アスカとシンジは、空の軌跡の世界で本当の幸せを見つけた ~アスカ・ブライト!~   作:朝陽晴空

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第四十五話 クローディア姫救出作戦! シンジは姫に抱き付かれてドキドキ!?

 

 その頃、リシャール大佐は特務兵の部隊を引き連れてリベール王国の王都の地下深くに眠る古代遺跡に足を踏み入れていた。ロランス少尉とサトミ軍曹も一緒だ。特務兵たちは古代遺跡の大きさに驚くばかりだった。

 

「ロランス少尉、最深部までの案内を頼む」

「了解……」

 

 リシャール大佐にロランス少尉がそう答えると、機械仕掛けの鳥のような魔獣達が二匹飛来して襲い掛かって来た。驚く特務兵の前で、リシャール大佐とロランス少尉は一刀両断にして倒した。爆炎を上げて魔獣達は粉々になった。

 

「君の方が速かったようだな。やはり私は本気の君には勝てそうにない」

「ご謙遜なさいますな」

 

 リシャール大佐の言葉にロランス少尉はそう答えた。

 

「さすがリシャール大佐、《剣聖》より受け継いだ剣技です」

「まだ未熟者だがな」

 

 ロランス少尉の言葉にリシャール大佐はそう答えた。

 

「しかし時代は未熟者の成長を待ってはくれない……諸君よ、大いなる力への道は開かれた! 我らのリベールを取り戻す日が来たのだ!」

 

 リシャール大佐そう宣言すると、特務兵達も敬礼を持って応える。

 

「リベールに栄光あれ!」

「リベールに栄光あれ!」

 

 特務兵たちは声をそろえて復唱するのだった……。

 

 

 

 

 城から戻ったエステルたちは、遊撃士協会のエルナンにアリシア女王から受けた依頼について報告した。エルナンはエステルたちを労う言葉を掛けると、ラッセル博士の依頼に対する報酬を渡した。報酬は活動資金にして欲しいとエルナンは話した。

 エルナンはジンに対してもお礼と歓迎の言葉を述べた。準S級遊撃士としての力を貸してくださいとエルナンが頼むと、ジンはもちろんそのつもりだと答えた。遊撃士のランクは原則としてGからAまでの七段階、非公式にS級が存在する。

 ジンはカシウスと共に五年前のカルバード共和国を揺るがす大事件を解決して二人ともS級に推薦されたが、ジンは頑なに拒んだので、準S級と言う扱いになっている。

 

「王国軍の英雄だとか、《剣聖》だとか、S級遊撃士だとか言うんなら、さっさとリベールに帰って来て、こんな事件ちゃっちゃっと解決すればいいのに」

 

 エステルは顔を膨れさせてぼやいた。

 

「アタシはあの髭親父を超えて見せるつもりよ!」

 

 アスカは腕組みをしてそう宣言をした。

 

「ははは、カシウスの旦那がいたら、クーデターなど起こる前に潰していたかもしれないな」

 

 ジンは笑ってそうつぶやいた。ジンの言葉を聞いたヨシュアは気が付いたように話した。

 

「そうか、一連の事件は父さんが旅立ってから起こっている。リシャール大佐は父さんがリベールを留守にしている間にクーデターを成功させようとしている、そんな気がするんだ」

 

 ヨシュアの推理が当たっているのならば、カシウスが帰って来る女王生誕祭の前にリシャール大佐は決着をつけたがっている。

 

「そうなると、カシウスの旦那が帝国に呼ばれたのも、クーデター計画の一つとなるわけだな」

 

 ジンは難しい顔をしてそうつぶやいた。

 

「しかし、それはリシャール大佐には難しいでしょう。帝国側の遊撃士協会を襲撃させるだけの伝手があると思えない。リシャール大佐が帝国と繋がるなんて考えられませんからね」

 

