「革命軍ねぇ〜。俺ァが生きてた頃にはそんな組織無かったような気がするんだが……。なんの目的で動く組織なんだ?」
ロジャーの言う通り、ロジャーが生きて海賊をやっていた時代に革命軍は存在しない。それもそのハズで、革命軍の頂点の男であるモンキー・D・ドラゴンがまだ青年の時で革命軍を発足していなかったのだ。1度死んだロジャーが知らないのも無理もない。そんな、ロジャーの質問に答えたのはサボだった。
「あぁ、天竜人のせいで苦しんでる人達や無茶な労働を強いる国に、国民と共に立ち向かい、今の世界政府を打倒し新たに世直しをする。俺たちはそれを目標に掲げている組織だ。」
そう言い放つサボの目には確りとした、迸る意志がのっていた。それはサボだけではなく、他の4人もそうだった。
「へぇ〜。それで、その革命軍様は俺に一体何の用なんだ?」
ギラギラな目をしている5人を挑発するかのように言い放つ。ロジャーが生き返ったという事実は直ぐに海軍によって秘匿なものとして扱われる事となっている。そんな、海軍がもみ消した情報を短時間でしり、直ぐにロジャーの所へやってきた革命軍に警戒心が湧くロジャー。嘘は許さないと思えさせるその鋭い目を5人へと向ける。
「俺達は、貴方が本当に生き返ったのかを調べて欲しいと、頼まれたからだ。」
そんなロジャーの気配を感じ取ってか、サボは嘘もなく正直に答えた。しかし、サボの方にも隠すべき事はあるので慎重に言葉を選んで答える。革命軍というのは秘密組織だ。海賊のように表立って行うような事はしない。それはロジャーも然り、誰かにバレたとあれば組織の場所や世直しの準備などが延びるのを懸念したために、サボは慎重に言葉を選んで答えていく。
「頼まれた?一体誰にだ?」
「俺達のリーダー、革命軍総司令官のドラゴンさんに頼まれた。」
ロジャーの疑問に、世間でも名が知れ渡っている自身のボスの名前を正直に答える。これは自身のボスであるドラゴンが万が一を考えて、サボに開示してもいいと許している事なので、サボも迷わず答えられる。
「ドラゴン……。聞かねぇ名だ。」
素直にそうロジャーが言うと、レイリーが忘れているだろうロジャーに思い出させるように説明する。
「航海してるときに良く聞いただろ。勢力を急性に拡大していた若僧の事だ。」
分からないでいるロジャーに、新聞で見た事のあるレイリーが付け加えるかのように言う。
「いたかそんなヤツ?」
「お前も新聞で見たろ。反世界政府を掲げてる奴がいるって。」
「あー、アイツか!ガープの息子の事だろ!」
ギャバンが更に詳しく言うと、ロジャーは思い出したかのように誰も知らなかった情報と共に爆弾発言を言い放つ。
「「「「そうなんですか!?」」」」
「確か前にガープから聞いたような気がするんだよ。息子が出来たってな。」
「初耳だぞ、ロジャー。」
「息子……。」
「ガープと酒飲んでる時に聞いたような気がするんだよなぁ。」
そう頭に指を当てながらロジャーは必死に記憶を探していく。レイリーとギャバンからはロジャーから聞かされた、新聞では書いてなかった情報に目を真ん丸にして驚いている。それは革命軍達も同様だ。
「俺達はともかく、なんでお前らも驚いてんだよ。お前達の頭だろうに。」
目を真ん丸にして驚いてる革命軍に、ギャバンが呆れた顔を向ける。
「「「「いや、知ってるのは名前だけで……。」」」」
「ガープ……。何処かで……。」
革命軍トップのドラゴンは、自身の身元を詮索されるのを嫌っている。前に革命軍の幹部でもあるイワンコフが探ろうとしていたがドラゴンは軽くあしらいながら突っぱねた。それはイワンコフだけでなく他の人も同様で、ドラゴンの姓でさえ知る者もいない。幹部が知らないのだから、さらにその下のメンバーが知らないのも無理はない。
