元!海賊王の航海   作:りむっち

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第11話

「……。ここは…?」

午前11時の昼前、窓から射す光がサボの顔を照らし、寝ているベットからゆったりと上半身を起こしながらサボは起きあがる。サボの意識は寝起きでまだ覚醒しておらずぼんやりとしている。寝ぼけ眼で辺りを見渡すと近くには水の入ったボウルとタオルがあり、その隣には椅子に座り看病してくれていただろう仲間のコアラが眠っていた。

「確か、ドラゴンさんに言われた任務の途中で俺は記憶を…。そうだよ!俺は思い出したんだった!」

寝ぼけ眼だったサボだったが、段々とその意識は覚醒していった。熱をだして酷い頭痛にサボは三日三晩、魘されていたなか失われた記憶を全て思い出していた。覚醒していく意識の中、サボは次々と子供の頃の楽しい記憶を自然と思い浮かんでいた。エースとルフィという兄弟を持っていた事、日が暮れても遊んでいた事。その全てがサボにはとても大切な記憶であり大切な宝だった。

「フフっ。ありゃあ、いつの頃だったか…。」

過去に思いを馳せていると、その顔には自然と笑みがこぼれていて凛々しかったサボの顔は消え弛みまくっていた。目元は下がり、口元はニヤニヤとしている。

「んん……、あっサボくん!起きたの!」

サボが起きた事でベットの軋む音を聞き、眠っていたコアラは目を擦りながら目覚めた。目を覚ましたコアラは眠っていたサボが起きている事に気づき、目を大きく開けてサボへと駆け寄った。

「ああ、看病してくれてたみたいだな。ありがとう。」

「気絶した時は本当にビックリしたよ!凄く心配したんだからね!」

とても心配していたコアラはサボの元気そうな顔をみて安心したのか、目に少しの涙を含ませてサボをポカポカと布団の上から叩く。

「悪い悪い」

軽く笑いながらサボはコアラへ謝りを入れると、コアラは大した事のなさそうに笑っているサボを見て溜息を吐いた。

「ねぇ、記憶が戻ったの?」

「あぁ…。全部思い出した…。自分が何者で、なんで家を捨てて海に出たのかも…な。そんで俺の大切な兄弟も…。」

失っていた記憶について尋ねてきたコアラにサボは神妙な顔付きで、自分の事を語っていった。自分が貴族の出である事、そしてそれを恥じている事。最初は思いたい様な話をしていたが、次第にそれは兄弟の話へと変わっていき、明るくなったサボを見てコアラも笑っていた。

「そっか、良かったね!あっ、じゃあ革命軍やめるの!?」

「安心しろ、やめたりしねぇよ。これが終わったらドラゴンさんに話したい事ができた。」

心配するように尋ねてくるコアラに、安心させるようにサボは言う。今のサボにはすべき事がある。それはこの世の腐った部分を世直しする事だ。ドラゴンの思想でもあり、革命軍の目的でもある世界政府の世直しは元々、サボもしたがっていた事だった。過去を思い出した事で、貴族の汚い部分までもが蘇っていたサボはその思いがより強くなっていた。それに、こんな自分をここまで育ててくれた革命軍にサボは報いたいと思っていた。

「良かった……。それはそうとうさっきから、顔気持ち悪いよ。」

それを聞いて安心したのか先程からニタニタとだらしのない顔を浮かべているサボに、心配させた腹癒せなのか口元に小さな笑みを浮かべ、ちょっとした意地悪を吐いた。

「えぇッ!?」

 

 

「3日も寝てたのか!?俺は……。」

寝室から出たサボとコアラはロイス家の廊下を歩きながら、サボは3日も寝ていた事をコアラから聞かされて驚いていた。

「そうよ。まぁ、サボ君が3日も寝てたからロジャーさん達とは結構打ち解けて、仲良くなったのよ。」

「へぇ〜!そりゃあ、良かったじゃねぇか。」

自慢げに語るコアラにサボは、軽くはしゃいだような口調でコアラを嗟嘆した。海賊王としてのロジャーだけでなく、エースの父でもあるロジャーと仲良くなる事はサボには大事な事で、仲良くなったとコアラから聞いてとても喜んでいる。

「まぁね。サボ君が気絶する前に言ってたでしょ?ポートガス・D・エースって。」

「言ってたなぁ〜。」

気絶する前の事を思い出し、ウキウキとお腹の底から迫り上がるような気持ちになった。あの時の衝撃は、これからサボが生きていく人生の中でどんな事があろうとも忘れる事は決して無いだろう。

「まさか海賊王に息子がいたなんて、本当にビックリしたわよ。それがまさか、うちのサボ君と知り合いどころか兄弟なんだもん。確認なんだけど、サボ君の言ってたエース君ってやっぱりロジャーさんの息子なの?」