 ヨシュアはさらに自分の推論をそう話した。二つの大きな事件が偶然重なっただけだとエステルたちは結論付けた。カシウスの力を借りることが出来ない今、自分たちの手で事件を解決するしかない。

 エルナンは遊撃士協会・王都支部は緊急事態宣言をすると話した。アリシア女王からの直接の依頼で、遊撃士協会規約第三項『国家権力への不干渉』の障壁も無くなり、王都に居る遊撃士全員が一丸となってこの依頼を解決するまで、通常の業務を停止する宣言だと話した。

 

「まあ、情報部とタメ張るならその位の戦力が無いとね」

 

 アスカは腕組みをしながらそうつぶやいた。他の国内支部にも協力を要請したが、今日になって関所や空港が王国軍によって閉鎖されたとエルナンは話した。名目はテロリスト対策。情報部に先手を打たれてしまった。

 これ以上エステルたちの戦力を増やさない作戦に出たのだろうとエルナンは話した。閉鎖が長く続けば王国経済にも大きな影響を与える。リシャール大佐は短期決戦に出たのだとエルナンは言った。クローディア姫救出作戦は王都に来ている遊撃士だけの戦力で決行するしかないとエルナンは厳しい表情で話した。

 

「こうなったら、やるっきゃないわよね!」

 

 絶望的な状況でも明るさを忘れないエステルに、アスカたちは励まされた。

 

「それで、人質が捕まっている場所に見当はついていますか?」

「色々な場所を考えてみましたが、一番怪しいのは《エルベ離宮》だと思われます」

 

 ヨシュアの質問にエルナンはそう答えた。特務兵たちはエルベ離宮に人を近づけないようにしているし、レイストン要塞のような場所に王族の女性を監禁するのはリシャール大佐は抵抗があるのではとエルナンは推理した。

 

「だが、怪しいというだけで突入は出来ない。確証が欲しいところだな」

 

 ジンの言葉にエルナンはうなずいた。

 

「エステルさんたちには、記者のお知り合いが居ましたね?」

「ああ、ナイアルの事ね」

 

 エルナンの質問にアスカはそう答えた。

 

「彼ならば軍の情報を何か掴んでいるかもしれません。聞いて来てもらえますか?」

「了解、リベール通信社にも行ってみるわ」

 

 エルナンの言葉にアスカはそう答えてうなずいた。エルナンは他にも、突入の際には潜伏している親衛隊の力を借りたいので礼拝堂に居るユリア中尉と連絡を取る事、グランセルの街に散らばっている遊撃士たちにここへ集まるように伝える事をエステルたちに頼んだ。

 

 ◆人質解放作戦◆

 

 【依頼者】アリシア女王陛下

 【報 酬】???? Mira

 【制 限】直接依頼

 

 アリシア女王陛下から情報部の人質になっている人々の救出を依頼された。

 クローディア姫も監禁されているようだ。

 

 

 

 

 エステルたちは遊撃士協会を出てすぐ近くにある居酒屋《サニーベル・イン》でカルナたち遊撃士が集まって談笑しているのを見つけた。クラウス市長の護衛で来ていたシェラザードも一緒だった。

 重要な話があると広場までカルナたちを先導したエステルたちは、アリシア女王からの依頼を話した。事態の深刻さを理解したカルナたちは遊撃士協会へと集まってくれることになった。シェラザードはクラウス市長の許可を得てから合流すると話した。

 遊撃士に声を掛け終わったエステルたちはリベール通信社の二階、編集部へと向かった。編集部ではドロシーが編集長に向かって不安そうな顔で何かを訴えていた。

 

「編集長、ナイアルさんから二日も連絡が無いなんて、絶対変ですよ」

「うーん、君はまだ新人で分からないだろうけど、彼の事だからスクープを追いかけるのに夢中になっているだけかもしれないな」

 

 編集長はドロシーの心配など気にしていない様子で答えた。

 

「あ、エステルちゃんたち」

 

 編集部に入って来たエステルたちの姿に気が付いたドロシーはそう声を掛けた。

 