「同一人物かは知らないが、もし俺の知ってるドラゴンだとしたら、ガープの息子のモンキー・D・ドラゴンの事だろ?」
そうロジャーが確認するかのように問うと、先程からブツブツと言葉を漏らしていたサボだったが、ロジャーの言葉をトリガーに突然、頭を抱えだした。
「モンキー・D……。ガープ、ロジャー、息子……。何処かで…、うッッ!!頭がッッ!!」
その瞬間、サボの頭に膨大な数の記憶がフラッシュバックした。パズルのピースが完成されていくように、所々不明瞭だった記憶がロジャーから言い放たれる言葉により、一つ一つの文字が1つの記憶として繋がりあっていく。それは、軽い頭痛から激しい頭痛へと姿をかえサボに襲いかかる。
「アァァァッッッッ!!!!」
痛みが酷くなり、サボが声を上げて苦しみ出した。
「サボくんッ!!」
「サボッ!!」
「おい!大丈夫か!?」
元々、ロジャーと邂逅した時に感じたことの無いズキズキとした痛みがサボの頭に響いていた。しかしサボは幼い頃の事故で記憶を失っていて、その痛みの正体が分からないでいた。軽い頭痛だと無視したサボだったが、それはドラゴンの名字を聞かされた事で痛みの正体がだんだんと鮮明になっていき、知らぬ間に閉ざされていた記憶の扉を偶然にも開けることとなった。声を荒らげるサボに、幼少のそれも宝とも言える程に、大切な記憶の奔流が脳へとながれ込んで行く。
『おーい!サボーー!!』
『何やってんだサボ、置いてくぞ!』
静かな森の中で自分に声をかけてくる2人の男の子。1人は麦わら帽子をかぶって、元気溌剌に岩の上から手を振っている。もう1人はあちこちに傷をつけて此方に急げと急かしてくる
『食い逃げだー!!』
『『ヤバッ!逃げるぞサボ!』』
今度は一緒に逃げる景色が見えてくる。後ろから追いかけてくる料理人やウェイトレスから3人で逃げる風景が……。2人が笑って声をかけてくる
『いいか!お前達は将来、立派な海兵になるんじゃ!』
『『『ぎゃああああ!!』』』
後ろを追いかけてくるジジイに殺されないように、3人で悲鳴を出しながら逃げるが、結局ボコボコにされた面影が映りだす
『なんだよエース。ロジャーってエースの父ちゃんだったのか〜?』
『ルフィ、誰から聞いたんだ。』
『サボからだ!なぁ、エース。ロジャーってどんな奴だったんだ?』
『ルフィ!お前、何言ってんだよォ!』
『いいじゃねぇか!』
『二度と俺の前でその名前を口にするな!』
『『イテッ!』』
盛大にルフィとエースと兄弟喧嘩した、あの日の夜。ルフィ…、エース…
『お前ら知ってるか、盃を交わすと兄弟になれるんだ。』
『兄弟?ホントかよ!』
『海賊になる時、同じ船の仲間になれねぇかもしれねぇけど、俺達の絆は兄弟として繋ぐ!どこで何をやろうと、この絆は切れねぇ!これで今日から俺達は…』
『『へへっ』』
『兄弟だ!』
ダダンから酒を盗んで盃を交わして、兄弟となった日
「そうだよ!俺には兄弟がいた!」
次々と溢れだしてくる記憶にサボの脳は耐えきれずにいた。今すぐにでも気絶してしまいそうな痛みの中、サボは笑って大声で叫ぶ。頭に響いてくる痛みなんか忘れたかのようにその顔は笑顔だった。
「サボくん?」
突如苦しみ出したと思えば、今は大声で笑っている。それを見て不安を感じた女性はサボの背中へと手を伸ばして心配するが、それすらも気づけない程に今のサボは昂っていた。
「ルフィ…、エース…。俺はアイツらの兄弟だ!モンキー・D・ルフィ、ポートガス・D・エース。俺は小さい頃にアイツらと盃を交わしたんだ!思い出したんだよ、全てを!!」
