アスカとシンジは、空の軌跡の世界で本当の幸せを見つけた ~アスカ・ブライト!~   作:朝陽晴空

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※ロランス少尉との戦いではBGMとして『銀の意志』が流れます。
 『ファルコム音楽フリー宣言』でYoutubeなどのBGMとして使用許可が出ています。
 『銀の意志』で検索して、視聴してみてください。


第四十七話 ロランス少尉の必殺剣! アスカVSサトミ軍曹

 

 グランセル城の城門は、ヨシュア、シンジ、オリビエ、ジンの男性チームの活躍によって開かれた。四人は開閉装置のある一階の親衛隊の詰所に立て籠もり、迫り来る特務兵たちと戦っていた。

 城門が開かれると同時に市街地の方からカルナ、クルツ、グラッツ、アネラスの四人の正遊撃士と潜伏していた王室親衛隊が姿を現し、鬨の声を上げて城内へと突入する。

 三階の空中庭園からその様子を見たカノーネ大尉は、城の警備をしていた特務兵のほとんどを一階の玄関広間へと差し向けた。空中庭園に残ったのは四人の特務兵とカノーネ大尉だけ。

 

「カノーネ大尉、特務飛行艇がこちらにやって来ます!」

「何ですって!?」

 

 城門を見下ろしていたカノーネ大尉は特務兵の報告を聞いてあわてて顔を上げた。

 

「くっ、城門の部隊は陽動か!」

 

 カノーネ大尉は悔しそうにそう叫んだ。カノーネ大尉と特務兵たちが見守る前で特務飛行艇は着陸し、中からユリア中尉とエステル、アスカ、クローゼ、シェラザードが出て来た。

 

「おのれ、ユリア・シュバルツ!」

「クローゼたちは女王宮へ! ここは私一人で引き受ける!」

 

 ユリア中尉はそうクローゼに声を掛けると、クローゼはうなずいてエステルたちと一緒に女王宮の方へと駆けて行った。

 

「私を甘く見ているの? どこまでもムカつく女ね!」

「陽動に二度も引っ掛けるとは、なっていないようだな」

 

 ユリア中尉はそう言ってため息を吐き出した。本当は安っぽい挑発をするのは好きではない。しかしカノーネ大尉の注意を自分に出来るだけ引き付ける必要がある。感情的になったカノーネ大尉は冷静に指揮を執れていない。

 カノーネ大尉は特務兵四人と併せて五人ならばユリア中尉を倒せると思っているようだ。しかし今のユリア中尉は一人では無かった。シロハヤブサのジークと言う相棒が居るのだ。

 ユリア中尉は今まで自分の相棒をクローゼの護衛に就かせていた。それが今はユリア中尉と二位一体、ジークはカノーネ大尉の導力魔法詠唱を封じている。たとえ自分が敗れる事があっても、クローゼたちがアリシア女王を救出する時間だけは稼いでみせると決意するユリア中尉だった。

 

 

 

 

 女王宮の入口を守っていたのはたった三人の特務兵だけだった。エステルとアスカ、クローゼとシェラザードはそれほど時間もかからず蹴散らした。しかし女王宮の玄関で待ち受けていたのは、デュナン公爵と執事のフィリップ、特務兵たちだった。

 

「反逆者どもめ、次期国王の私を狙っての狼藉だろうが、返り討ちにしてやる!」

 

 そう言って大見得を切るデュナン公爵の隣には、エステルたちに向かって頭を下げて謝るフィリップの姿があった。

 

「アンタバカァ!? 冗談は髪型だけにしなさいよ。まだ正式に決まったわけじゃないんでしょうが」

 

 アスカがあきれた様に声を上げた。隣に居たシェラザードがニコリと笑顔を浮かべて呼びかける。

 

「デュナン公爵閣下ですね。私たちはクローディア姫殿下の御依頼でアリシア女王陛下を救出に参りました。大人しくお退きになって頂けると助かるのですが」

 

 シェラザードの言葉を聞いたデュナン公爵は不機嫌な顔になった。

 

「クローディアめ、陛下は私が守っていると言うのに、ふざけた事を言いおって!」

 

 そんなデュナン公爵にクローゼは真剣な表情で声を掛ける。

 

「小父様はリシャール大佐に利用されているだけなのです、目をお覚ましになって下さい!」

 

 デュナン公爵は突然話し掛けて来たクローゼを不思議そうな顔で見つめた。

 