「こんにちは、ドロシーさん」

 

 エステルが明るく挨拶をした。

 

「何か揉めているようだけど、どうしたの?」

 

 アスカが尋ねると、編集長はこの二日間、ナイアルが編集部に来ていないと話した。

 

「あたしたち、一昨日の夕方にナイアルさんとここで会いましたけど」

 

 エステルがそう言うとドロシーは心配そうな顔で尋ねた。

 

「その時ナイアル先輩はどこかに行くとか話してなかった?」

 

 ◆三択クイズ◆

 

 Q.ドロシーの質問にどう答えよう?

 

 【家に帰った】

 【誰かに呼び出された】

 【夕食を食べに行った】

 

 

 

 

 

 

 ※遊撃士の資質を問うクイズです。

  正解するとボーナスBPがもらえるので挑戦してみてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこにある導力通信器が鳴って、誰かに呼び出されたみたいよ」

 

 ドロシーの質問にエステルはそう答えた。

 

「ああ先輩、殺されてしまうだなんて~!」

 

 どういう思考回路でそのような結論が出るのか、ドロシーは大声で泣き出した。ドロシーの話を聞くと、その電話はナイアルに恨みを持つ者からの電話で、一人で来いと人気の無い場所に呼び出されたナイアルは犯人にナイフで刺されて殺されたのだと想像したらしい。何ともたくましい想像力だ。

 

「アンタバカァ!?」

 

 今までの無いほどのドロシーの大ボケに、アスカの最上級のツッコミが炸裂した。

 

「今日になって定期船や関所が閉鎖されたから、帰れないだけ……とか」

 

 シンジが希望的観測も含めてそうつぶやくと、編集長はナイアルが別の地方に取材に行く予定は聞いていないのでその確率は低いだろうと話した。そうなると、ナイアルは王都のどこかに居るのだろうと編集長は言った。

 

「そうだ、君たちはナイアル君がどんなネタを追っていたか聞いていなかったかね? 最近、軍の検閲が厳しくて武術大会のネタしか書けなかった彼は私に極秘で何かを取材していたようだが……」

 

 編集長に尋ねられたエステルたちは考え込んだ。せっかく記事を書いても情報部に潰されてはどうしようもないネタは避けるはず。情報部に検閲されても問題が無いスクープネタとは何だろうか?

 

 ◆三択クイズ◆

 

 Q.ナイアルが一昨日話していたスクープネタはなんだろう?

 

 【武術大会の優勝者ジンとキリカ嬢の関係に迫る!】

 【クローディア姫の結婚相手が明らかに!】

 【ユリア中尉とカノーネ大尉、因縁の過去!】

 

 

 

 ※遊撃士としての資質を問うクイズです。

  正解するとボーナスBPがもらえるので挑戦してみてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、晩餐会の時に公爵も話していたな……」 

 

 ジンが感心したようにつぶやいた。

 

「何だ、ナイアル君が追っていたのはそのネタだったか。確かに相手が分かったら大スクープになるからね。どうにかして突き止めてみせるとは話していたが……」

 

 編集長は腕組みをしながらそうつぶやいた。

 

「王室関係者以外知るはずの無い情報を、どうやってナイアルさんは聞いたんだろう」

 

 ヨシュアは考え込むような表情でそうつぶやいた。ドロシーの話によると、ナイアルはエルベ離宮で働いている友人から聞いたのだと言う。

 

「オフレコ情報だけど、姫様がテロリストに狙われているらしくて、エルベ離宮でこっそり内緒で保護されているそうですよ」

 

 ドロシーの口からとんでもない情報が飛び出すと、エステルたちは驚いて息を飲んだ。この人は凄いんだかそうじゃないんだかわからない。もしエステルたちがナイアルにあった時に連絡して来たのがエルベ離宮に居るナイアルの友人だとしたら、ナイアルもエルベ離宮で捕まって居る可能性が高い。だから連絡が出来ないのだ。

