アスカとシンジは、空の軌跡の世界で本当の幸せを見つけた ~アスカ・ブライト!~   作:朝陽晴空

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第四十八話 ジオフロント決戦! 始動するE計画!

 

 地下深く進んだエレベータが降りた先は、巨大な古代遺跡が見渡せる広場のような場所だった。アスカとシンジが見た事のあるネルフ本部のジオフロントほどではないが、かなり広大な地下空洞だった。

 

「何なの、ここは……」

 

 エステルは口をポカンと開けて目の前に広がる白亜の古代宮殿とも思える遺跡を見つめた。無数の通路が入り乱れ、所々で導力灯が点滅している。

 

「相当旧い遺跡のようじゃが、設備は生きているようじゃな」

 

 ラッセル博士は大きな音を立てて稼働する遺跡を見てそうつぶやいた。

 

「装置が動いているだけじゃねえ、遺跡の奥から殺気がプンプン漂って来るぜ」

 

 アガットが遠くに蠢くものを見つけて警告を発した。

 

「この広場にある資材は多分情報部によって持ち込まれたものね。遺跡へ入るルートを造るために、リシャール大佐が指示したってところかしら」

 

 広場を注意深く調べていたシェラザードはそう言った。

 

「私たちの想像を超えた巨大な遺跡のようですね……効率的に探索しないと、リシャール大佐に追いつけないかもしれません」

 

 クローゼが真剣な表情でそう言った。

 

「ここは先発隊と後発隊に分かれて進んだ方が良いかもしれんな」

 

 ジンはクローゼの意見を受けて、エステルたちにそう提案した。今の集団にはラッセル博士など守るべき非戦闘員も居る。先発隊が前方の安全を確認してから後発隊が進むのが良いだろうとジンは話した。

 

「それでは、先発隊はエステル、ヨシュア、アスカ、シンジ、クローゼに任せようと思う」

「えっ、あたしたちが!?」

 

 ジンがそう断言すると、エステルは不思議そうな顔で尋ねた。ここには準S級遊撃士のジンをはじめとして、アガット、シェラザードと先輩の正遊撃士が居るのだ。それを差し置いて自分たちが先発隊とは。

 

「依頼を受けたのはお前ら何だろう? それならお前らに主役を譲ってやるぜ」

「頑張って、アスカお姉ちゃん!」

 

 アガットとティータの言葉に後押しされ、エステルたちは古代遺跡の探索に乗り出す事になった。

 

「気負いすぎる事は無いよ、いざとなったらみんなが助けてくれるんだから」

「そうよね」

 

 ヨシュアの言葉にエステルはそう言ってうなずいた。

 

「アタシたちがリシャール大佐を倒したら、アンタたちの出番はないかもよ」

「そんな口が利けるようなら大丈夫そうね」

 

 大口を叩くアスカに、シェラザードは笑みを浮かべてつぶやいた。

 

「それでは、行ってきます」

 

 シンジは後発隊に残るアガットにそう告げて、先を行くエステルたちと合流するのだった。

 

 

 

 

 遺跡の守護者である機械仕掛けの怪物を倒しながら、エステルたちは迷路のような地下通路を進んで行く。第一層を突破し、第二層へのリフトに乗るエステルたち。この遺跡は何層にも分かれているようだ。

 第三層の空中回廊でエステルたちを待ち受けていたのは、何とカノーネ大尉だった。カノーネ大尉はグランセル城三階の空中庭園でユリア中尉と戦っていたはず。城を制圧したカルナたちの目を盗んで逃げたとしてもエステルたちより先回り出来るのは不思議だった。

 

「何でアンタがこんなところに居るのよ!?」

「うるさいわね、細かい事はどうだっていいのよ!」

 

 アスカの疑問の声は逆ギレしたカノーネ大尉に一蹴されてしまった。カノーネ大尉は死に物狂いでエステルたちを止める気のようだ。

 

「カノーネ大尉、大人しく武器を収めて下されば、私たちはあなたに危害を加えるつもりはありません」

 

 クローゼが困惑した顔でカノーネ大尉にそう告げた。エステルたち五人を相手に一人で戦うなど正気の沙汰ではない。しかしそれでもカノーネ大尉は戦う素振りを見せた。

 