「そなたはもしや……クローディアか!?」

「やっと気が付いたみたいね」

 

 エステルがあきれた顔でため息を吐き出した。

 

「良くもこの私を騙してくれたな! これだから女と言うのは……信用ならんのだ!」

 

 デュナン公爵の言葉を聞いたエステル、クローゼ、シェラザードの表情が厳しいものとなる。

 

「閣下、今の発言はマズイですぞ……謝った方が良いかと……」

 

 フィリップがあわててデュナン公爵に耳打ちした。

 

「ふーん、このご時勢に何とまあ大胆な発言ね」

 

 シェラザードは貼りついた笑顔でムチを振るって音を立てた。交渉決裂と感じたエステルたちは取り巻きの特務兵たちに戦いを挑んだ。デュナン公爵も一緒に叩きのめしたい気分だったが、それは遊撃士としてできない。

 この戦闘はやりにくいものだった。デュナン公爵を巻き込むわけにはいかないので、範囲攻撃魔法は使えない。デュナン公爵は悲鳴を上げながらちょろちょろと動き回るので邪魔で仕方ない。

 特務兵たちを倒したエステルたちは腰を抜かしたデュナン公爵に向き合う。

 

「次はアンタの番ね」

「女ごときの振るう鞭の味、思い知らせてやろうかしら?」

 

 アスカとシェラザードが揃って武器を構えて威圧をすると、デュナン公爵は四つん這いになりながら逃げ始めた。

 

「あの、そのくらいで許してあげたらどうでしょうか……」

 

 クローゼが困った顔で止めにはいった。

 

「公爵閣下が皆様に失礼をなされたのも、この私の不徳の致すところ、これ以上の罰はこのフィリップにお与えください!」

 

 フィリップがそう言って頭を深く下げると、アスカとシェラザードは顔を見合わせてため息を吐き出した。

 

「放っておこうか、こんな腰抜け」

 

 アスカは冷めた目でデュナン公爵を見ると、スタスタと階段を昇り始めた。デュナン公爵はクローゼの部屋で事態が落ち着くまでフィリップと待機する事になった。

 

 

 

 

 エステルたちは緊張しながら女王の私室のドアを開いて部屋の中に入ると、部屋の中は人の気配がしなかった。拍子抜けしたエステルたちは軽くため息をついた。女王の私室の奥にはさらに扉がある。どこに通じているのか分からないが、アリシア女王は奥に居る可能性が高い。

 

「御祖母様……!」

 

 ドアを開くと、立っているアリシア女王の背中が見えたクローゼは声を掛けた。

 

「クローディア……!」

 

 クローゼに気が付いたアリシア女王が振り返った。

 

「女王様、助けに来ました!」

 

 武器を構えたエステルは真剣な表情でアリシア女王に声を掛けた。

 

「やれやれ、思いの外早かったな。あの女狐め、足止め一つ満足に出来ないとは」

 

 声のした方にエステルたちが視線を向けると……ロランス少尉とサトミ軍曹が待ち構えていた。

 

「ロランス少尉……何でここに!?」

「ほう……俺の事を調べたようだな」

 

 驚いたアスカがつぶやくと、ロランス少尉は感心した様子でつぶやいた。ロランス少尉とサトミ軍曹はこのアリシア女王の私室のバルコニーで待ち構えていたようだ。

 

「私たちは女王陛下の護衛としてここに残ったのだよ。君たちのようなテロリストから守るためにね」

「フン、テロリストはリシャール大佐の方じゃないの」

 

 エステルはそう言って鼻を鳴らしてロランス少尉をにらみつけた。

 

「こっちはアンタたちの倍の人数が居るのよ、とっとと降参したらどう?」

 

 アスカがそう言うと、ロランス少尉は大きな声で笑い出した。

 

「分かった。おい、あいつの相手はお前がしてやれ!」

 

 ロランス少尉は後ろに立っていたサトミ軍曹の方を振り返って声を掛けた。サトミ軍曹は黙ってうなずき、無言でアスカを挑発するように指をクイクイと動かした。アスカはエステルたちと離れてサトミ軍曹の方へと向かった。

 

「さてと、残り三人の相手は俺がしよう」

「あんですって~!? いくら何でも、あたしたちの事を舐め過ぎじゃない」

 

 ロランス少尉の言葉を聞いたエステルは怒りの声を上げた。

 