 

「ナイアル君の事だから、姫殿下に突撃インタビューをする事もあり得る……」

「それで捕まったらどうにもならないじゃない」

 

 編集長の言葉を聞いたアスカはあきれた顔でため息を吐き出した。

 

「えーん、ナイアル先輩が処刑されちゃうよ~!」

「不法侵入だけで処刑はされないわよ……」

 

 泣き叫ぶドロシーにアスカはあきれた表情のままツッコミを入れた。

 

「君たちは遊撃士だろう? お願いだ、ナイアル君を助け出してくれ!」

「お願いします~」

 

 編集長とドロシーはエステルたちに頭を下げた。

 

「うん、任せておいて!」

 

 エステルは力強くそう答えると、次はユリア中尉に会うため、大聖堂へと向かうのだった。

 

 

 

 

 エステルたちが大聖堂を訪れると、ユリア中尉が変装しているシスター・エレンの姿が見当たらなかった。教会のカラント大司教に話を聞くと、カラント大司教は事情は知っていると話した上で、シスター・エレンはもうこの大聖堂には居ないと言った。今朝早くカラント大司教に別れのあいさつをして、行方も告げずに去ってしまったのだと言う。

 これ以上、教会を巻き込みたくないとユリア中尉は考えたのだろうとカラント大司教は話した。不安がるエステルたちに、カラント大司教は安心するように告げた。教会を去る時のユリア中尉は、希望に満ちた表情をしていたとカラント大司教は話した。

 ユリア中尉は逃げるために去ったのではない事に一安心したエステルたちだが、突入のタイミングに合わせて潜伏中の王室親衛隊の協力を得るのは難しくなった。

 

「仕方ない、王室親衛隊の事は当てにしないで考えようぜ」

 

 ジンの言葉に従い、エステルたちは遊撃士協会へと戻るのだった。

 エステルたちが遊撃士協会の受付に入ると、カルナ、クルツ、アネラス、グラッツの四人が待っていた。親衛隊と連絡をつける事は出来なかったが、ドロシーから聞いた話をエルナンに報告すると、エルナンはクローディア姫がエルベ離宮に居る確証は得られたと断言した。

 

「それでは作戦を練る必要がありそうですね」

 

 エルナンはそう言って、エステルやカルナたち、その場に居た遊撃士全員を二階の部屋へと集めた。エルナンは机に王都グランセル周辺の地図と、エルベ離宮の図面を広げた。エルベ離宮は一般市民にも開放されていたので、構造を把握するのは簡単な事だった。

 まずエルナンは改めて作戦参加の意思をカルナたちに問うが、誰も降りる者は居なかった。ダルモア市長の事件の黒幕がリシャール大佐だと知ったカルナは落とし前をつけてやると闘志を燃やしていた。

 

「それでは、具体的な作戦を立てたいと思います。普通、人質解放は犯人側と交渉して行うものですが、リシャール大佐の目的からして話し合いに応じるとは思えません。さらにリシャール大佐の狙いが時間稼ぎである事から、ゆっくりとしているわけにもいきません」

 

 エルナンはそう話すと、パワーとスピードで押す、拠点攻略の形で行くと話した。王家の人間ならば隠し通路など知っている可能性があるが、侵入経路を探る時間も無い。その方法しかないと遊撃士全員が納得した。

 拠点攻略は、陽動組と突入組に別れて行うのが基本だとクルツは言った。外で騒ぎを起こして警備を引き付けている間に別動隊が突入する。ジンは陽動で引き付けられた敵を待ち伏せ攻撃する要撃組と、突入時に混乱を起こして助けるかく乱組もあった方が良いと話した。

 エステルたち準遊撃士四人と後で合流するシェラザードを含めて正遊撃士が六人。四つの組に別れるだけの人数的余裕が欲しいところだ。関所と空港が閉鎖されている今、他の地方から応援の遊撃士を呼ぶ事は出来ない。