「リシャール大佐が《伝説のアーティファクト》を手に入れれば、城も取り戻せるのよ!」

「……こうなったら、力づくでアイツの目を覚ますしかなさそうね!」

 

 アスカはそう言って武器を構えた。シンジは気が進まなかったが、相手が戦う意思を見せているのなら仕方が無い。早く決着をつける事が、せめてもの情けだ。

 

「リシャール大佐、申し訳……ありません」

 

 カノーネ大尉は導力銃を数発撃っただけで、エステルたちの集中攻撃を受けて膝から崩れ落ちた。しばらくは自力で歩くのも無理だろう。カノーネ大尉の身柄拘束は後発隊に任せて、エステルたちは先に進もうとした。

 しかしその時一体の機械仕掛けの怪鳥が飛来し、動けないカノーネ大尉に襲い掛かった!

 

「危ない!」

 

 後方に居たシンジがカノーネ大尉を身体で庇い、背中で怪鳥の機銃掃射を受けた。エステルたちによって直ぐに機械仕掛けの怪鳥は倒されたが、シンジの受けた傷は深いようだ。クローゼがあわてて回復魔法をかける。

 

「バカシンジ! 何でこんなヤツを庇うのよ!」

 

 アスカがぼうぜんとしているカノーネ大尉を指差してシンジに向かって怒鳴った。

 

「……ごめん、放って置けなかったんだ」

 

 このシンジの優しさに、アスカはあきれてしまった……が、そのシンジの優しさに惹かれているのも確かな事だった。シンジよりカノーネ大尉の近くに居たヨシュアは、敵だと割り切って助けなかった事から、自分は心が冷たいんだと自嘲していた。

 

「大丈夫だよ、ヨシュア。あたしだって、助けたらいいか迷っちゃうと思うから」

 

 エステルはそう言って微笑んで、優しくヨシュアの手を握った。とりあえずシロハヤブサのジークに早く来てもらうように伝言を頼み、エステルたちは後発隊の到着を待つ事にした。

 

 

 

 

 やがて後発隊が到着し、ラッセル博士の分析によると、今居る場所はちょうど遺跡の中間地点に当たるらしい。ラッセル博士に戦術オーブメントの緊急メンテナンスをしてもらい、シンジのお弁当で休憩をとったエステルたちは気合いを入れ直して遺跡の探索を再開した。

 エステルたちは第四層も踏破し、遺跡の最下層と思われる場所までたどり着いた。ここまでリシャール大佐の姿は無かった。もしかしてすでに《伝説のアーティファクト》を手に入れてしまっているのか。嫌な考えがエステルたちの頭をよぎった。

 エステルたちは遺跡の終点と思われる大きな部屋に到着した。部屋の四隅には今まで旅して来た地域にあった《四輪の塔》を想像させる翡翠、琥珀、紺碧、紅蓮の四色の大きな柱があった。

 そして奥にある祭壇の前では、リシャール大佐が立っていた。

 

「やはりカノーネ君たちでは君たちを止められなかったか。そんな予感がしたよ」

 

 リシャール大佐は余裕を感じさせる落ち着いた表情でそうエステルたちに声を掛けた。

 

「あたしたちは女王様に頼まれてあなたたちの計画を止めに来たの」

 

 エステルは真剣な表情でリシャール大佐を見つめた。

 

「まだ《黒のオーブメント》とやらは起動させて無いみたいね。今なら許してあげてもいいわ」

 

 アスカはそう言ってリシャール大佐に向かって武器を構えた。

 

「元より逆賊の汚名を被ろうとも、計画は遂行するつもりだ」

 

 リシャール大佐はそう言ってアスカの説得を跳ね除けた。

 

「だいたい《伝説のアーティファクト》を手に入れて、どうするつもり何ですか?」

 

 シンジが今までにない厳しい表情でリシャール大佐をにらみつけた。

 

「かつて人は、神の力を得て、海と大地と天空を創造する術を身に付けたのだと言う。《伝説のアーティファクト》によりそれが可能になるのだ」

 

 リシャール大佐は恍惚とした表情でそう語った。

 

「もしそれが手に入ったら、リベール王国にとってどういう意味を持つのか、君たちには分かるかい?」

「周辺諸国に対する、脅威的な軍事力を有する事になる……と言う事ですね」

 

 クローゼが不安げな表情でリシャール大佐にそう答えた。

 