「エステル・ブライト。『剣聖』と呼ばれたカシウスの娘……。『銀閃』のシェラザード・ハーヴェイ、最近B級に昇格した新進気鋭の遊撃士。そして、クローディア姫は学園の剣術大会で優勝するほどの腕前だとか」

 

 エステルたちの経歴をロランス少尉は余裕を持って話した。

 

「あの……私たちが争う理由は無いはずです。大人しく退いては頂けませんか?」

 

 クローゼがそう言うと、ロランス少尉は軽く首を横に振った。

 

「そちらには無くても、こちらにはあるのだよ。大佐の時間稼ぎをさせてもらうぞ」

「畏れ多くも女王陛下を囮に使った陽動ってわけね……」

 

 シェラザードはロランス少尉をにらみつけながらそうつぶやいた。

 

「おっと、あちらの二人は戦いを始めたようだな」

 

 ロランス少尉が指さす方を見ると、アスカとサトミ軍曹が戦っていた。

 

「……それではこちらも始めようか。武術大会の時のようには行かんぞ」

 

※エステル、クローゼ、シェラザードの三人でロランス少尉と戦います。

 勝利すればボーナスBPが加算されるので応援してください。

 

 

 

 

 エステルたち三人と離れたアスカは、ロランス少尉の副官であるサトミ軍曹と向かい合った。武術大会の試合で顔を合わせた事があるが、あの時サトミ軍曹は特務兵の回復をするだけで導力銃を抜きもしなかった。

 そのサトミ軍曹が銃を抜いてアスカと対峙している。棒術を学んだアスカは、少し間合いを詰めれば攻撃できる。真正面から直線的に突っ込めば導力銃の的になる。だから少しでも変則的な動きをして銃撃を外すしかない。

 銃を撃てば身体が硬直してしまう。だから銃を撃つ方も無暗に乱射するわけにもいかない。サトミ軍曹とアスカはお互いの隙を狙ってしばらくにらみ合っていたが、先に動き出したのはアスカだった。

 

「こんのおぉぉぉぉっ!」

 

 気合いたっぷりに咆哮して、アスカはサトミ軍曹に突進した……かのように見えた。サトミ軍曹は導力銃を迫り来るアスカに向かって乱射した。しかし、アスカは数歩で足を止めて踏ん張り、棒を自分の身体の正面で激しく風車のように回転させる。サトミ軍曹の撃った銃弾は全てアスカの棒に弾き飛ばされた。

 

「チャーンス!」

 

 アスカはニヤリと笑ってサトミ軍曹との間合いを詰めた。しかし今度はアスカが驚く番だった。サトミ軍曹は背後に向かって宙返りで跳び、間合いを離した。銃の腕前だけでなく、身体能力もかなりのものだとアスカは思った。

 まともにやり合っては勝ち目が無いと判断したアスカは、サトミ軍曹と向き合いながら思考を巡らせた。二度も同じ手が通じるとは思えない。

 

「これならどうよ!」

 

 アスカはそう叫ぶと、持っていた棒を放り投げた!

 まさかアスカが自分の武器を手放すなど、予想も付かなかった行動に虚を突かれたサトミ軍曹は身体が硬直し、回避行動をとれなかった。激しく回転した棒はサトミ軍曹の腕に直撃した。

 その衝撃でサトミ軍曹は導力銃を落としてしまった。そして落とした導力銃を拾おうと身体を屈めた。絶好の攻撃機会に恵まれたアスカはサトミ軍曹の兜の側面にキックを食らわせた。

 鈍い音がして、サトミ軍曹の兜がズレる。するとサトミ軍曹は導力銃を拾うよりも、兜を深く被って顔を隠す方を優先した。

 

(……何よコイツ、そんなに正体を隠したいの? 一言もしゃべっていないし)

 

 アスカの投げた棒が腕に当たった時も、サトミ軍曹は呻き声一つ上げなかった。ロランス少尉の指示に対しても黙ってうなずいただけだ。アスカは得体の知れない不気味さを感じ始めていた。

 サトミ軍曹が導力銃を拾っている間に、アスカも自分が投げた棒を拾い上げることが出来た。アスカは第二撃を加えようとするが、サトミ軍曹はまたも宙返りで間合いを離す。そして黙ってエステルたちが戦っている方を指差す。するとエステルとシェラザードがロランス少尉の戦技によって吹き飛ばされるのが見えた。

 

 

 

 

 少し時間を戻して、ロランス少尉とエステル、クローゼ、シェラザードの戦いを振り返る。戦う前にロランス少尉は兜を脱ぎ捨てると、銀髪と整った顔が露になった。

 