笑顔で隣の女性へと最後の言葉を放つとサボはそのまま気を失って女性に凭れ掛かるように倒れた。幾ら昂って痛みを忘れているとはいえ、失っていた記憶を1度に受け止める程、サボの脳の容量に耐えきれていなかった。
「おまえ、エースを知ってッ!?おいッ!」
突如出てきた言葉、"ポートガス"の姓にロジャーは反応せざるを得なかった。それは自分の妻の姓だったからだ。たまらず再度聞こうとするが、その本人は気絶をしているため聞けない。
「サボくんッ!?大変、すごい熱!」
触れたサボの体から、体温が急激にあがっていくのを女性は感じた。額に手をあて、再度確かめると間違いなく熱を出していた。
「とりあえずその青年は私の寝室で休ませるといいよ。」
話を傍で聞いていたロイスが安心させるように女性へと声をかける。話の内容に全くついていけてなかったが、サボに何が起こったのかは簡単に理解出来たため迅速な対応をする。
「そうだな。この話の続きはその青年が覚めてからでいいだろう。とても気になる事をこの子は口にしていたようだからな。」
「だな。お前らも、ロジャーもそれで良いだろう?」
それに、レイリーとギャバンも異論はなく頷いた。
「問題ねぇぞ。何故か、いま俺ァワクワクしてんだ。この出会いはきっと偶然じゃねぇぞ。レイリー、ギャバン。」
目をキラキラさせるロジャーは、この出会いにワクワクが止まらないでいた。
「お手数お掛けして申し訳ないです。」
女性は、ロジャー達に頭をさげ、最後にこの家の家主であるロイスへと頭を再度さげる。
「なに、気にする事ないよ。」
女性は、案内された寝室にサボを運ぶ。たとえ女性であろうと、その鍛えてきた体には成人男性を運ぶ位の力は備わっている。苦もなくサボをベットに寝かせると、静かな吐息をはいて幸せそうに眠っているサボを恨めしく見てから、一旦ロジャー達の方へと戻る。
「なんか色々とご迷惑をお掛けして申し訳ないです…。」
「構わないよ。それに、迷惑と言えばこっちにもいるからね。」
と、ロジャーに薄目を向けながらロイスが喋る。その言葉にロジャーは先程までと、うって変わってギクッと肩をあげて申し訳なさそうにした。
「す、すまねぇ……。」
ロジャーを中心に次々と起こるインシデントに、流石のロジャーも迷惑をかけたと思ったのか申し訳なさそうにしている。
「なに、気にしないよ。ははは。」
「そうだぞ、気をつけろよロジャー。」
「全く、リル達に迷惑かけやがって。」
ロイスのちょっとした茶目っ気にレイリーとギャバンがのっかり、ロジャーを責める。
「すまね…、っておい!お前らもだからな!」
謝ろうとしたロジャーだったが、レイリーとギャバンにお前らもだろとツッコミをした。それを聞いていたリルが笑い、ロジャー達もつられて笑う。
「そういや、まだ名前を聞いてなかったな。改めて、自己紹介すると俺の名はロジャー。コイツはレイリーでこっちがギャバンだ。そして、家主のロイスにその娘のリルだ。ちょっとした事で知り合いになったんだ。改めてよろしくな!」
ロジャーが手を差し出すと、女性が手を握る。ロジャーにはもう警戒心は殆ど無くなっている。それは一重に先程の発言がロジャーの警戒心を溶かせるほどに強い言葉だったからだ。
「私の名前はコアラです。こっちが魚人のハックで、右からカボ、ダクです。」
「こちらもよろしく頼む。」
「「よろしくお願いします。」」