「そうだ。このリベールは《百日戦役》と言う戦禍に見舞われた。兵力においてはエレボニア帝国は我が国の8倍もある。技術力の優位でいつまでも補いきれるものではない。二度と侵略を受けないための絶対的な力が必要なのだよ」

 

 リシャール大佐はそう言って自分の正当性を力説した。

 

「アンタバカァ!? だからと言って、そんな危険な物を使って世界が滅亡したら本末転倒じゃないの!」

「10年前の戦争だって、みんなの力を合わせて何とかなったんでしょう!?」

 

 アスカとエステルは怒った顔でそろって反論を叫んだ。

 

「あの時帝国の侵略を防げたのは、我がリベール王国軍に英雄カシウス・ブライトが居たからだ。しかし彼は軍を去った。だから私は情報部を創り、国難を救おうと考えた。諜報戦で他国に優位に立つ目的もあったが……我々は情報網を駆使して、リベール王国に絶対的な力を与えられるものを探したのだよ」

 

 リシャール大佐の話を悲しそうな顔で聞いていたエステルはポツリとつぶやいた。

 

「それって……正しい力なのかな?」

「何だと?」

 

 エステルの言葉を聞いたリシャール大佐の顔が歪んだ。

 

「あたしたち遊撃士はみんなを守るのが仕事だけど……あたしたちが高圧的に守ってあげているんじゃなくて……みんなが守りたいっていう気持ちに協力してあげる感じなの」

 

 明るい笑顔でエステルがそう言うと、リシャール大佐は怪訝そうな顔で尋ねた。

 

「君は……何を言っているのかね?」

「父さん一人が居たからって帝国軍に勝てたわけじゃない。リシャール大佐やモルガン将軍、色々な人と力を合わせて国を守りたいって思ったんでしょう? その結果、戦争が終わってくれた。あたし、間違った事を言ってるかな?」

 

 エステルの話を聞き終わったリシャール大佐は驚いた顔をしてしばらくの間黙っていた。

 

「今、アタシたちがここに居る事だって何よりの証拠よ。アンタのクーデターに準遊撃士風情が太刀打ちできるか不安もあったわ。でもね、色々な人に助けられたからアタシたちはアンタに追いつく事が出来たのよ」

「これも奇跡みたいなものだとは思いませんか?」

 

 アスカとシンジはさらにリシャール大佐に言葉を畳みかけた。さらにリシャール大佐は目を閉じて黙って話を聞いていた。そんなリシャール大佐にエステルは明るい声で呼びかける。

 

「でもそれって奇跡でも何でも無くて……あたしたち誰もが持っている力じゃないかと思うの。もしまた、戦争が起こってしまっても……みんながまた力を合わせれば、何とかできるような気がする!」

「そんな得体の知れない《伝説のアーティファクト》よりも、エステルが言っている事の方が絶対に確実よ!」

 

 エステルとアスカの言葉に、ヨシュアとシンジとクローゼは驚いて感心した様子だった。

 

「エステルさん、アスカさん、私も本当にその通りだと思います」

 

 クローゼが嬉しそうな笑顔でそうつぶやいた。するとリシャール大佐は大きな声で笑い出した。

 

「アンタ、何がおかしいのよ!」

「皆がエステル君たちのような強さと正しさを持った人間ならば、リベール王国は安泰だろう。しかし実際はそうではないのだよ」

 

 怒ったアスカに対して、リシャール大佐は不敵なを浮かべてそう答えた。

 

「目の前にある強大な力を、みすみす捨てるわけにはいかない。私は《伝説のアーティファクト》を手に入れるために今まで準備を進めて来た。もう引き返せない所まで来ているのだ」

 

 リシャール大佐がそう宣言すると、エステルたちの表情は失望に染まった。

 

「教えてください、どうして大佐は……この古代遺跡の場所を知ったのですか?」

「どういう意味だ?」

 

 ヨシュアの質問に、リシャール大佐は不思議そうな顔で聞き返した。

 

「女王陛下でさえ、この遺跡の存在を知りませんでした。さらに、地下宝物庫から真下を掘り進めれば古代遺跡にたどり着けるなんて……情報部の力では知る事は出来ないと思うんです」

 

 黙り込んだリシャール大佐に向かって、ヨシュアはさらに話を続ける。

 