「おうッ!昔、ロジャーさんと親子なのかって聞いた時に殴ってきたからなぁ〜。それに、自分でもロジャーの息子って言ってたから間違いないと思う。」

鼻歌を歌いながらコアラからの質問に上機嫌で答えていると庭の方から楽しそうな声が響いてきた。

「なんだ?」

気になって声のする庭の方へ歩いていく。聞こえてくる2つの声にサボが何事だろうと思っていると、その理由をコアラが何処か呆れてくるように説明してきた。

「あぁ、さっき言ったでしょ?仲良くなったって。ハックがさぁ、ロジャーさんに稽古つけて欲しいって頼んだんだよ。勇気あるわよねぇ〜。海賊王に稽古頼むって正気とは思えないわよ…。武道家の性かしら。」

「いや、良く受けてくれたな!?ってことはまさか、あそこに居るのって……。」

庭へ続く縁側へとサボとコアラが着くとサボの予想通り、声の主はロジャーとハックで、庭で稽古をしていた。その近くでは風にゆらゆらとたなびく干されている洗濯物と、レジャーシートの上でサボとコアラを除いた人達が寛いでいた。その上にはサンドウィッチの入ったバスケットが置かれていて丁度ランチタイムの時間だった。

「当たり。見ての通り、ロジャーさんとハックだよ。まさか私もハックのお願いをきいてくれるとは思ってなかったよ。けど、ロジャーさん暇そうにしてたから結構乗り気だったのよねぇ。」

「へぇ〜。」

目の前で行われる、長閑な景色とは場違いな程の激しい稽古にサボが目を奪われていると、稽古中のロジャーが気配を感じて縁側に立っているサボを発見する。激しい稽古とはいえ、激しいのはハックの方でロジャーに関しては軽くいなすだけだった。

「ん?」

「はぁはぁはぁ…。」

「起きたか!ワハハハハハ!よし、少し休むぞ!」

稽古をしているロジャーは楽そうにしており、反対のハックは息切れをおこしていた。ロジャーはハンデとして覇気を使っておらず、ハックには使用を許可している。覇気を混ぜたハックの攻撃は一向にロジャーに当たる事はなかった。見聞色の覇気を使う迄もなくロジャーには長年培った経験があり、目で追うだけで避ける位造作もないからだ。

「はぁはぁ……。サボ!ようやく起きたようだな。」

荒い息を吐くハックは開始前から一歩も動いていないロジャーを見て、自分の弱さを改めて感じていた。修行をし直そうと心に決めたハックは、起きて元気な様子のサボを見て安心した。

「おう!頭ん中、スッキリしたぜ。ロジャーさん達とロイスさんには迷惑かけたな…。」

「ワハハハハハ!気にすんな!」

「そうですよ。とりあえず、皆でランチにしましょう。サンドウィッチを沢山作ったんです。是非食べてください。」

頭を下げて謝るサボに軽く笑いながらロジャーとロイスはサボをランチへと誘った。3日も寝ていれば腹を空かせているのは当然の事であり、より多くの人と食べる方が賑やかで楽しいからとロイスはサボを優しく誘った。

「あぁ。ありがとう。」

そう感謝を言った後、サボとコアラは庭のシートへと座り皆で楽しくランチタイムを楽しんだ。

 

「やっぱり、お前が言ってた兄弟ってのは俺の息子のエースだったか…。……恨んでたか?」

誰をとロジャーは言わなかった。しかし、ロジャーが言わずとも誰の事を恨んでるのかサボには簡単に理解出来た。海賊としてのロジャーを嫌っている輩は世界中に多くいる。そいつに息子が居たとなれば憎悪の対象になるのは必然と言えた。なんて応えればいいか言いあぐねていたサボだったが真剣な眼差しを向けてくるロジャーに覚悟を決めて正直に言った。

「………はい。」

「そうだよなぁ〜。」

心の何処かでは好かれているのでは?と思っていたロジャーだったが、自分が質問したとはいえエースの兄弟に確証ついた事を言われてしまうと素直に落ち込んでしまった。薄々とロジャーは気づいてはいた。だが息子に嫌われているなど親として信じたくなかったのだ。

「なんか、意外です。」

落ち込んでいるロジャーを見てサボは驚いていた。自身がイメージしていた海賊王の姿と全く異なっていたからだ

「意外?」

「はい。俺はてっきりエースの事なんて気にもかけてないのかと……。」

「仮にも父親だぞ、俺ァ。それに、世界でたった1人の息子だ。気にかけて当然だし、今まで出来なかった事はしてやりてぇと思ってるよ。」

そう言って困ったように頭をかいて笑うロジャーにサボは嬉しそうにしていた。エースを嫌っていなく、むしろその逆の様子のロジャーを見て素直にエースにこの事を伝えたい気持ちだった。ただ、この事を素直に言ったところで殴られるか蹴飛ばされる様子しかサボには思いつかなく、その事を想像して静かに笑っていた。

「会うの怖くて出来ねぇ癖に……。」

「なんか、言ったかギャバン!」

「図星なんだろう。」

「てめぇら!」

「「ははははは。」」

巫山戯あう3人見て、サボは昔の記憶が映し出されたようだった。いつも馬鹿をするルフィにエースとサボはからかったり、一緒に笑いあっていた。今は任務で直ぐに会いに行けないサボだがいつかはロジャー達みたいにまた3人で笑いたいと……、そう感じていた。