 エルナンは陽動組と突入組だけではリスクが大きいと話した。他の作戦に切り替えた方が良いかもしれないとエルナンが提案した時、一階の階段から誰かが昇って来る足音が聞こえた。

 

「足りない人数は、我々が補わせていただこう」

 

 そう言って姿を現したのはシスター・エレンに変装してやって来たユリア中尉だった。ユリア中尉を含めた九人の親衛隊士が作戦に参加してくれる事になり、要撃組とかく乱組が確保出来た。

 

「でもどうしてアタシたちがアリシア女王から依頼を受けたって分かったの? 教会にアタシたちが行った時には居なかったじゃない」

 

 アスカが不思議そうな顔で尋ねると、ユリア中尉は笑みをこぼした。

 

「昨日の夜の時点から知っていたよ。私には情報部にも勝る特別なルートがあってね」

 

 グランセル支部に来てからエステルたちにクールな表情しか見せていなかったエルナンも、顔を紅潮させるほど興奮して叫んだ。

 

「これで作戦の成功率も跳ね上がりましたよ! それでは役割分担を決めましょう」

 

 陽動組は親衛隊士の四人が行う事になった。テロリストして手配されている親衛隊が姿を現せれば、エルベ周遊道を巡回する特務兵たちは釣られて追いかけて来るだろう。親衛隊を見つけた特務兵たちはエルベ離宮を守る部隊にも応援を要請する事が予想される。

 その特務兵の応援部隊をエルベ周遊道の近くの森で待ち伏せて迎撃するのが要撃組だ。要撃組は狙撃手のカルナが居る正遊撃士の四人に決まった。シェラザードも要撃に参加する準備を整えた。

 かく乱組はユリア中尉率いる残りの四名の親衛隊士とジンに決まった。親衛隊の目的はクローディア姫の救出だと特務兵たちも思い込んでいるはず、そうすれば陽動と突入の二組に分かれて来たのだと特務兵たちを騙す事が出来る。

 そして本命の突入組はエステルたち四人となった。ジンが突入組にならなかったのは、2アージュを超える身長と巨体が目立ちすぎる事もあった。

 

「他の組のみんなはお前たちの成功のために命を張っている。大切な役目だ、気合い入れて行けよ!」

「はい!」

 

 ジンの言葉にシンジは元気良く返事を返したのだった。

 

「敵の大部分は我々が引き受ける。君たちは人質を救出する事だけに集中すればいい」

 

 クルツもそう言って突入組になったエステルたちを励ました。

 

「僕達四人だけで達成する依頼じゃない、みんなの力を合わせればきっと大丈夫さ!」

 

 ヨシュアはそう言ってエステルに微笑みかけた。

 

「よし、やってやるわ!」

 

 エステルも元気な声でヨシュアに返事をした。アスカは作戦の成功を確信しているようにシンジは思った。

 

「これにて作戦会議は終了します。作戦決行は明け方、敵が一番油断する時間帯が良いでしょう。一度作戦が始まってしまえば、物資を補給に街へと戻ることは出来ません、今のうちに必要な物を揃えるようにしてください」

 

 エルナンの言葉で、一時解散となった。ユリア中尉は様々な方法で王都に潜伏している親衛隊たちと連絡を取ると言って出て行った。カルナたちは武器の手入れを始めた。

 エステルたちは街に出て、長期戦に備えて食材をたくさん買い込んだ。シンジの作る料理の中には、凍結やマヒなど状態異常を直したり、一時的に攻撃力を上げるなどと言ったものもあるのだ。ロレントを旅立つ時に渡されたレシピ手帳のページはほとんど埋まっていた。

 

 

 

 

 その日の夜、エステルたち突入組は数日前にシスター・エレンに変装していたユリア中尉と出会ったエルベ周遊道の外れで待機をしていた。要撃組のカルナたちも一緒だ。ユリア中尉と親衛隊が見つからずにここまで来れるか心配だったが、全員揃って姿を現した。