「それにツァイス中央工房の技術力を遥かに上回る技術で造られた《黒のオーブメント》、あなたはどうやって手に入れたんですか?」

 

 何かを思い出そうとしていたリシャール大佐は突然頭を抱えて苦しみだした。

 

「どうしたの!?」

 

 異変を感じたエステルが驚きの声を上げた。

 

「リシャール大佐にはその部分の記憶が無いんだ」

 

 ヨシュアがそう断言すると、エステルたちはハッとした顔になる。

 

「ダルモア市長の時のように、記憶をいじられた可能性があると言う事ですか?」

 

 クローゼが驚きの声を上げた。

 

「別にそれは問題ではないだろう。実際に古代遺跡はあり、《伝説のアーティファクト》は実在するのだ!」

 

 リシャール大佐はそう大きな声で怒鳴った。

 

「議論は尽きた! 私は、自分の信じた道を往くだけだ!」

 

 そう言うとリシャール大佐は、《黒のオーブメント》を起動させた。

 

「君たちが奇跡を起こせると言うのならば、私を倒してみるがいい。それが出来ないのであれば、青臭い理想論に過ぎん」

 

 リシャール大佐はそう言って鞘から剣を抜いた。先ほどのカノーネ大尉の時と同じように五対一の戦いだが、『剣聖』カシウスから剣術を受け継いだリシャール大佐は格が違う。強敵であるのは間違いなかった。

 

「じゃあ見せてあげるわよ、アタシたちの奇跡の力を!」

 

 アスカは武器を構えてそう叫んだ。相手は一人とは言え、手配魔獣よりも格段に上だろう。エステルたちは陣形を組んで戦う事にした。

 リシャール大佐は戦技《光輪斬》を使い、迫って来たアスカとエステルを切り刻んだ。シンジとクローゼが二人の傷を回復する。リシャール大佐の戦技はそれだけではない。《光鬼剣》で導力魔法を詠唱するヨシュアを妨害した。

 リシャール大佐の奥義《残光破砕剣》を食らい、シンジが地面に倒れた。クローゼは泣きそうな顔になって必死にシンジに回復魔法をかける。ショックを受けたアスカもシンジの元に駆け寄った。致命傷は避けられたようだ。

 ヨシュアは妨害を受けながらも何とか《クロックダウン》と《クロックアップ》の詠唱に成功した。これで少しは有利に戦える。スピードを奪ってもリシャール大佐の体力はかなりのものがあり、エステルとアスカが攻撃しても堪えている様子は無かった。

 しかししばらくすると、リシャール大佐は剣を鞘に収めた。その様子を見たエステルたちはリシャール大佐から慌てて離れた。シンジはクローゼとアスカの献身的な治療もあって、何とか立ち上がれるくらいに回復した。

 

「さすが、カシウス大佐の子供たちだな」

「……大人しく、降参して頂けると言う事ですね」

 

 剣を手放したリシャール大佐に向かってヨシュアはそう尋ねた。

 

「もう時間稼ぎの必要は無くなったと言う事さ……」

 

 リシャール大佐がそう言うと、祭壇に置かれた《黒のオーブメント》は強い光を放ち、消え去ってしまった。

 

「やられた!」

 

 アスカが叫ぶと同時に、部屋全体が大きく揺れ出した。

 

「これってラッセル博士の工房で見た、ツァイスの街の導力灯を落とした黒い光……!」

 

 エステルがそうつぶやいた。動力停止現象は古代遺跡全体に広がり、ラッセル博士の居る後発隊でも確認することが出来た。何が起きたのか分からないエステルたちに、古代遺跡全体にアナウンスの声が響き渡った。

 

『施設に居る全職員に警告します……第一段階の封印結界の消滅を確認しました。封印区画・最深部において、解除行動がされた模様です。《デバイスタワー》のセキュリティ解除を確認』

 

 そのアナウンスと共に、部屋の四隅にあった柱が、大きな音を立てて崩れ出した。

 

「いったい、何が起きてるのよ!?」

 

 エステルは驚きの声を上げた。

 

「大佐、これはどういう事ですか?」

 

 ぼうぜんと立ち尽くしているリシャール大佐にヨシュアが尋ねた。

 

「わ、私にも分からない……こんなはずではなかった」

 