「武術大会のようなお遊びとは違う。本気を出させてもらうぞ」

 

 ロランス少尉は不敵に微笑むと、特徴のある剣を鞘から取り出した。武術大会の時はごく普通の剣を使っていた。今ロランス少尉が握っているのは、剣先がC型になっている、見た事の無い剣だ。

 剣先が鉤爪のようになっているのは、斬り付けた相手にさらに傷を負わせるためのものだろう。他にも引っ掛けて相手の武器を折る事も出来る。残酷さがにじみ出ている剣だった。

 エステルたちはロランス少尉を囲むように攻撃し、ロランス少尉に手傷を負わせた。ロランス少尉は攻撃を避けもせず、わざと斬られた様子だった。不気味に思うエステルたちの前で、ロランス少尉は導力魔法《ティアラル》で自分の傷を回復してしまった。

 

「あれは……高位の回復魔法! 少しの傷なら治されてしまいます!」

「一気に畳みかけるか、導力魔法を妨害するしかないわけね……」

 

 クローゼがそう叫ぶと、エステルはそうつぶやいた。

 

「なるほどね……じゃあ、これならどう?」

 

 シェラザードは導力魔法《クロックダウン》を詠唱した。しばらくの間、相手の素早さを下げる魔法だ。光に包まれたロランス少尉はほんの少し動きを鈍らせる。導力魔法は効いたようだが、まだロランス少尉の素早さは油断できない。

 ロランス少尉の纏っている黒装束の服は守備力が高そうだと判断したエステルたちは、エステルとシェラザードでロランス少尉の攻撃を受け止め、EPに余裕のあるクローゼの導力魔法で攻勢に出る事にした。

 しばらく戦ううちに、エステルたちは直ぐに傷を回復してしまうロランス少尉に苛立って来た。魔法の詠唱を妨害しようにも隙が少なく、繰り出した妨害攻撃もかわされてしまう。

 それでもクローゼはクロックダウンでロランス少尉の動きを押さえ続けて、合間に魔法で攻撃した。エステルたちはクローゼにEPを回復させる道具を使ってクローゼの魔法が途切れないようにした。

 エステルたちはジリジリとロランス少尉を追い詰めていたはずだった。しかしロランス少尉は突然、自己回復の魔法の詠唱を止めると、掛け声と共に剣を振り上げた。ロランス少尉の身体からは黄金色に光るオーラのようなものが立ち昇る。

 

「俺の渾身の一撃を見せてやろう。《鬼炎斬》!」

 

 炎をまとった剣を横一文字に回転させた攻撃に、エステルとシェラザードは遠くに弾き飛ばされて深手を負った。離れていたクローゼだけが難を逃れる事が出来た。

 

「この一撃を食らって、命があるだけ大したものだ」

 

 ロランス少尉は不敵な笑みを浮かべてそう言い放った。追撃を受ければエステルたちは止めを刺されてしまう。クローゼはためらいもなく奥義《リヒトクライス》を使ってエステルとシェラザードの傷を癒した。

 

「エステル、こうなったら出し惜しみは無しよ! 全力であいつを倒す!」

「分かったわ、シェラ姉!」

 

 エステルの奥義《桜花無双撃》がロランス少尉に炸裂する。エステルは空中で宙返りするほどの大ジャンプでロランス少尉の前に着地すると、棒で百裂連打を加える。それでもロランス少尉は倒れなかった。

 次にシェラザードの奥義《クインビュート》が発動し、中距離から鞭の連撃がロランス少尉を襲う。二人の必殺技を立て続けに食らえば、無事では済まないはずだが……。

 

「まさか……これほどやるとはな」

 

 ロランス少尉は片膝を着いた体勢で、感心した様子でつぶやいた。並の相手だったら地面に倒れ伏して気絶しているはずだ。肩で息をしているエステルとシェラザードにはもう奥義を放つだけの体力は残っていない。倒せなかった事は絶望的だった。

 

「エステル・ブライト。お前を甘く見ていた事は謝ろう。お前なら父親のレベルに届くかもしれない」

「えっ?」

 

 ロランス少尉の言葉を聞いたエステルは不思議そうな顔で声を上げた。

 

「さて、もう十分に時間稼ぎは出来た。望み通り、女王陛下は返してやろう。もはやお前たちは手遅れだ……」

「どういう意味よ?」

「女王陛下がお前たちを導いてくれるだろう。さらばだ……」

 