 

「よし、エステル君、君が作戦開始の号令をかけて欲しい」

「えっ?」

 

 クルツにそう言われたエステルは驚きの声を上げた。

 

「依頼を女王陛下から受けたのは君たちだ、この作戦の主役と言ってもいい」

 

 困惑するエステルにクルツはそう声を掛けた。

 

「でも、あたしはまだ新米遊撃士だし、先輩たちの方が……」

「何をモジモジしているのよ、何だったら将来のエース遊撃士のアタシが号令を掛けようか?」

 

 照れて顔を赤くしているエステルに、アスカはそう声を掛ける。エステルは覚悟を決めて全員が見つめる前に立った。

 

「これより、エルベ離宮を攻略し、人質を解放する作戦を開始する!」

 

 エステルの号令により、陽動組、要撃組は行動を開始した。エステルたち突入組とかく乱組の出番はその後だ。

 

「はあ……これでエルベ周遊道を巡回するのも何周目だ……?」

「後、数周もすれば交代できるだろうよ」

 

 二人組で巡回をする特務兵たちはそんな事をぼやいていた。

 

「これだけ探しても見つからないとは、潜伏中の親衛隊は本当に王都に居るのか?」

「関所が封鎖される前に尻尾を巻いて遠くに逃げてしまったに違いない」

 

 特務兵たちはそう話してお互いに笑い合った。

 

「尻尾を巻いて逃げるのはお前たちの方だ」

 

 声がした方向を特務兵たちが見ると、そこのは親衛隊たちの姿があった。親衛隊たちの人数は五人、特務兵たちは二人。

 

「ここは俺が食い止める、お前はエルベ離宮に行って応援を呼んでくれ!」

 

 一人の特務兵の男は親衛隊に立ち向かったが、もう一人の特務兵の男は逃げだして行った。しかしそれはシナリオ通り。親衛隊は逃げる特務兵の男を追いかける振りをしてわざと逃がした。

 エルベ離宮の入口には特務兵たちと犬型魔獣達が集められた。その数は合わせて30は超えている。

 

「今、巡回中の隊員から報告があった。親衛隊の残党を発見したらしい。また逃がしたとあっては我が隊の名折れだ。この機会にやつらを殲滅させる!」

「イエッサー!」

 

 そう号令をかけた中隊長に続いて特務兵たちと犬型魔獣達はエルベ離宮の正門から出撃して行った。

 

「ふう、楽勝だったな」

 

 陽動組の親衛隊は最初の特務兵をあっさりと倒していた。しかし油断は出来ない。この後はエルベ離宮から出撃した特務兵がどっと押し寄せて来る。要撃組が全て倒してくれるわけではない。それに潜伏中の親衛隊全員が集まっているかのように派手に暴れなければならない。陽動だと悟られては失敗なのだ。

 

「バカな連中め、事が終わるまで隠れてガタガタ震えていればいいものを」

 

 30人を超える部隊を引きつれた中隊長は勝ち誇ったように四人の親衛隊たちに向かって声を掛けた。中隊長の号令で、特務兵と犬型魔獣の混成部隊は親衛隊たちに襲い掛かった。

 しかしその時、特務兵たちの部隊の背後から、導力銃による攻撃が行われた。驚いた特務兵たちが振り返ると、そこにはカルナたち遊撃士の姿があった。

 

「お前たちは遊撃士か!? まさか、軍に歯向かうつもりか!」

 

 遊撃士は軍に逆らうことは出来ないのを中隊長は知っていた。だからそう言って脅せば遊撃士は手を引くだろうと思っていたが、その目論見は打ち砕かれた。

 

「残念だが君たちは人々の自由を不当に拘束している凶悪犯だ」

 

 クルツは中隊長に向かってそう答えた。

 

「陛下公認の依頼だ、手加減無しでやらせてもらうよ!」

 