 うろたえるリシャール大佐をよそに、アナウンスはさらに続いた。

 

『ガーディアンの起動を確認。全職員は可及的速やかに施設から脱出してください』

 

 部屋の壁が扉のように開き、暗闇から覗く四つの赤い光の眼。地響きを感じる大きな無機質な足音がこちらに近づいて来るのが分かる。そしていよいよ巨大な二足歩行の人型兵器がエステルたちの前に姿を現した。

 

「何よこの、ファンネル付きのνガンダムみたいなロボットは……」

 

 アスカのつぶやく通り、人型兵器の両脇には宙に自律武装兵器のようなものが一つずつ、合計二つ浮かんでいた。

 

「多分、これが遺跡の守護者だ!」

 

 ヨシュアはそう言ってエステルたちに警戒を呼び掛けた。人型兵器から合成機械音声のような言葉が発せられる。

 

『対象者のIDを参照……登録IDに該当せず。守護者《トロイメライ》、これより不法侵入者の排除を開始する』

 

 人型兵器はそう言うと、エステルたちに腕の先端に付けられた機銃を向けて来た。宙に浮かぶ兵器も、襲い掛かろうと牙を剥いた。エステルたちは陣形を組んで迎撃する!

 降り注ぐ小型ミサイル、発せられる電流、機銃掃射に、振り下ろされる重金属製の腕の一撃。人型兵器たちの攻撃は激しいものだった。エステルたちはミサイルによる火傷や電流による体の痺れに悩まされた。

 さらに苦しい事に、《クロックダウン》などの導力魔法も効果を成さなかった。なんとか《クロックアップ》を自分たちにかけて少しでも優位に立とうとする。

 

「何よコイツ、アタシの攻撃が全然効いて無いじゃない!」

 

 浮遊する起動兵器の中には、物理攻撃を完全に遮断するA.T.フィールドを持つような敵も居た。導力魔法で倒すしかない。その逆、導力魔法が全く通じない敵も居た。さらに導力魔法も使って来るため、エステルとアスカは全力で詠唱を阻止した。

 浮遊兵器の片方をシンジとクローゼの導力魔法で沈めた頃、人型兵器は腹部から強烈なキャノン砲を撃って来た。

 

「危ない!」

 

 ヨシュアに弾き飛ばされて、魔法を詠唱していたシンジとクローゼは転げるようにしてキャノン砲の軌道から反れた。魔法詠唱に集中している間は移動することが出来ない、危ないところだった。

 しかしそれは無暗に魔法が使えなくなったことを意味する。エステルたちは武器や道具中心で、キャノン砲の動きを気にしながら戦う事になった。キャノン砲はエネルギーチャージから発射まで、少しの間がある。その間に避けるのだ。

 浮遊兵器を倒したエステルたちは、人型兵器に持てる力の全てを振り絞って打撃を叩き込んだ。しかし人型兵器はキャノン砲の攻撃を繰り返し、倒れる様子は無い。

 

「マズイわね、このままじゃあジワジワとアタシたちの体力が削られるだけだわ……」

 

 アスカは額から流れ落ちる汗を拭いながらそうつぶやいた。武器を叩きつけるのも、キャノン砲を避けて動き回るのも、体力を消耗するのだ。

 

「まだ何かするつもりだ、油断しないで!」

 

 ヨシュアが警告を発した。するとエステルたちの目の前で、人型兵器は腕を伸ばし、先端を鉄球のような形に変形させた。

 

『ジェノサイドモード起動。これより、殲滅行動を開始する』

 

 人型兵器から合成音声が再び発せられる。殲滅とは穏やかな話ではない。熾烈な戦いが再び始まるのは予想できる事だった。今度は鉄球のような腕の先端に潰されないように気を付けなければならない。

 戦闘が始まると、人型兵器は腕の先から小型のボールのような起動兵器を生み出した。数が増えると嫌な予感がすると考えたシンジとクローゼは、範囲攻撃魔法で数を減らそうとした。

 しかしシンジとクローゼの詠唱は、人型兵器が天高くから降らせた光のナイフによって妨害された。それでもシンジとクローゼは諦めずに詠唱を続ける。

 

「きゃあっっっ!」

 

