ。感知妨害器が壊れたのか、それとも上手く動かせなかったのか、ティータは真っ青な顔になった。
(……ティータ、そんなに自分を責めないで。アンタだけが悪いわけじゃない)
声の出せないアスカは、心の中で励ます事しかできなかった。
「多分、ネズミ辺りが紛れ込んでいるんでしょう。気になさるほどの事では……」
「グスタフ整備長、悪いがこれは規則なのでね。中を検めさせてもらう」
グスタフ整備長の制止を聞き入れず、シード少佐は配下の兵士に命じて、生体反応のあったコンテナを開けさせようとした……!
◆暗号クイズ◆ の答え
カタカナで書かれた文字を漢字に変換すると、
『遊 二
撃 階
士 の
協 本
会 棚』
になります。