 カルナも威勢よくそう宣言すると、特務兵たちに猛攻を加えた。兵力差は30対10、特務兵たちの方が有利だが、挟撃されて混乱して指揮系統が乱れた部隊ほど惨めなものは無い。特務兵たちはバタバタと倒れて行った。

 

 

 

 

 陽動組と要撃組が戦っている間、エステルたちは最初の集合場所でじっと待機をしていた。要撃組が動き出した今がチャンスとみたエステルたちは行動を開始する。

 

「まず、私たちがエルベ離宮の前で残った敵を引きつける。その隙に君たちはエルベ離宮の内部へと突入してくれ!」

「俺も派手に暴れてやる事にするかな!」

「分かりました、あなたたちにも女神エイドスの加護を!」

 

 ユリア中尉とジンにヨシュアはそう声を掛けて見送った。ユリア中尉と四人の親衛隊たちとジンの姿が見えなくなったところで、エステルたち突入組は動き出した。エステルたちの動きが捕捉されれば救出作戦は失敗だ、道中で見つかるわけにはいかない。

 エルベ離宮の庭園ではユリア中尉が堂々と名乗りを上げて、親衛隊たちと共に特務兵たちと戦っていた。特務兵をちぎっては投げる巨体のジンに注目が集まる。エステルたちに目を向ける特務兵の姿は無い。この機会を逃さず、エステルたちは正面切ってエルベ離宮の建物の中へと侵入した。

 

「貴様ら、どうしてここに!?」

 

 エルベ離宮の玄関ホールで泡を食って驚いたのは三人の特務兵だった。この程度の人数ならばエステルたちも後れは取らない。応援を呼ばれる前に制圧した。人質はどこに捕まって居るのか前もって調べることは出来なかった。

 

「ここはそんなに広い建物じゃない、隈なく探して行こう」

 

 ヨシュアの意見にエステルたちは賛成した。

 

「ボヤボヤして居ると庭に居るヤツラがやって来るわよ、早く行きましょう!」

 

 アスカの言葉にうなずいたエステルたちは、迷いを捨ててエルベ離宮の中を駆け回るのだった。中庭に出たエステルたちは特務兵二人と犬型魔獣二匹の小隊との戦闘に突入した。応援を呼ばれると困るエステルたちは、全力で叩きのめした。

 

「まだ建物の中にはかなりの特務兵が残っているみたいだね」

「片っ端から黙らせてやるのよ!」

 

 シンジの言葉に、アスカはそう答えた。こんなに速攻を強いられる戦いは初めてだった。導力魔法を唱える間もなく、シンジも導力銃を乱射する。ターミネータにでもなった気分だ。

 中庭に面した部屋を一つ一つ、特務兵を蹴散らしながら確認して行く。すると鍵が掛かって開かない扉があった。

 

「いかにも怪しい部屋ね」

「でも鍵が掛かっているから、後回しにするしかなさそうだ」

 

 エステルの言葉に、ヨシュアはそう言った。図書室や応接室などを見て回るが、特務兵の小隊の姿ばかり。談話室では騒ぎに気が付かない特務兵たち六人が、酒を飲んでいた。

 

「えっ、あなた方は?」

 

 バーテンダーの男性が部屋に踏み込んで来たエステルたちの姿を見て驚きの声を上げた。

 

「あー? お前たち見かけない顔だが、新入りか?」

「ここに来て一緒に呑もうや」

 

 六人の酒臭い特務兵たちはすっかり酔っぱらってしまっていて、エステルたちを侵入者だと認識していないようだ。

 

「この遊撃士の紋章が目に入らぬかぁ!」

 

 エステルがそう言って胸に付けた準遊撃士の紋章を指差すと、特務兵たちはヘラヘラと笑い出した。

 

「何だお前ら、やっぱり見習いじゃないか」

「アンタたちバカァ!? 論点はそこじゃないでしょう!」

 