 突然アスカの悲鳴が響き渡る。人型兵器の腕がバネのように伸びて、アスカを直撃したのだ。不意を突かれたアスカの足は、鉄球に圧し潰された。

 

「アスカっ!」

 

 シンジは必死の形相でアスカに駆け寄ると、全力の体当たりで鉄球を退けた。肩が外れるのではないかと思うほどの激痛がシンジに走る。シンジは惜しげもなく最高級の傷薬をアスカに使った。

 

「アスカ、良かった……」

 

 立ち上がったアスカを見て、シンジは安堵の息を漏らす。

 

「アンタの方こそ、大丈夫なの? バカよ、鉄球に体当たりするなんて……」

 

 アスカの方もシンジを気遣って、傷薬を使った。

 

「……でも、ありがと。この戦いが終わったら、シンジにお礼をするから」

 

 そうアスカはシンジの耳元でつぶやくと、エステルに加勢するため人型兵器の方へと向かった。アスカの顔の赤さが伝染したかのようにシンジの耳も赤くなった。

 

『右腕損傷。アーツキャンセラー発射不能』

 

 エステルたちがダメージを与えているうちに、合成機械音声が流れた。多分、導力魔法詠唱妨害装置が故障したのだろうと察したシンジとクローゼは《クロックアップ》や《エアロストーム》などの魔法の詠唱を始めた。

 すると人型兵器の方も、再びキャノン砲のチャージを始めた。今度のキャノン砲は威力が高そうだと判断したシンジとクローゼは早めにキャノン砲の射線上から退避する。そして高火力を思わせるキャノン砲が火を噴いた!

 

『各部冷却を開始』

 

 機械合成音声が発せられると、人型兵器は動きを止めた。高出力のキャノン砲は最大の武器であったが、同時に弱点でもあったのだ。

 

「このチャンス、逃さず行くわよ!」

「うん分かった、アスカ!」

 

 アスカとエステルは渾身の力を込めて人型兵器に打撃を加えた。ヨシュアやシンジ、クローゼまでもが加わって、人型兵器をタコ殴りにする。

 

『腹部発射砲大破。使用不能』

 

 キャノン砲まで封じる事の出来たエステルたちは勢い付いた。再び人型兵器が動き出し、腕の鉄球がエステルたちを襲うが、仕掛けが分かってしまえば、アスカも不意を突かれる事無く交わすことが出来た。

 

「このおっ!」

 

 エステルの棒の一撃で、人型兵器は各部をバチバチとショートさせながら地面へと倒れ伏した。全員床に座り込んでしまうほど消耗していたが、どうにか勝てたようだ。

 

「守護者の目的は《伝説のアーティファクト》を手に入れようと、遺跡の封印を解こうとした者の抹殺だったのか……」

 

 エステルたちの戦いを見守っていたリシャール大佐はそうつぶやいた。《伝説のアーティファクト》が封印されたと同時に、守護者は扉の奥で眠っていたのだろうとリシャール大佐は語った。

 

「だが……肝心の《伝説のアーティファクト》はどこにあるのだ……?」

 

 リシャール大佐がそうつぶやきながら、部屋の中を見回していると、倒れていた人型兵器が立ち上がり、動き始めた。

 

「もうダメ……体力はこれっぽっちも残ってないわ……」

 

 床に座り込んだアスカは悔しそうな顔で人型兵器を見上げた。アスカがやられる姿なんて見たくない。シンジはそう思ったが、アスカと同じく立ち上がる力すら残っていない。

 

「お前の相手は、この私だ!」

 

 エステルたちを庇うように人型兵器に戦いを挑んだのは、リシャール大佐だった。リシャール大佐は人型兵器と互角に渡り合っていたが、不運な事にリシャール大佐の剣が折れてしまった。そして人型兵器の一撃を食らってしまったリシャール大佐は床に倒れ込んでしまった。

 

「情けないな……計画が失敗に終わったばかりか、君たちを救う事も出来ないとは……後悔ばかりが残る」

 

 床に仰向けに倒れたリシャール大佐はそうつぶやいた。そんなエステルたちの様子を離れた場所から眺める男が居た。その男は突然、煙のように空中に姿を現した。

 

「福音計画の第一段階は成った。さて、次なるエヴァンジェリストは……」

 

 男はそうつぶやくと、出て来た時と同じように煙のように部屋から姿を消すのだった。

 

 

 

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