 エステルの質問にロランス少尉はそう答えると、サトミ軍曹と共に、バルコニーに吊り下げられたワイヤーロープで逃げて行ってしまった。ロランス少尉たちの追撃よりも、今はアリシア女王の安全確保が最優先だ。

 

「御祖母様、お怪我はありませんか?」

「大丈夫よ、手荒な事はされていませんから……」

 

 クローゼが尋ねると、アリシア女王は穏やかな笑みでそう答えた。

 

「アスカ!」

「シンジ!」

 

 アリシア女王のバルコニーで再会を果たしたアスカとシンジはお互いの無事を喜んだ。ヨシュアやユリア中尉、オリビエとジンも続いて姿を現した。

 

「城内にリシャール大佐とロランス少尉が見当たらなかったから、心配だったんだよ」

「ロランス少尉なら、さっきまであたしたちと戦っていたわよ」

「えっ!?」

 

 ヨシュアの言葉に答えたエステルの話を聞いて、ヨシュアは驚きの声を上げた。

 

「そこの手すりのワイヤーロープから逃げて行ったわ」

「良かった、みんな無事で……」

 

 シェラザードの言葉を聞いたシンジはそうつぶやいた。

 

「陛下……御無事で何よりです。私の力不足でこのような事態になってしまい、申し訳ありません……」

 

 ユリア中尉はアリシア女王の前に跪いてそう言った。

 

「ユリア中尉、顔をお上げなさい。私はこうして再び会う事が出来て嬉しく思います。他の皆様もお力添えを頂きありがとうございました」

 

 アリシア女王は穏やかな口調でそう言ってエステルたちに微笑みかけた。

 

「フッ、女王のお言葉を頂き嬉しい限りです」

 

 オリビエが髪をかき上げながらアリシア女王の言葉に答えた。この場ではこれ以上ふざけた態度はとれないようだ。

 

「城内の特務兵の鎮圧は完了しました。しかし各地の王国軍の部隊が王都を目指して進撃中との事です」

 

 ユリア中尉は沈痛な面持ちでアリシア女王に報告をした。まだ自分たちは危険な立場に居るのだ。今の王国軍は情報部の支配下にある。

 

「空中庭園に特務兵から奪った特務飛行艇があります。陛下だけでもそれに乗ってお逃げください!」

 

 ユリア中尉はそう訴えるが、アリシア女王は首を横に振ってハッキリと拒否した。

 

「いいえ、それは出来ません。それよりも、私には皆さんにお伝えすべき事があります」

 

 アリシア女王はそう言うと、急いでリシャール大佐を止めなければならない理由について話し始めた。昨日の夜、アリシア女王はリシャール大佐から《伝説のアーティファクト》を手に入れるつもりなのだと話した。

 それがあれば世界を思うがままに変える事が出来ると、伝承になっている物なのだとアリシア女王は言った。そんなおとぎ話のような事をエステルたちは直ぐに信じる気持ちにはならなかった。

 その伝説のアーティファクトは、その危険性からリベール王国のどこかに封印されているのだろうとアリシア女王は続けて話した。王都の地下深くにある古代遺跡が、伝説のアーティファクトと関係があるに違いないとリシャール大佐は考えているらしい。

 伝説のアーティファクトが具体的にどのようなものなのかは王家の伝承にも残っていないとアリシア女王は言った。しかし封印を解いてしまったら大変な事が起こるかもしれない。

 

「それで、その地下遺跡への入口はどこにあるの?」

「私に心当たりがあります。何も宝物が無いのに、王家代々、宝物庫と伝えられている場所です」

 

 エステルの質問にアリシア女王はそう答えた。

 

 

 

 

 エステルたちはアリシア女王と一緒に城の地下へと向かった。エステルたちが見守る中、ヨシュアが宝物庫の扉を丹念に調べた。

 

「間違いありません、つい最近、複数の人間が出入りした跡があります」

 

 ヨシュアは真剣な表情でそう断言した。

 

「さらに、何か重いものを引きずったような跡もあるわね」

 

 シェラザードも床を調べてそう付け加えた。アリシア女王は宝物庫の鍵には予備があり、リシャール大佐たちはそれで出入りしたのだろうと話した。調べてみる必要があると判断したアリシア女王は、鍵を使って宝物庫の扉を開けた。