 

「それで、お前達はこれからどうすんだ?」

「1度、本部に帰ろうかと思います。色々、ドラゴンさんにも言いたい事が出来たので。」

ご飯も終わり、縁側で寝転がっていたロジャーは軽い口調で聞いた。それにロジャーの隣で座っていたサボが空を見ながら、ロジャーと同じように穏やかに答える。

「そうか。しかし、結局の所お前らはなんで俺のところに来たんだっけ?」

「本当に生き返ったのかを見に来たんですよ。」

「そういやそうだったな。色んな事が起こりすぎて、忘れてたわ。ワハハハハハ。」

笑って誤魔化すロジャーだったが、その出来事の内の1つにサボ自身も入っているので、サボは苦笑を禁じ得なかった。

「あはは…。所で、俺達はもうロジャーさんが生き返ったって分かって任務完了してるから帰るつもりですけど、ロジャーさん達はこれからどうするんですか?」

「俺達か?俺達なら、今からマリージョア行ってきてちょっくら、天竜人に挨拶しにいく。名前知らねぇけど、まぁ向こう行けば分かんだろ。」

そう言ってロジャーが思い出すのは、最近やってきた天竜人の事だ。典型的な天竜人だと思ってバカにしていたロジャーだったが、蓋を開けてみればそこに居たのはただの子供好きの天竜人だった。その事で一言謝りたかったロジャーは、その天竜人に会うために聖地マリージョアまで行く気でいた。海賊に良い奴も悪い奴もいる。その反対で天竜人にだって悪い奴が居ればその逆、良い奴だって居るのも当然。その事を良く痛感したロジャーは自分が勝手に決めつけていたイメージの中で件の天竜人も入れていた事に謝りたかったのだ。仁義を通すのが海賊王ロジャーとしての在り方であり、そういった素直な所が仲間に好かれる所以でもある。

「「「マリージョアッッッッ!?!?」」」

「「天竜人ッッ!?」」

だが、そんなロジャーの気持ちは露知らずサボ達は別の意味で解釈していた。ロジャーの言う挨拶をマリージョアへと攻めに行くと勘違いしていたのだ。

「たしか…、つい先日この街に天竜人が来ていたな。まさか、それか!」

そこでサボは見当違いの方へと思考を凝らしていた。何も、それはサボだけでなく他の人も同じだった。

「なんだ、知ってんのか。」

「はい。人伝で耳にしました。」

そして、サボが想像した事は天竜人が何かをやらかしロジャーの触れてはいけない逆鱗に触れて怒らせたのではないかと考えていた。これからロジャーがマリージョアで派手に暴れる想像を膨らませるサボ達をたいして気にすること無く、ロジャーはばっと起きて立ち上がった。

「そういう事だ。んじゃあ、ちょっと休んだ事だしそろそろ俺達は行くとするか。ロイスには悪いがレイリー、ギャバン急いで行くぞ。お前らも元気でやれよ!」

「やっとか。」

「準備は出来てるぜ。」

いそいそと出ていこうとするロジャーは、ロイスとリルに別れを告げる気は一切ない。これから起こる事に2人を巻き込みたくなかったからだ。これからもロジャーは冒険をしていくだろう。その際に2人がロジャーの関係者だとバレてしまえば危ない目にあうのは目に見えてる。幸い、ロイスの家は街から遠く誤魔化せる距離だがそれも時間の問題だ。それを分かっているからこそ2人に別れも告げず、ロジャーは走り出そうとする。

「ちょ、ちょっと待って下さい!」

しかし、準備を追え出ていこうとするロジャー達にサボが待ったをかける。サボだけでない、傍で耳にしていたコアラ達もロジャーの口からでたマリージョアに行くという言葉に驚きを隠せないでいた。

「ん?どうした。」

手短に終わらせて欲しそうな目で見てくるロジャーにサボが凄い剣幕でロジャーへ近づき、肩を両手で強く掴んだ。

「これからマリージョアに行くって正気ですか?」

「そうですよ!たった3人でなんて!」

「無謀だぞ。」

サボ、コアラ、ハックに続けて他の2人も頷いている。世界政府の数ある土地の中、マリージョアとは厳重かつ神聖な場所である。その警備は海軍本部と同等に堅牢であり、海賊が簡単に行けるほどやわな場所じゃない。たとえロジャーが海賊王で強い実力を持っているとはいえ目的の天竜人に会う事はおろか、厳重な警備を突破するのはとても難しいのだ。それを革命軍No.2の男、サボはよく知っている。いつか来る日に向けて準備をしているサボにはとてもよくそれが如何に困難か理解している。だからこそロジャーの実力を見てみたかったのか、肌で感じたかったのか、はたまたロジャーの無謀すぎる性格を子供の頃のやんちゃなエースと重ねてしまったのかサボは無意識のうちに口にしていた。

「もし、行くのであれば!俺も…、俺も一緒に行かせて欲しい!」

 

「いいぞ!」

 

「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」」」」

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