 アスカはそう言って特務兵の頭を棒で叩きのめした。酔い潰れた特務兵たちを気絶させるのはエステルたちに何の苦労も無かった。バーテンダーの男はエステルたちが遊撃士だと気が付くと、助けてくれたお礼を言った。

 バーテンダーの男性によると、友人の記者が特務兵たちに捕まってしまったのだと言う。エステルがナイアルの事を話すと、3日前に編集部のナイアルに連絡を入れたのは自分だと言った。

 ナイアルはどうしてもクローディア姫に突撃インタビューがしたいと頼み込んで来たので、こっそりとエルベ離宮の中に入れようとしたが、特務兵たちに見つかってしまい捕まってしまったのだとバーテンダーの男性は話した。

 

「ナイアルが捕まってからやっと気が付いたよ。姫様はテロリストから保護されているんじゃなくて、特務兵たちに監禁されているって事にね」

 

 エステルたちが人質の居場所を知っているかどうかバーテンダーの男性に尋ねると、《紋章の間》にクローディア姫と一緒に閉じ込められて居るとバーテンダーの男性は答えた。エルベ離宮で一番広い大広間だと言う。

 

「その大広間って、鍵が掛かっていて開かなかった扉の部屋じゃないかな?」

「《紋章の間》の鍵は、エルベ離宮の警備隊長が持っていたはずだよ」

 

 エステルの言葉に、バーテンダーの男性はそう答えた。

 

「それじゃ、その警備隊長とやらを探しましょう!」

 

 アスカがそう言って談話室を飛び出そうとすると、バーテンダーの男性が呼び止めた。

 

「警備隊長なら、そこで寝ている特務兵がそうだよ」

「アンタバカァ!?」

 

 アスカは気絶していて聞こえるはずの無い警備隊長にそう言い放つのだった。

 

 

 

 

 エステルが警備隊長から手に入れた鍵を使って中庭の奥にある部屋の入口の扉の鍵を外して中へと入ると、レッドカーペットが敷かれた長い廊下が目前に広がっていた。この奥にあるのが《紋章の間》だろう。

 しかし紋章の間へ通じる扉の前には、見るからに重装備をした特務兵たちが二人、見張りに立っていた。こいつらを倒せば人質は解放できる、エステルたちは気合いを入れて重装備特務兵に戦いを挑んだ。

 重装備特務兵は見るからに強力な導力銃を持っているだけでなく、強靭な鎧も身に着けていた。エステルたちの武器攻撃がほとんど通じていない! しかしその二人は自分の力に自信があるのか、応援を呼ぼうとはしなかった。

 そこでシンジ考えた作戦が、カオスブランドの導力魔法で混乱させてしまおうと言うものだった。魔法にかかって混乱した重装備特務兵の二人は同士討ちを始めた。強力な導力銃をお互いに向けて乱射し合い、分厚い装甲を誇る鎧も凹んでしまった。

 エステルたちが紋章の間に踏み込むと、ナイアルをはじめとした情報部に捕えられた人々の姿があった。

 

「ボクたちは遊撃士です、みなさんを助けに来ました」

 

 シンジが部屋の真ん中まで進んでそう言うと、人々から歓声が上がった。

 

「シンジさん、来てくれたんですね……!」

「えっ!?」

 

 シンジは白いドレスに身を包んだ、姫の証であるティアラを身に着けた長い髪の少女に突然、抱き付かれたのだった。

 

 

 




 ◆三択クイズ◆ 答え

 Q.ドロシーの質問にどう答えよう?

 【家に帰った】
〇【誰かに呼び出された】
 【夕食を食べに行った】

 ◆三択クイズ◆ 答え

 Q.ナイアルが一昨日話していたスクープネタはなんだろう?

 【武術大会の優勝者ジンとキリカ嬢の関係に迫る!】
〇【クローディア姫の結婚相手が明らかに!】
 【ユリア中尉とカノーネ大尉、因縁の過去!】
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