 エステルたちが部屋の中に入ると、正面には大型のエレベータが造られていた。アリシア女王もユリア中尉も知らなかった事から、リシャール大佐が造らせたに違いない。

 

「わざわざエレベータを造らせたとなると、このエレベータで《伝説のアーティファクト》が封印されている古代遺跡に降りることが出来るわけですね」

 

 ジンが真剣な表情でそう言った。

 

「この宝物庫を占領してこのエレベータを造る事が、今回のクーデターの真の目的なのではないかと私は思うのです」

 

 アリシア女王は考え込むように目を閉じて、そう話した。

 

「そのために国中の人を巻き込むなんて、本当のバカだわ」

 

 アスカは苦々しい表情でそう吐き捨てた。ここで話していても仕方が無い、エレベータを使って地下に降りようとしたエステルたちは、エレベータがロックされている事に気が付いた。

 

「あんですって~!? これじゃあ、リシャール大佐を追いかける事が出来ないじゃない!」

「そんな、ここまで来たのに……」

 

 エステルが怒りの声を上げ、クローゼが失望してつぶやいた。

 

「こうなったら、捕えた特務兵を締め上げてエレベータの動かし方を尋問するしかなさそうね」

 

 拷問でもしそうな勢いで、シェラザードはムチを握り締めてそう言った。

 

「いえ、その必要はありませんぞ」

 

 そう言って部屋へと入って来たのはラッセル博士だった。

 

「ちょっと、何で博士がここに居るの!?」

 

 エステルが驚きの声を上げた。ラッセル博士はアガットとティータと一緒にボース地方で潜伏しているのではなかったのか。

 

「アスカお姉ちゃん……!」

「ティータ……!」

 

 後から部屋に駆け込んで来たティータがアスカの胸に向かって飛び込んだ。ゆっくりとした足取りでアガットもやって来た。

 

「どうしてアガットさんがここに?」

 

 シンジが不思議そうな顔でアガットに尋ねた。

 

「ボース地方の王国軍も騒がしくなってな、ヴァレリア湖をまたボートで渡って灯台下暗しを狙ったら、城で騒ぎが起きているってエルナンから聞いたのさ」

 

 そう答えたアガットは、エルナンからアリシア女王救出の依頼の報酬を預かっていると話した。

 

「ちゃんと報告していないのに、報酬をもらっちゃって良いのかな?」

「親衛隊の伝令から遊撃士協会に城が奪還されたって知らせがあって、エルナンはそれで事態を理解したらしいぜ」

 

 エステルの疑問の声にアガットはそう答えた。

 

「それで、クーデターの首謀者のリシャール大佐が行方不明と聞いたが、どういう事だよ?」

 

 アガットに尋ねられたエステルたちはリシャール大佐の目的や伝説のアーティファクトについて話した。

 

「なるほど、エレベータが使えなくて困っておるのはそう言うわけか」

 

 ラッセル博士はエレベータの制御盤を見ながらそうつぶやいた。

 

「こんな電子ロック、ワシの手に掛かればチョチョイのチョイじゃ!」

 

 エレベータのロックがラッセル博士によって解除されると、エステルたちから歓声と拍手が上がった。

 

「それでは地下に降りてみましょう」

 

 アリシア女王がそう言うと、エステルたちはエレベータに乗り込んだ。その時、城門で見張りをしていたカルナが息を切らしながら部屋に駆け込んで来た。

 

「王国軍の大軍が、城門に迫っている。警備艇も居て、あたしたちだけではとても防ぎきれない!」

「……それでは、私が説得に参りましょう」

 

 カルナの話を聞いたアリシア女王は凛とした表情でそう言った。

 

「しかし、陛下を危険にさらすわけには……」

「彼らとて同じリベールの民、話せばきっと分かってくれるはずです」

 

 心配して引き留めようとするユリア中尉にアリシア女王は毅然とした態度でそう答えた。

 

「エステルさん、アスカさん、ヨシュアさん、シンジさん、あなたたちにこんな依頼をするのは心苦しいですが……」

「リシャール大佐の野望はあたしたちがきっと止めてみせます!」

 

 アリシア女王にそう答えたエステルは、エレベータの降下ボタンを押した。アリシア女王とユリア中尉、カルナたち正遊撃士の四人は城に残って王国軍を食い止めると話した。

 エステルたちの乗るエレベータは地下深くに向かって下降して行く。この先には何が待っているのか。アスカは自然と隣に立つシンジの手を握っていた……。

 

 

 

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