改めてお互いの自己紹介を終えると、害は無いと分かってか夕食の準備をロイスがする。外の風景を見ると空は赤くなりはじめ影が今にも無くなりかけている。それにレイリーとギャバンも手伝うようにキッチンへといくと、続けて革命軍の2人も手伝うように着いて行った。コアラはサボを看病しにいくのかロイスにタオルと水を貰うと寝室へと歩いていった。リルも気になるのか唯一女性であるコアラの後を追いかけた。
「なぁ聞きてんだがよぉ、寝室で寝ているサボっつったか?思い出しとか言ってたけど、記憶でも失ってたのか?」
やる事がなく、残ったロジャーと魚人のハックはやる事がなく雑談に興じていた。
「確か10歳位の時に、船で沖に出たところを天竜人にやられたと聞いた。」
「10歳でか、よく助かったもんだ…。それにしてもここでも天竜人が出てくるのかよ…。」
「倒れて海に流れていたサボをドラゴンさんが拾って介抱したのだ。天竜人にやられたせいか、サボの記憶は無かったんだ。そこから記憶を思い出せずに革命軍の隊員としてサボは育ってきた。」
「へぇ〜。それでそれで?」
「サボの奴は、それはもうとんだ悪ガキだった。怪我がなおるとたちまちその自由奔放な性にみんな振り回されたもんさ。それは今もか…。」
「悪ガキか!ワハハハハハハハ!」
「あぁそうさ、訓練してる時も記憶を失ったとはいえ、体の使い方は忘れてなかった。そうとうやんちゃだっただろうな、身のこなしが唯の子供じゃなかった。」
とても苦労をしたのかハックが顔にシワを増やしたように話す。ただ、疲れている顔とは別に楽しそうにも話していた。
「もし、本当にエースの兄弟だとしたら例え、盃といえど俺の息子も同然だ。それに、エースの兄弟だったらそんくらいしてもらわないと困るぜ。ワハハハハハ!」
上機嫌に自分の息子を語るロジャー。酒を飲んでもいないのに、その顔は真っ赤でとても楽しそうだった。
「ポートガス・D・エースと言えば、ゴールデンルーキと言われたあの男だろう。」
そう思い出すように語るハックにロジャーが素早く食いついた。
「やっぱり、海賊になったのか!」
「新聞で読んでないのか?エースといえば火拳のエースとして名が世に知れ渡っているぞ。」
「それがよ…、俺ァお世辞にも良い父親っていえねぇんだ。世間から見れば俺ァ、嫌われてるし多分息子にも色々迷惑をかけてると思うからなぁ〜。」
目を俯かせて喋るロジャーは、自由奔放の海賊王ロジャーではなく唯1人の父親としてその場にいた。ロジャー自身、親の顔も知らないで1人ですくすくと育ってきた。父親なんてそんな経験した事もなく、果てに肩書きとして海賊王を背負っているだけに犯罪者だ。とても立派な父親とは言えないだろう。
「負い目を感じてるのか。」
「そんなとこだ。それでよ、俺の息子なんだ、誰かの下につくとは思えねぇし船長をやってんだろう?なんて名前の海賊団なんだ?1度位は知っておきてぇ。会うのはまだ勘弁だからな。」
自身満々に息子を語っていたロジャーは何処へやら、今のロジャーはとても情けない事にエースと会うことを怖いと感じている。これを息子を任されたガープが見たら拳骨をしてきそうな程、今のロジャーは弱気だった。
「知らないのか?火拳のエースといえば白ひげ2番隊隊長だぞ。」
「ニューゲートの船に乗ってんのか!?」
昔のライバルの名前が出てきてロジャーは心底驚いている。息子を任せたガープに続き、白ひげの仲間となって今は海賊をしている。白ひげは仲間を大切にする海賊なのでたいした心配はしてないが、白ひげは仲間に親父と呼ばれている事をロジャーは知っている。
「よりによって、ニューゲートの船かよ……。」
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